人事業務の中でどのように生成AIを使っているか

半田頼敬氏(以下、半田):本日の内容ですが、私たち2人の自己紹介をさせていただいたあと、エクサウィザーズが行った生成AIの活用に関するアンケートを共有させていただき、メインのトピックである人事業務の効率化に効いた20個のプロンプトについてお話をさせていただきます。よろしくお願いいたします。

まず自己紹介からさせていただきます。私はエクサウィザーズの人事責任者をしております、半田と申します。もともとリクルートにおりまして、リクルートからエクサウィザーズに入りました。ちょうどエクサウィザーズが社員30名ぐらいの規模の時に入り、今ではグループ全体で500人を超える規模になっています。

その中でいろいろな人事業務を担当してきたので、今日は人事の中でどのように生成AIを使っているかを中心にお話できればと思います。では、遠藤さん、自己紹介をお願いします。

遠藤魁氏(以下、遠藤):エクサウィザーズで、新卒採用の担当をしている遠藤魁と申します。私はエクサウィザーズが3社目で、1社目はリクルートで新卒採用をやっていました。その後、研究者支援をしているLabBaseというスタートアップで全社の採用責任者・人事マネージャーとして、約30人から120人ぐらいの組織拡大をリードしました。

今は生成AIやChatGPTを使いながら、採用の業務効率化に取り組んでいます。よろしくお願いします。

半田:ありがとうございます。本日どういった方にお申し込みいただいているかを共有したいと思います。なんと人事以外の方が半数以上という回答が出ていまして(笑)。メンバー層とマネージメント層もだいたい半々です。

企業規模に関してはちょっと不明な部分もあるんですが、大企業などの人事の方もいらっしゃれば、スタートアップやまだ企業規模が小さい企業の人事さんもいらっしゃいます。生成AIは採用に限らず、人事・労務や企画などの業務で幅広く使えると思っているので、そういった方向けにもお話をしたいと思います。

生成AIの活用アンケートの結果にあらわれた変化

半田:では、生成AIに関するアンケート概要を私からご説明します。こちらはエクサウィザーズが、業種、部門、役職、さまざまな方々に「実際に生成AIをどれくらい使っていますか?」というアンケートをとったレポートです。

ポイントは「変化」です。実は4ヶ月前にも同じようなアンケートをとっているんですが、前回の調査よりも活用レベルが大きく向上しており、ここがインサイトかなと思います。

ボリュームゾーンでは、活用レベルを5段階に分けていますが、レベル4の「時々使用している」がマジョリティで、約20パーセントがレベル5の「業務で日常的に使っている」まできています。

役職別では、経営陣やメンバー、マネージャーと幅広く、使っている人たちがけっこう増えています。経営陣に関しては半数以上が使っていますね。

このレポートを見ると、生成AIを使うか否かより、「どう使うか」を考える段階に入ったと言えるかなと。いろいろな使い途があるんですけど、今のところ主に汎用的な用途への活用が上位を占めています。

一番多いのが「文書生成」で、その次に「アイデア出し」「調査」「要約」などの使い方をされています。 これは人事に限った話ではなく、広くこのように使われています。

活用のレベルが上がっていくと、それに応じて活用の幅が広がります。このあとお話ししますが、「検索から生成へ」。要はGoogle検索の延長線上で使うのではなく、生成するところにシフトしている例が見られ、やはりここがポイントかなと思います。

生成AIで業務にインパクトを出すには

半田:今まで我々はGoogle検索に慣れすぎたところがあり(笑)、既存の情報を見つけ出す、知識を見つけ出すという情報収集で検索を使っていますが、これは一般的な企画や資料作成のプロセスの本当に一部です。

生成AIが出てきたことで、「一部分だけで使うのはもったいない」と思っています。生成AIで業務にインパクトを出すには、既存の情報・知識をベースにしながら新しい情報を作り出す「生成」に使うのがいいんじゃないかと。実際に活用すると、社員と同等のパフォーマンスを発揮するシーンも存在します。

活用方法としては、大きく「①たたき台の作成」「②調査・要約」「④壁打ち」、エンジニアや自動化ツールを使う開発者向けには「④プログラム作成」もあると思います。

人事に関しては基本的に①から③(「たたき台の作成」「調査・要約」「壁打ち」)になると思います。

組織に置き換えた場合、①(たたき台の作成)から②(調査・要約)は新人から若手社員がメインで使えるかなと。今、私が管掌している部門は、採用以外にも人事企画や労務のメンバーとやり取りすることもあるんですが、③(壁打ち)はたたき台として作られるものやミーティングの効率化にも、けっこう使えると実感しています。

今回は「本当に使えたプロンプト20選」ということで、300名弱のお申し込みをいただきました。やはりすごくニーズがあると感じています。今回は我々が思考錯誤する中で見つけたプロンプトを20選共有します。

この一つひとつが使えた/使えなかったという議論よりも、対話による生成AIのインパクトをすごく感じています。今回は「まだ生成AIをぜんぜん使っておらず、対話うんぬんの前にどんな場面で使えるのかわからないよ」という方に向けて、ご紹介できればと思います。

活用事例の紹介をすることで、みなさんの認識が「生成AIは使えないよね」という状態から、「思ったより使えるかもしれない」に変化することをこのセミナーのゴールと考えています。

今回共有させていただくプロンプトをベースに、「自分だったらこんなかたちで対話するな」というきっかけにしていただくのがよいかなと思っています。

自分が詳しくない職種で求人を出す際のポイント

ここからが本題のプロンプト20選です。採用や人事企画、労務・総務、それぞれのどんな場面で使えるかを20パターンご説明します。だいたい1事例1分ぐらいで説明できると、時間的にはちょうどいいかなと思います。詳細な内容や「こういう場合はどうしますか?」というのは、生成AIのアカウントを持っている方は生成AIを開いていただければと思います。

では、「採用・職種理解」について自分からお話します。

主に中途採用でけっこう使えるところです。例えば、「経理を採用しよう」という話になった時、自分が経理業務を担当したことがないことも多々あるかと思います。「どんな業務をしているのか?」とあまりイメージが湧いていない状態でも、求人票やスカウト文面の作成、エージェントさんへの説明をしなければならない場合もありますよね。

そういった際は、まずはインサイトや「どういう理由で転職するんだっけ」を生成AIで叩いてみます。

そうすると、例えば「20代前半の方がこういう理由で転職を検討する」というのが出てきます。

このあとに「その人たちが転職する時のキャリアパスにはどんなことがありますか。パターンで出してください」と。これがポイントです。「パターンで出してください」と指示すると、深く掘り下げるためのヒントが得られます。

実際にこれをスカウトで送る時、「どういう部分を注視しながら、スカウト文面に盛り込むことが必要か」を対話していく。そうすると、またいろいろな情報が得られます。

対話によって磨き込んでいきます。どんな業務を担当していくのかも、概要理解のために「まず10個出して」と叩くとダーッと出てきます。その中で候補者と面談したりエージェントさんに説明したりする時に、「こんなことを聞かれそうだよな」というのを確認する。

例えば「大企業からスタートアップへ初めて転職を検討している人が聞きそうな質問と、それに対する回答案」を出す。その上で、「うちの会社に当てはまるんだっけ、当てはまらないんだっけ?」をチェックします。

たった10分ですけど、こういった準備をした上で現場の方に話を聞きに行くと、議論の質もかなり向上します。職種理解のための対話としては、けっこう使えると思っています。

特によく使うのは、エンジニア採用の場面です。エンジニアは当たり前に使っている言葉でも、実際に業務の経験がないとなかなかイメージが湧かないこともあります。生成AIを使えば必要最低限の知識を得られ、高速で理解できる。

例えば、「類似しているポジションとの違いを教えて」「キャリアパスを教えて」「このポジションの優秀さの定義は何?」などをいったん箇条書きで出してもらう。「こういうポイントを気にするんだ」と気づいたり、「ここはどうなんですか」と現場の人たちに聞く時のたたき台となっていいんじゃないかと思っています。

社内の「1人目ポジション」を採用する際の使い方

半田:これは中途採用の話ですが、新卒採用の場面でどう使っているかは、遠藤さんからお話ししてもらいます。

遠藤:新卒採用では、「この時期の集客施策にはどういうものがあるのか」や「他社さんがどんな施策をやっているのか」のリサーチは、けっこう肝になってくると思います。

例えば、エンジニア採用のイベントで「他社さんはどういう施策をやっているんだっけ?」「オフラインかオンラインか」「予算をどれぐらいかけているのか」などをまず洗い出します。

ここで肝なのが、制約条件やアイデアのステップまでちゃんと指示を出してあげること。時期、ターゲット、予算や期間の制約、あとはステップで「評価までしてください」とやると、(スライドの)右側のプロンプトのようにバーッと挙げてくれます。「他社はこうやっていますよ」というアイデア出しやリサーチの時間短縮につながりますね。

半田:ありがとうございます。この「評価させる」は、みなさんもあまりやっていないんじゃないかと思うんです。アイデアを出したあとの評価も生成AIにやってもらうことは、いろいろな場面で使えるTipsかなと思います。

次のロープレ(ロールプレイ)系についても、遠藤さん、お願いします。

遠藤:特に中途であると思うんですが、自分自身がまだ採用をしたことのない職種、特にスタートアップ・ベンチャーなど社内の1人目ポジションを採用する時のクロージングに活用できます。

モデルとなる先輩社員がいなくてなかなかロープレができない時に、こういうプロンプトが使えるかなと思います。

これもヒアリング内容やプロセスを可視化したあとに、対話形式で進めていきます。

生成AIに質問を出してもらい、それに対して自分が候補者さんの視点で回答していきます。そうすると、(スライドの)このように、どんどん対話形式でヒアリングやアトラクトに役立つ情報を伝えてくれます。

初めてのポジション、解像度が低いポジションに対してのコミュニケーションでも、良い壁打ち相手になるケースがありました。

生成AIでつけられる付加価値

半田:スライドの右側はエクサウィザーズが提供しているサービスの一部です。どっちかというと営業のロールプレイングシーンでの利用を想定しているサービスですが、営業のロールプレイングは採用の場面でも使えるところがあります。自然言語での対話に加えて、自分がどれくらいしゃべれるかを確認する場合に、発展編として活用できるんじゃないかと思います。

また自社や他社のニュースに自分なりの解釈を加えて解説をすることは、採用担当に求められる部分かなと思います。

例えばこれは「JAXAとAIロボットシステムを開発しました」というエクサウィザーズの事例です。

でも、「具体的に何がすごいのかを自分の言葉で説明できますか?」と言われると、それも自信がないし、プレスリリースを読んでも正直なかなかわからなかったり、聞きに行く時間もちょっともったいないから、わかったふりをしてそれっぽい言葉でお茶を濁すこともあるかなと思うんです。

そういう時に、要約に加えて「わからなそうな単語は単語リストで出して」「ここからさらにどういう社会になっていきそうか、変化を予測して」などと加えることで、ただのプレスリリースの転載ではない付加価値をつけることができるんです。