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施策の全体設計図となるカスタマージャーニーの作り方セミナー~基軸はパーセプションチェンジ~(全3記事)

電通で学んだ、「誰に何をどう言う」ではなかなか成果が出ない ターゲットに無視されないコンテンツの作り方

クロスメディアグループが主催した「カスタマージャーニーの作り方」セミナーに、『マーケティングオートメーションに落とせるカスタマージャーニーの書き方』の著者である小川共和氏が登壇。本記事では、コンテンツ企画のポイントについて語られました。

前回の記事はこちら

99.6%のコンテンツは、たとえ目の前にあっても無視される

小川共和氏:いよいよコンテンツの企画についてです。「コンテンツ企画」であって「コンテンツ制作」じゃないんですよ。コンテンツを作ってブログやメールに載せれば見てもらえますか? 期待どおりの成果を生みますか?

実際にコンテンツマーケティングなり、Web広告なり、ナーチャリングメールなどコンテンツを作っている方であればわかりますよね。「そんなのでうまくいったら世話ないや」というやつです。簡単にうまくいかないですよね。

特に今はWeb広告やコンテンツマーケティング、マーチャリングメールをみんながやっていますから、コンテンツがありふれています。人間が消化するよりはるかに多くのコンテンツが出回っています。だから同じようなコンテンツを作ったからって達成感は出ないですよ。

コンテンツを作っている人はこんなことを言われたことはありませんか? 「この検索ワードが有効なので、この検索ワードに対応するコンテンツをたくさん作ってください」「いや、実はもう作りました」「じゃあ3個作ってください。関連ワードと組み合わせたものも作ってください」。

そんなに作るのは簡単じゃないですね。どこかのWebサイトのコンテンツを見よう見まねで作ってアップする。そんなこともあるんじゃないですか? 当たり前ですが、うまくいかないですよね。ありふれたコンテンツは無視されるんです。みなさんが毎日朝から晩までやっていることですよ。

ちなみに実際1人の人間が接するコンテンツの中で、ちゃんと見るコンテンツは何パーセントぐらいだと思いますか? 5パーセント、3パーセント、1パーセントくらいかと思うんですけど、ある統計で0.4パーセントだったんですよ。

つまり、99.6パーセントのコンテンツは、たとえ目の前にあったとしても無視されるということです。物理的に接していても無視する。これはみなさんが毎日やっていることです。それぐらいありふれたコンテンツは無視される宿命であると。

驚きやオリジナリティのあるコンテンツの作り方

要するにコンテンツはただ作りゃいいってものじゃない。「何か」がないとやはり見てもらえない。

その「何か」とは何なんだろう? 私は「驚き」だと思うんですよ。「え、マジ?」「すげー」「そんなの初めて!」「わお」と思ってもらえないコンテンツは、なかなか見てもらえないです。

「Unexpected」と言ったりするんですけど、いい意味で予想を裏切ることをやらなきゃ見てもらえない。そのためにはアイデアが必要になります。ただコンテンツを作るだけじゃなく、「驚きをもたらすアイデア」を考え出すやり方で作ることを「コンテンツ企画」と私は言います。

「こういう時にはこういうコンテンツがいい」という定石コンテンツ、鉄板コンテンツが今よくネットに出ていますけど、それは裏を返すと、どこでもやっているコンテンツということですね。見飽きたコンテンツ、あえて見るまでもないコンテンツなので、無視される可能性が高いと思います。

やはりコンテンツには驚きや、ある種のオリジナリティがなければ、なかなか見てもらえません。

じゃあどうするのか? 「今回は認知拡大です」「理解促進」「コンバージョンを1.2倍にしましょう」「リピート率40パーセント以上にしましょう」など、マーケティングサイドからの課題があったとしても、それをいくら眺めていてもコンテンツのアイデアは出ないですよね。

どういう場合にアイデアが出るのか? 具体的な例だと「なるべくお金をかけないで、ゴールデンウィークに家族旅行をしたいと思っているパパに向けて、『ここならば、ふだんできない体験ができて、子どもたちの忘れられない思い出になるぞ!』というアイデアを考えてください」と言われるといくつか出てきますね。

例えば私も好きなキャンピングトレーラーです。ホテルや旅館へ行くことを考えたら、こちらが断然安いです。近場の関東にもいっぱいあります。こんな(スライド写真)地引網なんかも三浦半島でやっています。

これは何だかわかりますかね? 福島県の大内宿なんですけど、江戸時代の宿場町がほとんどそのまま残っています。浅草から特急電車1本で、1回だけ乗り換えますが、速攻で行くことができます。大してお金もかからずこういう体験ができます。実は私、福島県庁の観光交流局の顧問でもあります。

「コンテンツ企画」の2つのポイント

コンテンツ企画の大きなポイントは2つです。まずターゲットを決めること。「ターゲットを決めましょう」といった時に、多くの方は「小さいお子さんがいて育児中の30代の主婦」など属性でターゲット規定するんですけど、それだとまだ半分です。

いわゆるニーズ、欲求でも期待でもいいですけど、「◯◯をしたいこういう人」と設定する。「なるべくお金をかけないで、ゴールデンウィークを家族旅行したいと思っているパパ」。このニーズとセットで考えないと、ターゲット設定としてはなかなか使えない。これができるとかなり違ってくると思います。

もう1つは、やはりパーセプションで考えることです。パーセプションとは、ターゲットが口にしそうな言葉で書くことです。

実際にやってみるとけっこう難しくて、マーケター言葉になったり、「なんかそれ、企業の人は言うけど、客が言うセリフじゃないよな」という言葉だったりします。あくまでもこの人が実際に言いそうなセリフで書く。ここがミソです。ぜひトライしてみてください。

「コンテンツ企画」は、ターゲットの「◯◯したいと思っている◯◯な人」に対して、「こう思ってほしい(私は◯◯は◯◯だと感じる)」という2つを規定します。

電通で学んだ、「誰に何をどう言う」ではなかなか成果が出ない

みなさんはやっていますか? たぶんやっていないと思います。ターゲットを決めたら、次に何を決めますか? 「何を言うか」と考えると思います。「誰に」が決まったら、じゃあその人に「何を言うか」と考えちゃう。

私が電通に入った40年前も最初はそう教わったんです。最初にターゲットを決めたら、次は何を言うべきか、「What do you say」を決める。それが決まったら「How do you say」、どう言うかを決める。「ターゲット」「What do you say」「How do you say」、この順番で決めていくんだと習ったんです。

でもなかなかうまくいかないんですよ。商品の特長としてものすごく強いUSP(商品の独自の強み)や明快な差別性がある時はうまくいくかもしれないですけど、そんなことはめったにないです。

「誰に何を言うべきか」という議論をしても答えは出ないんです。「誰にどう思ってもらいたいのか」からスタートしなきゃいけないんです。これはけっこう劇的に違います。

電通の社員研修でも、最初にターゲットを決めて、次は「じゃあ何を言おうか」と考えちゃう。ダメです。その問いに答えはないです。

どう思ってほしいのか。結果として相手の心に何を残したいのか。何を言うかじゃなく、何を残したいのか。相手の記憶、頭の構造にどういう変化を起こしたいのかを考える。そのあとで、「そのためには何を言えば効果的か」を考える。ちょっと注意していただければと思います。

コンテンツはインサイトから導き出す

ここでようやく「何を伝えるか」という手法です。施策といってもいいでしょう。あまりメディアを狭く捉えないほうがいいと思います。

マスメディア、Webメディア、リアルメディアだけではなくて、インサイドセールスやカスタマーサポート、カスタマーサクセスで伝える、コミュニティ(ユーザー会)で伝える。ステップはいろいろありますから、狭い意味でのメディアとは捉えないほうがいいです。

(スライドは)中小不動産会社のマンション購入の事例ですね。今のパーセプションでは「中小不動産会社はどうも信頼できないんだよね。なんか任せきれないや」とこんなパーセプションになっています。だから来店予約がなかなか取れない。もっと来店予約してほしい。

「◯◯社は誠意があって信頼できそう。任せてみようかな」に変わると、きっと来店予約は増えるだろうと考える。ナーチャリングメールとそのクリック先のWebページが施策・手法ですね。施策はだいたい与件で決まってきます。ではコンテンツは何か。

「そもそも『客が不動産会社に誠意を感じ、信用できる』のは、どういう時なんだっけ? どんな時にそう思うのかな?」。それは過去の体験でも、あらためて人間の心理を考えても、どっちでもいいと思います。

ある時営業マンが「そういえば客の買う気が失せる悪い情報をあえて話した時、意外にも『御社は誠意があって、信頼してもいいかなという気持ちになった』と言われたことがあった」と。

よくよく考えてみると、「人間っていい話ばっかりされるとちょっと疑いたくなるけど、いい話も悪い話も率直にされると信じたくなる。これは人間の普遍の真理だ」という洞察ですね。

だから「お客さまの買う気が失せるような都合の悪い話をします」というコンテンツを選ぶ。こういうインサイト、洞察からコンテンツを導き出す。

すなわちコンテンツにパーセプションで課題を設定し、「じゃあ客はどんな時に、そんなパーセプションを抱くんだろう?」と考える。BtoBの場合、営業の方だと直接客と話をするからなんとなくわかるんじゃないですかね。

BtoCの場合は、リピーターにヒアリングしてください。リピーターとは、他の商品がいっぱいある中で、この商品を選び続けてくれているわけです。何か理由があるんです。たいていそこに一番の大きな手がかりがあります。

私は今でも本当に迷った時は、リピーターにヒアリングします。そうすると、「どういう望ましいパーセプションが『リピートし続ける』という行動につながるか」「そのパーセプションを抱くのはどんなタイミングか」がわかります。これがクリアになると、かなり見えてきます。ぜひお勧めしますね。

こういった洞察を徹底的にやる。マーケティングはある種、客との心理ゲームです。やはり心理を深読みするのが大事かなと思います。

パーセプションでアイデアを膨らませ、もう一度パーセプションに戻る

その次はアイデアですね。アイデア100本ノック。数です。分析型の思考を一回中断して、とにかくブレスト的なアイデアを出すことが大事です。

アイデアが100個出たら、どうしますか? そこでもう一回パーセプションです。「この客に、このコンテンツアイデアをぶつけたら、期待どおりのパーセプションを抱いてくれそうか?」ともう一回考えてみる。慎重にやる時は、実際に調査します。

あくまでもパーセプションからアイデアを考えて、アイデアからもう一回パーセプションに戻って決めるのが「コンテンツの企画」になります。ぜひやってみてください。

広告代理店のプランナーやクリエイターの方であればやっていると思います。これは私が勝手に言っているのではなく、けっこうよくあるベタです。

カスタマージャーニーに競合他社の名前を出す

最後の章になりますが、「バージョンアップ」についてです。常に難解になるのはMQL、ホットリードの判別です。マーケティングオートメーションをやっていると、必ずこの壁にぶち当たるんじゃないですかね?

「スコアリングで80点になった人でも、ぜんぜん商談に結びつかない」「スコアリングで20点がいきなり有効商談になっちゃった」と。これ、MAのあるあるですよね。やはりスコアリングに頼るのは危険です。

スコアリングに頼らないMQLの判別方法を考えないといけないと思います。でもこの話をすると1時間かかっちゃうんです。このクロスメディアマーケティングの資料は私が書いたんですけどダウンロードできますので、そちらを読んでいただけるとより具体的にわかるかなと思います。

それから、みなさんの書いたカスタマージャーニーに競合他社の名前は出てきますか? まず出てこないです。マーケティングは「3C」です。「Customer」「Company」「Competitor」ですけど、客と自社の関係だけでジャーニーを書いちゃうのがほとんどです。普通にやると、ほぼ全部そうなります。

でも違いますよね。客から見ると、自社はたくさんの選択肢の1つでしかない。だから客の視点で書けば、競合他社の名前が出てくるはずなんです。ほとんど出てこないのは、2Cバージョンでカスタマージャーニーを書いちゃうから。ぜひ3Cバージョンにバージョンアップしましょう。

競争戦略を考えるという話も3回ぐらいのコースになっちゃうので、今ここでは割愛しますが、2冊目の本(『戦略から始めるエンゲージメントマーケティング』)でかなりのページ数を割いて説明していますので、それも参考にしていただければと思います。マーケティングは3Cです。コンペティターが出てこないジャーニーは2Cバージョンとなり、不十分です。

「施作立案型」のカスタマージャーニーを作る際の3つの柱

最後のスライドです。「ツールの進化」。この5年間でツールが劇的に変わっています。私が本を出した5年前は、マーケティングオートメーションが世の中に開花する時でした。ただ実態はマーケティングオートメーションというよりは、Webの閲覧履歴とひもづくメールマーケティングオートメーション。

当時私の書いたジャーニーも「今のMAでは実行できないジャーニーを書いている」とよく批判されました。その批判は当たっています。当時のツールでは、ほとんど実行できないケースが多かったからです。

でも今はツールがどんどん進化しています。そういう意味では、2冊目の本(『戦略から始めるエンゲージメントマーケティング』)はどちらかというとBtoCで書いたんですけど、「ようやくあの時のジャーニーが実行できるようになってきたんだ」と、今しみじみ感じています。

今日の話をまとめると、ポイントは3つです。

施策の全体設計図となるカスタマージャーニーは、「マーケターの願望」に過ぎません。願望だから、妄想になる可能性がありますが、妄想にならないためにはちゃんと遷移指標という、ジャーニーそれぞれの行程にいる人間をデータとして把握することが必須です。これがなければ妄想のままです。

2つ目は、カスタマージャーニーはパーセプションの連鎖で描くこと。ジャーニーの行程にはもちろん行動もありますけど、パーセプションの連鎖です。パーセプションで数珠つなぎに描かないとうまくいきません。

3つ目は、コンテンツ企画はパーセプションで課題を設定すること。パーセプションを起点に客の心理を深読みして、深く洞察し、アイデアを膨らませて、最後にもう一回パーセプションに戻る。これが企画性のあるコンテンツアイデアの書き方です。だまされたと思って、ぜひ一度やっていただければと思います。

今日はカスタマージャーニーの話をしましたが、やはり一番いいのは御社のケースで実際に書いてみることです。タダとは言いませんけど、「ワークショップか何かで一緒に書いてみませんか?」という提案です。

私は70以上のジャーニーを書いてきたので、どんな業種でも書くことができる自信があります。大丈夫です。ぜひ一回一緒にやってみませんか。コンテンツ企画も一緒にやってみるのが一番いいのかなと思います。

それから、競争戦略に関して「うちは競争戦略は決まっているから、今はいらない」というのであれば、なくてもけっこうです。まだ考えていないのであれば、一緒に考えてみませんか。競争戦略があるジャーニーとないジャーニーでは、実際の成果の出方がかなり違ってきます。これも一緒にできればと思います。

私からの話は以上です。ありがとうございました。

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