「とにかく行動」でやりたいことが見つかるのは若い人だけ

加藤想氏(以下、加藤):最近、転職する人が増えています。総務省のデータによると、2016年から5年間で転職希望者が10パーセント程度増えているようです。私もグロービスで学ぶ受講生やプライベートの知人から転職の相談をよく受けます。

転職する理由は人それぞれで、「年収を上げたいから」「能力アップしたいから」とか、人によっては「今の仕事がしんどいから」など、いろんな背景があります。

私が個人的に転職後に輝いていると感じる人は、自分のやりたいことに向かって転職された方が多いと思います。イヤイヤではなく前向きに仕事ができるので、自分なりに工夫を重ねて密度の濃い時間を楽しみながら過ごしています。

あくまでも転職は手段の1つに過ぎませんが、今日は「人生の密度を最大化するためのアクションプラン」について考えていきます。

あなたは「自分のやりたいことは何ですか?」と問われたらどう答えますか? あなたの仕事や今取り組んでいることは本当にやりたいことでしょうか? 個人的には、この質問は難しい問いだと思いますし、日本ではそもそもやりたいことがわからない人も多いと聞きます。

「そのうちやりたいことに出会えるので、やりたいことを見つけるためには、とにかく行動あるのみ」。こんな論調も見かけます。これらは、経験があまりない未成年の方や学生には有効な考え方だと思いますが、ビジネスパーソンはすでに多くの経験を積んでいます。おそらく足りないのは行動力ではなく、行動の振り返りだと感じます。

例えば、小学校や中学生ぐらいにまで遡って、自分が夢中に取り組んだ出来事を言語化する振り返りの方法があります。部活や習い事、受験勉強など、しっかり当時を思い出しながら時間をかけて考えると、特徴的な出来事が誰でも見つかります。

私の場合は、がっつり塾に通わせてもらったにもかかわらず、中学受験ですべて不合格になりましたが、中学3年生の時にオープンハイスクールでどうしても行きたい高校に出会い、その後、勉強のやる気スイッチが入りました。そういったこともあり、運よくその高校に入学した経験があります。

その高校の、なにか洗練されていて、それでも自由な校風に惹かれたのですが、今でも「洗練されている」とか「自由」というのは、私自身大事にしている価値観です。

価値観に気づいたあとに考えるべきこと

これを聞いているあなたも、時間をかけて振り返れば自分の価値観を言語化できると思います。振り返りの手法としては、過去の出来事を羅列してグルーピングする手法や、自分の生きてきた道筋を幸福度の高低によって1本の線で表現する手法(ライフラインチャート)などもありますので、こちらはまた別の機会にお話しします。

ここで重要なのは、その価値観に照らし合わせた仕事があるか。つまり「自分の価値観に基づいたやりたいことでお金を稼げるか」という観点です。価値観だけでは仕事になりません。その価値観を満たす仕事がそもそも存在していて、その仕事を自分ができる実力が必要です。

ただし、実力をつけるにしてもイヤイヤがんばるのではなく、ここでも自分の価値観に照らし合わせて自分をモチベートする仕組みを作ることが重要です。

例えば、「論理思考力を身につけたい」と思ってなかなか動けない場合、論理的で仕事ができる、尊敬できる人と話す機会を増やす。なんなら、主人公が論理的でかっこいい映画を見るだけでも効果があると思います。

私がオープンハイスクールに参加することで、これまで前向きに取り組めなかった勉強を克服したように、あなたなりのモチベーションのスイッチが見つけられるといいと思います。

自分の価値観を見つけて、それを叶えるために能力開発をする営みを1人でするには、かなりの忍耐力が必要です。可能であれば、気の合う友人とライフラインチャートを見せ合って、価値観の精度を高めて、やる気スイッチを一緒に探すのが効果的です。

グロービス経営大学院で学ぶ人も、仲間との対話を通して、他者と自己との比較から自分らしさをしっかり言語化されています。

今日は、「密度を最大化させるためのアクションプラン」について考えてみました。もしキャリアでモヤモヤを感じている人がいたら、まずは過去を振り返る。そして、その上で自分のモチベーション・スイッチを見つける。そんなチャレンジをしてみてはいかがでしょうか? 今日の放送はここまでとします。