「悩む」と「考える」の違い

鈴木麻希氏:おはようございます。グロービス経営大学院の鈴木です。毎週土曜日はグロービスキャリアノートというメディアから、キャリアを考える際のヒントとなる記事をピックアップして紹介します。

今日は「悩みの上手な解消方法」についてお話しします。日々働く中で何かしら悩みがある人は多いと思います。悩みをため込んでしまって、どうにか解消したくてもなかなか相談できない人もいるのではないでしょうか。今日はそういった方に向けて、悩みを上手に解消するヒントをお話ししたいと思います。

まず押さえておきたいのは、「悩む」と「考える」の違いです。「悩む」というのは、一言で言うとボヤっとしている状態です。「どうしよう、どうすればいい?」と思考がぐるぐる回っているだけで、具体的なことを頭の中で思い描けていない状態です。悩んでいるままでは、なかなか解決の方向には向かいません。

一方で、「考える」というのは、何か課題を抱えている時に自分なりの解を出そうと頭を使っている状態です。まず、悩みを解消するための第一歩は、悩んでいる状態から、考えている状態に頭を切り替えることです。

誰かに相談する場合でも、ちゃんと自分の頭の中を整理して課題を言語化しておかないと、ただ愚痴を聞いてもらっただけ、となってしまいます。愚痴を聞いてもらうことで一時的に気分を晴らすことはできるかもしれませんが、問題が解決することはありません。なので「どうしよう」と思考がぐるぐるし始めたら、まずは自分が悩んでいる状態であると認め、その上で意識的に考える状態に切り替えることが大事です。

この「悩む」から「考える」に頭を切り替えるのにもコツがありますので、2つご紹介します。1つ目のコツは、紙に書き出すことです。まずは、「自分は今こういう問題に直面している」ということを紙に書き出してみましょう。

問題を書き出し、それを眺めてみるだけでも、「これはもうどうしようもないな」と割り切れたり、「なんだ、意外とこれはたいしたことがないな」とこの段階で課題が解決してスッキリすることもあります。

自分がコントロールできるものに集中する

2つ目のコツは、自分がコントロールできるものに集中することです。紙に書き出したものを、コントロールできるものとできないものに分類してみてください。そして、コントロールできないものは、考えなくてよいものとして脇に置いておくようにします。なぜかというと、自分でコントロールできないものは、どれだけ考えたとしても、どうしようもないからです。

例えば、「すべての悩みは人間関係である」と言われるくらい、人間関係で悩んでいる人は多いです。ただ、いくら人間関係で悩んでも、相手の感情や行動のコントロールは完全にはできません。「どうしてこの人ってこうなんだろう?」と悩むくらいであれば、自分ができることに集中した方が健全です。他人のことは脇に置いておいて、自分でコントロールできるものの中から具体的な対処法を考えていくのがおすすめです。

具体的な対処方法が複数出てきたら、優先度を付けて絞り込んでみましょう。優先度はスピード、コスト、インパクトの3つの軸の掛け合わせでつけてみてください。スピードはどのくらい早く成果が出せそうか。コストは、費やす時間、費用、労力はどのくらいか。インパクトは対処した結果どのくらいの成果が見込めそうか。こんな観点を交えて、優先度が高い解決策が明確になったら実行してみてください。

ここまで「悩む」から「考える」状態に切り替えるコツをご紹介しました。ただ、自分1人ではどうしても頭を切り替えられない人もいると思います。そういう場合は、他者にアドバイスをもらうことも大切です。自分で解決しようとする姿勢も素晴らしいですが、他者に相談することで、異なる視点から客観的にアドバイスをくれるので、自分では気づかなかった問題の本質が見えてくるかもしれません。

ただし、人によっては「私に相談されても困るな」と感じることがあるかもしれません。できれば、本当に困った時のために、きちんと意見を言ってくれるような人を自分のそばに2、3人作っておくのがおすすめです。

今日は「悩みの上手な解消方法」についてお話ししました。まずは、何か悩み事があったら考えるモードに切り替えることが大事です。そして、自分がコントロールできることに集中して解決策を複数考えて、優先度をつけて実行に移してみてください。

その上で、「自分1人ではどうにもならない。誰かに相談したい」という場合には、苦言を呈すことも含めて意見を言ってくれる、メンター的な存在の人に相談をしてみるのがおすすめです。今何かに悩んでいる方にとって、何かしらヒントになったらうれしいです。では、今日はここまでとします。