元サッカー国際審判員の家本政明氏が登壇

鈴木啓太氏(以下、鈴木):本日はどうぞよろしくお願いします。

家本政明氏(以下、家本):鈴木さん、リスナーのみなさんも本日はよろしくお願いします。

鈴木:家本さん、さっそくなんですけれども。私が代表を務めるAuBでは、みなさんがご機嫌に健やかに生活できるように、健康・ヘルスケアを題材にして、いろいろ事業を展開しているんですが。この「goodcho live now!」はプロダクトとかではなくて、業界業界のトップランナーの方にお話をうかがいながら、みなさんの生活がより良くなるためのヒントになればという思いでお送りしているウェビナーです。

家本:俺で大丈夫なのかな?

鈴木:いや、大丈夫ですよ。

家本:(笑)。啓太を信じるよ。

鈴木:プライベートでお会いしたのって覚えてます?

家本:サウナ行ったよ。

鈴木:そうなんですよ(笑)。僕がサウナにまだちゃんと入ったことがない時に、家本さんと家本さんの友だちを含めて行きましたよね。

家本:行ったね。あれは良かったね。

鈴木:スーパー銭湯みたいなところに行って。

家本:そうそう。

鈴木:当時、サウナって水風呂に入るのは知ってたんですけど、外気浴を知らなかったんですよ。

家本:啓太、めっちゃ寝てたよね。

鈴木:はい。これが「ととのう」ってことかと(笑)。

家本:最高だよ。あれを2〜3回繰り返してね。

鈴木:うん。家本さんはサウナにけっこう行かれるんですか?

家本:最近ちょっとバタバタしているから行っていないけど、煮詰まったりとかスッキリしない時はやはり行くね。近所にいくつかいいところがあるのでフラッと。

鈴木:へえ。そういった中で、レフェリーってものすごく走りますし、状況判断をしなければいけないから頭もクリアじゃないといけない。実は選手よりも肉体的にけっこう大変なんじゃないですか。

家本:大変さがちょっと違うかな。同じ部分もあるし、それぞれに大変な部分もあるし、そこはお互いさまだよね。

国際レフェリーになるには、フィジカルの要素も重要

鈴木:なるほど。家本さんはレフェリーなので、そういったところを聞きたいんですよ。なのでいったん、まずトークテーマ①、②、③に行く前に、レフェリー時代のコンディショニングについて少しお聞きしたいんですけど。実際レフェリーの資格をとるためのテストはけっこう厳しいんですよね。

家本:はい。テストというと体力測定と競技規則テスト。この2つがいわゆるテストと言われているもので、あとは昇級するためには昇級テストもある。昇級テストと更新テストですね。

鈴木:その昇級テストって、国際レフェリー(のテスト)ですよね。

家本:トップのトップはね。

鈴木:そこと初級(のレフェリー)と言いますか。

家本:4級とか3級とか。

鈴木:ここ(トップと3、4級)のフィジカル的な差ってけっこうあるんですか?

家本:大げさに言うならば天と地くらい違う。

鈴木:(笑)。

家本:大げさですね(笑)。4級と国際が一緒だったらまずいでしょ。

鈴木:確かに。実際に国際レフェリーになるためには、どのくらい(の距離)をどのくらい(の速さ)で走らなきゃいけないとかあるんですか?

家本:基準としては一応ある。国際レフェリーの基準は、今のJリーグ担当の基準と基本的には一緒。

鈴木:ふーん! じゃあJリーグで笛を吹いている方は、基本的には国際レフェリーになれるぐらいのフィジカル的な要素を満たしているということなんですか?

家本:そういうことだね。

1試合で12〜13キロ走るトップレフェリー

鈴木:ちなみに100メートル走とかあるんですか?

家本:今も変わっていなかったらだけど、40メートルを6本連続で、主審は6秒、副審が5.8秒。だから40メートル走るとして、主審は6秒以内だったらパス。それを歩いて戻ってまた2本目。それを6連続(やる)。6秒超えちゃったら1ペナルティで、2ペナルティでもう失格。

鈴木:へえ(笑)! それで言うと、副審のほうが速くなきゃいけないんですか?

家本:コンマ2ね。

鈴木:それはオフサイドラインとか見るから。

家本:そうそう。やはりリアクションが速くないといけないから、そこで差をつけられている。

鈴木:へえ。

家本:ただしスプリント、スピード系の話ね。今度はインターバル走があるんだけど、それは75メートルを15秒で、25メートルを18秒。それを40本連続が主審で、副審は(25メートルを)20(秒)だったかな。インターバル走は、今度は副審のほうが何秒か遅くなるの。

鈴木:どっちかに分けるんだったら、レフェリーのほうが。

家本:トップレフェリーは1試合のトータルの距離でだいたい12~13キロ(走る)と言われていて、副審はその半分の6キロくらいと言われているのね。だから副審はインターバル、持久的なフィジカル要素はそんなに高くなくても、スプリントが要求される。レフェリーはスプリントはそこまで求められないかもしれないけど、持久系は非常に求められるという。

鈴木:なるほどですね。そういったレフェリーの大変さって、なかなか伝わらないじゃないですか。

家本:だって、これ文句じゃないんだけど「JFAがそういうのをちゃんとオープンにして発信すればいいのに」とずっと昔から言っているのにさ、それをやんないから。JFAというより、審判委員会なのか審判部なのかは微妙だけど、協会のオフィシャルの審判に属している人たちが、そういうアプローチをすれば、あるいはし続ければと思うんだけどね。

鈴木:そうですよね。

世の中に「レフェリーの大変さ」が伝わりにくい事情

家本:ぜんぜん変わると思うんだけどね。本当は辞めた時にはそういうのもやりたかったの。もう僕は協会から完全に離れたので、直には触れないというかコンタクトが取れないのね。必ず「これこれこういう理由で」と申請書を出して、協会がOKと言ったらインタビューや映像とか撮れるというふうに、けっこうカッチリしている。

鈴木:ええ!

家本:僕の現役時代、いろんな企業やYouTube系の人から申請があっても、僕は断っていないんだけど協会の判断で断られたというのもあるもん。

鈴木:ああー!

家本:そこはけっこう厳しかったです。

鈴木:情報はいろいろと出て行きますからね。

家本:そうなの。

鈴木:逆に自分たちがそれをうまく使って発信していくほうが、いいような気がするんですけどね。

家本:結局ビジネスの世界でも言われているブランディングの話で言うと、そういうのをどう作っていくのか。だからレフェリーをコーディネートしてデザインして、言い方は悪いけど世の中にどう売っていくのか。

その数を増やすことによって審判の世界のブランディングができるわけでしょ。ビジネスって、それによってサッカー界のイメージが作られ、多くの人が賛同して理解してってなるわけじゃん。ずっと「何でやんないのかな」としか思わないよね。

鈴木:なるほどね。この話は長くなりそうなんで。

家本:(笑)。また次の回で。

鈴木:そういうのを居酒屋で話したほうがきっとおもしろいんでしょうね。

家本:間違いない。今日来ているみんなと飲みながら「どうすれば日本のサッカー界や審判界が良くなるか」を話すみたいなね。

鈴木:非常におもしろい。家本さんはレフェリーというだけじゃなくて、いろんなことを俯瞰的に見て、そして発信してくださる。今、『Jリーグジャッジ「リプレイ」』みたいな番組もありますけど、あれもたぶん属していたら、ちょっと言いにくいこともあったりするのかなと思うんですけど。

家本:属してたら出演させてもらえません。そこはリアルな話です。

鈴木:そういうことなんですね(笑)。

ブラックボックス的なサッカー界における問題点

家本:だから昔は良かったんだけど、今ちょっといろいろ難しい問題があって。審判委員会の方々とか、当然現役も出させてもらえないのには、難しい裏の話があって、それこそ居酒屋トークです。

鈴木:それこそ本来求めているプロ、エンターテインメントとして見ると、ある種まさにファンやサポーター、興味関心を持っている人と、実際のサッカー界の懸け橋になっているじゃないですか。

家本:そう願うけどね。

鈴木:なぜかというと、やはりここってかなりのブラックボックスだったと思うんです。

家本:そうね(笑)。今でもね。

鈴木:今でもそうじゃないですか。だから、当然あたりどころがないというかガスを抜けないし、「実際それってどうなの?」みたいなものが、曖昧なまま終わってしまうというか。

家本:そうね。

鈴木:また次が繰り返されるみたいな話じゃないですか。

家本:中は中で本当に大変なの。僕もいろんな批判を審判界からもらっているし、当然いろんな界隈外からもらっているんだけど、発信する人間って、そういう使命を持っているから致し方ないと思っている。でも一部は理解をしてくれる人もいると思っているし、それは広まりつつある認識はある。難しい問題だけどね。

ただ、プロとアマってやはり違うし、選手も違うと思うんだよね。その責任の大きさとか覚悟もそうだと思うんだけど、Jリーグって興行、プロの試合でしょ。そこに携わる人たちは基本的に運営側というのかな。お客さん、サポーター、ファン、お金払ってもらうスポンサーを利用してプロの人たちと商売して商品を売るわけじゃん。

そこに審判がすごく大きな影響力を持って携わっているのに、職業審判、プロ契約をしているからプロ(という考えの人もいる)。「私は学校の先生です。会社員をしているからプロじゃなくてアマの審判です」という価値観の人もいるのね。

僕はそれは大きく間違っていると思ってて、まずマインドや環境を変える。プロの試合に関わる人は、少なくとも気持ちや考え方はプロじゃなきゃいけないと思うんだよね。あとは環境が難しくても、準備できることや行動はプロであってほしいと思うんだけど、ちょっとなかなかそこに至っていないのが、実際現役をしていた時も思っていたし、残念ながら今もそう思うかな。

Jリーグに携わるレフェリーの責任とは

鈴木:まさにそうなんですよね。結局スキルに関しては、批判を受けるのは致し方ないことだと僕は思っているんですよね。それはもちろんそれぞれのフェーズ、段階もありますし、あとは試合に優劣はないんですけど、もちろん大切な試合になればなるほど、そこは余計に目立ってしまうところもあると思いますけど。

でも逆に、例えば気持ちの部分、心の持ちようであったり、あとは対外でいうと人格みたいなところは、否定されてはならないじゃないですか。

家本:本当にそう思うね。できることとできないことってあるでしょ。あるいは用意されているものとされてないものとか。結局何かを変えることができるのは自分だけじゃん。だから「私は会社員ですから」「学校の先生ですから」「家が忙しくて」(というのは)、絶対言い訳だと思うんだよね。

「だったら辞めたら?」としかずっと思わなくて、研修会でもけっこう僕は、そういう甘ったれたこと言う人には「じゃあ辞めりゃいいじゃん。やりたい人いっぱいいるんだから」って言ってたもんね。悪いけどそういうマインド(の人)を仲間とは思いたくない。

難しいのはわかった上で、「その中でじゃあ何ができるの?」という。それがJリーグに携わるレフェリーの責任だと思うし、もっと言ったら「義務じゃない?」と、けっこう言ってたけどね。

鈴木:まさにそういったところも含めて、また次回、居酒屋トークをしたいんですけれども。

家本:(笑)。