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とにかく仕組み化 実践への道(全5記事)

部下とのやり取りは週1の報告と不定期の相談以外、原則不要 識学社長が上下のコミュニケーションは最小限でいいと言うわけ

株式会社識学が主催した経営者向けに特化したオンラインイベントに、著書『数値化の鬼』『リーダーの仮面』、そして新刊『とにかく仕組み化』がシリーズ合計100万部を超えた、同社代表の安藤広大氏が登壇。「とにかく仕組み化 実践への道」をテーマに、社員が「残りたい」と思う会社づくりや、上司・部下のコミュニケーションの量が多いことの弊害を語りました。

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経営判断の理由が「儲かりそうだから」はダメ

後藤翔太氏(以下、後藤):続いて、ここで「企業理念」が出てきました。あらためて、企業理念が明確になっていることは重要でしょうか?

安藤広大氏(以下、安藤):「企業理念」という旗印のもとに社員は集まってきているので、明確である必要があります。さらに、企業理念の実現に向けて意思決定がなされていることが非常に重要です。

企業理念の達成に向けて意思決定がなされると、経営や組織運営に一貫性が出てくるので、PDCAがしっかり回ってくるわけですね。もっと言うなら、企業理念に基づいた意思決定がされていないと、言ってしまえば動物と一緒です。お腹が空いたから食べる。儲かりそうだからこっちに行くみたいなことになってしまうんです。

企業理念に近づけば良し、遠ざかれば悪しとやっていくと、一貫して人間らしくPDCAを回すことができます。

後藤:企業理念は、メンバーもしっかりと理解しておくことが大事だと思います。そこで生まれやすい誤解について、教えていただけますでしょうか。

安藤:企業理念に対する理解度は立場によって変わってくるので、メンバーに経営者と同じ理解を求めてはいけません。

例えば僕らの「識学を世の中に広げる」という理念ですけど、新入社員に与えられた仕事はテレアポなわけです。となった時に、メンバーは「このテレアポって本当に企業理念につながっているの?」と吟味しだす。

「いいんだ。君たちは目の前のことをやっていれば、結果的につながる」としっかり言えばいいんですけど、それを同じレベルで判断できるという感じで話してはいけない。「君たち、企業理念をもとに意思決定しなさいよ」と言うのは間違いだと思う。

社員が「残りたい」と思う会社づくり

後藤:続いて「進行感」ですが、会社全体が企業理念、目的、目標に向かって進んでいるという進行感を与えることが、組織のトップとして重要な要素だと本で言っていますね。

安藤:今日、ここまで仕組み化の話を聞いていただいて、どちらかと言うと厳しい環境をいかに作れるかという話をしていますが、厳しいだけだとやはり社員が辞めてしまう。そういった意味では、社員が「この会社にいたい」と思う演出をしていく必要があります。

重要なのは、会社が自分も共感している企業理念にどんどん近づく方向で、社会に貢献できていることを実感できれば、社会から評価を受けている組織を辞めたいと思わないわけです。進行感はこの会社に残りたいというメリットにつながると思いますね。

後藤:その進行感を与える前に、一人ひとりに寄り添い過ぎて、その人のモチベーションに合わせていくみたいなことをやると、それこそ組織としての「進行感」がなかなか出ない。組織として利益が得られないから、個人に分配される利益も少なくなるという悪循環になることも考えらえるんですね。

安藤:組織が勝利できれば必ず個人へ還元できるし、個人のみなさんも幸せになっていくことができるということですね。

人も組織も「歯車」になることの重要性

後藤:またラグビーの話になってしまいますけど、ワールドカップで日本代表はイングランドに勝てませんでしたけど、「いい試合をしたな」「日本代表は強くなっているな」と感じると、このチームでプレイしたいという思いが高まったりすることがあるわけです。

安藤:ありますよね。早稲田(大学ラグビー部)の時にも進行感は非常にありました。でも一人ひとりに説明なんかしてくれなかった。「この練習をすればこういう理由で強くなる」とは、何も教えてくれなかったんですけど、それぞれが与えられたことをしっかりやって、結果的に強くなって進行感が発生して、どんどん部員も増えて、という環境になったんですよね。

後藤:組織が企業理念、目的、目標に向かっている状態をいかに作れるかが、リーダーの役割だということですね。「ここに残りたい」「ここで仕事をしたい」と言ってもらえるような、そんな会社を作っていかなければいけないですね。

本の中では「歯車」という表現も出てきます。

安藤:そうですね。いかに組織における自分の役割を理解しているか。歯車になりきれない人は、いかに努力してもそれが組織の成果に直結せず、無駄な努力になってしまう。結果的に自分がどれだけ努力しても評価されないことになりますので、歯車になるのは非常に重要です。

ともすると、会社一つひとつも社会における歯車になれないと、その会社の価値はどんどん下がってしまう。その意味で言うと、「歯車」は決して悪い言葉ではない。一つひとつの立場における歯車になっていくことが、社会でしっかり評価される存在になることにつながると思います。

コミュニケーションの「量」は最小限でいい

後藤:ここからは、事前にいただいた質問に答えさせていただければと思います。後ほどこの場でいただいた質問にも答えていきますので、Q&Aのほうに書いていただければと思います。

安藤:けっこう来ているね。

後藤:すでに来ています。では事前の質問を読み上げます。「部下とのコミュニケーションの質・量の向上が仕事の効率を上げ、成果につながると思っていますが、「リーダーの仮面塾」(識学のマネジメント講座)では重きを置いていないようで、違和感があります。解説いただければ幸いです」という質問です。

「リーダーの仮面塾」では、メンバーとの距離をしっかり取るというお話をされていると思うので、そことの整合性を気にされているのではないかと思います。

安藤:コミュニケーションの質・量という話でいうと、僕らが意識すべきだと言ったのは質のほうだけですね。必要以上に量がある必要はないと思っています。コミュニケーションとは、責任に基づいた上申です。要はコミュニケーションとして必要なのは、上司と部下の間がうまくいっている状態というか、部下発信でのコミュニケーションが増える状態です。

先ほど週次会議と言いましたが、弊社では週の目標が明確に設定されています。そして部下の権限も明確にある。そうすると、目標に向かって全力で走ればいいわけなので、1週間特に上司と話をする必要はないわけですよね。

ただ、何か想定外の環境の変化が起きたり、問題が起きた時には部下から相談がある。もしくは部下が責任を果たす上で、こういうことをしたいという権限の提案があります。

責任に基づいてそういう相談や提案、あとは週に1回の報告とそれを評価するコミュニケーションだけあればいい。そこだけあれば、上司がその時々で意思決定をしっかりすることで部下は迷いません。

コミュニケーションの量が多いことの弊害

安藤:「たくさん深く話しましょう」「1on1をやりましょう」みたいなことが言われていますが、その間は業務が止まります。物事が前に進まず、お互いの慰め合いではまったく意味がない。さらにそれがプライベートな話に及ぶと、上司が部下のプライベートは解決できないので。

後藤:(笑)。

安藤:そんな責任も権限も持っていないわけだから解決できない。無駄です。そんな話をする必要はまったくないので、そういうのはやめたほうがいいと思います。

後藤:部下に勘違いさせるようなコミュニケーションの量が問題ということですね。

安藤:必要以上に量があると、先ほどの清宮監督の話ではないけど、プレイで成果を上げなくても、自分はここに居場所があると勘違いを起こしてしまう。そうすると自分の成果を上げるほうに視点が行きにくくなって、優しいようだけど、結果的にその環境では成長しなくてもいいようになってしまう。

「厳しくて心が潰れてしまうじゃないですか」とよく言うんですけど、そんなことないですよね。明確にどうすれば評価を得られるかを設定してあげて、部下を迷わせないことはリーダーの仕事です。

後藤:僕は大学を卒業した瞬間、(ラグビー日本)代表に選んでもらえました。(早稲田大学ラグビー部時代は)厳しく何か言われたとかではなく、これに向かっていけと。これができないとレギュラーではないよというところが明確でした。

安藤:そうですね。そういう環境に身を置いたからね。

後藤:本当に競争環境でした。ありがとうございます。

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