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起業のインスピレーション ~日本初・持ち運び可能なスマホ充電器シェアリングサービスとは?~(全3記事)

メジャーデビューした元ラッパーが、モバイル事業で起業した背景 「ChargeSPOT」創業者のビジネスの礎は“自身のルーツ”

コンビニや駅など、さまざまな場所に設置されているモバイルバッテリーシェアリング「ChargeSPOT」。全国の設置数が40,000台を越えた今、「ChargeSPOT」の創業者である秋山広宣氏が開発秘話を明かします。学生時代から日本と香港を行き来し、大手レーベルからアーティストデビューをした経歴も持つ秋山氏が、越境ビジネスを始めたきっかけや思いについて語りました。

「ChargeSPOT」を展開するINFORICHは2015年にスタート

秋山広宣氏(以下、秋山):INFORICH代表の秋山と申します。本日は楽しみにしてまいりました。自分の起業のきっかけを、この機会にまたいろいろと振り返ることもできました。

2018年からの足跡からもう少しさかのぼって、会社を建てたのが2015年。7年経って8年目に入りますが、その頃のお話も含めてご共有できたらなと思いますので、よろしくお願いいたします。

私は、INFORICHという会社を2015年にスタートをしました。本日はこんな流れ(1 会社概要、2 自己紹介、3 ChargeSPOTについて、4 今後のビジョン)で、途中少し横道に逸れながらも進めていけたらなと思いますので、よろしくお願いいたします。

まずは、どういった内容のサービスをしている会社なのか。先ほど司会の川崎さんにも触れていただきましたが、モバイルバッテリーシェアリング「ChargeSPOT」を展開をしております。

会社の今現在の姿です。2015年9月2日に立ち上げまして、昨年の12月に東京証券取引所のグロース市場に上場させていただきました。従業員は日本国内で約112名、香港に30名、広州に60名の約220名の体制で進んでおります。

現在営業している場所ですが、日本国内および海外、香港と広州に子会社があります。グループ会社はまさにこの香港・広州になるんですけれども、中間持ち株子会社が香港にあって、そして孫会社が香港及び広州に存在していて、今はマカオにも1つ営業所を立ち上げて進めております。

大手レーベルでアーティストデビューした過去も

秋山:のちほど自己紹介に入っていけたらと思いますが、私、秋山がファウンダーでありCEOを務めさせていただいております。

それ以外の取締役メンバーに少し触れさせていただきますと、高橋(朋伯)がCOO兼コファウンダー、そして橋本(祐樹)がCFO。そして社外取締役に岩瀬大輔、鈴木絵里子、そして角田耕一。

角田耕一さんはヤプリの現CFOですかね。そして鈴木絵里子さんはMPower Partnersの立ち上げを経て、現在はKind Capitalというご自分のファンドを運営しています。岩瀬大輔さんはライフネットの創業者でもある。こういったメンバーを迎えて、グローバルに展開を進めています。

自己紹介に入っていきます。僕は、日本名は秋山広宣で、ちょっとややこしいんですがStephen Chanという名前もあります(笑)。

あとはここに書いてあるとおり、2007年から2009年までユニバーサルミュージックというレーベルにアーティストとして所属し、3ヶ国語を使ってラップをしていました。

香港人の父と日本人の母の間に誕生

秋山:少し自己紹介を織り交ぜながらお話をしていけたらなと思いますが、(スライドを)読み続けます。2012年に香港に移り住みました。

その時に福岡県の駐在事務所の顧問に携わらせていただいたり、そのタイミングで2014年にマザーズ上場をしたIGNISというゲーム会社の立ち上げの、5人のうちの1人として関わらせてもらったことから、上場していきなり大株主という立場になりました。そしてそれをキャピタルに、2015年にINFORICHを創業したという背景でございます。

自己紹介と合わせて、我々INFORICHの今のミッションステートメントにこのまま触れていきます。僕たちINFORICHは「Bridging Beyond Borders 垣根を越えて、世界をつなぐ」というミッションステートメントで、新たに2023年の8月から進んできております。

説明も兼ねて、サブタイトルにも「私たちは、多様な人、モノ、コトに可能性を見出し、さまざまな垣根を越える価値に進化させることで、世界と世代をブリッジしていきます。橋を架けた先に、より便利で豊かな社会を創ることを目指して」と書いております。

僕の生まれの背景としましては、父が香港人で母が日本人です。香港で生まれて10歳まで向こうにいまして、母方のいとこが多かったこともあって、そのあと10歳で福島のいわきという所に移り住みます。小学校5年生の時に日本に来ますが、香港にいる時から母とは日本語をしゃべっていた関係で、日本語はしゃべれていました。

いくつかインタビューでも答えさせてもらっている内容とも重複するんですが、振り返りますと、今やっているChargeSPOTの展開と変わらないマインドはもうこの時からあったんだなと思います。いくつかインタビューを受けさせてもらうたびに、思い出させてもらったことがあります。

学生時代は、香港のカルチャーを日本の友だちに“輸入”

秋山:このあと詳しく言及しますが、ChargeSPOTは、実は2015年に中国の市場でスタートをしていたビジネスです。ここに書いてあるとおりINFORICHは2015年にスタートしているんですけれども、実はChargeSPOTは別サービスを1回ピボットしたのちに、2018年にINFORICHとしてスタートをしたサービスになっています。

つまり、実は中国でスタートしたサービスを、ある意味非常に模写した状態で、ただ日本にローカライズをして使いやすくして、ChargeSPOTを2018年からスタートしております。

福島にいた時には、いわきにはなかなか英語をしゃべれる人もいなくて、広東語ももちろんしゃべれる人はいませんでした。

みんな仲良く小学校も中学校も過ごしてましたが、僕は何を楽しみにしていたかというと……。高校から東京に出てきて、いったん大学に行くんですけど、やはり僕はラッパーを目指したいということで中退して、のちに音楽業界にのちに入っていきます。

その頃、僕は夏休みには必ず香港に帰って昔の友人に会っていて、その時の情報がすごく僕は楽しみでした。やれスケボーを始めてみたり、ダンスを始めてみたり。

それこそヒップホップ、ラップを始めるきっかけになった情報も、実は夏休みに向こうから仕入れてきたんです。そして夏休みが終わって福島に帰っては、地元の友だち・仲間に「こういったものがはやっててさ」という話をしていました。

僕はいわきの泉という所に住んでいたんですが、そこでみんなでスケボーを始めてみたり、みんなでダンスを始めてみたり。

越境ビジネスの原点は、海外を行き来した幼い頃の体験

秋山:振り返ってみると、「垣根を越えて、世界をつなぐ」は僕が小さい時から無意識のうちにしていたことです。

それをあらためて大人になるにつれて意識しだして、さらには目的を持って、そして自分の使命として今は取り組んでいる。こういうプロセスはあったものの、一貫した思いは子どもの頃からあったんだなと振り返ることがありましたので、少しこの場で触れさせていただきました。

先ほど少し触れましたとおり、我々のメインサービスはChargeSPOTです。どこでも借りられて、どこでも返せる。今、日本国内では(設置場所が)約40,900ヶ所あります。このサービスがどういうものなのか、このあと少し触れていきたいと思います。

まさにこれ(スライドの広告のようなサービス)が、2015年に中国にありました。ただ、(スライドの)右側の黄色い部分がサイネージになっていますが、こういったサイネージは、中国で展開しているものにはついていません。

我々が香港で、日本、東京とある意味似たようなメトロポリタンな都市に持っていった時に「ひょっとしたらサイネージにつけたらここもマネタイズできるのではないか? ここもお金になるのではないか?」と、ブラッシュアップをしました。

先ほど「ローカライズ」という表現をさせてもらいましたが、その土地、その土地に合ったサービスに形を変えながら、そして知恵を加えながら進めてきたものです。

国を超え、どこでも借りて・どこでも返せるバッテリー

秋山:(スライドの)左側にもありますのがバッテリーです。先週、香港ディズニーランドで協業を発表したモデルがちょうど1個手元にあります。これぐらい(スマホと同じくらい)のサイズですね。

この裏に、ライトニングケーブル、Type-C、マイクロUSBの線が3本ついていて、5,000アンペアなので飛行機にも持ち込める。1万(アンペア)を超えるとダメです。

そしてどこでも借りられて、どこでも返せる。先ほどお伝えしたように、我々は、日本以外にも香港・タイ・台湾で展開しており、この第4四半期からはシンガポール(予定)でスタートします。

東京で借りて大阪で返せるのはもちろんのこと、極論、沖縄で借りて香港で返せて、香港で借りて台湾でも返せる。

国を越えて返せる、唯一グローバルに展開をしている、どこでも借りられてどこでも返せるモバイルバッテリーシェアリングのサービスを展開しているのが、我々INFORICHでございます。

音楽を通じて知り合った友人が、のちのサポートメンバーに

秋山:では、どういった足跡をたどってきたのか、軌跡をみなさんと少し振り返れたらなと思います。先ほどお伝えしたとおり、INFORICHは2018年より前に存在しています。ここは口頭で補足させてもらいますが、2014年までさかのぼりたいと思います。

僕は今年43歳ですが、1980年に生まれて、10歳で日本に帰ってきました。20年間日本にいて、そしてまた香港に2012年に戻るわけです。20代はほぼ音楽にのめり込んでいました。そこでできた友人たちに、のちのちINFORICHをサポートしてもらうことになります。

32歳の時に僕は香港に行きます。そこで始めたのがコンサルティング会社です。福岡県香港駐在事務所のほかに、2014年に上場したIGNISも、実はコンサルティングの1社として見ておりました。

2012年頃には、ほかに約10プロジェクトを展開をしておりました。香港のリソースがもともと強かったので、日本の企業の香港誘致をするコンサルティング会社を建てていたのがこの頃です。

福岡県もその一環ですが、例えばとある食品メーカーの香港支社が立ち上がったのが2011年です。

実はPRを日本の某代理店さんにお願いしたものの、やり方が非常に……要するに現地では、クライアントさんは某有名代理店さんを通して発注します。そのあとに半分抜いて地元の代理店さんに降ろして、そしてイベントやらCMやら、いわゆるプロモーションを実行していく。

そうなるとあまりにも効率が悪いと考えた(当時)33歳の同社香港代表から、32歳だった同世代の僕に、福岡県駐在事務所を介して相談をもらい、そしてコンサルティングに入ることにしました。

香港と日本の“架け橋”がないことの寂しさ

秋山:僕が香港でコンサルティング会社を始めた一番大きな理由としましては、まさにこういった中抜きが多いことによって、せっかく香港と日本でつながるはずだった橋がつながらない寂しさです。

最初からもっと現地を安く使って、そしてもっとパフォーマンスの高い、逆に言うとかかる経費のパーセンテージを高めてもいいから良質なものをつなぐことによって、もっと日本が香港に来るケースが増え、そしてまた両国の印象がもっと良くなっていく。ビジネスチャンスが増えていく。そういったコンサルティング会社をしたいと思ってスタートしたものです。

香港に2~3年住んで、日本のことを知っている日本人がコンサルティング会社を始めて、そして日本から新たに香港に進出しようとしてきている日本人に対して商売をしてる人たちがけっこういるんです。こういったもったいない中抜きがないように、しっかりつながればいいなという思いで始めました。

実際前述の食品メーカーさんもそれによって、バジェットをしっかり使って、経費として多く使ってでも良いパフォーマンスができたことを評価してくれて、次につながっていきました。

日本最大級のファッション通販サイトが手掛ける、ファッションコーディネートアプリがその当時からありまして、そこも同じ代理店を使っていたので、噂が噂を呼んで「こういったコンサルティング会社がいるらしい」と、コンサルティングをさせていただきました。その次に世界最大級の料理教室さん、そして大手インテリアショップまで。

香港という狭い街だからこそ人脈を作ることができた

秋山:その当時は2017年頃ですかね。日本国内に出国税というものが出来上がりまして、経営者たちが香港・シンガポールに非常に移住していた時期でした。ですので、その時と重なったのも幸いでした。

香港は非常に狭い街です。また、日本人コミュニティもしょせん香港では約3万人。今は激減して8,000人になってしまっていますが、非常に狭い世界だったので、決定者・CEOの方々とお会いする機会が多かった。

そこから一つひとつ案件を成立させていく中で、ほかにものちのち2017年に上場しますジャパンエレベーターサービス、そして今は横浜FCなどの運営をされていて、給食事業をメインに展開され、外食事業もやっているONODERA GROUPさん。

こういったところのコンサルティングを経て人脈を作っていけた、という背景に少し触れておきたかったです。というのが、これがすべてのちのち、2018年にChargeSPOTを日本国内で展開するにあたって本当にお世話になった方々だからです。

前述の料理教室さんは「あの時、香港ではありがとう。200店舗あるからどうぞ好きに(ChargeSPOTを)置いてください」。インテリアショップさんは香港にありましたけれども、「日本の店舗に全部置いてもらってかまわないですよ」とつながっていったものですから、コンサルティングの背景に触れさせていただきました。

PRがうまい後発の会社に抜かされた過去も

秋山:そんなわけで2015年からINFORICHを開始いたします。一番最初に展開をしていたサービスはChargeSPOTでもなく、実はSNSを使ってシェアされる写真を無料プリントする代わりにデータを回収するサービスを、2015年から2018年まで展開しておりました。

この時はまるっとスキップしちゃってますが、一言に申し上げますと、マーケットが非常に小さいところを狙っていた。

つまりイベントを中心にしますと、なかなかTAM(事業が獲得できる可能性がある全体の市場規模)もSOM(事業がアプローチできる顧客の市場規模)も小さいものになってしまう。ここではあまりこのビジネスは伸びなかったです。

もう1つ、僕はその頃まだ香港に住んでいました。2018年に日本に帰ってきた理由は、ChargeSPOTをやはりしっかり自分で運営していく目的があったんですけれども、その当時は日本に社長を立てていました。

そして香港にいながら約8名の日本国内でのチームと連携していたものの、結論から言うと、自分のビジョンと同じスピード感で進めていくには少し差異が出てきてしまった。

ゆえに、その頃に日本初としてやった「PICSPOT」というサービスが、実際日経トレンディヒット予測にも2016年に第3位で取り上げてもらったものの、後発の会社があとから出てきた。そっちのほうがPRがうまくて、そして抜かされていきました。悔しかった思いもありますが、のちにChargeSPOTには(その経験が)生きていきます。

さらにここに触れるもう1つの理由は、実はChargeSPOTをスタートするにあたって、先ほどお伝えした経営者の方々以外にも、ピボット前にやっていたPICSPOTは非常に役に立ちました。

イベント中心ではありますが、東急さん、蔦屋さん、ほかにも場所で言うと東京ドームでイベントをやったり、あとは富士フイルムといった大手ブランドさんやコカ・コーラともやってみたり。

大小さまざまの企業さま・場所で、500のパートナーと延べ1,000回ぐらいのイベントをやることができました。これによって「あのサービスをやってたINFORICHさんですね。御社の始める新しいChargeSPOT、よくわからないけどじゃあ置いてみましょうか」という流れになるんですね。

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