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気鋭のベンチャー複数社でCOOを務めてきた井村氏の実体験をここだけで公開!大企業と中小企業の良さを組み合わせたハイブリッドマネジメントとは?(全4記事)

忙しいプレイングマネージャーほど、部下との対話が必要 放置すると「ほぼ必ず問題が起こる」会社と従業員の意識のズレ

中小・ベンチャー企業が成長していくなかで必ずぶつかる「組織の壁」。本イベントでは、組織成長のために必要なエッセンスを大企業のやり方から吸収する「ハイブリッドマネジメント」について、株式会社Piece to Peace COO/G-Spec合同会社 CEO井村雄大氏と、株式会社O: 代表取締役谷本潤哉氏の対談形式で解説しました。本記事では、組織構築における1on1の大切さについて語ります。

前回の記事はこちら

あらかじめ「1on1の時間をとる」ことの意味

谷本潤哉氏(以下、谷本):今日はこれが井村さんに一番お聞きしたかったご質問なんですけれども。「弊社でも1on1を定着させてください。いい感じにしてください」という要望でご支援をされることが多いですよね。

その時の1on1の対象について、以前、井村さんは上位層で1on1ができているかを見ると言われていました。なぜか、そうじゃない方々に対して1on1を定着させることが前提になっている会社がめちゃくちゃ多いんですね。

それはそれで効果はあるんですけど、個人的には上位層で、部長以上とかCOOとかCEOといった方々が1on1をやったほうが、メンバー同士でただ1on1をやるよりも圧倒的に効果があるんじゃないかと思っているんです。そのあたりはいかがですか?

井村雄大氏(以下、井村):僕は社長と勝手に1on1をやっていたんですよ。やっぱり戦略とか戦術とか施策をやる・考える・進める時に、社長の考えがわからないとできないじゃないですか。だから、「時間を取って、1対1でやりましょう」というのはあまりやらなかったんです。僕の場合は都度都度、常にやっているという意識ですかね。

谷本:それって、例えば飲み会とかの場でやるんですか? 

井村:僕はどちらかというと、飲み会よりも普通に会議室で話すほうが多いですね。

谷本:それは時間を決めずに、「ちょっと今話そうか」みたいに、すぐに始まる感じですか?

井村:僕、逆に聞きたいんですけど、「1on1の時間をとる」ことって必要なんですか?

谷本:「ちょっと話せる?」と言って、話せない会社が今めちゃくちゃ多いんです。それが続くと、やっぱり1on1されないという会社がけっこう多いので、日程をセットしたほうがいいです。しなくても話せるんだったら、それはベストですね。

井村:なるほど。1on1って、毎週とか隔週で入っていたりするじゃないですか。あれって僕は苦手だったんですよ。

谷本:(笑)。

プレイングマネージャーこそ部下との1on1が必要

井村:「どうなのかな」と思っていて。話すことがなかったらスキップになっちゃうじゃないですか。あれって、絶対に話したほうがいいんですか?

谷本:もし井村さんが私の部下だとしたら、話しかけたらわりとすぐに話せるタイプだと思うんですよ。そういう人であれば、確かに今の疑問はそのとおりだと思うんですけど、そうじゃないケースはめちゃくちゃあるので。要は、スキップするくらいコミュニケーションが足りている人って、実際にめちゃめちゃ少ないですね。

井村:そうなんですか!?

谷本:はい。だから、ちゃんと1on1をやると、最初にみなさんから出てくるのは、「1時間ではオーバーします。全部話せません」みたいな話です。

井村:話すことがそんなにあるということですか?

谷本:そうです。まさにプレイングマネージャーの方は自分のことで手一杯で、部下のこともそんなに見ていないということで、「こんなに話すことが出てくるんだ」となるんです。普通に考えると、そこで「もっと対話しなきゃいけないよね」となるんですけど、なぜか「1on1はダメだ」みたいな(笑)。

井村:それって矛盾していませんか?

谷本:そうなんですよ。矛盾しているんですけど、けっこうそういうマネージャーさんが多いですね。

井村:なるほどね。僕は1on1の時間を設けるよりは、仕事がとっとと進んでほしいから、気づいたらSlackを送って、「今ちょっと電話してもいい?」みたいな感じで電話したり、それさえもやらずに電話して話を聞いたりしています。僕はほとんどリモートなので、そういうのが多いですね。

谷本:確かに「断ったらしばかれそう」みたいな。そういうのがちょっと……(笑)。

井村:どういうことやねん(笑)。

谷本:気になる時にお互いすぐに話せるんだったら、それはベストですね。

井村:それは1on1に入るんですか?

谷本:1on1に入ります。

会社と従業員の意識のズレを埋める

井村:ちなみに、これも僕は基本だったんですけど、飲みニケーションというか、それで話している人も昔はいたじゃないですか。「1on1やってるの?」と言っても、「もう飲みの席で十分話しています」みたいな。それもOKなんですか?

谷本:結論、うまくやればぜんぜんOKですね。実は1on1って、よく勘違いされるのは、雑談をすればOKみたいな。

井村:あります。

谷本:そうですよね。というのも、雑談も一定の効果はあるんですけど、ざっくりいうとズレを防止するということです。

例えば、「会社として、あなたにはこういうふうに動いてほしい。こうなってほしい」と思っているけど、本人がぜんぜん違うことを思っていたりします。それが放置されている状態だったら、ほぼ必ず問題が起きます。そのズレを埋めることですね。

井村:なるほど。

谷本:いろんな埋めるべき分野があって。例えば直近の業務もあれば、目標を見つけるとか、人間関係とか。「会社としてはあの人をすごく押しているけど、私はあの人のことがあまり好きじゃない」とか。

そういったズレをどう埋めるかが、優れたマネージャーの方は、たぶん言語化せずとも飲み会の場で解消できているんですよね。1on1に無理やりはめなくても、効果を出せるマネージャーはぜんぜんいますね。

井村:僕は逆に日々話しているから、相手も「1on1いります?」みたいな感じなんですよ。

谷本:そこのズレがちゃんと埋められているのであれば、それも素敵だと思います。なかなかそれができる方はいないので、井村さんだからできている可能性が高そうではありますけどね。

ハラスメントを恐れてフィードバックができない上司

井村:なるほど。気になった時に「こうしてほしい」とか、困ったらすぐに電話しません?

谷本:まさに、そこができるできないというのも個人差があって。例えば、最近ホリエモンとかキングコングの西野(亮廣)氏とかは、「電話するやつはバカだ」みたいなことを言っていますよね。

井村:はい。「俺はバカなんだろうな」と思いながら、あれを見ています。Slackとか「●●さんが打ってます」みたいなのが出て、打ってる時間があるなら、電話して話したほうが早いって思う。むしろ待つ時間と頭のスイッチングコストがもったいないって思っちゃう。

谷本:(笑)。そういうことがあって、マネージャーからした時に、「こういうことで電話しちゃうと、ハラスメントになっちゃうのかな」みたいなことで遠慮していて。

まさに先ほど井村さんが言っていた、組織内で忌憚のないフィードバックがしづらいというのも、これがけっこう原因だと思うんです。「これを言っちゃったら今の時代まずいんじゃないか」とか、わからないことが多すぎる。

井村:なるほどね。でも聞かないと、結果が出せないじゃないですか。

谷本:結果に対してすごく貪欲に求められる組織だったら、最適化されるかもしれないですけどね。

井村:どうなんですかね。今のお話について聞きたいんですけど、貪欲に求められているからやるんですか?

谷本:もしかしたら、話が変わってしまうかもしれませんが、井村さんはたぶんチームで成果を出してきた成功体験がおありになる。新しくマネージャーになる人も、最初は「チームで一緒になってやっていけたらいいな」ということで、「俺には忌憚なく本音を言ってくれ」と言うんです。

井村:ありますね。

「がんばっても給料が変わらない」大手によくある問題点

谷本:だけど、技術がなかったり、人間性とかも考慮すると、反応がないメンバーがけっこういて。(マネージャーが)「アイデアを出してくれ」と言っても、「明日まで考えます」と。そういう状態が続いていくと、マネージャーも、ちょっとイライラしてくると言いましょうか。

「お前なんでやらないんだ」とか、「どうしてできないんだ」とか、「やる気あるのか」となってくると、最終的には「これは自分がやったほうが早いな」と。そのほうが組織のためになるということで、そうするパターンはけっこうありますね。

井村:今のってダメなんですか? 僕は別にいいと思っています。コーチングじゃないとダメだとかいいつつ、コーチングできてない人もけっこういるので。

谷本:プレイングマネージャーを1人でやるということですかね。

井村:野球選手と一緒だなと思っているんですよね。給料って、働いたから出るわけじゃないですか。年俸は、ヒットを打ったから上がるわけじゃないですか。だから、自分自身が「年俸を上げよう」「給料を上げよう」と思ったら、ヒットを打つしかないんですよ。「バットを振れよ」という話だと思っています。

「バットを振らせてあげる」と言ったら変ですけど(笑)。(部下が)振るまで待たなきゃいけないのかが、僕はちょっとわからないですね。

谷本:そういうことですね。おっしゃるとおりで、たぶん井村さんは、バットを振れる状態も自然とできているんです。だけど、例えばすごくヒットを打っている人とそうじゃない人で給与があまり変わらないと、「そんなにちゃんとやらなくていいんじゃないか」みたいな。わりと大手さんでは(そういうことが)多いと思うんです。

そういう組織でマネージャーをやっていると、なかなか思ったとおりにメンバーが動かないケースがあります。

成果を出すために、人事評価から変えていく

井村:だから僕は、変わりたいと思ってCOOを目指したんですよね。大企業って、安定的にお給料はもらえるんですよ。それで、40歳になったらいくら、50歳になったらいくらと見えちゃうんですけど、どれだけやったってほぼ差が生まれない。

「何歳になったら、たぶん役員をやるな。そのあと、たぶん子会社の倉庫の社長をやるんだろうな」というのが、見えちゃうんですよ。だから、おもしろくもなんともないと思って辞めたんです。(質問には)「組織課題があって」と書いてありますけど、だいたい組織課題について見る時は、お給料の上がり方も見ます。

谷本:なるほど。まずは人事評価ですね。

井村:人事評価をする時に土台をちゃんと作ってあげないと、「成果を出したって意味ないじゃん」みたいな状態だったらダメじゃないですか。

谷本:ええ。おもしろいですね。USJとかを再建されて、今は西武園ゆうえんちとかを支援されている、元P&Gで株式会社刀の森岡(毅)さんという、よくメディアに出られる方がいらっしゃいますけど、同じことをおっしゃっていました。

あの人はマーケティング支援に特化されているんですけど、マーケティングで成果を出すために、まず最初にやるのが人事制度を作ることなんです。

井村:ただ、「制度を作ったから(お給料が)上がります」と言うだけじゃダメなんですよ。僕は、最初はみんなに負荷をかけないとダメだと思うんですよね。「組織をこれから作って、しっかりした会社にしていきますよ」と宣言できるだけの土台を作らないと、そんなのやったって給料の上がり幅(の分析)って無理じゃないですか。さらに原資を作れない。

ただ単にお金をばらまいて、「以上、終了」となっちゃうから、1年目は土台を分析することからやります。

「情報が組織図通りに流れる」ことの重要性

金子新太郎氏(以下、金子):今質問が1つ来ています。「組織構築をしていく上で、今日からできる学ぶべきポイントがありますか?」というご質問です。

井村:学ぶべきというか、僕が社内で気をつけて見ているのは、「情報が組織図どおりに流れているか」です。組織図って血管と同じなんですよね。血液は血管があるから通れるじゃないですか。組織が崩壊している会社って、情報が組織図どおりに流れていかないんですよ。

飛び越えたりとか、斜めに情報が行っていたりとか。「情報をSlack上にあげて、ばらまきゃいい」みたいな感じです。僕は「情報の絨毯爆撃」と呼んでいるんですけど、そういう感じになっている。

組織の情報がある部からある部に行く時って、部長を介さないと絶対に組織図どおりに流れていかないじゃないですか。なので、組織構築をしていく上では、そのとおりに情報が行っているかに気をつけて、(部下にも)口を酸っぱくして言っていますね。

隣の部の部長が、課長に勝手に指示をしているとかはありえないです。「それをやるんだったらプロジェクトにしろ」と思います。プロジェクトという別の枠組みの中で、そういうふうに情報が流れるんだったらいいんです。

そこを、部長をすっ飛ばして、その下の部下にバッと情報が斜めに行くということは、この人は判断する仕事ができない。それでうまくいかなかったら「こっちの部署がおかしい」みたいなことを言い出すんですけど、そもそも情報のやり取りがおかしいんだから、おかしくなって当たり前なんです。

おかしくしているのは、先に情報を渡したほうなんです。気をつけるのは、そこができているかということじゃないですかね。

金子:谷本さんはいかがですか?

谷本:以前、私が井村さんにお聞きした、印象的な話があります。何か1つ改善する時に、CEOとNo.2のCOOのコミュニケーションが、圧倒的に他に好影響を与えるポイントなのかなと思っていまして。それこそ管理職の問題とか、基本的に経営の問題がただ投影されているにすぎないのかなと思っています。

組織のNo.1とNo.2のコミュニケーション不全の多さ

谷本:そもそも経営層のコミュニケーションに課題がまったくないという会社はないと思うんですけど。ここをよくすることが、結果的にあらゆる組織課題に対応できる状態の基盤になるのかなと。私はこれまで井村さんにそれを教えてもらってきた感じがしますが、いかがですかね?

井村:そうですね。顧問をしているベンチャーの会社には、No.2とNo.1が会話できているようで、できていないケースがめちゃくちゃあるので、よく言っていますね。それも情報じゃないですか。トップからNo.2に情報が落ちなきゃいけないのに、スタートラインが崩れている状態です。

谷本:めちゃくちゃ多くないですか? わかっているけど、そこに手をつけられない会社さんとかがある(笑)。

井村:そうなんですよ。「やり方がわからない」とか、「何を話せばいいかわからない」とか、「(情報を)落としているつもり」というのはありますよね。だから可視化もしていないし。

例えば「3年後にどうなりたいか」という、谷本さんにお見せした資料があったと思うんですけど、「本人が今の課題をどう思っていて3年後どうなりたいか」と「CEOが相手にどうなってほしいと思っているのか」のすり合わせができていないから、ギャップが生まれたままで走るんです。

谷本:ギャップがあるということは、1on1ですね(笑)。

井村:1on1は、まさに「やったほうがいいんじゃない?」と言って、前に谷本さんに、「どうやってるの?」みたいな話をしたと思います。

谷本:そうですね。今日は時間があれですけど。1on1は、話す内容と話し方と両方求められるんですけど、あまり仲がよくない人でも、意識的によくできるツールです。

井村:1on1を難しく考えすぎているんですかね。

谷本:それはすごくありますね。

井村:スケジュールに1on1と入れられた瞬間に、僕はちょっとビクッとしますからね。「何? 辞めたいの?」みたいな。

(一同笑)

谷本:ありますよね。

井村:日々話していたら大丈夫なんですか? でも、正しい1on1を知らない人がけっこういるじゃないですか。

谷本:そうですね。金子さん、そういう方は次のウェビナーに来ていただくといいですかね。

井村:(笑)。

金子:すみません、お時間が来てしまったので、ちょっと尻切れになってしまうんですけど。井村さん、ありがとうございました。

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