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スタートアップ経営塾 藤田晋 vs 次世代メガベンチャー(全4記事)

サイバー藤田社長が語る、適切な意思決定をするための「視点」 「ぶれず」に進み、かつ「柔軟」に対応する経営はできる

「次世代の、起爆剤に。」をミッションに掲げる日本最大級のスタートアップカンファレンスIVS(インフィニティ・ベンチャーズ・サミット)。2023年は京都で開催されました。今回はサイバーエージェント 藤田晋氏、ROXX 中嶋汰朗氏、ビビッドガーデン 秋元里奈氏、ミラーフィット 黄皓氏、そしてUPSIDER 宮城徹氏が登壇したセッション「スタートアップ経営塾」の模様をお届けします。Major7th代表の丸尾浩一氏のモデレートのもと、ABEMAのコンテンツをNetflixに出した背景や、長く会社を伸ばし続ける経営者の特徴などが語られました。

ABEMAのコンテンツをNetflixに出した背景

丸尾浩一氏(以下、丸尾):続きまして、ミラーフィット黄皓さん、よろしくお願いします。

黄皓氏(以下、黄):よろしくお願いします。別に私がバチェラーだから、リアリティー市場のことをうかがいたいということではなくて、そもそも藤田社長はバチェラーをご覧になったことはあるんですか?

藤田晋氏(以下、藤田):小柳津(林太郎)といううちの社員が出ていたので。

:そうですよね。今日もいらっしゃっています。

藤田:ちょっと見て途中でそっと閉じました。

(一同笑)

:共感性羞恥みたいなやつですかね。実は、弊社もミラーフィットという運動コンテンツを、今日時点で5,600本ほど持っていて、コンテンツ事業にどれだけ投資していくか、どういう戦略を持っていくかが今、非常に悩ましいところです。

ABEMAには私もけっこう出演させていただく立場で、もともと番組自体はよく拝見させていただいていたんです。昔からリアリティショーは、若者向けの強さを持っているなという中で、今回初めてNetflixさんに、『オオカミちゃんには騙されない』が、IP(知的財産)として出ていたと思うんです。

藤田社長の中でコンテンツを作る時に、「これは世界にチャレンジできるIPだな」と判断するポイントみたいなものがあったのか。あと、これを世界に出した時に、どういうシナジーというか良さがABEMA事業に出てくると想像しているかを、教えていただけたらと思います。

藤田:今、黄さんに言ってもらったNetflixに出した背景を言いますと、『オオカミちゃんには騙されない』と『韓国ドラマな恋がしたい』の2作品を、Netflixに出すことになりまして。

もともと、ABEMAで世界基準のものを作ろうとずっと掛け声を掛けてやってきたんです。今回、Netflixで世界に配信して、Netflixの世界ランキングに食い込むという目標を立てることで、社内の意識を変えるのも大きな目的でした。

さっき言ったうちの社員だった小柳津さんがバチェラー(Amazonプライム)に出た時に、僕と談笑したり表彰式とかで話すシーンを、けっこうな撮影クルーですごい撮っていったのが原体験にあるんですけど。

オンエアを見たら、小柳津がすごいところを見せる一瞬に、僕と談笑してる姿が使われた。「これだけのためにあのクルーで」ってびっくりして、やはり制作に対する金の掛け方と意識。このもったいない俺の使い方は何なんだって思って(笑)。

:たぶん今、(小柳津)林太郎さん、そのへんにいるのでビクビクしていますよ。

藤田:そういうのもあって、世界に通用するにはやはり意識を変えないとダメだと思いました。

ABEMAで世界を狙うコンテンツ

藤田:今の質問の話で言うと、会社として狙っているのはアニメです。ディズニーとピクサーはまた別物として捉えると、今、中国で売れている『SLAM DUNK』や『すずめの戸締まり』など、世界でも明らかに日本のアニメはトップクラスです。

ゲーム化したり、世界的に販売ができる流れは、この数年、10年も経っていないぐらいの間に変わってきたものです。

我々としては、ABEMAですでに新作アニメの多くを最速配信していますし、グループには『ウマ娘』を作っているアニメーションスタジオなどもあって、十分な体制ができたということで、アニメの世界は大きく狙っている1つですね。

:ありがとうございます。追加でおうかがいしたかったのが、ミラーフィットのコンテンツの中に、例えば世界的に有名なBilly's Boot Campとか、Les MILLSといった強いIPがあるので、彼らを誘致して我々のコンテンツの中に入れて、ミラーフィットのコンテンツ自体を魅力的にしていく方法もあるかなと思うんですが。

藤田社長的には、ABEMAの中に魅力的なIPを入れる行為もしつつ、ABEMAが作った強いコンテンツを外に出す。これを両軸でやることが非常に重要ということですかね。

藤田:Netflixに出したのもそうですけど、やはりNetflixなので、世界で見られるんですよね。自社のプラットフォームで世界に当てようという発想はすばらしいですけど、「宝くじを当てます」と言っているようなものなので。

現実的に、1つ目のシナリオはABEMAが世界で流行ることですけど、そうではないシナリオは他のプラットフォームに乗せてでも出していくことなので。アニメはプラットフォームは何でもいい。世界で見られればいいという発想をしていますね。

:なるほどですね。ありがとうございます。

長く会社を伸ばし続ける経営者の特徴

丸尾:時間も押してまいりましたが、2巡目に行きたいと思います。再びROXXの中嶋さん。

中嶋:藤田さんがサイバーエージェントを立ち上げて丸25年だと思いますが、20代の頃はおそらく同世代の経営者が多くいたり、さまざまな会社があったところから、良い時や悪い時の両方を経て、今30年へと近づいていく中で、どういった方々が周囲に残っていますか。

藤田さんの場合、「21世紀を代表する会社を創る」と、最初に決めたミッションが良かったからなのか、起業家そのものが持っている野心なのか。最終的に生き残っている経営者はどんな素養の持ち主だと思いますか?

藤田:これはけっこうシンプルだと思っていて。正直に自分の会社を見たら、来年も伸びているかとか、3年後大丈夫かとか、4年後、10年後大丈夫かはわかるはずですよね。

でも不都合な事実から目を逸らしてはいけなくて。要はリスクがあったら潰しておかないといけないし、伸びが足りないんだったら新しい事業を仕込んでおかないといけない。

目の前の利益を犠牲にしたり、経営リソースを犠牲にしてそれをやるのはけっこうしんどいからと面倒くさがってやっていないと、当たり前なんだけど、3年後に苦労するというだけの話だと思います。

やらないで現実逃避してしまう経営者の特徴としてわかりやすいのは、調子に乗っている人はだいたいダメになるんですよね。

調子が良い時は自分の運が良かったし、たまたま良い時期だったのかもしれないけど、それを自分の実力だと思い始めるとだいたいおかしくなってしまいます。謙虚な人のほうがやはり長く会社を伸ばし続ける感じですかね。

大切なのは、周りの声や評価にぶれない平常心

中嶋:一方で、どこで満足するかというのもありますよね。藤田さんはこれまで、誰かの背中を見て「いや、まだまだだ」と思ってきたのか、それとも自分の中で決めていたことなのか。いかがですか?

藤田:満足したらそこで終わりなのは、みんな知っているじゃないですか。

中嶋:みんな知っている。でも、結果的にそうなってしまっているということが少なくないように思います。

藤田:そうしなければいいだけですよ。

中嶋:(笑)。

藤田:それだけです。

中嶋:ありがとうございます。残れなかった人の特徴は謙虚さの不足。でも、謙虚すぎても周りに呑まれてしまったり、いろいろ言われて続かなくなってしまう人もいますよね。

藤田:それはあるんですよ。調子に乗りすぎて楽観的すぎる人もダメだし、悲観的すぎる人も結局ダメです。

中嶋:バランスですね。

藤田:わりと平常心。ストライクをちゃんと見極めないといけないんだけど、みんな周りの評価で、長く続けるという意味では上ぶれしたり下ぶれしたりしてしまうので。会社はゴーイング・コンサーン(企業が存続して事業を継続すること)を意識して続けていくつもりだったら、やはり平常心が大事です。

中嶋:藤田さんに「あいつは一発屋だった」と言われないように、がんばってやり直していきます。そして、本当にそういう起業家になりたいと思いました。ありがとうございます。がんばります。

適切な意思決定をするための「視点」

丸尾:次は秋元さんに行きます。

秋元:ちょっとさっきの質問にもかぶってくるんですけど。先ほど経営者は不安で孤独な中でも、意思決定をしないといけないという話があったと思うんです。

芯がぶれないことの大切さは、いろんなメディアでもお話しされていると思いますし、すごく重要性をわかる一方で、それが固執になっていないかというバランスが、すごく難しいなと思っています。

例えば3年間くらい成果が出なかったとして、ぶれないでやり続けて成果が出ることもあるし、実はそこに張り続けてもダメだったという、固執になっているパターンもあると思うんです。

藤田さんの中で、例えば最初はこれだと決めてやった。でも、ぶれているわけではないけど、そうじゃないと気づいた時に、撤退基準を設けていたりとか、固執しないように意識していることとか、バランスを取るために意識されていることってありますか?

藤田:ぶれないと柔軟みたいな、相反することですよね。僕は簡単だと思っています。目の前のことだとみんないろんな考え方もあり、いろんな人がいろんなことを言ってきて混迷する。

そういう時は、視点を上げるというか俯瞰してみる。視点を上げると、例えば中長期の長い目線で見たら、今の生成AIみたいなものが普及するのは当たり前だよねと。これはもうぶれる必要がないのでやればいいですよ。そのへんで事業をやり、普及していく。

その間に著作権の問題とか、生成AIばかり使って人々の思考力が弱まっているとか、何だかんだ自分のポジションが間違っているのではないかとかは柔軟に変えながら、でもトータルではぶれる必要がない。それが普及していくのは当たり前だなと思います。戻ることはない。

伸びそうだなということはほぼ間違いないわけだから、ぶれる必要がないんですけど、そこにおける事業戦略と事業計画は、コロコロ変えても大丈夫ですよ。

歴史がどう転ぶかは誰にもわからないものだから。ちょっと俯瞰してみると、ぶれることと柔軟にすべきことがはっきりするのではないかなと思います。

秋元:例えばABEMAとかAmebaとか、すでに大きく成功しているものに関してはあれですけど、例えば創業初期で、世に出ていない意思決定の中で、旗を掲げたけどやめたことはありましたか?

藤田:それはけっこうあります(笑)。事業を選ぶ時はさっき言った成長性と収益性と、あとうちの会社に合うかどうかを見極めながら決めていっています。

秋元:ありがとうございます。

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