転職文化が強まる一方、なかなか踏み出せないことも

佐々木圭一氏(以下、佐々木):(今日のトークの)タイトルですが、「"私、転職できる?"を判別する3大スキルを解説」。なんならこの3大スキルを、みなさんは今日知れてしまうと。

藤岡清高氏(以下、藤岡):そういうことです。

佐々木:「身につける」まではできない?

藤岡:身につけるまで、いける人はいけると思います。認識をして、転職する時に何を伝えればいいのか、どんなスキルを持っていればいいのかがわかる。

佐々木:なるほど。じゃあ判別はできるんですね。「転職ができる?」。転職文化ですよね。非常にこのコロナの間も、一気に世の中で人材が流動したとうかがいます。でも「私もできるかな?」と思うけど、なかなか踏み出せないのはありますよね。

藤岡:知れば踏み出せるけれど、知らないからできないことって多いんだと思うんです。この90分後には「踏み出せるかも」と思っていただけるような話をしていこうかなと思っています。

「私、転職できる?」から「私、転職に踏み出せる!」。まさに転職に必要なことがわかるようになってくるということです。

佐々木:期待してます。

日本のスタートアップに人材を送り込んできたアマテラス

藤岡:簡単に私の自己紹介から。暑苦しい写真ですいません。見てのとおりなんですが、新卒では銀行員をしておりまして、そのあとMBAを取ってから、ベンチャーキャピタルのドリームインキュベータという会社で仕事を7年ほどしておりました。

僕はこれまで人材の仕事、一切してないんですよ(笑)。どちらかというと金融畑です。スタートアップに投資をする仕事はしてましたけれども、投資をするだけではスタートアップは伸びないです。

「投資したスタートアップに人が入っていかないと、スタートアップは伸びないんだな」となったから、「人」に仕事を変えて2011年に創業して、13年経とうとしているところですね。

これまでアマテラスを通じて、1,000人以上がスタートアップに幹部候補として転職しています。日本のスタートアップに人材を送り込んできた有力サービスではあると自負しています。

そもそも「スタートアップ」の定義とは?

佐々木:ここで「スタートアップ」とは何か、小学生でもわかるように説明してもらっていいですか(笑)。

藤岡:スタートアップっていうのは、急成長して世にない新しいビジネスモデルや技術を使って社会を変えていくような組織・集合体のことを指しております。

佐々木:なるほど。人数とかもあるんですか? 何名まではスタートアップだけど、例えば1,000名超えたらもうスタートアップではないみたいな。

藤岡:その定義はなくて。一応シリコンバレーでは定義されてるんですけども、創業年と人数の定義はないんです。例えば100年続いた会社が急に新しいミッションを持って急成長するのも、1,000人の会社が急に方向性を変えても、それもスタートアップです。

でも逆に「俺たちスタートアップだ」って言ってるんだけど、社会を変えようとするような新しいビジネスモデルもなければ、新しいコンセプトもなければ、それは「スモールビジネス(中小企業)」です。スタートアップとスモールビジネスは違います。

新しいビジネスモデルで新しい社会を作る。それで急成長していこうという……エグジット(企業の創業者や経営者、出資者が保有する株式を売却し、投資した資金を回収すること)を目指すのも定義に入っているので、わかりやすいところで言うと「上場」を目指していると。

もう1つ例えると、崖の上から部品を持って落とされて、落ちてる最中に組み立てて飛行機にして、地上に落ちる前に飛び立つことを求められる。そういう言われ方もあります。急いで作って黒字を出してモノにするというのがスタートアップ市場、というかたちの定義ですね。

能力もやる気もあるのに、組織でくすぶっている人

佐々木:では次のページ、なぜこの本(『「一度きりの人生、今の会社で一生働いて終わるのかな?」と迷う人のスタートアップ「転職×副業」術』)を出版したんでしょう。

藤岡:ここに来てる方で、「能力」と「やる気」があるのに組織でくすぶっている人、いませんか? 残念ながら、いっぱいいるそうなんです。そういう人を救いたい。

日本だと優秀で真面目にやってきた人が大企業に入ってるのに、なんか報われないというか評価されない、もしくはしきれてないということがあります。だけど僕はそんな人がスタートアップに転じることで能力を発揮して、社会を変えて、やる気に満ちあふれてる人をいっぱい見てきました。

上が詰まってる、若いってだけの理由で、優秀だけど順番待ちで能力を発揮できない人がいっぱいいるんですけど、スタートアップって年齢関係ないですから。なのでこの本を通じてこういうことを伝えたいし、そういうふうに一歩踏み出せる人が増えたらなと思って。

佐々木:確かに、日本の会社は比較的年齢で線を引かれちゃうし、どんなに能力があったとしても「年齢的にこういうのは絶対越えられない」みたいなものはありますよね。

やる気はあるのに、上司からは「意見をするなら7年待て」

藤岡:僕も新卒ではいわゆる大企業に入社しまして、生意気な社員でよく上司に意見していました。

それで上司からは「意見をするなら7年待て」って言われたんですよ。「30過ぎぐらいまでは黙って言われたことができないと」って言われたんです。そりゃ待てない。7年間も言われたことだけやらなきゃいけないって、やる気は満ちあふれてるのにそりゃ無理だって、正直思っちゃいました。

佐々木:なるほど。今の話を聞いても半沢直樹だなって思いましたが(笑)、これだけデカい銀行でね。

僕の場合はずっと独立したいなって目指していたんですけど……なかなか自分自身の実力がなかったということを含めて、とにかく自分の実力をつけようと思ってはいましたね。

会社で抑えられてたことがあるかどうかで言うと、僕はコピーライターなので、上司・部下の関係があるんです。師弟制度って言われていて、本当に上司の言うことは絶対なんですよ。

スタートアップは、全社員の「戦力化」が必要

佐々木:例えばこの話をすると引かれるんですけど、上司が吸ってるタバコを自分も持っておいて、ポケットに入れておくんです。

上司がキャスターというタバコを吸ってたんですけど、ソフトボックスのほうを吸い終わるとキュッと箱を絞るので、絞った瞬間に(新しいタバコを)出す。それが僕の仕事でしたけどね(笑)。

藤岡:(笑)。師弟制度、厳しい感じだったんですね。

佐々木:でもある意味、その時期があったから今の自分があると思ってはいます。「何やってんだろうな」って思ったことはあります。常になくなったらコンビニに買いに行くのが、僕の一番の業務でした。

藤岡:コピーライティングの世界は年齢関係なく実力の世界かと思ってたんですが、そうではなかったんですね。

佐々木:もちろん実力のある方は問題ないかと思います。

藤岡:タバコを出したりしても、実力を発揮できればいいと思うんですよ。でも多くの人は、そのあと打席にすら立てずに、時間が経っていると感じてたりするじゃないですか。

スタートアップってみんながみんな戦力化しなきゃいけないので、自分の実力以上の打席に立たされたりするわけです。高校野球の選手が急にメジャーの打席に立たされるみたいな感覚です。

それでいいじゃないですか。失敗したって別に、自分にとって得しかないというか。そんな環境があるし、成長の環境が多くあるので、こういう魅力的なスタートアップをおすすめしたいんです。

世界的なミリオンセラーとなっている『伝え方が9割』

藤岡:一応メディアにも出たりとか。今、私の本も丸の内丸善、紀伊國屋書店にもございます。

佐々木:めっちゃ売れてるじゃないですか。

藤岡:それからポップも書かせてもらいました(笑)。で、9月10日オンエアのTBSラジオ。宇賀なつみさんとの収録も終わったばっかりなんですが、よろしければ20時から聞いてやってください。「スタートアップ転職とは何か」という話を私からさせていただいてると思います。

佐々木:おっと、これは何ですか?

(会場笑)

藤岡:知らないです(笑)。

佐々木:私が書かせていただいた本ですね(笑)。1年で一番売れたビジネス書だとうかがっております。現在日本で100万部超えて、あと中国でも去年100万部を超えています。

世界と日本で100万部を超えた本は、世の中のビジネス本で言うと3冊しかないとうかがっています。稲盛和夫さんの『生き方』、こんまりさんの『片づけの魔法』。この2冊は日本で100万部、世界でも100万部。この本が3冊目になっております。

藤岡:佐々木さんに聞きたいんですけど、就職活動で『伝え方が9割』がマスト本になってるって聞いたんですけど本当ですか?

佐々木:売れてるみたいですね。就活を目指している学生であったり、転職とかを志す方に見ていただいていますね。

藤岡:なのでそのエッセンスを、就職活動・転職活動の時の伝え方も、今日佐々木さんから少しお話をいただければなと思っております。

今が一番ベストだと感じる「キャリアハイ」

藤岡:ちょっとアイスブレイクを入れさせてください。みなさまのキャリアの状態を教えてもらえますか? 今、キャリアハイだと思う人。

佐々木:突然で言葉が難しい?

藤岡:伝え方が良くないですね(笑)。キャリアハイ、今キャリアが最高だということですね。よくサッカー選手とか、今が一番ベストの時を「キャリアハイ」って言いますけども、今のキャリアがベストだと思う人。

佐々木:この場で手を挙げるんですか? オンラインの方も手を挙げますか?

藤岡:そうですね、オンラインだとどうです? 今キャリアハイだという方、どのぐらいいらっしゃいますかね。

佐々木:なかなか手は挙げにくいですよね。

(会場挙手)

藤岡:すばらしい。次、やる気はあるがくすぶっている。

(会場挙手)

マネジメントの壁に直面している。

(会場挙手)

佐々木:どういうことですか?

藤岡:会社において部下を持っている方ですね。部下のマネジメントに課題を感じている状況です。

佐々木:なるほどね。自分の仕事というよりも、部下に対しての指導。

藤岡:次、自分の専門のスキルに自信がない。

(会場挙手)

やりたいことがわからない。

(会場挙手)

これは少し意味があって、転職をしたほうがいい人、しないほうがいい人ってわかるんですが。

佐々木:いきなりわかっちゃうんですね。

“仕事がイケイケ期”ほど転職のベストタイミング

藤岡:今がキャリアハイだという人いらっしゃいましたけど、いつでも転職できるし、今転職すると一番自分が高く売れるので、実は転職に一番向いてるのは「今、最高」という人です。

サッカー選手とかはよく言うんですが、Jリーグで得点王とかMVPを取った時に、ステップアップで海外移籍します。自分が高く売れる時のほうがオプションが多いんです。なので自分のキャリアハイを意識しながら、行き詰った時ほど転職しづらくなるのがサッカー選手です。

それをビジネスマンも理解して、自分が「この会社では今が自分のベストだな」と思った時に次のステップアップをするのが、実は一番しやすい。

佐々木:そこは意外というか、一般的に会社ですごく重宝されててイケイケだったら、その会社でもっとがんばろうと思いがちだけど、実はそのタイミングが売り時だよと。

藤岡:自分を考えたらね。会社にずっといたいっていうんだったら……すぐに旬ってなくなっちゃうんですよね。社内の伝説の人になっちゃって、社内では居心地が良くなるかもしれないけど、遺産になってしまうこともある。ベストだと思ったら次に行くっていうのが意外と良かったりします。

最も転職をしてはいけない3つのパターン

藤岡:やる気があるんだけどくすぶっている人。これも僕は転職をしたほうがいいんじゃないかってアドバイスしたいんですね。

「やる気があるんだから、今の中で過ごしてるよりは成長できるんじゃないか」という感じです。もっと成長できれば上がるかもしれないから、転職してもいいんじゃないか。

ここからが要注意なんですよ。日本人だと、下の3つ(マネジメントの壁に直面、専門スキルに自信がない、やりたいことがわからない)で転職を考える人が多いんです。これ、最も転職をしてはいけないんですよね。

「マネジメントの壁に直面している」というのは、部下のマネジメントがうまくいかないから次の職場に行こうと。その問題はほぼ100パーセント次の会社でも起こります。

今やってることをやりきってこれ以上は無理だと思って転職するならいいんですけども、それから逃げちゃうと次の壁がまた同じくやってきて……ということを繰り返してしまう。

僕がいつもこういう人にアドバイスするのは、「今の職場でやりきってください。ステージクリアしてください」と。これ以上は無理ってくらいまでがんばって、それでも無理だったら転職すればいいわけだから。

「転職をしてスキルを得よう」はうまくいきづらい

藤岡:「専門スキルに自信がない」。スキルがないと転職はできないんですよ。今の会社でスキルを形にしましょう。「転職をしてスキルを得よう」っていう話は違うんです。

スポーツの話ばかりで申し訳ないですけども、大谷(翔平)選手がサッカー選手に転職するようなものです。スキルは今のところで培っていく括りで、転職をしてスキルをつけようとしても、絶対うまくいきづらいです。

「やりたいことがわからない」。転職しても採ってもらえないのが1つあると思うんですけれども(笑)。がんばりかインプットが足りないか、どっちかですね。

情報が足りなすぎる。なので何していいかわからないってことが多いので、もっと勉強するかやり切りましょう。そうしないと、壁にすらも突き当たってないんじゃないかなっていう感じがしますね。

もしも自分が原始人なら、どんな人とマンモス狩りへ行く?

藤岡:ということで「私、転職できる?」を知るためには、「採用」の原理原則を理解しましょう。

佐々木:採用の原理原則。

藤岡:このあたり、同じフレームワークを何回も出しますので。

あなたは旧石器時代の原始人です。マンモス狩りをしようとしています。あなたはどんな人に声をかけて、マンモス狩りをしにいきますか? ちょっと考えてみてください。

佐々木:一緒にやってくれる人ってことですよね、自分じゃなくて。せっかくなので聞いてみますか? どういう人に声をかけますか。

参加者1:体格が良い人。

佐々木:体格が良くないとね、マンモスですからね。確かに。貧弱よりかは絶対有利ですよね(笑)。ちょっと当てていきます。

参加者2:やる気がなくて有能な人。

佐々木:やる気がなくて有能な人。おもしろいね、その心は?

参加者2:危機に直面すると一番発揮すると思います。ほかのやる気のある人は勝手にやるから。

藤岡:なるほど、ありがとうございます。

佐々木:パートナーとして、なるほどね。やる気はないけどすごく有能な人に声をかけたらいいんじゃないか。いざという時に火事場の馬鹿力で、しかも能力がある。これの答えは?

藤岡:一言で言うと「スキルのある人」です(笑)。いろんなスキルがあります。食べるには料理しなきゃいけないですね。だからマンモス狩りのあとに料理できる人とか。でも最初に声かけるのは強い人なんですよ。次に調理できる人。スキルがある人たちを集めないと、マンモスを狩れないし食べられない。

「私、転職できる?」を判断するための3つの要素

藤岡:昔からこの原理原則は変わらないんですが、仕事もそうです。まず集団には「マンモス狩り」というビジョンがある。それがあることによってまず採用をして、仲間を集めるんですよね。目的を達成したら分配をし、また狩りをしていく。これって昔から差はないんですよ。これが採用の原理原則です。

まずなにか目的があって、その目的に必要な人を採用する。で、達成したら分配をするという順番です。当たり前かもしれませんけど、これは何回も繰り返し出てきます。

ですので最初から答えっぽく言っちゃうと、「転職できる人」というのは、今みたいにミッションを達成する時に貢献できるスキルがある人と認識される人なんです。まずビジョンに共感をしている、目的に共感をしている。その目的を達成するスキル、成果が出せるスキルがある。

この1番、2番についての自分のビジョンとスキルを、しっかり採用者やリーダーに伝えることができるかどうか。この3つができれば、採用ができて組織が回っていく。

佐々木:つまり今日のお題である「私、転職できる?」は、この3つがあれば判別できるようになると。

藤岡:はい。これは古代から変わらないですよね。これをもうちょっと具体的に深掘りをしていくのが今日のテーマです。スタートアップも大企業も、古代時代から変わらないってことをまずお伝えしたい。