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新入社員意識調査2023〜「個」の尊重へ向かうZ世代。生かすための鍵は「共通目的」と「セルフリーダーシップ」(全3記事)

Z世代は「主体性」「合わない環境」への苦手意識が高い 個を重視するZ世代を職場で活かすための「6つのスイッチ」

VUCA時代と呼ばれる変化の激しい昨今、早期離職やメンタル不調など、さまざまな企業で新人・若手育成の課題が挙げられています。そこで今回は、株式会社リクルートマネジメントソリューションズが行った「新入社員意識調査2023」の結果を元に、Z世代の力を引き出す育成のヒントを探ります。本記事では、Z世代と上司世代の価値観の違いを「分断」ではなく「共創」につなげるための打ち手を紹介しました。

世代間の溝を埋める「共通目的」の設定方法

武石美有紀氏(以下、武石):それでは次に、実際に「共通目的」を設定していく中で意識すべきポイントを2つご紹介します。

1つ目は、会社などの大きな単位のみではなく、部や課、チーム、そして「あなたと私」などの小さな単位でも共通目的を設定してくことです。

一人ひとりの当たり前が多様化する現代だからこそ、「わかってくれるはず」という考えは通用しにくくなっています。ですので、今までなんとなく築けてきた小単位の関係性の中でも、目的に対する対話がますます重要になってきます。

例えば「あなたと私」の例でいくと、新入社員と育成担当者の1on1の時間でも、「今からの時間は、このプロジェクトをより良くするための意見出しの時間にしようと思うんだけど、どうだろう?」などと、目的やゴールをお互いに合意した上でスタートすることをおすすめしています。

Z世代は「納得感のない目的」に抵抗を感じやすい

武石:2つ目は、「共通目的」を設定するプロセスにおいて、「共創」と「共感」のスタンスを取り入れることです。

Z世代は選ぶ余地のない画一的な決めごとや、自分にとって納得感のない目的に抵抗を感じやすくなっています。そのため、この要素は一層重要になってきています。

「共創」のスタンスは、異なる価値観を生かし合い、学び合いながら共に創っていく姿勢です。これは、目的自体を共に創っていくことと、目的の実現方法を共に創っていくことの両者が考えられます。

「共感」は、関わる「協働者との共感」と「目的に対する共感」があります。「協働者との共感」は、共通目的を共に創るメンバー同士が対話する中で、相手の意見や価値観を肯定的に受け取って味わうプロセスの中で生まれます。

「目的に対する共感」は、目的に対して自分なりの意味づけを行い、自分ごと化してしていくプロセスの中で生まれます。

最後に、「共創」と「共感」は身近なところでも起こり得ます。例えば先ほどのシーンで、今の仕事が自分の希望に合わず、異動を希望したZ世代に対するアプローチを元に見ていきましょう。

「異動したいんです」と言うZ世代に対して、以前紹介したスライドでは「つらいな」と(上司が)優しく接するものの、そのあとで「いや、でもまだがんばってみようよ」と自分の主張をすぐ伝えていました。

今回は「どうしてそう感じたの?」と背景を聞き、まずは意図を確認します。そして相手から出てきた本音に対して共感し、その本音をベースに業務と接続させて、お互いの共通目的を対話によって創っていきます。

Z世代の本音が見えづらい背景

武石:今回紹介している一例は、けっこうそれがスムーズにいったケースだと思っています。私自身、こういったやりとりをOJTの中でも何度もやってきましたが、もちろんうまくいきにくいケースもありました。

桑原さん、時間をかけてもZ世代から本音や価値観が出てこない時、どのようなことを意識して接すればよいでしょうか?

桑原正義氏(以下、桑原):そうですね。セミナーをやっていると、私もよくお客さまから「でも、うちの会社の若手はそういうのは出ないんですよ。やる気がない人にはどうしたらいいんですか?」と聞かれることがあります。

実は私も同じように感じたことが最初の頃はあったんですね。やりたいこととかやる気とか、(Z世代の本音が)あんまり表立って見えないなと。でも、若手と接していってわかったのは、心の中にはあるなと。

ただ、それを表に出すことをすごく躊躇したり、抵抗感がある人は意外と多い。つまりそれって、「こんなことを言ったらどう思われるんだろう」という思いがあるからなんですね。

世代間の違いをプラスに変えて「協働者」になる

桑原:安心感がないとなかなか(本音が)出てこないので、まず一番お伝えしたいのは、「出てこないからといってないわけではない」ということですね。「何かあるんだろうな」と思いながら聴いていくのが、まず1つ目のおすすめのやり方かなと思います。

もう1つは、言語化がそんなに得意じゃない人もけっこういます。なんとなくはあるんだけど、「あなたは何をやりたいんですか?」みたいなことを聞かれても、今すぐはっきりとは出てこない。そういう時は、言語化を一緒に手伝っていく。

例えば、具体的にどういう経験をした時にうれしかったのかとか、そうやってひもといていくと、「この人は意外とすごい経験をしている」「学生時代にめちゃくちゃいいことをやっているな」とか。

表ではぜんぜんそう見えなかったんだけど、意外な発見があったりします。なので、一緒に解きほぐしていくのもいいんじゃないかなと思いますね。

武石:ありがとうございます。先ほど桑原がお伝えしたようなスタンスを持って、共通目的を共に作る中で、お互いの本音や価値観を味わう度に関係性の分断は少しずつ解けていきます。「自分とは違う人」と捉えて距離を置いていた人とも、協働者としてフラットにつながれるようになります。

このような状態になると、お互いの違いはマイナスには捉えられず、むしろ協働者との間では「もっと突拍子のない意見も出してほしい」などの声も上がるようになる。違いそのものは、協働者にとっても組織全体にとっても確実なメリットになっていきます。

多様性が広がると「当たり前」にも違いが生まれる

武石:ということで、1つ目のキーは以上で、2つ目を桑原からご紹介します。

桑原:前半のテーマは「個」への意識がどんどん高まる今のZ世代に対して、どのようにして対応していけばいいかということでした。

2つ目のキーとして「セルフリーダーシップ」というテーマをお伝えしたいと思います。「リーダーシップ」という言葉は世の中にたくさんあると思うんですが、それを自ら発揮していくという意味で、「セルフリーダーシップ」というテーマになります。

まず前提として、「個」への意識が高まるZ世代は左側のようなもの(経験・意識)があるんですが、そもそも今の時代ってどういう力が要るのか? というところにも目を向けていきたいと思います。

「VUCA」と言われるような仕事・職場環境に、ますますなってきていると思います。程度の差はあれ「正解がなかなかはっきりしない」「職場に育てる余裕がない」とか。職場の中での多様性が広がっていますよね。つまり、今の当たり前・前提が人それぞれ異なる。

働き方もけっこう変わってきていますよね。9時~5時以外の働き方とか、本社で・オフィスでとか、加えてリモート・オンラインと働く場所もいろいろあったり、異質な人たちが働くようになってきているすごく難しい環境です。

人も組織も、カギを握るのは「自律的な学習・成長」

桑原:こういう前例のないような環境で何がコアな力になるかというと、先ほど申し上げた「自律的な学習・成長」に尽きると思うんですね。

お客さまと話していても、今は人材像の再定義が行われていまして、ほとんどのお客さまが「自律」というキーワードを入れるようになってきていると思います。これは従業員もそうですし、組織単位でも同じです。

上が決めたことを愚直にやる組織じゃなくて、自分たち自身で考えて試行錯誤していくような学習型の組織に切り替えていこうということも、どんどん進んでいると思います。

人も組織も自律的な学習・成長が重要な時代だということに関して、じゃあ「個」への意識がますます高まってくるZ世代がどのようにしてやっていくのかという時に、今の一番大きな課題はギャップの拡大ですね。

求められる自律学習・成長に対して、Z世代の人たちに調査を取ると、自律や主体性に関する項目に対する苦手意識が上がってきているのが見て取れます。

この背景にあるのは、「意味・価値があることだったらがんばれるけど、そう感じられないことになかなかやる気が上がらない」「自分に合った環境であれば思う存分にすごい力を発揮する一方で、合わないところではなかなかやれない」というZ世代の傾向です。

環境に対する“早すぎる見切り”はもったいない

桑原:一方でVUCAという環境は、必ずしも自分に合った環境がすぐ得られるとは限らず、自分の条件にマッチングする確率が少ないと思うんですよね。

ですから今、私たちの中でも新たな課題としてクローズアップしているのが、「環境さえ良ければな」という思考・マインドセットが、(スライドの)上に書いてある成長やエンゲージメントの大きな課題になってきています。

「もっと自分に合う環境だったらがんばれるけど、今の自分の仕事・職場環境が合わない中でどうしようかな」と。この中でがんばり抜いていく人もいる一方で、自分に合った職場・企業への転職を選んでいく人たちも増えてきているのかなと思います。

もちろん転職など、より良い場所に進んでいくのは人生を充実させる行為なので、基本的にはプラスだと思うんですよね。ただ一方で、明らかに早い見切りは、企業にとっても個にとってももったいない。そういう現象も起きてきているんじゃないかなと思うんですね。

ですから、最終的に本当にやりたいことと、それを実現できる職場にマッチングしていくのは大前提な上で、今の環境の中でも可能性を広げていくことが可能である。

そういう考え方と力を持てるようになれば、若手にとっても、自分の望む人生・望むキャリアの可能性をより広げていけるんじゃないかなと考えています。

「自分から動いて良くなるとは思えない」という意見の増加

桑原:新人・若手領域における重要な育てたい力として、「どんな環境でも、自分からアクションをしていくことによってより良い環境にしていく確率は上げられるんだよ」という力を育てていこうということで、セルフリーダーシップを中心のテーマに置いて進めている次第です。

先ほど申し上げたように、「自分から動いて良くなるとは思えない」という意見・考えが年々増えてきています。

日本財団の2019年の調査でも、「自分で国や社会を変えられると思う」という質問では(「はい」と答えた割合は)、調査国の中で日本の若者たちが最も低い結果になっています。

このような傾向の中で、(職場や環境が)合わなかったらすぐに変えるということはお互いにハッピーになれるかというと、必ずしもそうは言えないところもあるんじゃないかなと思うんですね。もちろん、あまりに不条理だったりブラックな職場であればすぐに退避したほうがよいとは思います。

ですから、今の環境をより自分が望ましい状況に変えられれば、「そうなれるんだったらやりたいな」という人もいるとは思うので、まずはセルフリーダーシップの力をしっかりと身につけてもらうことがお互いに役立つと考えています。

セルフリーダーシップを上げる「6つのスイッチ」

桑原:じゃあ、どうすればセルフリーダーシップが上がるかということで、私たちもいろいろな研究をしたり、いろんなトライアルをお客さまとやっている中で見えてきました。

この6つのスイッチをしっかりと使えるようになると、「今の環境でも、もっと自分にとっておもしろくできそうだな」「自分が目指す姿に近づけそうだな」と、今の環境に可能性を感じて、自律的に自分から動いていくということで、6つのスイッチを置かせていただいています。

実はこの6つには大きく2つのジャンルがありまして、上に書いてあるグリーンと青のスイッチが「状況を捉え直す」と「自分をアップデートする」。これらのスイッチは、今の自分にはないものとか、今は気づいていないもの取り入れて良くしていくという、いわゆる成長や発達に関わるようなスイッチです。

オレンジはそれとは真逆で、自分の中にある「らしさ」とか、自分の得意分野とか、今あるものを生かしていこうというスイッチです。この両方をうまく使えるようになると、どんな状況でもより良くしていく方法が見つかっていくという考え方です。

自分の仕事を別角度から見ると、新たな価値が見つかることも

桑原:もう少し具体的に言うと、6つそれぞれの定義・位置付けを行っています。例えばですが、「自分に合わなくてなかなかつらいな。うまくいかないな」という時に、今の自分が見ている世界って、まだまだ限られた見方だったりすると思うんですよね。

例えば営業だと、「数字を上げるのはおもしろくない」「営業から異動したい」とか。お客さまの役に立つ仕事がしたくて会社に入ったんだけど、毎日毎日訪問件数や数字を売り上げるというKPIを回していて、「こんな仕事をやりたくて入ったんじゃない!」というのがけっこうあったりしますよね。

確かに本人から見たらそれが事実なんですが、「でも、それがすべてではないよね」というのがグリーンのスイッチですね。他の角度から見てみると、営業のやりがい、おもしろさ、成長できるものが、実は見えてないところにいっぱいあるので、一回捉えなおしてみたら? という考え方です。

「違う角度から見てみるといいんじゃない?」「もっとレンズをぐっと深めて、今のものを深掘ってみたらどう?」みたいなことをしていくと、実は営業って別に数字を上げることだけじゃなくて、お客さまが困っていることや悩んでいることに対して価値を返していく仕事でもあると。

なので、「貢献したい」という一見数字とは合わない価値観があったとしても、「自分ががんばってそういう仕事ができるようになれば、お客さまへの貢献をたくさんできる仕事なんだな」ということがわかるようになる。

“今の仕事が合わない”と感じた時の対処法

桑原:数字というのは、要はお客さまからの信頼のバロメーターだよねと。つまり、あなたがどれぐらいお客さまに期待され・貢献できたかの表れが数字となって表れてくるから、数字って「貢献度」とか「信頼度」にも言い換えられるんじゃないの? と。

そんなことをアドバイスされて、それに意味づいてやったりするケースも過去にありました。見えていないものをしっかり知った上で捉えていくことが、捉えなおしのスイッチになります。

逆もありますね。なかなか(今の仕事が)合わないといった時に、自分が得意な利き手ではなくて、実は利き手ではない苦手な手を使っているからうまくいかない。

そういう時に、「だったらあなたの得意なやり方、あなたのやる気が出るやり方で今の仕事をやってみたら?」というのが、オレンジのスイッチのアドバイスになります。

先輩や上司に言われたことばかりやっていておもしろくなくても、自分が過去にどういうやり方だったらうまく進められたかとか、どういうことが感じられたらがんばれたかとか、それを今の仕事の中で自分で活かしていったらいいんじゃないかということです。

「セルフリーダーシップ」は、個にも職場にもプラス

桑原:なので、とにかく仕事の目的地にたどり着けばいいので、そこに向かうなら、自分の得意なやり方とか、自分らしさを生かしたやり方でもかまわないんだよ、というメッセージを届けていく。

そうすると、「そうなんだ。今のやり方でやらないといけないと思っていたんだけど、自分に合ったやり方をやっていってもいいんだ」ということに気づいて、「そのやり方だったら営業もがんばれるかな」みたいなかたちで進み始めた方々もけっこういらっしゃいます。

「意味・価値がないとやりたくない」「合わないと難しい」という傾向としてはあるものの、実はしっかりとこういったことを伝えていって、納得をしてもらえれば、今の若い人たちも素直に取り入れて、今の環境の中で自分自身のアクションによってより良く。こういうことが十分に起こっていくことは、過去にもありました。

なので、こういったセルフリーダーシップの力をつけることは、本人にとっても職場にとっても、双方にとってプラスになる可能性があるんじゃないかということで、重要テーマとして設定してやっている次第です。

Z世代と上司世代で“共創パートナー”を目指す

桑原:最後になりますが、Z世代と上司世代はついつい「何か違うな」とか、当たり前が違い過ぎて分断しがちなところがありました。

ですがもう1つ見えてきたのが、確かにお互いの得意は違うんだけど、VUCAの環境で正解がない時代、つまり「どうやったら新しい価値を創っていけるのか」ということに関しては、お互いの強みはお互いにないものです。なので力を合わせられれば、非常にいいパートナーになれる組み合わせだということも見えてきました。

「なんか違うな」と思って遠ざけると分断になってしまうんですが、上司世代についてよく知っていくと、上司世代の人たちの突破力とか交渉力、コミュニケーション力ってやっぱりすごいなという話になる。

Z世代は、発想とか、一緒にコラボレーションをしていくとか、社会課題を発見していくことは得意なんだけど、前に進めていくエネルギッシュな力は苦手だよなとか。

上司世代の人たちをうまく巻き込んで力になってもらったりすると、社内でも新規事業をどんどん立ち上げていったり、新しいビジネスを作ったりとか、そういうことも世の中で見えてきていると思うんですよね。

ですから、「共に創っていくパートナーになれる」という方向感でうまくこの世代をつないでいけると、日本の企業や社会もより良いものに発展していくんじゃないかなということで、このあたりのテーマを今後さらに深めていきたいなと考えている次第です。

私たちの発表はこちらで終了させていただきます。ご清聴、どうもありがとうございました。

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