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異端の経営者が渡すバトンはAIへ? 全産業でリストラ対象拡大(全4記事)

DMM亀山会長「会社を潰すか・生かすかを握っているのはAIかもしれない」 経営者4名が語る、AI時代の未来と次世代に期待すること

「次世代の、起爆剤に。」をミッションに掲げる日本最大級のスタートアップカンファレンスIVS(インフィニティ・ベンチャーズ・サミット)。2023年は京都で開催されました。本セッションでは「異端の経営者が渡すバトンはAIへ? 全産業でリストラ対象拡大」をテーマに、小笠原治氏、亀山敬司氏、寺田航平氏、三宅卓氏の4名が登壇しました。本記事では、参加者からの質問に答えながら、次世代を担う若手へのアドバイスを送りました。

AI時代における雇用の難しさ

小笠原治氏(以下、小笠原):このあと、会場から質問をいただければと思います。

今日お話ししていて、危機感の差はあれど、寺田さんみたいにロジカルに「このへんまで」というのを決めている人もいれば、上場会社なのでどこまで言えるかわからないですが、従業員がどういう方向に仕事を振り替えていけばいいのかと思われている方もいる。

「数千人の雇用をこれからどうすんねん」って真剣に悩んでいる経営者もいるということが、まずは伝わればいいなと思います。

さっき確率論の話がありましたが、例えばコンピューターが量子コンピューティングみたいなものに変わった時に、組み合わせでどうなるんだ? ということを考えると、今から始めるのってもう早くはないんですよね。

量子で100万ビットなんて高々あと20年と言われていて、これが早まる可能性もある。そういうことを考えると、AIとどう取り組んでいくのか、AIと一緒にどう仕事していくのかは本当に大事なことだと思います。

Web2、Web3、AI……変わりゆくトレンド

小笠原:そういったことも持って帰っていただきつつ、会場からご質問をいただければと思うのですが、お三人に聞いてみたいことがある方はおられます?

質問者1:本日はお話をありがとうございました。僕は学生で、AIエンジニアを業務委託で少しやっています。おっしゃっていたように、同世代の人たちですらAIの危険性とか、今後変化が起きるということを感じていないことが、僕自身はすごく問題意識していて。

僕はそれを友だちに話したり、実際に勉強会をやったりしているんですけど、今の若者たちは今後どういうことを期待されているのか。起業家的な視点ではないんですけどご質問したいです。よろしくお願いします。

亀山敬司氏(以下、亀山):いいですか? 言わせてもらいます!

小笠原:もう、いの一番にしゃべりたそうでしたからね(笑)。どうぞどうぞ。

亀山:若いやつらは、Web2に未来がないからって、この間まではWeb3に興味を持つ人だらけだったわけよ。

スタートアップも「これからはWeb3だ! 一発当てちゃう!」とか言っていたけど、バブルがはじけたらいきなりAIとか言い出しているわけなんだけど、トレンドの中でいろいろ変わるんだよね。

会社を潰すか・生かすかを左右するのはAIかもしれない

亀山:じゃあ今、実際問題どれを選びますかと言われたら、Web3は哲学的な話や思想的なところもあって。いろんな社会がDAO化されるとか、そういったことも含めて俺も興味はあるわけよ。ただこれ自体(Web3の実装)に関しては、数年以上、ある程度時間がかかると思うんだよ。

一方で、AIはこの数年が勝負なんだよね。だから「どっちに急ぎますか?」なら、今はAIのほうに振っとけっていうイメージがある。

長い意味では、俺はWeb3のDAO的な発想は価値があると思っていて。俺は、将来は会社自体もDAO化できるかもしれないという期待もあるわけよ。もしかしたら、10年後にうちの会社を救うのはWeb3かもしれない。でも、数年後にうちの会社を潰すか・生かすかを握っているのはAIかもしれない、という危機感がある感じかな。

小笠原:今の亀山さんの話で言うと、例えばAIに興味があるんだったら、AIを早めに突き詰めておっさんらと付き合ってくれ、みたいな感じになるんですかね。

亀山:別に俺たちみたいなおっさんなんかほっときゃいいよ。おっさんと付き合わなくていいから、自分らでまっすぐ行きゃあいいという話かな(笑)。

小笠原:自分らでやれと。

“アメリカをマネするビジネスモデル”は、今後崩壊する

寺田航平氏(以下、寺田):圧倒的に優秀だったら、先に起業することだと思いますね。今はまだ勉強が必要だと思えば、ひたすらデータを食わせられるような領域の中で勉強する。

例えば、当たり前のようにAIの人たちを出す上場しているベンチャーでもよければ、エンドユーザーのレガシーであったとしても、活用できる分母があるようなところでいったん修行しながら、何ができるかを突き詰める。そういうことをやってもらえればと思います。

もちろん、僕ら経営者サイドは危機感をすごく持っているけど、みなさん学生からすれば、可能性の未来だけを信じることにぶっこんでもらいたいと正直思うし。

一方で、せっかくAIのエンジニア領域をやるとしたら、その中の尖った領域だけめちゃくちゃ深掘りする。ここは亀山さんと同義ですけど、学生時代はいかにそこを深掘りできるかを突き詰めてほしいなと思います。以上です。

小笠原:一転突破してくれ、という感じなんですかね。三宅さん、若手に何か(アドバイスは)ありますか?

三宅卓氏(以下、三宅):スタートアップをやっている方々に関して、もうちょっと枠を広げてお話ししたいなと思います。今日も話が出ましたが、やはりビジネスモデルの見直しはめちゃくちゃ大事かなという気がします。

先ほども寺田さんから話が出ましたけど、“タイムマシーン”。要は、3年先、4年先にいっているビジネスモデルをアメリカから持ち込んでモノマネしてというビジネスモデルは、もう完全に崩壊してしまうやろうなという気がします。

AIの普及によって、さまざまな社会矛盾が生じる

三宅:スタートアップを起業して、成功するのが3年、5年とか先で、IPOするのが7年先で、そこからグロースしていくということを考えると、やはり10年先を見ていかなければいけない。

そういうことを考えると、例えばAI1つとっても、AIのコアなところに関わっていくのか、あるいはAIをツールと考えて、これをどう便利に使えるようにするのかというビジネスモデルを作っていくのか。

さっきからものすごく話が出ていますように、AIが普及したら社会矛盾がいっぱい出てきます。例えば、大企業の中で3分の1はリストラされるとか、ホワイトカラーが職をなくすとか。

でも、先ほど亀山さんが言われていましたが、AIが入ったから東京で使い物にならなくなってクビになった人も地方に行けば、地方リーグではSクラスのメンバーやったりするわけなんですね。そういう、AIにまとわってくる社会矛盾を解決するようなビジネスモデルを作っていくのか。

例えばAIだけ捉えても、下に行けば行くほど裾野が広がるので、大きなマーケットがあるということですよね。そのへんも考えながら、3年、5年、10年先のビジョンを作ってもらえたら、日本も捨てたもんじゃない国になるんじゃないかなという気がしますね。

小笠原:わりとそこは若手に対して期待されているんですね。

経営者視点で、若い世代に期待すること

小笠原:僕はモデレーターなんですがあえて言うと、今はクリプト、トークン、AIとかも、総じてエージェント問題をなくしていくと思っているんですね。

エージェント問題というのは、M&Aセンターがおられる横で言うのもあれなんですが、M&Aをお願いした時に代理人が期待どおりに動いてくれるかどうかわからない。

例えばトークノミクスだったら、それがすべてオープンになっていて、インセンティブがはっきりしていて、プログラムがそのまま。AIにしても、どういうルールで動くかがはっきりしていれば、エージェントを信頼しなくてもいける。エージェント問題が解決された世界で、どんなことが起きるのか。

エージェント問題が信用力や信頼とかになって、大企業の力の源泉になっているじゃないですか。そのへんがなくなった世界でどんなビジネスがあるのか、ということは考えられる世代なのかなと思うので、今と違う世界観を持ってもらってもいいんじゃないかなと思いました。

重要なのは、AIをツールとして使えるかどうか

亀山:いいですか(笑)?

小笠原:すごく言いたそうだった(笑)。

亀山:俺が勘違いしてほしくないのは、別にAIの開発会社とかをやれよという話ではぜんぜんないからね。

いろんな業種に関わってきて、Web3がゼネコンとか流通とか他の産業に影響を与えるかというと、そんなに大したことはないと思うのよ。でも、AIは多くの産業に影響を与えちゃうところがポイントで、もっと言えば「みんながスマホを使いこなせるようになろう」というのと同じぐらいの話なのよ。

別に「AI会社に勤めろよ」「Appleになれよ」ということじゃないんだよね。Appleの奴隷だろうが、Googleの奴隷だろうが、Microsoftの奴隷だろうが、俺たちはそれでもいいんだよ。少なくともそのツールを使えるかって話。

だから俺が言っているのは、あくまでツールとして、今までITが影響を与えたもの以上に、AIがすごく広い範囲で影響を与えるという話よ。

スマホに頼っていても「自分で決めた気」になっている

亀山:俺たちがスマホの奴隷かどうかという話になると、どうせこのあと腹が減ったら「おいしい店は?」ってスマホに聞いたら、食べログで星3つの指示を与えられて、そのあとGoogleマップで「右に行け」って言われたとおりに道を曲がってさ、もう俺たちはITで言われたとおりにやっているわけよ。

俺たちは(スマホにお店を)言われて飯を食いに行っているのに、自分で決めた気になっているわけよ。いや、ほぼレコメンドで言われているからね。

これがもっと、今みたいに自覚さえなくなるような状況になるということなんだよね。自分で決めているつもりが、なぜか恋をしているのかわけわからん、みたいな。AIの人間と本当に恋愛しちゃうよ。

寺田:滑らかな未来を作る、というやつですね。

小笠原:確かに(笑)。

亀山:大変ですわ。でも、だからこそ現実に向き合って未来を考えないといけない。

小笠原:鈴木健を呼んでこないと(笑)。本当は最後に一言ずつもらおうと思っていたんですが、もう今の亀山さんので十分な一言だったので、次に寺田さんに一言いただこうかと思います。

亀山:すみません(笑)。

寺田:質問したかった方がいたらすみません。みんなしゃべりたがりなので。

これからの未来、必要なのは「ピボット力」

寺田:今日は、おじさんたちばっかりのセッションにご参加くださいまして、本当にありがとうございます。

みなさんが1つの道を信じることはとても大事だと思うんです。ただ一方で、ここからの未来は正直「ピボット力」だと思っています。ちょっとうまくいかなかった時に、どんどんモディファイしていく。

それをやるための自分なりのアイデアを求めるために、外の世界の接点をものすごい持っていく。いわゆる「切り替え力」をどれだけ持てるかが、みなさんの事業の展開でものすごく大きいと思うんですよね。

当たり前の話だけど、今まで5年かかったサイクルが1年になるとか、ビジネスモデルそのものの世界観が変わっていっちゃう世界なので。そういう観点からも、みなさん自身がどこを向いて・何をするのか。

LLMの発達も含めたところを振り返った時に、きっかけとして「どっちに行くべきか」を考えてもらいたいと思っていて。そういう観点からすると、いったんは(AI時代を)危機と捉えて、その上でどう動くかという感覚を持ってもらえるとすごくうれしいなと思っています。

亀山さんの言うとおり、明らかにみなさんの未来はそんなに悲観的ではない。だけど一方でみなさんにとってみれば、考え方を変えてより伸びる・自分たちがある程度社会の中で成功するかたちを作るために、そのきっかけとして悲観的に捉えるというやり方をしてもらえればなということを想像して、本日はお話しさせていただきました。ありがとうございました。

小笠原:ありがとうございます。

「自分たちがやらなきゃ誰がやるんだ」という意識を持つ

小笠原:最後に、三宅さんからも一言いただければと思います。

三宅:新しいことをするのは本当に楽しいですし、0から1を作っていくのは最高の人生のクリエイティブな楽しみだと思います。まずは今、楽しんでいただきたいですね。

そして「スケールしていこう」とか「資金調達しよう」とか、そういったことに関してはプロフェッショナルがいっぱいいますから、どんどん相談してやっていただいたらいい。まずは楽しいかどうか・ワクワクできるかどうかやと思うので、ぜひがんばってください。

小笠原:じゃあ、お時間になりましたので……。

亀山:あと一言だけ、いいですか?

小笠原:どうぞ。

亀山:とりあえず、ここにいる人間が今後を引っ張っていかないと本当にやばいということだけわかってほしいので、「自分たちがやらなきゃ誰がやるんだ」というのは思ってほしい。

そもそも経営者って何かという前に、「人としてどうなんだ?」ということまで突き詰めると、みなさんが真剣に考えないとこの先はないような気がするからさ。すみません、今日はしゃべりすぎました。反省しています。

(会場拍手)

小笠原:いえいえ。本当にすごく熱かったんだなと思いました。ありがとうございました。

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