ChatGPTの登場で起きた市場環境の変遷

司会者:さっそく、弊社リブ・コンサルティングの島から、第2章「GPTがもたらす影響」についてお話ができればと思います。それでは島さん、よろしくお願いします。

島孝行氏(以下、島):よろしくお願いいたします。私からはGPTの市場環境や、ベンチャー企業さんがどういったかたちでGPTをサービスに使っていけばいいかについて簡潔にお伝えさせていただきます。

前提として2023年3月にGPT-4が出ました。それから、4月、5月、6月、7月と新しく印象的なものはそこまで出ていないんですが、水面下をよく調べてみると、すごい技術的な進歩や、市場環境の変遷が起こっています。それが、こちらのスライドになります。

実態としては、バリューチェーン全体でLLMのモデルが乱立したり、いろんなサービスが台頭してきたりと、かなり競争環境が激しくなっている状況があり、一方で技術進歩側では、Code Interpreter(コードインタープリター)機能など、GPTや生成系AI全体を通してできることがものすごく増えている。そんな市場観かなと見ています。

AIの社会化に向けて、加速度的な市場変遷、技術進歩がなされている。そんな中で、今私たちはどうすべきかをお伝えさせていただければ思います。

直近のホットトピックとしては、先ほど挙げたCode Interpreter。こういった(スライドに示すような)企業の調査業務などで、元データをどう使ってそこからどうアクションに落とすかという分析や示唆出しは、これまで非常に時間が掛かっていました。

それが、Code Interpreterにデータの表をアップロードするだけで、すぐにグラフを作成し示唆も出してくれる。それがChatGPT上で可能になるという恐ろしい機能が出ています。生産性向上や業務効率といった意味でのスピードはかなり速く、今後1年でどんどん代替されていくのではないかと噂されています。

日本市場におけるGPT活用企業のカオスマップ

:全体への波及状況をあらためて見ると、GPTが普及フェーズにある程度入ったことで、バリューチェーン内の競争が加速したのは、先ほどお伝えしました。

プラットフォーマーと、AIを基幹とするB2Bサービスの事業者、そして従来のB2Bサービスを提供するSaaSの事業者の3つのB2B向け事業者さまが、エンドユーザー向けにどういうUI/UXをもとに、GPTで付加価値を提供していくかで戦いが起こっているという市場観かなと見ています。

一方で、(スライドの)一番左側のプレイヤー(「マネタイズ」エリアの「生成AIプラットフォーマー」)のほうが、マネタイズにより早期に取り組んでいる。

マネタイズをしていきながら、開発や機会探索が、だんだん右側(スライドの「AI活用B2Bサービス」「従来のB2Bサービス」)に落ちていっているという捉え方をしています。

従来のB2Bサービスの事業者さまが活用機会を模索し、どう提供価値を出すかは、今後の競争優位性の源泉にも直結するところですので、その体系的なところを、どんな企業がどう活用しているかといった具体例を私から簡単にお伝えさせていただきます。

(スライドの)これは、活用方法や活用環境を大きく捉えた時に、日本市場でGPTを活用しているプレイヤーは、カオスマップ上でこう分類されますよという内容です。

いくつかピックアップさせていただくと、活用方法は「生産性向上」と「顧客体験向上」に分かれます。

「生産性向上」は(スライド左上のような)バックオフィスの業務フローの効率化に使われるような企業。「顧客体験向上」は、(GPTを)サービスに搭載することでサービスの価値を増やしたり、アップセル、クロスセルにつなげる活動に使えるような(スライド右上に表示されている)会社さまです。

今回登壇いただくCrossBorderさんやベーシックさんもいらっしゃいます。後ほど、顧客体験の向上を自社サービスに乗せるために、どうGPTを自社サービスに掛け合わせているかをお伝えさせていただきます。

ChatGPTと自社サービスの連携検討に使えるフレームワーク

:4月から6月の間に出た、GPT関連サービスのプレスリリースはこのスライドに掲載しただけでも18サービスもあります。

おそらく30から50サービスぐらいは、「PR TIMES」上にGPT関連のサービスを載せる活動をしています。

既存サービスへの付加価値やシナジー度合いを見た時に、マーケ施策やブランディングとして打っているけど、実態はそうなっていないサービスもありますので、GPTを搭載する方法としてどういったものが適性なのかという観点で見ていきたいと思います。

GPTをどうやってうまく乗せるかという問いに対しては、「この企業はこうしてうまくいった」という情報を集めるのも答えになりますが、GPT自体が「どういうモデルでどういう構造だから、GPTがこう活きる」という観点で見ていくのも、1つの考え方としてあると思います。

ロジック上、基本的にはこちらのアプローチのほうがより適切なものができると思います。こんなかたちで演繹的にまとめさせていただいたのが、こちら(スライド)の9つの観点です。

ざっとタイトルベースのものもありますが、詳細の内容は、6番から9番(6「思考アシスト」、7「外部知識探索・分析」、8「外部ツール連携」、9「自立型エージェント」)を中心に、わかりづらいところを補足してお伝えさせていただきます。

「思考アシスト」は、けっこう価値として乗ってきやすい部分かなと考えます。GPTは推論型のAIですので、事前にどういう情報が練られたかや、どういうデータを元にどう出力するかが全部ロジック上で決まっているという観点から、論理的な思考が非常に得意だったりします。

人間では考えつけないような、いわゆるMECE(ミーシー=重複なく、漏れもない)的な観点から落とし込んだり、対話によって自然言語で論点を分解して発散していく活動が得意だったりします。

この「思考アシスト」の文脈で、示唆を出したり、人間に気づかせてくれるのがGPTの得意な領域であり、非常に価値があるところです。

この9つの観点は、今後GPTをどうやってサービスに乗せるかの指針となるフレームワークとして捉えていただければと思います。

GPTの強みと特長

:個人的には、「思考アシスト」のところではどうサービスに乗せて、顧客体験として昇華させるかの論点を中心に考えると、競争優位性の源泉を築きやすいのではないかなと思っています。

7番の「外部知識探索・分析」は、企業内の知識やWebの知識をしっかり統合して分析を行うところで、GPTはこの機能が非常に強いです。

元データをどう収集して、それをどんな観点で切って、わかりやすく出力するかに非常に強い。例えば、企業内にどんなナレッジを持つ方がいるか。どういう営業フローが落ちているか。

散在している情報をしっかり集約しながら、「御社においてはこういう改善の方法も考えられます」とか、「こういうナレッジを持つ方がいるので、この方に聞けば解決するのではないですか」と示唆出しをしてくれる。これが7番の内容です。

8番の「外部ツール連携」は、他ツールとの連携で、APIを使ってどこの元データとひもづけて取るかが、GPTをうまく活用するための肝になります。例えばCRMと連携し、顧客情報に基づいたメール文章を生成したり、そういった観点で元データを取ってくる仕組みを作ったり。データを取って何か変えていくことについて、GPTは非常に強みを持っています。

最後、9番の「自律型エージェント」は、もしかしたらご存じの方もいるかもしれませんが、以前GoalGPTがTwitter(現X)上で少し流行りました。ゴール達成のために、自分自身でプロセスを自律的に分解して、自動的に実行する。GPTはそういうことができたりします。

問いを自分自身で生成して、それに答えを出すQ&Aの作業を、一生繰り返すのをGPTに持たせて、どこを業務的に自動化できるかと考えていく。そんな観点で使っていただけると、非常にいいのかなと思います。