多様性の時代、人材育成で悩む会社が増えている

岡田武史氏:みなさんこんにちは。Sansanの専属コメンテーター、岡田武史でございます。僕もSansanは使っていますけど、よく(講演に)呼ばれるんですよ。

寺田(親弘)さんと同じように教育も始めたので、いろいろ勉強させてもらいに来ております。今日は「人材育成について話せ」と言われて来たつもりでしたが、似たような題(「メンバーを成長させるためにリーダーが取るべきアクションとは」)だから大丈夫ですね。

なんか最近ね、いろんな会社から「人材育成でいろいろ悩みがある」という話を受けるんですよね。そのバックボーンというのは、やはり今パワハラとかが流行ってきて、どう接していいかわからないという人がものすごく増えてきているなと感じます。

まず人材育成の前提として、よく理解しておかなきゃいけないなと僕が思っているのは、人というのはみんな違うんだということ。考え方も背も顔も違うし、そして価値観も違う。ところが日本って学校教育も含めて、「みんな一緒だ」というところからスタートするんですよね。

人それぞれ違う。今でこそ多様性とかいろいろ言われますけど、違う人たちを育てていくんだから当然同じ方法じゃダメ。

100人100通りというのはちょっと言い過ぎかもしれないですけど、その人に合った育て方をしていかなきゃいけない、人材の育成をしていかなきゃいけないと思っています。

「縛り」があるからこそ、自分なりの発想が生まれる

僕らはサッカーのメソッドとして「岡田メソッド」というのを持っていて、そこでは「守破離」と(教えています)。最初は師匠の教えを守って、そしてそれを破って、離れていく。

「めちゃくちゃ古いな」と思っている人、いるでしょう? 封建的で古いと思うかもしれないですけど、それは日本では「守」ばっかり言うから古いとか封建的と思うのであって、「破」と「離」をきちんと定義してやったら、ひょっとしたら最高の指導メソッドなんじゃないかなと僕は思っています。

というのは、「守」が必要な人にはちゃんとティーチングをしなきゃいけない。そして「破」の人にはコーチングでいいだろうし、「離」の人は自由でいいかもしれない。それぞれの成長の段階に合わせた指導をしていく。これがものすごく大事なんじゃないかなと。

ところが一斉に「みんな一緒だ」というところから、「こういう指導法がいい」「こういう育成がいい」と言うけど、人によって違うじゃない。成長の段階によって違うんだと。

守破離ということに一番最初に気がついたのは、我々が選手に主体的に自己判断させなきゃいけない(と思ったからです)。そのためには自由を与えなきゃいけないと(考えて)、僕らは「自由だ、自由だ」と自由を与えてきたんですよね。ところがなかなか主体性が出てこなかった。

そしたら、あれだけ自由奔放にしているスペインに型があって、それを16歳までに教えて、あとは自由にすると言われたんですよ。

「え? 僕たち『型にはめちゃいけない』ということで『自由だ、自由だ』とやってきたのに、なんでスペインには(型があるのか)」と思って聞いたら、16歳までに原則を教えて、あとは自由にするんだと。

日本は「自由だ、自由だ」と自由を与えておいて、高校生の16歳ぐらいから戦術という対応策を教えていたんですね。

「まったく逆だ。そうか。自由の中から驚くような発想とか判断って出ないんじゃないか? 何か縛りがあるからそれを破って、自分の発想が出てくるんじゃないか?」と思い始めたのがきっかけでした。

「3つの質問」で相手の主体性を引き出す

先ほど言ったように、やはり会社でも一緒です。「守」が必要な人にはちゃんと教えてあげなきゃいけない。しかし、「破」でいい人(もいます)。「破」と「離」の差、区別が明確にあるわけじゃないんですけど、「破」でいい人にはコーチングをして、一番大事なことは主体性を引き出すこと。

我々は「何をやっているんだ」と言われるんですけど、今度、FC今治高等学校という学校も始めるんです。そこで今、選手・先生にお願いしていることがあります。それは「3つの質問」と言って、「生徒にこういう対応をしてください」というもの。

1つは「どうしたの?」と聞いてください。そして生徒が「こうこうこうなんです」と言った時に、「じゃあこうしたら?」と言わないでください。「それで君はどうしたいの?」と聞いてください。そして本人が「こうしたい」と言えばいいですけど、言わなかったらいくつかの提案をしてやって、選ばせてください。

そして選んだ時に、「じゃあこうやったらいいね」と言うんじゃなくて、最後に「僕に何か手伝えることはある?」と言ってくれと。こうやって本人が自ら選んで、自ら解決していく主体性を引き出す。そういう教育をしていかなきゃいけないと思っています。

これは会社でも一緒です。「はい、これをやりなさい」と言うのではなくて、「こういう目標を達成するために、いくつかの方法があるよね。どれをやる?」と。

または「新たに自分で考える方法はある?」と。それを選択させて、やっていくという主体性を引き出す方法があります。

この時によく間違えるのが、「ほら、こうやって3つあるよね。どうする?」と言っておいて、自分がやってほしいと思うものと違うのを選んだ時に、「うーん、それもいいけどね。でも……」(と言ってしまうことです)。

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