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ブレイクスルーを起こすために必要なマーケティングのアプローチ(全3記事)

“それって企業案件?”と情報を疑う人が増えている背景 DMM亀山氏×南坊泰司氏が語る、生活者とブランドの関係性

ブランディング・マーケティングに携わる担当者や広告代理店の方々にとって、データ活用の先にある、マーケティングをより効果につなげるためのヒントやアイデアを提供する「DMM次世代マーケティング」。本記事では、亀山敬司氏と南坊泰司氏による「ブレイクスルーを起こすために必要なマーケティングのアプローチ」のセッションの模様をお届けします。本記事では、現代社会の生活者の動向を踏まえながら、企業がどのように生活者と関係性を築けばよいのか、そのヒントを探りました。

DMM亀山氏×南坊泰司氏が対談

亀山敬司氏(以下、亀山):どうも、DMM亀山です。今回はマーケティングにとても強いと言われている南坊さんに来てもらいました。よろしく。

南坊泰司氏(以下、南坊):よろしくお願いします。私はマーケティング・ディレクターの南坊泰司と申します。株式会社NORTH AND SOUTHと、株式会社manage4という2つの会社をやっております。

経歴を簡単に説明いたしますと、新卒で広告代理店の電通に入りました。7年ぐらいいたんですが、その後、フリマアプリのメルカリに転職しました。電通でもずっとマーケティングをやっていまして、メルカリではマーケティング、PR、あとは事業開発のチームをやっていました。

その後、コロナ直前の2020年に独立しました。株式会社NORTH AND SOUTHという、いわゆるスタートアップ中心にマーケティング・クリエイティブを支援する会社をやっています。もう1つがmanage4といって、マーケティングを基にして事業支援とマーケティング支援をやるという、2つの会社をやっております。

亀山:電通からメルカリ行って、独立。

南坊:そうですね。

SNSの普及で「情報の受け取り」が変わった

亀山:まずは、先ほど「生活者とブランドの関係性がちょっと変わってきている」という話をちらっと聞いたんだけど、そのへんをもうちょっとわかりやすく教えてもらえたら。

南坊:はい。生活者って、もともとは情報を受け取るだけの存在で、例えばテレビやCMを見て話を聞く、みたいな感じだったと思います。それが今、スマートフォンみたいなデバイスをほぼ全員が持っていますよね。

さらにSNSが使えるようになって、当たり前のように自分で物事を調べられるようになった。なんだったら、自分で発信できるようになっていると。亀山さんもTwitterやFacebookをやってらっしゃると思いますが。

亀山:確かに、今までは聞くだけだったのが、SNSで文句も言うようになったと(笑)。

南坊:そうなんですよ。自分で発信できるようになると、やはり情報の受け取り方ってぜんぜん変わってくると思っていまして。

もともとは、受け取ったものを信じたり、言われた一次的な情報が正しいって普通に思っていたことがあったんじゃないでしょうか。

ところが自分で調べるようになって、ひょっとして話に裏があるんじゃないかとか、あるいは自分なりの考えをどう伝えるかみたいなことを考えるようになってきた。今、情報の受け取り方がぜんぜん変わってきていると思ってます。

5年前ぐらいは、インフルエンサーなどの第三者にギフティングして口コミをしてもらおう、みたいなのがすごく盛り上がった。もちろん今でも重要だし、盛り上がってきてるんですが、今はさらにもう少し先に話が行ってると思ってます。

「企業案件かもしれない」と生活者も敏感に

南坊:例えば、自分の好きなYouTuberが何か商品をおすすめしていた時に、それを言葉どおり受け取る人ってけっこう減ってきてると思ってるんですね。要は、インフルエンサーも霞を食って生活してるわけじゃないので、たぶんなんかお金をもらってるな、とか。

亀山:なるほど。「これは企業案件かもしれない」と。

南坊:まさにそうです。けっこう今は、若い人も当たり前に「案件」という言葉も知っていて。もともとは、それこそ広告会社とかに仕事を依頼する時に「案件」と呼ばれていた感じですが、「案件が来た」という話は、VTuberのファンとかでも平気で言ってたりするわけですよね。

だからそういう意味では、案件というものがあるんだと知られてるし、例えば「なんだかんだインフルエンサーも、イベントに呼ばれたり商品をもらったりして紹介してんだろうな」みたいな。

亀山:なるほどね。そのまま受け取ってくれない。

南坊:そうです、そうです。

インフルエンサー側の情報発信にも変化が

亀山:俺が社員に「DMM TVおもしろいよ」と言ったとしても、検索してみたら、「いや、Netflixのほうがおもしろいんじゃないか」みたいな話なんだ(笑)。

南坊:そうなんですよ。自分で調べられちゃうって、けっこう大きい変化なんです。さらに、誰かの言葉を使うのも「ひょっとしてそれって宣伝なんじゃないか?」と疑われちゃっていて。ある意味、何が本当かわからないような世界になってきてるんです。

亀山:ましてや、普通に画面越しのインフルエンサーがいくら好きな人だったとしても、実際に真に受けられるかどうかというと、ちょっと疑問だという。

南坊:そうなんですよ。なので、最近はインフルエンサーも「デ・インフルエンシング」ということをやり始めていて。要は、自分がおすすめしないものははっきり言う、みたいなことなんですが、より進んでるアメリカとかのインフルエンサーは、わりとそれをやるようになっています。

自分のスタンスを示すためにおすすめだけしてると、「おすすめはぜんぶ案件かな?」みたいな感じになっちゃうので、「私はこれは勧めません」ということを言わないと、信頼してもらえない。そういう人が増えてきてるんですよね。「私は良いと思わないものは勧めません」と、はっきり表明する感じになってきてます。

マーケティングはあくまでも手段で、プロダクトが重要

亀山:じゃあ、映画好きのインフルエンサーがいたら、「Netflixはおもしろいけど、DMM TVはおすすめしません」という言い方になっちゃう、みたいな(笑)。

南坊:そうです。しかもそれって、適当にやってる人たちはたぶんダメで、ちゃんと自分の中でスタイルやスタンスがないと、「この人のことを信用できない」というふうになってるので、インフルエンサーは非常に難しくなってきている。

そういう時に、ブランドやサービスがどうやってお客さんとコミュニケーションするのかと言うと、他人の言葉を使ってもダメで、ストレートに言ってもダメ、みたいな感じです。結局どうなるかというと、一周回って「やってることそのもの」が評価される感じになってるんですよね。

亀山:なるほど。じゃあ、ちゃんと良いコンテンツを出さないと、もう誰も認めてくれないと。一周回って、結局良いものだけが広まりやすいと。

南坊:おっしゃるとおりですね。

亀山:じゃあ、マーケティングはいらないんじゃないかっていう話(笑)。

南坊:でも、僕はけっこう本当にそのとおりだと思っていて、「マーケティングは最終手段だ」ってよく言ってます。あくまでプロダクトがあって、それをどう伝えるかっていう伝え方のテクニックや手段の話なので。

プロダクトがないものを売るって、今はもうめちゃくちゃ難しいというか、簡単に(表面的な部分は)めくれてしまう、みたいな時代になってる。

亀山:ここはもう肝に命じないと(笑)。

南坊:そうですね(笑)。

亀山:お金を使ってCMを打てばいいってもんじゃないんだよ、という話。

企業の素性がばれやすくなっている

南坊:僕はそういう意味では立場上、今は代理店とかじゃなくてマーケティングを支援する立場なので。最近でいうと極論、「やらないほうがいいですよ。そんなことより、プロダクトをなんとかしたほうがいいんじゃないですか?」みたいな話はけっこうすることが多いです。

昔は仕掛けて売れることもけっこうあったし、もちろん今も仕掛けて売るやり方はたくさんあると思うんですが、ぜんぜん持続性がない。

亀山:そんなこと言ってるから、電通を飛び出すことになったんじゃない?(笑)

南坊:そうかもしれないです。結局、僕が電通から事業会社のメルカリに行った理由は、「本当に事業を伸ばす手段ってどうすればいいのか?」ということを真面目に考えたら、1回事業会社に行かないとわからないなと思ったのがけっこう大きいですね。

亀山:じゃあ、見かけを化粧をするだけじゃなくて、中身まで考えてやっていかないと本当のマーケティングにならないと。

南坊:そうですね。

亀山:なるほどね。そういった中で言うと、確かにいろんなものがめくれている。俳優とか企業とかいろんなものが、見かけは良くしていても、実態はどっかでひどいことをしてたり、過激だったり。そんな素性がすぐばれちゃうこととかよくあるから。

“見かけだけの活動”は生活者にも見抜かれる

南坊:経営をされてる中で、ESGやSDGsを意識されている経営者もいると思いますが、環境に良い、例えば「なんちゃら募金活動やってます」みたいなのって、「とりあえずポーズでやってるだけでしょ?」って、普通の生活者にすら言われることがけっこうあるんですよね。

亀山:「実際、バッジをつけてるだけで何もしてないでしょ?」とか。

南坊:そうですね。社長がSDGsバッジみたいなのをつけてるけど、みたいな。

亀山:ちゃんとやることやんないと、もうそんなものは生活者も見てるよと。

南坊:そうですね。ぜんぜんおもしろくない結論かもしれないですが、本当にそうです。事業そのものがわりと簡単にアクセスできる状態になってしまっている。ある意味、マーケティングで変に盛り上げるよりは、まず事業そのものがちゃんとしてるのを説明することが大事です。

例えば最近、「工場で何をやってます」みたいな『ジョブチューン ~アノ職業のヒミツぶっちゃけます!』的なコンテンツって、テレビ番組だけじゃなくて、YouTubeや企業のサイトで説明することが増えてきてるんです。

亀山:「僕たちの仕事を見てください」みたいな。グリコのキャラメルとかを宣伝するよりも、むしろ「工場の中でこんなふうに衛生管理して作ってます」というのを見せたり。

南坊:そうですね。

亀山:なるほどね。

南坊:DMM TVだったら、実際にオリジナル作品を作ってる人がどういう思いで作ってるのかを見せるとか。

あえて企業の裏側を見せる

南坊:要は、自分で調べるようになって、生活者のリテラシーは上がってるんですよね。なので、リテラシーが上がってるところに対して、「ちゃんとやってる」ということを適切に伝えることが、かなり効果的なのかなと思ってますね。

亀山:じゃあ、DMM TVなんかでも、一生懸命作ってる制作現場とかを放映したりすると、「あ、これだけがんばってんだ。見てやろうか」みたいなこともあるかもしれない。

南坊:そういうこともあるかもしれないですね。

亀山:そうか、そうか。じゃあ、自信のある舞台裏をあえて見せたほうがいいと。

南坊:そうですね。舞台とか、あとはプロセスですよね。「こういうふうに作ってます」みたいなのもありますし。もちろん、裏側でどう作ってるのかという話もそうなんですが、過程や舞台裏、あるいは想いとかが、実際にけっこう力を持ってきてるのはありますね。

亀山:なるほど。自分たちが見せたいところというか、いろんな熱い想いとかも含めて、見せるとこは見せたほうがいいし、逆に隠したいところはまったく見せないほうがいいと。

南坊:そうなんですよね。だから最近は、やはりPRの立ち回りが非常に難しくて。すぐ暴露するYouTuberが増えているという話もそうなんですが、わりと簡単に「裏側がある」って思われてるので。

例えば去年、回転寿司でいろいろ問題あったりしましたが、問題が起きた時のブランドの立ち回りにも、対応の差がけっこうあったりして。

亀山:確かにね。その時にどう対応するかっていうのはみんな見てる。

南坊:なので、そこの対応をミスってしまうと、本当に目に見えて売上が落ちたりすることが普通にあり得る話なので。

マスマーケティングにしかできないこと

亀山:実際、飲食店も裏側で食材が悪かったりすると、すぐにアルバイトにめくられたりするし、ちゃんとやることをやってないと(すぐに消費者にばれてしまう)。

そういった中で、もちろん実(じつ)が大事なのはよくわかるけど、それでもマーケティングというものがあるんだから、どうやって活用できるのかっていう話ですよね。そこはどうですかね?

南坊:そうですね。

私もテレビCMを作ったり、プランニングすることがけっこうあるんです。一時期、「やはりデジタルだよね」という話がすごく盛り上がって、亀山さんも登壇されてそういう話をされてましたよね。

亀山:いくらかかったらいくら戻ったって、効果がわかりやすいんだよね。

南坊:それは本当にそのとおりだし、やはりマスマーケティングが現状、完全に効果検証をするのは難しくて。なぜならユーザーの実態とデータがつながってないから。

もちろん、つながってるかのようにというか、いろんな分析するやり方はもちろんあるんですが、やはり100パーセントつながってるものではないんですね。

なので、マスマーケティングで効果検証は難しいし、お金もいっぱいかかるというところが前提としてあるんですが、今はちょっと見直されてきているマスマーケティングの効果があります。

それはモメンタムというか、勢いを作る同時性の話。あと、信頼感みたいなものを生むのは、やはりマスマーケティングにしかできないところがあると、私としては考えています。

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