2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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井上和幸氏(以下、井上):では、お時間になりましたので開始いたします。みなさんこんばんは。1時間半、あっという間の時間になると思いますが、よろしくお付き合いください。進行を務めさせていただきます、経営者JPの井上です。
今日は先生方を3名お迎えして進めていきます。クロストークでお話ししていきます。ぜひご遠慮なくチャットのほうに書き込んでいただけたら、我々のほうでもどんどん拾っていこうと思います。
3人の先生方にフリートークで本音話をいただいていこうと思いますので、よろしくお願いいたします。では大野さん、豊田さん、野田さん、今日はよろしくお願いいたします。
大野誠一氏(以下、大野):よろしくお願いします。
豊田義博氏(以下、豊田):よろしくお願いします。
野田稔氏(以下、野田):よろしくお願いします。
井上:今日参加いただいてる方でも、お三方のファンの方もいらっしゃるんじゃないかと思います。僕は、みなさん個人的にリクルートの大先輩であり、恐縮しきりです。冷静に考えると非常に話しにくい状況ではあるんですけど(笑)。
(一同笑)
でもずっと甘えさせていただいていまして、いつもいろんなことを教えていただける3人のみなさんをお迎えしましたので、非常に楽しみです。簡単にプロフィールですが、お一人目は大野誠一さん。リクルート時代は編集長として、あと広報で非常に活躍されました。その後パナソニックさんとか、いろいろ活躍をされてます(笑)。
今日は3人の先生方が共同でやっていらっしゃる、ライフシフト・ジャパンの研究の成果を中心におうかがいしていければと思います。大野さんが、ライフシフト・ジャパン社の代表取締役CEOを務めていらっしゃいます。
同じくライフシフト・ジャパンの取締役でいらっしゃる、豊田さんです。豊田さんも制作と編集で非常にご活躍をされましたが、リクルートワークス研究所で著書等も出されています。そういったかたちで存じ上げていらっしゃる方も多いのかなと思います。豊田さん、今日はよろしくお願いいたします。
豊田:お願いします。
井上:野田稔先生にも登場いただいています。リクルートは、いろんな変遷の中で経営陣の体制を作ってきましたが、今リクルートはプロパーじゃない方が関わるケースが増えていると思いますが、リクルート事件とかが起きるまでで言うと、江副(浩正)さんは創業期から比較的、外の方をどんどん登用していたと思います。
その後かなり中の体制が充実したこともあって、僕が振り返ると事件後の1990年代とかはかなりプロパーの方々が経営するなど、リクルートも内向きな感じになっていた時期があったかなと思います。
そういうところに野田さんが入ってくださって、風を与えてくれて。わりとそこからリクルートは次のフェーズに向かうみたいなこともありましいた。野田先生は、人事・人材関連含めて著名な方ではいらっしゃいますが、その関わりでもお世話になっていまして、現在はライフシフト・ジャパン社のフェローも務めていらっしゃいます。野田さん、今日はよろしくお願いいたします。
野田:よろしくお願いします。
井上:今日は「社員を主役にしていこう」を1つのメッセージとして、お話をいただくんですけれども。
ライフシフト・ジャパン社がどんな活動をしてこられて、今どんな論点を持っていらっしゃるか。そして、「KX」というコンセプトの具体的な話や、これからどんなことが起こりそうかといった最新の情報をお話くださると思います。
後半に15分ぐらい、みなさんからのQ&Aの時間もとりますので、ぜひご質問をいただきたいと思います。前口上は以上です。
さっそくですが、大野さんからライフシフト・ジャパン社について、ご紹介いただければと思います。
大野:ライフシフト・ジャパン代表の大野です。今日のキーワードは「KX」ですが、なんとかトランスフォーメーションは最近の流行りで、いろんな「〇X」があるわけです(笑)。
私たちは「カイシャ・トランスフォーメーション」ということで「KX」というキーワードを使っています。画面右側にありますね。Kが蛹で、蛹が蝶に変わっていくこのビジュアルです。
「なかなか昭和モデルから脱皮できない日本の会社ってまだいっぱいあるよね」という思いを、「蛹から蝶へ脱皮していきましょう」みたいなビジュアルで表して、KXとお伝えしています。
今日はこれまで私たちがKXに関して、どんな議論をしてきたかをご案内をさせていただきます。今日ここに参加いただいている経営者のみなさんと、今後このテーマでのお話を続けていくことができればうれしいなと思って、参加させていただいております。みなさん自身がこのテーマを自分事、自分の会社事として聞いていただけると、非常にうれしく思います。
大野:まず簡単に私たちの自己紹介ですが、「人生100年時代」という言葉が一般に広まって随分経ちます。このことで、一人ひとりの人生観や働き方、生き方が随分変わっていくだろう、人生100年時代と言われる超長寿社会をみんながワクワク、楽しく生きていける世の中を作りたいよね、とそんな想いで集まっているソーシャルベンチャーです。
「ライフシフト社会を作りたい」と謳っていますが、ライフシフト社会が何かについて、まだまだいろいろ議論があると思います。そもそもライフシフトという言葉の定義が、まだ社会的にオーソライズ(公認)されたものではないと思うので。
いろいろなとらえ方をする方がいらっしゃると思いますが、私たちは「一人ひとりが自分の価値軸に基づいた生き方や働き方を選択できる、選択肢の多い社会」という意味で基本的には考えています。
『LIFE SHIFT』という本が提示した「マルチ・ステージ型」の人生観ですね。日本は学びのステージ、仕事のステージ、引退のステージという旧来の「3ステージ型」の人生観が世の中のオペレーション・システムにガチッと組み込まれているところがあります。
新卒一括採用、年功序列人事、定年制という、この3点セットで社会が運営されてきたので、個人がマルチ・ステージに移行するのは大変だとは思っていて、だからこそ、さまざまな視点から提言をしていきたいと思っています。
実際にやっていることは大きく3つです。1つ目は個人のロールモデルをたくさん発掘してプロモーションしていく。
ライフシフトを実践している人はどんな人かを丁寧に拾い上げていこうと、ライフシフトのインタビューを地道に続けています。この活動からいろいろなツール開発やコンテンツ開発につなげています。
2つ目として、ワークショップや1on1のダイアログを通じて、一人ひとりのライフデザインを一緒に考える場を提供することに、今一番力を入れています。
そして、3つ目ですが、今後、個人の生き方や働き方の選択肢を広げていくためには、会社というものがどう様に変わっていくかが非常に重要だという観点で、「カイシャの未来研究会2025」という活動を続けています。野田先生にもこの研究会のスタートの時からコミットメントをいただいています。
今のコアメンバーはカゴメの有沢(正人)さん、元ユニリーバの島田(由香)さん、サイバーエージェントの曽山(哲人)さん、サイボウズの中根(弓佳)さんといった人事・HR関係で一家言持っていらっしゃるみなさんであったり、企業の現場で戦っていらっしゃる方、フリーランス協会の平田(麻莉)さんといったメンバーです。こんな方々と非常にフランクな議論をしながら、提言をしていこうと思っています。
大野:「カイシャ」をカタカナで書いているのは、昭和モデルの古い日本企業のことを、あえてカタカナの「カイシャ」という表現をしています。また、2025年は昭和100年にあたるので、昭和100年になるまでには昭和モデルから脱皮しようよという、そんな思いから研究会の名前を付けました。
井上:なるほど、昭和100年なんですね。
大野:ええ。2025年は昭和100年なんです。あとちょっとですね。だから今年は、実は昭和98年なんだよね(笑)。
井上:(笑)。
大野:日本の会社が、岩盤のように変わらないところがあるので、これを変えていこうということで、昨年の1月から「カイシャ・トランスフォーメーション」というテーマで連続するセミナーをやったり、「KX部会」みたいなことを立ち上げていろんな実験をやってきました。
今日はそんなお話を交えてご紹介して、みなさんからもいろいろ意見や感想をいただきたいと思います。できればこのあと継続的にお話をしていきたいと思っていますので、ぜひよろしくお願いいたします。
井上:今お話が出ましたが、KX部会での議論を今すごく活発にされていらっしゃるということです。ここまでどんな話があったのかを、豊田さんからご紹介いただけますか?
豊田:はい。あらためまして、ライフシフト・ジャパンの豊田です。よろしくお願いします。今、大野さんからどんな経緯でやっているか、アウトラインの話がありました。研究会そのものは2018年、5年前に発足して、実はかなり長くディスカッションをしています。
毎年いろんなかたちで「こういうことを大切にしよう」という発信の場を持って、いくつかのキーワードを今までも発信しています。2019年には「会社を出会いの社にしよう」。いろんなかたちの出会いが実現する場にしよう、というコンセプトを掲げたり、「ヒト・ドリブン」というキーワードを基に、いろんな企業のベストプラクティスや、私たちが考えるビジョンについても探索をしました。
実はヒト・ドリブンカンパニーとしてどんな会社があるか、以前井上さんに相談して、経営者JPでインタビューの連載をした企業の中から何社か、すばらしい会社に出会わせていただきました。
KXというキーワードを基に始めたのが昨年で、先ほど、昭和モデルから脱却できないのがカタカナのカイシャだと大野さんからもお話がありました。それを壊して、人生100年時代にふさわしい会社を作る。なおかつ社会変革のムーブメントにしていきたいと、風呂敷を大きく広げています。
豊田:いろんな経緯や、込めている思いもありますが、具体的にどんな世界観なのか。5つのコンセプトを聞いていただくと、たぶんご理解いただけると思います。この各論の部分を、さっそくご紹介したいと思います。
ここ(スライド)にグニャグニャとした絵があります。左下に「“わがまま”セントリック」「“旅の仲間”バラエティ」「“つながり”リデザイン」「“想い”ドリブン」、そして「“変態”インフィニティ」と、ちょっと変な言葉が並んでいる部分もありますが、それぞれご説明していきす。
井上:ネーミングがアーティスティックですね!
豊田:まず「わがまま」と書いていますが、これはあえて言葉で言うと「我がまま」と、「わ」にイントネーションを置こうじゃないかと。実はこの「わがまま」というキーワードを発信していただいているのは、カイシャの未来研究会メンバーの島田由香さん。ご存知の方もたくさんいらっしゃるかと思います。
長くユニリーバで人事ヘッドをして、昨年ユニリーバを辞めて、さらに自由なかたちでいろいろ活動されている方です。その島田由香さんが「わがままは確かに問題だけど、もっと一人ひとりが『我がまま』である、まさに自分の思うがままにある状態はすごく大切で、これをちゃんと本当に会社のど真ん中に置けることが大切だと思う」と。そのキーワードを、この5つのコンセプトの中核に置いています。
一人ひとりが「我がまま」である状態を引き出す。もちろん、何でもオープンにしあえる場であることが前提になりますし、誰か1人が我がままであったら、それは逆にわがままになってしまう。みんなの我がままを実現したい。でもなかなか自分自身がどうあるかを、実は感じられてない人がいると思います。
自分自身をもっと感じたり、信じたり、なおかつ一人ひとり「自分がまさに人生の主人公だよ」と囁き続けあえる。会社の中でよく行動指針があって、それが個人を誘発することがありますけど、そういうことにもつながると思います。
豊田:2つ目のキーワードが、「“旅の仲間”バラエティ」。
旅の仲間とは私たちが個人に提供しているワークショップの中でもとても大切にしているキーワードです。ライフシフトの旅には旅の仲間が欠かせませんから。そして会社が、バラエティがあっていろんな人にあふれた場になれば、一人ひとりが生き生き・ワクワクできる。人生の主人公になれる。
でも、会社の中の役割に扉を閉めて、一人ひとりがどういう人かがなかなかわからない会社もたくさんある。一人ひとりを見える化したり、いろんな人のあり方、「人生に口出しをしよう」。これ実は、野田さんが大切にされてるキーワードをいただいているんです。
あるいは複業という言葉がずいぶんキーワードになりましたが、何かに専業するのではなくて、いろんなかたちで「かけもち」をすることが、ニューノーマルになる世界を目指したい。
旅の仲間というと、例えば採用とか雇用という従来の、本当に昭和的な感覚の言葉を脱して、もっと広いかたちで仲間づくりをしていきたい。そんなキーワードとしての「“旅の仲間”バラエティ」。
次は「“つながり”リデザイン」です。
この研究会の基本スタンスは「会社なんてないよね」。人と人のつながりそのものが会社なんだという会社観をベースに持っています。ですので、そのつながりを再創造することが、会社そのものを再創造することになる。
例えば「誰それさんはこの会社のこういう職種で、こうだよね」ということによって、それぞれの人間の持ち味を殺していることがたくさんある。「会社の一員」というレッテルを剥がそうじゃないかと。いろんなかたちでいろんな人をつなげる、縁結びをしあう、化学反応が起こるような場づくりをする。必然的に上下とか内外をどんどん撤廃していく。
会社があまりにも大きくなってしまって、心が通わない状態になることもあるので、心が通うサイズにしていく。大きな会社であってもそれをユニットに再編すると、いろんなかたちでちゃんと心がつながる。必然的に会社を超えるつながりそのものも大切にするということです。
豊田:4つ目が、「“想い”ドリブン」。
「想い」には2つの意味合いがあります。ひとつは、どういう社会を作ろうといった会社のビジョンという意味合い。一方でそうした会社のビジョンの想いも、一人ひとりの個人の想いの集積だったり、あるいはそれにどれだけ共感できているか。私たちがここで「想い」と書いたのは、一人ひとりの個人の想いです。それがまさに経営の中核であるというスタンス。
「未来の話をしよう。青臭い話をしよう」。実はこういう話ができていない会社がたくさんある。妄想も、KXの活動では1つキーワードになっています。これは「妄想が趣味なんだよね」という野田さんの発言から生まれているんです。そうしたワクワクする妄想から、いろんな想いがどんどん実現していく。
でも一人ひとりが想いを忘れていたり、気づいていないこともたくさんある。気づける場にしていきたいし、会社と一人ひとりが想いでつながったり、会社の想いそのものもみんなで作っていくという状態を目指したい。
最後の5つ目が「変態」。
蛹から蝶に変わっていく変態を、人も会社もそうだと考えた時に、やはり会社が中心ではなくて人が中心になる。「主権在民」、これはカゴメの有沢さんがカゴメの変革をする上で、キーワードにしている言葉ですね。主権在民でいこうじゃないかと。一律とかではなく、制約をどんどん解き放っていく。
ここでも「未来」はキーワードですね。つなぎとめるではなく、変わり続ける。リテンション(保持)ではなくてアトラクト(魅了する)の方向に。これも実は有沢さんのキーワードです。雇用よりも人生の「生き生き」に責任を持っていこうじゃないかと。
豊田:5つのコンセプトそれぞれに5つ、計25のゴールがある。掛け言葉でSDGsのように、「KXGsだよね」という言い方をしていた時期もありました。
このコンセプト、ゴールが実現すれば、もちろん個人個人が生き生きすることにつながりますが、会社そのものにもいろんなことがもたらされる。最終的にはいろんな新しいもの、イノベーションがどんどん生まれるところまで行けるだろうと考えています。
こうした実現が、私たちが大切にしたいライフシフト社会にもつながる。だから社会実装して、社会変革につなげたい。そんなことをずっと議論をして、発信をしている。それがここまでのコンセプトのアウトラインです。
井上:ありがとうございます。あらためてうかがっていると、前提として、いわゆる昭和型の「カイシャ」はいろんな意味で押し込めていたり、型にはめていることが多いんですかね。
豊田:そのへんは私より、野田さんにしゃべってもらったほうがいいかなと思います。
井上:野田さん、お願いします。
野田:昭和20年より前は、会社じゃなくて国家ですよね。国家という枠で人間が縛られて、「国のために死ね」と言われたわけですよ。おかしな話じゃないですか。だって国民が集まって国なのに、その国というわけのわからんもののために、国民が犠牲になるのは本当におかしな話。
昔は「国体」という言葉があったんですね。「国体護持」という言葉があって、国というものを奉っていた。戦後これが解体したのはいいんだけど、国体と同じように「会社体」ができてしまって、会社が命になっている感じがしてしょうがなかったんですね。
そもそも会社はカンパニー、コンパですから。1人ではできないことをみんなで集まってやるために作ったにもかかわらず、なぜか知らないけれどもその会社が一人歩きをし始めて、人間を縛りつけていく。これはちょっときつい言葉で「隷属」という言い方を、私たちはしています。
「主権在民」とカゴメの有沢さんも言っていたけど、「会社」を主語にするのはそろそろやめにして、これからは「社員」を主語にしていかないと、本当の意味でのクリエイティビティは無理だと思います。生成系AIが出てくると、人間にしかできないことを最大限やった会社だけが勝ち残っていくから、もっともっと社員を主語にしないといかんと思っているんですよね。
野田:ここで「コンヴィヴィアル(convivial)」という言葉に私が出会って、「コンヴィヴィアル・カンパニー」なる言葉を勝手に言い始めました。
コンヴィヴィアルは英語でして、辞書を引くと形容詞です。「convivial party」というと、パーティーなんかが愉快で楽しいとかね。「convivial person」と言うと宴会好きな人とか社交家の人という意味で、もしくは雰囲気が良い、感じが良い、居心地が良い、みたいな意味で使われるんです。
社会学ではこれが「自立共生」と訳されることが多い。もともとconvivialとは、ラテン語の「convivere」という言葉に由来する言葉です。Conは「共に」、Vivereは「生きる」という意味ですから、「Live Together」です。共に生きることが転じて、愉快とか楽しいとか、気持ちが良い、感じが良いなんて意味になっていった。
今「心理的安全性」と言われていますけど、私はその先があると思っていて、それがまさに「共に生き生きと生きる」ではないかと思っています。まさにコンヴィヴィアルな会社にしていくことが心理的安全性の次の段階として重要かなと思ってます。
コンヴィヴィアルという言葉はオーストリアの哲学者の、イヴァン・イリイチという人が言い始めたんですね。イヴァン・イリイチは難しいことを言う人だけど、「産業とか技術は人に奉仕をするために作ったのに、なぜかその産業・技術が人を隷属させることになる」と主張しました。
会社も同じだということで、私は「本来人の能力を最大限発揮させ協働のための道具であるはずの組織が、人を隷属させ、人の全能力発揮を妨げている」と言っています。
組織のためのメンバーではなく、メンバーのための組織に回帰すること。これがコンヴィヴィアル運動かなと思っています。
ということで、ちょっとややこしい話もしましたけど、こんなことを今進めようとしている。逆に言うと、会社が人を縛っていることを前提にして、これを打ち破ろうとしていると、我々はとらえています。
井上:おもしろいですね、コンヴィヴィアル。国もそうだし企業は、人のために作られたものが人を隷属させる感じになってしまう。人のほうが隷属しにいっていたり。
野田:あぁ、それはありますね。
井上:日本的経営と言われたもので、終身雇用の話とかが出てくると、昔よく聞いた話で、会社の考えとして「言うとおりにしろ、悪いようにせんから」みたいなね(笑)。
野田:そうそう、まさに人生を預けてしまうとね。僕が典型的だなと思っているのは、会社って、人事に年金手帳を預けるでしょ。あれってすごい象徴だと思いません?
井上:確かにそうですね(笑)。
野田:年金手帳を会社に預けるって、冗談じゃないよね。ごくごく普通に我々、年金手帳を会社に預けていたわけで。あれはまさに「キャリアを会社に預けています」ということの象徴かなと思うんです。
その代わり会社は「悪いようにはしないよ」と言っていたのが、バブルが崩壊して、リーマンショックのあとに「キャリア自律」とか言い始めたわけですよ。もう会社は一人ひとりのキャリアに責任を持てない。「あとはお前ら勝手にやってくれ」。
井上:「急に言われても」みたいな(笑)。
野田:あれだけ「悪いようにはしないから言うことを聞け」と言っていたのに「ごめん、もう責任持てない」って、まぁ無責任な話じゃないですか。でもね、所詮企業はそんなもんだから、もっともっと我々自身が企業を使い倒すぐらいにならないといけない。これが僕たちの考えですね。
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