CLOSE

第999回 仕事に効くパワーワード『私的な強みは公益となる』(全1記事)

ドラッカーの言葉「私的な強みは公益となる」が示す視点 「働く」を「お金をもらう行為」以上に高める考え方

日本最大のビジネススクール「グロービス経営大学院」が、ビジネスパーソンに向けて、予測不能な時代に活躍するチャンスを掴むヒントを配信するVoicyチャンネル「ちょっと差がつくビジネスサプリ」。本記事では、ピーター・ドラッカーの言葉「私的な強みは公益となる」について語られました。 ■音声コンテンツはこちら

ドラッカーの言葉が示す視点

中村直太氏:グロービス経営大学院の中村です。このコーナーでは、心に響いた言葉をシェアしながら、仕事やキャリアに役立つヒントをひもといていきます。今回の言葉は「私的な強みは公益となる」です。みなさんのこの言葉、どのように受け取られたでしょうか? 

ご存知、経営学、マネジメントの大家である(ピーター・)ドラッカーが、組織の基盤となる原理として説いたのが、この「私的な強みは公益となる」です。

私的な強みとはどういうことかというと、組織に属する個人の強みを指します。つまり、組織に属する私たち一人ひとりの強みが、結果的に広く社会の利益を生んでいるというものの見方です。

組織も事業も概念であり、実態はなく、その実態をなす主たるものは、私たち人間一人ひとりであるとして、その個人の強みに焦点を当てています。

今、各所で人的資本経営や個を活かすマネジメント、人間中心の経営など、さまざまな表現をされていますが、いずれにしても働く個人へのフォーカスを強めようとする大きな流れを感じます。

私的な強みが公益となるとしたら、経営者やマネジメントの重要な仕事とは何でしょうか? それは個人の私的な強みをしっかりと見出し、その強みを自社の営むビジネスの中で、どう活かしていけるかを見定め、社会の価値創造と結びつけていくことではないでしょうか。

ドラッカーは経営マネジメントの1つの理想形として、一人ひとりの強みが公益、つまり世のため人のために、結びついている状態を描いたそうです。

最近ご一緒させていただいた経営者の方が、こんな話をされていたのを思い出します。「昨年従業員が100名を超えました。100という節目の数字を前に、私は100の才能を預かっていることに気づきました。何とも言えない責任と恐怖心が湧いてきました。

同時にその預かっている100の才能を、今よりももっと社会に還元していきたいと思いました。そうでなければ、私は社会の大切な資源を無駄遣いしていることになりますから」。そんなお話でした。

まさに一人ひとりの才能を活かして、社会に価値を生み出す経営者の責任を語っておられるように思います。崇高な話を聞かせていただいたので、この「私的な強みは公益となる」というドラッカーの言葉が、今の自分の心に刺さってきたのではないかと思います。

「働く」を「お金をもらう行為」以上に高める考え方

視点を変え、働く個人としてはどうでしょうか? 自分の私的な強みを認識できているか。その私的な強みを組織で発揮して、公益につなげる努力をできているか。そんなふうに自分に問うことができそうです。

組織に自分の強みを見出してもらおう、上司に見出してもらおう、活かしてもらおう、とただ待つのではなく、自分で自分の私的な強みを公益につなげる責任を持つ。主体的な働き方がイメージできます。

そのためには、組織が掲げるビジョンや戦略、つまり何に力を入れてどう勝とうとしているかをしっかりと理解して、その大きな流れの中で、自分自身の私的な強みの活かし方を、自らで模索していく必要があるのではないでしょうか?

簡単なことではありませんが、挑戦する価値はありそうです。なぜなら人間には自分を生かしながら誰かの役に立ちたいという、根本的な欲求が備わっていると私は思うからです。

私はまだまだですが、3年前からその意識を強めて、組織や個人の活動を通してどのように社会に役立てるのかを常に問いながら仕事をするように心がけてきました。

私的な強みを活かすことができれば、そしてそれによって、誰かの何かの役に立っている実感を持つことができれば、働くという行為が単に「お金をもらう」以上のものになるはずです。

「私的な強みは公益となる」は、マネジメントの観点からも、働く個人の観点からも、とても希望を感じる言葉だと思います。

誰にとっても幸せな姿であり、あるべき自然な状態

稲盛和夫さんは、「個人の才能とは、集団を幸福に導くために与えられた資質のことだ」とおっしゃっていました。だからこそ、たまたまその個人が預かった才能は、自分のためにだけ使うのではなくて、社会のために使われるべきだと唱えておられました。

マネジメントからでも個人からでも、両方からでもいいですが、私的な強みが公益につながっていく姿は、誰にとっても幸せな姿であり、あるべき自然な状態なのではないかと思えてきました。ことあるごとに「私的な強みは公益となる」という言葉を思い出して、一歩でもその状態に近づけるように努めたいと思います。

まとめます。あらためて今日の言葉は「私的な強みは公益となる」でした。それは組織に属する私たち一人ひとりの強みが、結果的に広く社会の利益を生んでいるということであり、マネジメントする側、される側の両視点からの意味合いを考えてみました。

こんなことが考えられるかもしれません。組織が生み出す価値に自分の強みはどう活かされているか。より活かされるために何ができそうか。ピンとくることがもしあれば考えてみてください。

今回も最後まで聞いていただきありがとうございました。今日もすばらしい1日をお過ごしください。

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
著者フォローや記事の保存機能など、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

会員の方はこちら

関連タグ:

この記事のスピーカー

同じログの記事

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

  • NTTドコモの社員でありながら6社で副業する山田崇氏 企業人材が紡ぐ地方創生と次世代キャリア形成の可能性

人気の記事

新着イベント

ログミーBusinessに
記事掲載しませんか?

イベント・インタビュー・対談 etc.

“編集しない編集”で、
スピーカーの「意図をそのまま」お届け!