“株式会社スピードワゴン”をお金のプロが評価
井戸田潤氏(以下、井戸田):例えばなんですが、我々スピードワゴンが「株式会社スピードワゴン」ということにして、どのくらいの投資の価値があるか、面談しながら将来性などを聞きたいなと思います。
小沢一敬氏(以下、小沢):(ふだん企業を)どう調査しているか、見せてください。
ナレーター:というわけで、運用メンバーが即興で調査。株式会社スピードワゴンに未来はあるのか?
井戸田:本日はよろしくお願いいたします。
八尾尚志氏(以下、八尾):よろしくお願いいたします。
内藤誠氏(以下、内藤):よろしくお願いいたします。
井戸田:ようこそお越しいただきまして、ありがとうございます。株式会社スピードワゴン代表取締役社長の井戸田でございます。
八尾・内藤:よろしくお願いいたします。
井戸田:もう、何なりと質問していただいて。
八尾:わかりました。ではさっそくですが、お二人が会社を始められたきっかけは何ですか?
井戸田:私が小沢さんを誘って声をかけて、「ちょっとお笑いで一花咲かせようじゃないか」ということで、当時は名古屋に住んでいたんですが、東京に先に出てきた私が小沢さんを迎えに行きました。
八尾:なぜ小沢さんだったんですか?
井戸田:養成所の頃は別々のコンビだったんですが、小沢さんのコンビはとにかく優秀で。
小沢:社長……!
井戸田:名古屋の養成所の中では、初めて関西の賞レースで優勝したんだよね。
小沢:社長、もうよしましょうよ。
(一同笑)
井戸田:それで、「これはすごい。逸材だ」ということで、名古屋の芸人界隈では非常に話題になりました。僕も才能に惚れ込みまして、小沢さんに声をかけたんです。
八尾:なるほど。
2人はどのようにコミュニケーションをとっている?
八尾:会社という中で見た時に、25年ずっと一緒にいらっしゃるわけじゃないですか。当然、お互いに腹が立つ時もあれば、いろいろ意見が分かれる時もあり、どういうふうに2人でコミュニケーションをされていらっしゃいますか?
井戸田:ネタ作りとか、ネタをやる前後に意見のぶつかり合いがあります。ネタをやった時に、とちっちゃったけどそれをどう回避するかでいうと、最近だと……これは恥ずかしい話ですが、帰りのタクシーの中でお互いがLINEをし合うという修復の仕方です。
小沢:「あそこはこうしたほうがよかったね」「(次は)こうしようか」とか。
井戸田:「あそこはこうしようか」と事前に口合わせをすると、次にネタをする機会があった時は(2人とも)共通してできるので。
八尾:モメて、「お前と口を聞くか!」と言って1週間離れるとか、そういうことはぜんぜんないんですね。
小沢:そんなことは今はないですね。若い頃、僕は「二度としゃべりたくない」と思ったことが一度ありましたけどね。
井戸田:なんで?
小沢:僕に内緒で、安達祐実と結婚した。
(一同笑)
井戸田:内緒じゃないのよ。全国に発表したよ。
小沢:僕はあれを雑誌で知った時はショックでしたよ。
井戸田:結婚発表をすることは、小沢さんには直接は言わなかったんですけど、お付き合いしているというのは言っていました。
小沢:あと、最近もありました。
井戸田:何?
小沢:去年の夏に結婚されたんです。
八尾:存じ上げています。
小沢:ありがとうございます。先々週、「結婚式やるから。でさ……」と電話がかかってきまして、「何月何日、空けといて」と言うのかなと思ったら、「お祝いのVTRを送ってくんない?」と言われて。僕、式に呼ばれないみたいです。
(一同笑)
井戸田:近親者だけでね。
小沢:「家族だけでやるから」と言われた時に、私は家族ではなかったんだと……。
(一同笑)
スピードワゴンのネタ作りの裏側
八尾:なるほど。ちょっとガラッと変わりまして、最後の質問なんですが……。
井戸田:そうしてください。
八尾:ネタを作られた時に、すごくおもしろいものができましたと。この後、どういうふうにブラッシュアップしたり、あるいはどういうふうに作っていくんですか?
「たまたまできる」と「恒常的にできる」というのは、やっぱりすごく違うわけじゃないですか。つまり、再現性をどういうふうに作っていますか?
井戸田:これは小沢さんかな。
小沢:我々は一応、自分たちで主催して、定期的にずっと漫才ライブをやっています。漫才って、最初に作るとだいたい10分くらいあるんですけど、テレビだと5分くらいにしなきゃいけないので、自分たちの主催ライブ以外にも出るようにしています。
若い子たちと一緒に(ライブに)出たりして、そこでいらないところを切っていったりしている感じです。新しいネタはどんどん作っていますね。でも、どこでやってもウケるような漫才は、1年に1本できればいいくらいというペースでずっとやっていますけどね。
結成当時と今、立ち位置にはギャップがある?
内藤:結成当時に思われていた、20年後、25年後の立ち位置を振り返った時に、過去に思っていたことと、今の立ち位置にはどういう違いがありますか?
井戸田:ぜんぜん違いますね。
内藤:それは、上でも下でも?
井戸田:いやいや。もっと売れていると思っていたので、最終的に「ハンバーグ」って言っているとは思っていなかったですからね。
(一同笑)
井戸田:日本一の漫才師を目指して、名古屋から東京に出てきたんですよ。最初は漫才をやっていたんですが、いつからか「甘〜い」って味覚を叫ぶようになって、今はお惣菜を叫んでいますからね。
内藤:なるほど。
井戸田:最初の目標としては、わかりやすくダウンタウンさん、とんねるずさん、ウッチャンナンチャンさんとか、コンビで冠(番組)を持ってバンバンやっていくのが理想像ではあったんですが、そこにはまったくたどり着いていないですね。
ただ、そこはまだ諦めていなくて。今日でも2人で、こういうふうにカメラがあって、みなさんのお話を聞くMCに立たせていただけているのはものすごくありがたく感じているので、まだまだこれからやれるなと思っています。
小沢:どうですか? 社長、アツいでしょ?
(一同笑)
内藤:アツいですね。
小沢:これでお願いします! 社長の熱さにBetしてください!
井戸田:なんとか株を買ってください!
パフォーマンスは「再現性」がとても重要
ナレーター:みなさんなら、株式会社スピードワゴンに投資しますか? 2人の見解は?
八尾:非常にフラットな関係だというのはよく伝わってきました。僕はいつも「再現性」にはすごく注意しています。たまたま波に乗って当たることと、凪の時でも同じパフォーマンスが出せるかはまったく別なので。
井戸田:そうですね。わかる。
八尾:再現性をどう担保するのか、すごく見させていただきました。
小沢:投資しますか?
八尾:します。
(一同笑)
八尾:即決しちゃいましたが、とりあえず漫才を見に行きます。
井戸田:ありがとうございます。内藤さんはいかがでしたか?
内藤:過去、25年前に立てられた目標と、今の立ち位置は違う。やっぱり柔軟性があるから、目標を変えながら今の地点にいるんだなとすごく感じました。
小沢:投資は?
内藤:します。
小沢:ありがとうございます。
井戸田:具体的に何をするの?
小沢:そうなのよ。
(一同笑)
藤野英人氏(以下、藤野):(今回は)時間がなかったので仕方がないんだけれども、もし時間があって、「スピードワゴンさんがよりよく成長するためには、どういうことができるのか」という議論になったら非常に相手のこともわかるし、相手にとっても生産的だと思う。
井戸田:時間があったら、我々もそれは聞きたかったですよね。
人生において「お金」はパーツの1部にすぎない
藤野:当然、僕らはそっち(お笑い)の業界に詳しいわけではないので、業界のことを聞いて、最新の成功事例を聞いて、お二人の関係性の中で何ができるのかを僕らが想像する。
かつ、他の成功事例は他社の例で知っているので、そこで何を当てはめたらいいのかという話をしていくと、相手にとっても非常に「この話をしてよかったな」と思ってもらえる。
「八尾さんと内藤さんと会ってよかったから、もう1回会いたいな」と思うようになるし、そういうやり取りをするうちに深い話ができるので、実は「投資できる? できない?」の話がもっとわかることになります。時間があったら、おそらく彼らはそれをしていたと思います。
小沢:大切なのは、人と人がやっていることが新しい何かを生んでいくんだということですか?
藤野:まさにそれが、お金の学び場で伝えたいことなのですよね。ここに「ENERGY=ownership×time×money×decision×luck」と書いてあるじゃないですか。この中で、moneyはごく一部ということですよね。
小沢:そうか。生きる上でのエネルギー・活力で、moneyは(あくまでも)1つもの。
藤野:投資というと、「お金でお金を解決するものだ」「お金でお金を増やすものだ」と思いがちです。お金というのは大事だけど、パーツの1つでしかないということです。
小沢:その最高のコメントはAIに教わったんですか?
藤野:(笑)。
井戸田:だったらがっかりです。
AI時代は「情報そのもの」の価値が低くなっている
ナレーター:そんな企業調査のプロにうかがいます。10年後の2033年、AI時代を勝ち残る企業とは?
井戸田:さあ、それでは見てまいりましょう。まずは藤野さん、お願いします。
藤野:「形のあるもの、心が大事」。ChatGPT、AIが出てきたことで劇的な影響があって、情報をあまりにもすばらしく整理できるから、情報そのものの価値が低くなってくると思うんですよ。
小沢:「世の中で一番価値あるものは情報だ」なんて言われている時代ですよね。
藤野:そうなんです。なので、それよりも「増やせないもの」が大事です。例えば農業は、長期的には(農作物の生産量を)増やせるけれども、米やトウモロコシや豚を一気に10倍にはできないですよね。
もしくは資源や人材・労働力であったり、今までどちらかというと評価されていなかったものがとても大切になると思います。
あともう1つは、心は情報じゃないので、人間の心やつながり・触れ合いみたいなものの価値が高まってくると思います。
小沢:感情、ということですか?
藤野:感情もそうですね。
成功の情報は共有されるが、失敗の情報は除去される
藤野:成功よりは失敗が大事になってくる。なぜならば、成功の情報は全部共有されるけど、失敗の情報は除去されるからです。
小沢:なるほど。
藤野:だから、個人的な体験や思い出であったり、そういうものの価値がすごく上がってくると思います。なので、その面で見ればすごく劇的な変化があると思います。
井戸田:逆に、人と人がより会うようになってくる可能性もあるということですか?
藤野:そうなんですよ。昨日、たまたまある飲み会があったんです。コロナで一回オンラインが中心になって、「飲み会の価値って減るよね」と思っていたんだけど、会って話をするとか、飲み会の価値が、実はChatGPTが出てきてめちゃくちゃ上がったと思うんですよね。
例えば、医療、弁護士、会計、お金のアドバイスというのは、ChatGPTに聞くと90パーセントくらい正しい答えが、ほぼタダで手に入るわけですよ。
井戸田:そうですね。
藤野:並の弁護士、並の会計士くらいの回答は出てくるので、あと1年、2年経ったら、たぶんトップクラスの弁護士・トップクラスの会計士の答えが(ChatGPTから)出てくると思うんですよ。
そうすると、エリートだと言われていた人たちの価値が、逆にすごく落ちる可能性がある。でもその代わり、AIが普及することによって、価値がなくなると言われていた単純作業や手を動かす人たちの価値が上がる。だから、すごくおもしろい社会になるんですよね。
井戸田:なるほど、おもしろいですね。逆に進んでいくんじゃないか? という発想ですね。
小沢:より人間の時代になるということですね。
藤野:中途半端なアイデアはすべてChatGPTで出ちゃうから、それよりも「やるか・やらないか」みたいな話だったり、生き方も変わってくると思いますよね。
小沢:シンプルな時代。すばらしい。
AI時代を生き抜くポイントは“エモーショナルさ”
井戸田:じゃあ八尾さん、お願いします。
八尾:私はこちらです。
井戸田:「AIで変わる感情」。
八尾:はい。AIがあちこちに実装されて、ある意味、情報がみんなにとって満遍なく行き渡るようになっていくと、今度はそこから出てくる感情の重要性がより大切になっていく。
先ほどの「人と会う」というのもそうですし、よりエモーショナルなものを生み出すものは何か。特にアートとか。つまり、きれいなものは生成できるんだけれども、衝撃みたいなものとか、いかに感情を揺り動かすようなものが出るのか。
小沢:AIは、いわゆるきれいな完成品を作るのは得意だけど、「これは何が描かれてるの?」(というエモーショナルな作品は)は作れないということですよね。
八尾:そういうことですね。「なんかわからんけどスゴいぞ」みたいな。例えばピカソを見ると、そういうのってあるじゃないですか。
もしかしたら家作りもそうかもしれないですよね。きれいなデザインはできても、エモーショナルなものや、建った時に何かを呼び起こすようなものがあるかどうか。(AI時代を勝ち残る要素は)そういうことかなと想像してます。
小沢:感情の時代、やっぱり人間の時代ですね。
井戸田:わかりました。
人口減少は、日本にとって逆にチャンス?
井戸田:じゃあ内藤さん、お願いします。
内藤:私は……。
小沢:急にサイコパスみたいなことを書いていて、怖いのよ。
(一同笑)
井戸田:「人口減」。
小沢:10年後ですよ?
内藤:はい。
井戸田:2033年。
内藤:人口減少は、日本だと絶対に来るお話じゃないですか。これは、2030年、2040年とか関係なく来ると思うんですが、逆にチャンスかなと思っています。
ChatGPTのおかげで、1人の人間ができる仕事が大幅に増えるので、人口が減っていく日本では、人口が増えていく国よりもChatGPTを使う機運がすごく高まると思うんですよ。
だから、AIとの相性がすごくよくなると思うので、日本が主導してChatGPTを使って新しい産業が生まれたり、新しい仕事も含めて出てくるんじゃないかと思っています。
井戸田:人口は減るけれども。
内藤:違う仕事がどんどん生まれてくると、それはそれで日本はチャンスかなと思っています。
行動している人・しない人の差が広がっていく
藤野:2033年は全体とするとインフレになっていって、お金は増えていき、資産も増えていくと思うんですが、格差は広がると思っているんですよね。行動した人と行動しない人の格差が出てくる。要は、ただの情報に価値がなくなって、行動できるかどうかが大事になってくるんですね。
井戸田:なるほど。
藤野:そうすると10年経つと、行動している人・しない人の間にすごく差が出るから、「何もしないけれど10年後はいい社会になっている」というのははないんです。
だから社会全体で見ると、行動した人、投資をした人、もしくは何か事業を始めた人、人よりもちょっとがんばっている人が成功するけれども、「何もしないほうがいい」という人たちは厳しくなるかもしれない。だからこれからの10年間は、それぞれの人が選択できる未来だと思うんですよね。
小沢:もう、やるしかないということですもんね。やるか・やらないか。
藤野:そうです。
小沢:じゃあ、とりあえず撮影は1回やめましょう。
井戸田:なんだそれ。
(一同笑)
※役職名は収録当時のものです。