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『プロ経営者・CxOになる人の絶対法則』出版記念イベント(全3記事)

うまくいった時こそ「自分の手柄だ」とは言わない ベイシア・相木社長が考える「プロ経営者に必要な3つの能力」

いち社員としてではなく、プロの経営人材として企業を渡り歩き活躍する「プロ経営者」。今回は、そんなプロ経営者・CXO人材になるための絶対法則がまとめられた『プロ経営者・CxOになる人の絶対法則』の出版記念イベントの模様をお届けします。共著者の荒井裕之氏と小杉俊哉氏、書籍内でもプロ経営者としてインタビューが掲載された、ベイシア相木孝仁氏が登壇。プロ経営者を取り巻く社会の背景や、プロ経営者としてどんなキャリアを歩んできたのかが語られました。本記事では、相木氏より「プロ経営者に必要な3つの能力」について解説されました。

コンサルタントと事業会社の「動き方」の違い

赤池辰介氏(以下、赤池):(相木さんが)ツタヤオンラインに入った時の「壁」ですよね。実際にオーナー(のいる企業)を動かすのがすごく難しいと感じられたと思うんですけれども、そのあたり具体的にどういう点が難しかったのか、何をこうすれば突破できたのかなと思いますか?

相木孝仁氏(以下、相木):失敗ばかりなんですけれども(笑)。やはりコンサルタントで働いていると、コンサルタントの働き方にみんな慣れているので、ある意味「1を見て10やらないとアウト」みたいな世界なんですよね。今は違うかもしれないですけど。

だけど普通の事業会社って、3つ言って1個できたら「いいじゃないか」と言わないと、みんなついてきてくれないところもあるんですよね。大げさに言っていますけど。なので少し自分でギアチェンジしないと、「あの人、1人で何かやっているよ」みたいになって誰もついてこない。

あとオーナー会社もいろんな人たちがいて、いろんな歴史があって、いろんなキャラクターがいるので、どのボタンをどう押していったら物事が動くのか、身をもって経験した感じですね。

赤池:そういった経験を経て、やはり楽天でのご経験がキャリアに活きたと。

相木:そうですね。楽天は本当にみなさんが知らないような事業をいっぱい買っていまして、あまりうまくいっていないのもたくさんあって(笑)。大変な状況になると、三木谷さんから電話があって、「相木くん、行ける?」みたいな。「行きます」というのをずっとやっていました。

壁を乗り越えるには「相手が喜ぶことをしてあげる」

赤池:失敗ばかりという話もありましたけれども、例えばどんな失敗をご経験されたんでしょう。

相木:会社を買わせていただくのには、いろいろお互いにストレスが生まれるんです。やはり買われた会社の人たちはそれなりに思いがあって、特に海外だと「日本のわかんない会社に買われてしまった」と。日本から誰かが送り込まれてきたってなると、さすがに最初はそんなにフレンドリーにしてくれないですよね。

そこでどういうふうに心をつかんでいくか、本音を引き出せるかというところは、失敗もしましたし、うまくいくようにもなりましたけど。

赤池:でも失敗は失敗で終わらせないといいますか、自分自身で受け止めて壁を乗り越えるということを実践されてきたんだなと思うんですけれども。コミュニケーションの中で、ご自身の中で「こうやればうまく壁を取り外せる」といったやり方はあるんでしょうか。

相木:これは私、コンサル出身とは思えないぐらいロジックがイマイチでして(笑)、どっちかというと、スポーツをやってきたということもありまして、気持ちをつかんで仲良くなるほうが得意なんです。やはり日本人でも外国の方でも、相手が喜ぶことをしてあげるということですよね。

楽天はグローバルでマネジメントしていたので、東京サイドから「あれ出せ、これ出せ、三木谷さんこう言っています」みたいなことは、バンバン24時間起きるんですけれども、僕が、買収させてもらった会社に入って経営者になる時には、「基本そっち側の人になりますから」と、三木谷さんと握って行っているんですね。

だから僕が完全に防波堤になってあげるんですよね。僕が見ていない他の会社は、わりと言われるがままに、「これ出してください。これやってください。このミーティング出てください」となるんですけど、僕は完全に向こうの人になりますから。「その代わり、この会社絶対に良くしますから怒らないでくださいね」と最初に三木谷さんに言っておく感じですね(笑)。

一番良くないのは、現場の人に「オーナーが連れてきた人」と見られること

赤池:なるほど(笑)。我々の捉え方でもありますけれども、プロ経営者というと「雇われ経営者」だという考え方もあると思うんですね。そういった時に、能力を買っていただいてその企業に入るということが、プロ経営者(のスキル)という部分になるのかなとは思うんですけども。

今ベイシアで代表取締役社長としてやられていらっしゃる経緯ですとか、ミッション。そういったところはどういったお考えですか?

相木:コンサルというかアドバイスをするような立場で、半年間ぐらい関わらせていただいて。私はオーナー会社研究家じゃないんですけれども、ツタヤオンラインもそうですし楽天もそうですし鎌倉新書も、(今まで入った会社は)たまたまオーナー会社が多くて。なので、オーナー会社のすばらしいところとなかなか難しいところが一応わかっているつもりでして。

一番良くない入り方としては、オーナーと握って入って、でも現場の人たちは「なんじゃこの人、オーナーが連れてきた人」となると、そのあとうまくいかなくなるんですね。それがわかっていたので、半年くらい実務の人たちと一緒に仕事をしていたんですよね。

この実務の人たちが「相木さんに来てほしい」と言ってくれたら入ろうかなと思っていたんですよね。(ベイシアの)オーナーの土屋さんは「一緒にやろうよ」と誘ってくださったんですけど、ベイシアの仲間たちの心をつかめたら、一緒にやろうかなと思って入りました。

入ってみてからすごく言われたんですけど、小売のスーパーは本当にリンゴ売って、トマト売ってなんぼという世界なんですけど、そういう世界で、あまり調子の良くない状況ではなく、健全な状態でまったく違う世界から経営者が来るというのはほとんどないらしいんです。

考えてみると思いきったことをしたなと思うんですけど、私はどちらかというと同じことをするのは好きじゃないので、だいたい違うセクターの仕事をすることが多いですね。

プロ経営者に必要な3つの能力

赤池:ありがとうございます。実は本の中にも「経営者とはこういうものだ」とインタビューに答えていただいているところがあるんですけれども、「プロ経営者に必要な3つの能力」というのがあるかと思います。こちらについて少し詳しく教えていただけませんか?

『プロ経営者・CxOになる人の絶対法』(クロスメディア・パブリッシング(インプレス))

相木:本に詳しく書いていると思うんですけれども(笑)。まず1つは結果を出すこと。経営者になると、プロセスがしっかりしているとか、人柄がいいということでは済まされなくなるんですよね。もちろんそれがないと人がついてこないんですけど、最後は結果を出す。

結果を出すということは、いい戦略を立ててしっかり実行して、リザルトを出すということだと思うんですね。それができないとしょうがない。あとは一発屋でもしょうがなくて、継続して繰り返して、どんな局面でも結果を出し続けることをやらなきゃいけない。

というので、1つ目はどんな状況であっても勝ち方がわかる。解き方がわかる。それをしっかり実行できて組織を動かして、結果を出すことができる。それを繰り返していく力。これが1つ目だと思います。

2つ目は、そんなことを1人でできるわけもないので、仲間が必要になるわけですね。仲間を集められるか、仲間を見つけられるかというのが2つ目の要件だと思っています。それは、中にいる方々で、偉い偉くないに関係なく、本当にこの会社を良くしたいと思っている人が誰なのか。それを見つけて、それを口説いて育てて、ステップアップさせるというのもそうです。

自分の人生のネットワークを総動員して、この局面に一番頼りになる人は誰だということを探してきて、外から人を連れてくるということもありますし、まったく出会ったことない人と初めて面接で出会って、「こんなことをやりたいんだよ」ということを口説いて口説いて、「一緒にやろうじゃないか」と言って、飛び込んでもらえるような説得力とか、人間の魅力みたいなのが2番目。チームを組成できるかということだと思っています。

経営者として忘れてはいけない「インテグリティ」

相木:3つ目はちょっと毛色が違う話で、長いこと経営をしていくのであれば、インテグリティは必要なんじゃないかなと思うんですね。誠実さとか真摯さとか、品性高潔みたいなのはすごく大事だなと思うんです。

僕もそうなる瞬間がありますけど、やはり人間って自分を良く見せたいとか、あるいは自分のアイデアが良かったんだと思いたくなるんですけど、本当はそんなことなくて。周りの仲間のアイデアに支えられて商売させてもらっているので、そこは忘れちゃいけないなと思ってて。

うまくいった時こそ、「彼の手柄、彼女の手柄だよ」とちゃんとみんなの前で言ってあげる。本当はそうじゃなくても、この人がミスしちゃった時に、「これは俺が決めたことだからごめんね」と、みんなの前で言えるかどうか。

これが逆になっちゃうと、ちょっとまずいんですよね。つまりうまくいっている時は「俺の手柄だ。俺がやった」となって、うまくいかなくなったら「僕は知りません。聞いていませんでした」と始まると、良くないと思うんですね。

信頼されないし、経営者としてのレピュテーションというか、そのあと長く経営者をしていけないんじゃないかなと思っているので、やはりインテグリティは大切にして生きているつもりです。これが3つ目です。

役員や管理職と1on1をするわけ

赤池:ありがとうございます。1つ目はとにかく実績を残すという意味で、勝ち方を見出していくという話なんですけども、それは人それぞれ違うもの、自分なりの勝ち方を見つけていくということになるんでしょうかね。

相木:自分の頭の中には限界がある。もちろん僕も過去のいろんな経験を総動員して、いろいろ調べてやりますけれども、でも別に発明するわけではないので、大抵の答えは組織の中にあるんですよね。

僕が会社に入らせてもらって必ずやることで、役員だけじゃなくて部長と課長とか、100人くらいと1on1するんですよね。

基本聞いているのは、「会社にとって今一番大切なことって何ですか?」「あなたの成し遂げたいことって何ですか?」ということと、「この会社で埋もれているかもしれないけど、本当に(この会社を)変えたいと思っている人って誰だと思う?」と。この3つを聞くんですよね。

そうすると、だいたい自分の思っていた仮説が合っているか間違っているかわかる。それをチューニングして直して、自分の答えにするんです。あとはそれを実行するためにこういう人財が必要なんだなと、自分なりの新しい組織図ができちゃうんです。

赤池:ありがとうございます。人それぞれの価値観というよりも、勝ち方は組織にきちんと眠っているということなんですね。それを見つけることが(経営者に必要だと)。

相木:そうですね。彫刻みたいなものですかね。そのままだと使えないことが多いんですけど、自分なりに解釈して組み換えをして、答えを作るという感じ。

赤池:なるほど、ありがとうございます。3つ目なんですけれども、私も感じるところがあって、やはりプロ経営者のみなさんって、言い方が悪いですけどとても腰が低いな~といつも思いますね。こんな私と話していただいているにも関わらず、ものすごく話しやすくしゃべってくださったりして。

インテグリティというのは本当にそうだなと思うんですけれども、若干性格みたいなものに近いのかなと思ったりしています。元からそういう性格を持っていなければいけないのか、もしくはいろんな経験の中で積み重ねることによって、そういうものを獲得していくのかというと、どうなんでしょうかね。

相木:これはたぶん人それぞれだと思います。僕はそういうキャラクターというか、そういう生き方をしてきたのでそうなっています。そんなに人に頼らずに答えを出して、組織を動かせれば楽かもしれないですけど、僕はそういうスタイルでやってこなかったので、自分なりのスタイルを作ってきたという感じですね。

赤池:ありがとうございます。本当に経営者ってこうなのかなというのを、おぼろげながら感じるところもございました。

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