2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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早瀬隆春氏(以下、早瀬):ちなみにSNS投稿で関連するものといえばよくあるのが、テレビが映っている瞬間のスクショをしたり写真を撮ったりして、それをSNSに上げて「このシーンがおもしろい」とか「このシーンの解説」みたいなことを書いている方がいらっしゃいます。同じように自分の商品が映った時にそれを撮って使いたくなるんですけど、そういうのはアリなんでしょうか。
友利昴氏(以下、友利):これもやりますよね。ものづくりをしている人は、メディアに取り上げられるとうれしいですよね。本だったら書評に載るとか『王様のブランチ』に出るとか、やはりうれしいじゃないですか。書き手も編集者もうれしいと思うんですけど、そうするとやはり載せたくなりますよね。「今日の新聞に書評が載りました」とか、載せたくなるんですけど。
それも本に書いたんですけど。みんなやりたくなるからなんとか「OKな可能性もある」みたいな感じで書けないかなとけっこう考えたんですけど、これは難しいですね。基本的に自分の商品がテレビなり新聞なりに取り上げられた記事だったとしても、やはり著作権はその新聞社なりテレビ局にあるので。
自分のことが取り上げられてるからといって、著作権を犠牲にすることを肯定する法律の解釈は、難しいというところですね。だから基本的にはダメ。ただ回避策はわりとあります。
早瀬:おぉ。
友利:要するに著作物の複製・コピーになっちゃうのがいけないのであって、単純に言えば、その事実だけを言うのであれば問題ないんですよね。「今朝の朝日新聞に書評が載りました」とか「NHKのニュースで取り上げられました」という、その事実だけを伝えるのであればまずOKです。
早瀬:文字だけということですよね。
友利:そう、文字だけで。文字情報だけで言って、別に写真とかは載せない。シンプルというか当たり前だろって話なんですけど、それは1つの代替策としてはあると思います。
友利:あと結局、著作物をコピーしなければいいので。著作権が発生しない部分、例えば見出しだけとか、あるいは本当に冒頭部分の著作権が発生しないような、創作性がないような当たり前の表現とか。そういう部分だけを写真に撮ったりスクショして「どこどこの新聞で取り上げられました」みたいなことを書くのであればアリですね。著作権が発生していない部分だけ切り取って載せるということですね。
早瀬:でもなかなかレベルが高いというか、ちょっと難しいかもしれないですけども(笑)。
友利:結局どこまでというところがあるので、そこはやはりさじ加減とかの知識は必要ですけど。見出し・タイトルとかであれば、基本的には大丈夫と考えていいと思いますね。
早瀬:ありがとうございます。
友利:もう1個いいですか?
早瀬:どうぞ。
友利:どこまで著作権があるのかを見極めるのが面倒くさい人は、もう1つのやり方としては写真に撮る、あるいはスクショをしたうえで、画像加工で全部モザイクをかけるとか。
早瀬:(笑)。
友利:あるいは新聞とかであれば、載ったことがわかる程度の解像度で、文字が読めない、記事が読めないように撮る。例えばすごく遠くから撮るとか、あるいはすごく接写して、記事として読めないように撮る。だけどとりあえず写真は掲載できるから、そうすると「この新聞に載ったのね」ということだけはユーザーに伝えることができる。そういうやり方はけっこうスマートじゃないかなという気がしますね。
早瀬:なるほど。判別できなければ侵害を訴えようもないという感じなわけですね。
友利:そうそう。結局著作物の表現が読めなければいいわけですから、そこはぜんぜん問題ないという感じですね。
早瀬:なるほど、参考にさせてもらえればと思います。
友利:あとは「許可を取っちゃう」。許可を取ってダメと言われるようなことはあんまりないかなという気がしますから。全文を載せていいとはたぶん言わないと思うんですよね。「書評の全文をスクショして載せていいですか」と聞くと、いいとは言わなくても、「最初の5行くらいだったらいいですよ」と言ってくれるメディアの方も多いと思いますよ。
早瀬:ありがとうございます。ぼちぼちこのテーマはこれぐらいにいたしまして、少し時間が押してしまったので、もう1つのテーマに入りたいと思います。
友利:すいません(笑)。
早瀬:いえいえ、とんでもございません。
では続いてのテーマはこちら、著作物利用の「どこまで許可を取るか」問題。これは企画を立てる時の肝にもなった部分なんですけれども。よくあるのが「念のためうかがいましたけど、これは許可もらえませんか?」みたいな、うちに判断を求めてくるとか。逆に「引用なのか転載なのかわからないけど、とりあえず申請してみようか」というパターンもあります。こういうのはどうすればいいのでしょうか。
友利:「これって法的には許可を取らなくてもいいかもしれないけど、クレームが来ないように念のためおうかがいを立てておこう」というシチュエーションと、あるいは「これって引用にあたるのか自分で判断できないから、権利者に聞いちゃえ」というパターンがあると思うんですけど。
基本的には結局グレーだから聞くということだと思うんです。グレーでどうしていいのかわからないから、権利者に聞いちゃえということだと思うんですけど。この場合は、権利者としては「グレーだったらやめてくれ」と言うに決まっていると思ったほうがいいですね。
早瀬:あぁ、なるほど。
友利:権利者がすごく善人で、良い人だったらいいですよ。「それは見なかったことにします」とか、「どうぞやってください」と言ってくれる人はいるかもしれないんですけど。実際それを期待して聞くんだと思うんですけど、やはりそんなに甘くない(笑)。
友利:基本的に権利者は無断利用は、自分の得にならなければコントロールしたいと思うのが常なので。「これは念のため聞いたほうがいいんじゃないか」と思って聞くことに対しては、「No」と言ってくるパターンのほうがずっと多いと思いますね。
早瀬:なるほど。
友利:ですから、もし権利者の判断に従おうという覚悟、つまり「聞いてダメと言われたらもう諦めよう」という覚悟があるのであれば、それは聞いていいと思うんですけど。あるいは実際ダメだと言われたら「やっぱりダメなんですね」と言って安心するのであれば、聞いてもかまわないと思うんですけど。よくあるのが、ダメと言われた時に「えー……」となっちゃうパターンですよね(笑)。
早瀬:(笑)。
友利:念のために聞いてお墨付きをもらおうと思ったのに、断られちゃったら「じゃあどうすればいいんだ」みたいなことになる場合があると思うんですけど。もし判断を委ねる覚悟がないのであれば、本人に聞いちゃダメですね。権利者に聞いちゃダメです。聞くんだったら第三者の弁護士とかに聞いたほうがいいですね。
それで、「これは侵害にならないから許可を取らなくていいですよ」と言ってもらえたら、わかりましたと堂々と使えばいいし。「これは許可がいるから、権利者とちゃんと交渉してお金を払ったりしなきゃいけませんよ」と言われたら、安心してお金を払えばいいと思うんです。だから本人に聞くのは、権利者に判断を委ねる覚悟がないのであれば、やめたほうがいいと思います。
早瀬:なるほど。なかなか甘くはないという感じではありますかね(笑)。
友利:甘くはないという感じですね。
早瀬:ありがとうございます。
早瀬:それでは次のテーマに移りたいと思います。「攻めすぎ? 時間切れ? 泣く泣くあきらめた……書籍収録外“マル秘”エピソード紹介」。
『職場の著作権対応100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)
この本ってタイトルが『100の法則』じゃないですか。つまり100個に収めなくてはいけないので、あらかじめいくつか用意しておいて泣く泣くボツにしたとか入れ替えたとか、そういったものもありました。
あとはどうしても一般のビジネスパーソン向けなので、もう少し内容をマイルドにしなければならないとか、初歩的な内容でとどめなければならないところもありまして、収録を諦めたエピソードがあったりします。ちょっとそのあたりについてお話をうかがえればと思います。ではまず1つ目は、こちらです。「いわれのないパクリ疑惑への反撃方法とは?」。
友利:あぁ、書きましたね。これは収録はしましたよね?
早瀬:はい、最初はそのまま収録いただいて。つまりこれは「(著作権侵害ではないのに)おたくのは著作権違反していないか」みたいなことで言いがかりをつけられた時に、どう対処するかということで。最初は反撃方法、つまり相手にやり返すところまで書いていただいていました。
友利:あぁ、そうかそうか。
早瀬:ただ私の編集の立場で、社内にも共有していて「この内容はうちの会社的に大丈夫?」みたいな話もちょっと出まして(笑)。私もそこまでの覚悟がなくて「反撃まではいいので、対抗手段というか、そのあたりぐらいまででなんとか書き改めてもらえませんか」ということでリテイクをお願いした箇所でございます(笑)。
友利:すいません、僕はそんなに攻撃的な人間に見えていたんでしょうか……(笑)。
早瀬:(笑)。すいません、恐らく前著の影響で私も「そういうのが得意な方かな」みたいな(笑)。
友利:「もうちょっとマイルドにしてくださいと頼んだら、すごいキレるんじゃないか」みたいに思われていたんじゃないかなと今思いましたけど、そんなことないですよ(笑)。
早瀬:(笑)。ちなみに、いわゆる言いがかりをつけられた時にどのように反撃するかというところを、今回ちょっと公開していただこうと思うんですが。ズバリどうすればいいでしょうか。
友利:結局このネタ自体は本にも収録していて。ネット上とかでパクリ疑惑みたいな、ネットニュースになるみたいなことはあると思うんですけど。ああいうことになっちゃったら、どう対応すればいいのかみたいな記事なんですけど、それを最後のほうに書きましたよね。
見出し的には「根拠のない疑惑であれば基本はスルーがいいです」と。で、「スルーしつつ、疑惑がすごく大きくなって炎上みたいになった時に、ちゃんと正当性を主張できるように準備しておこう」みたいな。そんな話を書いたと思うんですけど。最初の原稿だともうちょっとアグレッシブだったということですよね。
早瀬:そうですね(笑)。
友利:結局根拠がないのに盗作とかパクリだと言われちゃうと、みんなよくやる言い訳としては「そんな作品見たことないんです」とか「比較してみましたけど、これは似ていないです」とか、そういう釈明をすることは多いと思うんですけど。
それが別に無駄とは言いませんけど、理解を得られにくい現実がある。なぜかというと、結局防戦に留まっているからなんですよね。防御というか。疑惑に対する回答というか、防戦一辺倒になっちゃっているので、どうしても「攻め込まれているな」という印象を拭えない。
あと「(他作品を)見ていない」とか「細かいところを比べれば似ていない」みたいなのはすごく真っ当な主張ではあるんですけど、やはりパッと見で似ていると「結局似てるよね」と評価されちゃうことが多いのが、やはりこの問題の難しいところなんですよね。
だから「似ていません」とか「見ていません」というのは、正しい反論の仕方というか説明の仕方ではあるんですけれども。「結局似ているじゃん」というのと、あと「守りに入っているじゃん」みたいな感じの見え方をするので、やはりなかなか世間の見え方を跳ね返すことが難しいという問題があるんですよね。
それに対する効果的な反論の仕方というか反撃の仕方は、もうその批判をする人、パクリ疑惑を投げかける人のほうが加害者なんだと。おかしいんだと。
早瀬:(笑)。
友利:「言いがかりをつけて、めちゃくちゃなことを言っているんだ」「妄想野郎なんだ」とか「デザインのことなんかなにもわかっていない」とか、アグレッシブに攻撃をすることを考えたほうがいいです。ということを最初の原稿で書いてたんですよね。
早瀬:はい(笑)。
友利:そこがちょっと過激すぎるんじゃないかというご指摘でしたよね(笑)。
早瀬:はい、そうです(笑)。
友利:でもそこは、やはり防戦じゃなくて、攻撃に回ったほうが良い時はあると思いますね。表裏一体なんですよね。例えばパクリ疑惑でよくあるのは、見る人が見れば「そんなのありふれた表現じゃん」と思うところが単に共通しているだけなのに、パクリだと言われちゃうこと。
それは「でも似ていることは似ているじゃん」という見え方になって、「似ているんだから取り下げるべきだよね」というのが1つの考え方のスタンダードとしてあるんですね。でもそれは表裏一体で。そういうありふれた表現を、後から採用する人を全部排除するということは、逆に言えば「アンタ、そのありふれた表現を独占しようと思っているの?」という話になるんですよ。
裏から見れば「その独占欲って正当化できるんですか?」「図々しくありませんか?」という話なんですよね。だけどその見方はあまりされないんですよね、「似ていることは似ている」と言って。いや、その「似て当たり前」の表現を独占するなんて、かなりおこがましいし、図々しい話をしていますよと。それを主張すると「確かに」という感じにはなるんじゃないかなって気はしますよね。
早瀬:(笑)。火に油を注ぐみたいな懸念を感じなくもなかったんですけど、そのあたりは炎上しちゃったからもういいや、みたいな感じなんですかね。
友利:結局炎上しちゃったら謝ろうがなにしようが、責められるのは変わらないので。あとはやはり、要するに謝ったということは非を認めたように見えちゃうので。そりゃ悪い時は謝らなきゃいけないんですけれども、そうじゃない場合は、逆にどういう主張をすれば形勢、つまり世間からの見え方を逆転することができるのかですよね。
そこを考えると「いや、似ていません」とか「見ていません」とか「でも似ていることは似ているからすいません」みたいなことを言うよりは、「アンタの言っていることのほうがおかしいよ」と説得的に訴えていくほうが実は効果的なんじゃないかなと。そんな感じのことを書きました。
早瀬:ありがとうございました。ちょっと、(書き直させて)すみません(笑)。
友利:ぜんぜん恨んでいないですから! そこをマイルドにさせたことを「なんか怒っているんじゃないか」みたいな感じですが、そんなことはぜんぜんないですよ(笑)。
早瀬:恐れ入ります(笑)。
友利:そのへんはどっちかというと『エセ著作権事件簿』にトーンとしては出ていると思いますけどね。
早瀬:そうですね。過激な話が聞きたい方はぜひあちらを、みたいなところはあります(笑)。
友利:(笑)。両方セットでぜひ。
早瀬:ありがとうございます。
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