2024.12.10
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中小企業が取り組む現場DXへの道のり ~“従業員の意識改革”から“Platio利用率95%”へのあゆみ~(全1記事)
提供:アステリア株式会社
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司会者:続いて、「中小企業が取り組む現場DXへの道のり ~“従業員の意識改革”から“Platio利用率95%”へのあゆみ~」と題して、株式会社裕生の代表取締役社長 根本将さま、よろしくお願いいたします。
根本将氏(以下、根本):みなさま、本日は貴重な時間をいただきましてありがとうございます。株式会社裕生の根本将と申します。よろしくお願いいたします。
弊社はビルメンテナンス・ビル管理業の会社です。1952年創立でビル管理業ではわりと老舗と言われる、歴史はそこそこ長い会社ですが、規模はいわゆる中堅規模の会社です。私は7代目の社長になります。
設備・エンジニアリング事業、清掃事業、そして警備事業が弊社の主な業務内容になります。
私の略歴を説明させていただきますと、大学を卒業して、スーパーのダイエーという会社に入りました。九州の宮崎に配属され、スポーツ、玩具売り場、自転車等々の担当をしておりました。
その後「やっぱり東京で働きたい」と考えて東京に戻り、1998年から1999年にかけて、裕生で清掃のアルバイトをしていました。その後1999年に兼松という商社の子会社に入社して約22年間従事し、2021年に裕生に入社しています。
手前味噌ですが、今年の6月に「ノーコード大賞」の優秀賞をいただきまして、そのあたりの説明をさせていただきたいと思います。第1回日本ノーコード大賞で、優秀賞2社のうちの1社に選出いただきました。
評価いただいたのは「継続的にDXの活用ができている」ということです。「データが残っている」「経営側・現場で協力して実用的なDXアプリを作成している」、そして「DXアプリを活用して法令遵守の取り組みができている」。これらは今回のプレゼンテーション内で、少しずつ触れていきます。
根本:それでは弊社のDXについて、説明させていただきます。今回ご参加いただいている方は、「もう我々はDXについて取り組んでいるよ」「意識も大丈夫だよ」というお客さまが多いと思います。
今後、例えば「〇〇支店の〇〇部署にPlatioをやらせたい」とか「協力会社さんにやらせたいよね」というケースも出てくるかと思いますので、その時に我々の事例を参考にしていただければと思います。
2021年10月に、ビルメンテナンス協会から「健康観察アプリなどを活用し、従業員の毎日の健康状態を把握することが重要ですよ」という発令が出たんですが、残念ながら当時はDXの意識が弊社内では非常に低かった。
重要だと認識はしているんですが、誰も何も始めていない状態でした。
よく「DXはスタートアップに最適ですよ」というCMなんかもありますが、正直スタートアップ以前の状態で、私が入社して何かを始めなければ手遅れになってしまうと感じました。
一般的なDXの説明はこういった横文字の難しそうな言葉が並んでいて、座学から始めるのは正直弊社ではちょっと難しいと判断しました。
そこでもう四の五の言わずに、このPlatioを使ってみようと社内で啓蒙を始めました。
スタートアップ以前なので「イグニッション」、点火という言葉を使いました。エンジンも点火しないと動かないですよね。イグニッションツールとしてPlatioを使って、なんとか社内で動くかたちにしました。
根本:Platioのアプリ(のテンプレート)は100種類以上あり、お恥ずかしいんですけれど、正直ITリテラシーのあまり高くない会社で何から進められるかなと考えました。使いやすくて、わかりやすく、続けやすいもの。入力も簡単そうでわかりやすそうなので、Platioさんのテンプレートの中にある「検温レポート」から始めました。
スマホですぐ入力が可能で、まとまったデータも出力しやすく、異常が発生した時に遡及しやすい。検温の結果をメール送信してExcelで管理していたものを、アプリで一元管理してDXで情報を共有するかたちにしました。
このテンプレートはプッシュ通知での検知が標準装備されているので、弊社では37℃以上の検温結果が出た場合に、プッシュ通知で関係者にアラート共有をするかたちにしました。
発熱者の状態が共有できるので非常に便利だなと思ったんですが、「待てよ」と。
これができるんだったら、PCRや抗原検査の結果も共有しようと。これは先ほどのテンプレートに我々が追加したものです。
PCR検査を受けた場合、陰性は青文字、陽性は赤文字で表示して、陽性者の発生時はプッシュ通知で検温・健康報告グループ内のメンバーに情報共有されます。
コロナ禍なので、「発熱はしているけどワクチンの副反応です」という人が出た時はややこしいなと思い、「ワクチンの副反応」というボタンも追加しました。ワクチン接種後の副反応がある場合は、入力画面で選択をしてもらい、紫文字で表示するようにしました。
これで仮に発熱でプッシュ通知が入っても「この人はワクチンの副反応で熱が出ている」と区別できます。
さらに、どうせ検温をさせるのならということで、健康状態も入れてもらうようにしました。「良好」「不調気味」「不良」「精神的不調」「相談希望」の5項目に分けて報告をしてもらっています。
弊社は「従業員をまもる」「会社・管理者をまもる」という意識を持っています。
「従業員をまもる」は、肉体的・精神的不調を早期に訴えることで、重症化する前に対策をしようということですね。大切な資産である従業員に、カジュアルに不調を訴えられる手段を与えます。
また「会社をまもる・管理者をまもる」は、従業員に肉体的・精神的不調を訴える手段を与え、毎日体調を報告してもらうことで、管理者・会社が従業員の健康状態を把握するということですね。これは従業員のメンタルヘルス対策の第一歩と弊社はとらえています。
根本:では、アプリ作りで工夫した部分を説明したいと思います。「使いやすく」は、必要項目を絞ることで入力を最小限にして、さらに入力をしやすくするということです。
例えば検温結果は、前日の検温を自動表示させるようにしています。基礎体温が5℃も6℃も変わる方はあまりいらっしゃらないので、スピンボタンをつけてプラス・マイナスを押すと0.1℃上がったり下がったりして、簡単に入力できるようにしています。
また「わかりやすく」は、必要な情報が一目でわかるようにシンプルにすること。
もともとPlatioの一覧機能は必要な情報が見やすいんですが、できる限り集約してわかりやすい一覧作りを心がけました。
最後に「続けやすく」。「入力は10秒」を意識してアプリを作りました。
ワンタップを多くして、ストレスは少なく。例えば自覚症状が「あり/なし」と「あり/なしー異常ありません」だと、タップの有効エリアが変わり、指を動かす範囲がこれだけ違うんですね。そういう部分でのストレスを緩和するようなアプリ作りを心がけました。
こんなかたちで弊社は、2021年11月から本社で、2022年の2月からはつくば営業所もDX化しました。95パーセントの報告率を目標にしましたが、幸いにして2022年の2月と3月で97.4パーセントの報告率を達成しました。
「使いやすく」「わかりやすく」「続けやすく」を意識して毎日の作業を習慣化させることが、弊社のPlatioによるDXの第一歩でした。
検温・健康報告がある程度習慣化できたところで、どういった項目を追加していったかを説明します。
検温のところに副アプリとして、「震災時用」という項目を追加して、万が一の震災時にアプリから被災状況の報告を可能にしました。震災時は電話がつながりにくくなる傾向がありますが、パケット通信は比較的つながりやすいという経験から最低限の被災報告ができるようにしました。
「ケガをしています」「深刻な状況です」「建物被害があります」などの情報をグループにプッシュ通知で報告します。いわゆるBCP対策ですね。
弊社は会社が従業員の安否を確認する、サイボウズさんの安否確認サービスを入れていますが、Platioの震災時用は、従業員が自主的に安否を発信するものです。
震災時のシミュレーションとして、弊社で「このメールを見たらPlatioで『安全だよ』とか『ケガしてます』など、なんでもいいから報告をして」というシミュレーションを行いました。
初回は2022年2月ですが、24時間以内の報告率は76パーセントでした。2回目は24時間以内の報告率の目標を80パーセントに設定しましたが、結果的に85パーセントの報告率を達成しました。
根本:報告率が良くなったのを見て、何か業務でも活かしたいと思うようになったタイミングで、つくば営業所から「社有車の日報が面倒で、アプリでなんとかなりませんか」と相談がありました。
2022年10月からアルコールチェックの法令が厳しくなる予定だったので、それまでExcelでやっていたものを、Platioのアプリで社有車の管理プラス、アルコールチェックをやることになりました。
わかりやすいアプリを毎日使うことで、従業員のDXへの意識が変わったのではないかと感じ、この要望がきた時はうれしかったですね。こうして、私とつくば営業所で社有車の管理 兼 アルコールチェックアプリの共同開発を進めました。
ユーザー名や日時は自動入力で、運転者が入力する重要項目は「黄色を水色にする」ことを意識させています。あとはワンタップで誓約させることが重要です。例えば「アルコール・医薬品・ワクチンの影響がない状態で社有車を利用します」という誓約ですね。
また出発時・帰着時でアプリを分けました。これは法令で出発時も帰着時もアルコールチェックが必要なためです。アルコール検知器の画像、そして出発地・帰着地のメーターの画像を取り込んで一覧表示させています。
出発時のメーター数値、帰着時のメーター数値を入れると距離が自動計算され、不正防止になっています。
青枠は、管理者の最終確認が終わっているもの。赤枠は管理者の最終確認が終わっていないものです。管理者は赤枠になっているものを狙って確認し、アルコールチェッカーの記録などが問題ないかを確認して、承認するステップになります。
根本:その他、業務報告や管理でどうDXを進めているかをご説明します。まず点検項目などで、手書きからアプリ入力への転換を進めています。
すべての現場で実現できているわけではありませんが、ある程度使いこなせる現場にはこういったものを導入して、情報共有や点検のダブルチェックができるようにしています。また、今盛んに言われていますSDGsやCO2の排出削減、ペーパーレスにも寄与できると考えます。
当社では、1人作業の時に最も多く事故が発生しています。また高所・脚立の使用時ですね。そこで、1人作業や脚立作業の際はアプリから申告する取り組みも進めています。作業時間の目安を入れ、終了したらアイコンが「作業終了」になります。管理者は終了を確認して承認します。
このアプリでは、管理者の「承認」はちょっと堅いかなと思って、「おつかれさまでした」という表示にしています。
その他、今は業務に完全に直結していない部分で、Platioをどう活用しているかを説明させていただきます。
これは社長の週報アプリです。先ほど見ていただいた検温報告や震災時用に並んで、私の「社長週報」を入れました。毎週月曜日もしくは金曜日に「今週はこんなことやったよ」と報告するようにしました。
毎日使う検温・健康報告の副アプリとして追加しているので、何かのついでに見てもらえればなと思っています。これも更新が終わったら、本社のスタッフにプッシュ通知されるようにしています。メディアの項目から、ExcelやPDF、画像などの添付もできるようにしています。
こちらは「仮内定承諾アプリ」です。
弊社は面接をして「この人に内定出しましょう」という人がいた場合、その方に電話をして内定承諾書を郵送し、同封した返信用封筒で返送してもらい、それが採用室に届いて内定確定という非常に長いステップでした。
このステップの間に内定者が心変わりをして、辞退をするというケースが実は非常に多く、採用室から相談を受けて、作ったアプリです。
良い人材の確保のために、例えば面接で内定をお伝えして入社の意向をお聞きした上で、Platioの署名機能を活用してタブレットへのサインで仮内定の承諾をしてもらうと。法的な拘束力はありませんが、求職者に仮内定の自覚を持ってもらうということです。
また空調服の管理アプリもあります。「空調服を使う」=「夏場に過酷な業務をさせる」という意識ですね。(会社として)健康に、安全に作業させる意識を持たなければならないと考えています。タップで「作業開始」を知らせ、「作業中」はオレンジ、「作業完了」はブルーの表示で管理します。
作業の時間の目安を入れてもらい、その時間を過ぎても「作業完了」にならない場合は、事故の可能性があるためにすぐにフォローアップを行います。このアプリも社有車のアプリと同様に、体調面で問題がないことを誓約してもらってから作業に入るというステップになります。
根本:まとめになりますが、DX推進・利用率向上のために工夫したことは、「使いやすさ」について、現場の社員・担当営業所員と妥協せずに何度も意見交換しました。アルコールチェック 兼 社有車管理アプリにつきましては、改変バージョンが111まで達しています。
もしもPlatioのようなノーコードDXがなければ、現場の使いやすさを実現するための開発費が膨大になっていたと思います。また各現場でDXを継続できているのは、Platioを選定したからではないかと強く感じています。
最後になりますが、弊社のようなITリテラシーの低い会社でもDXの取り組みを行い、1年以上経過した現在も高い利用率でしっかりと継続できています。それは間違いなく、「ノーコードDX」「Platio」によって、現場の要望に合致したきめ細かいDXアプリが作成できたからだと確信しています。
ITリテラシーが高くない会社さま、とりわけ中小企業のみなさまは、弊社と同じような悩みを抱えている会社も多いと思います。私はまったくプログラミング経験も、いわゆるデジタル経験もありませんでしたが、こんな感じで「ノーコードDX」「Platio」を活用できています。
今日ご参加いただいたみなさまと一緒に「ノーコードDX」、また「Platio」を、今後も実践していけたらうれしく思います。本日はご清聴ありがとうございました。
(会場拍手)
司会者:根本さま、ありがとうございました。すごい数のアプリを紹介いただいて、きっと参考になるエッセンスがみなさまにもあったのではないかと思います。
ここで少しQ&Aを挟みたいと思います。会場の方で、何か聞いておきたいという方はいらっしゃいますか?
(会場挙手)
質問者:貴重なお話をありがとうございました。2つありまして、テストをしてやめたものとかもあると思いますが、1年間でどのくらいの数のアプリを動かされたのかをおうかがいしたいのと。
あとPlatioを作る方について、御社の中で何人ぐらいの方が企画や作成を担当されているのかをおうかがいしたいと思います。
根本:ありがとうございます。現在、主力として動いているアプリは、おそらく6〜7種類です。アプリを作っているメンバーは私ともう1人の2人でやっています(笑)。本当にお恥ずかしい話ですけど。
質問者:ありがとうございます。
司会者:便乗して質問させていただきたいんですけれども(笑)。根本さまの取り組みは専務時代の取り組みとお聞きしていますが、お立場が社長に変わられて、アプリの管理体制や考え方に変化はありますか?
根本:専務時代もそうでしたが、やはり経営側として、安全や健康の確保への意識が社長になってからより強まったところはありますね。あとは、こういったアプリで従業員の日頃のワークロードが少しでも減ればと考えています。
司会者:ありがとうございました。ご講演、Q&Aは以上となります。根本さま、どうもありがとうございました。
根本:どうもありがとうございました。
(会場拍手)
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