2024.11.26
セキュリティ担当者への「現状把握」と「積極的諦め」のススメ “サイバーリスク=経営リスク”の時代の処方箋
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岡田奈々氏(以下、岡田):(BtoBマーケに関わっている方の悩みランキングTop10の)同率2位は「人材育成」の悩みです。「採用時の研修や新人教育、ITリテラシー教育が難しい」「知見が蓄積されない」「スキルを持った人材が偏っている」「業務を分散化できない」「管理職の育成が困難」というのがあがっています。コメントが一番多かったですね。
吴笑冬氏(以下、吴):これは難しいですよ。僕も今わからないです。「岡田さんを、これからマーケターとしてどう成長させていったらいいか?」と言われたら、答えはないですし。自分のマーケの知見をもっと増やすとか、体系的に増やして人に伝えられるレベルになると言ったら、「垣内さんの本を読んだほうが早いな」と思います。
岡田:読みます(笑)。
吴:逆に「読んどいて」でいけるので、これは難しいなと思います。
垣内勇威氏(以下、垣内):考え方は本を読めばわかるとか、何かしらの先生につけばいいと思いますが、領域を閉じて仕事をされるのが一番よくないですね。
吴:領域を閉じて仕事をさせる?
垣内:SEO担当者やウェビナー担当者と言った瞬間に、その手段以外で目的を達成できなくなるので、思考が狭まるんですよね。大きくなった会社ならそうせざるを得なくなりますけど、立ち上げのタイミングでいうとKPIしかないです。
「あなたは売上を5億円作ってください」というミッションを与えた上で、「好きにやっていいから企画をやって」くらいの手段があるとすれば、ウェビナーをやってもいいし、メルマガを打ってもいいし。広く手段を捉えていけると思うんですよね。その達成のためのPMをするというのが、マーケターとして一番やるべきことです。
逆に言うと、手段の「ウェビナーってどうやってやるの?」「SEOってどうやってやるの?」とかは、知らなくてもできると思うんですよ。
吴:先ほどの「プロに聞く」という話ですね。
垣内:そのへんまで全部覚えさせようとすると、「ITリテラシー」とか「人に知見がひもづいている」なんですけど、大したことをやっていないので、目的・目標・スケジュールを引けていればいいと思うんですよね。
あとは、気を遣いながら他の人とコミュニケーションが取れていればいい。気を遣えるかどうかが一番だと思います。
吴:たぶん、意図されているのと真逆の答えですね(笑)。
岡田:(笑)。
吴:でも、本当はそうなんですよね。岡田さんもそうだと思うんですけど、一番マーケっぽい仕事って何?
岡田:「リード獲得」ということで言えば、こういうセミナーは一番マーケっぽいですね。あとは、私が入社するとなった時のマーケのイメージは、「データ分析をいっぱいする」というイメージだったんですけど......今はそこまでという感じですね(笑)。
吴:(笑)。でも、ちゃんと数も取れているし、冷静に考えたら、質の改善のところってマーケがやるというより、ビジネスパーソンとしての素養な気がしてきた。
要はデータがあって、そこからどれだけ仮説を生み出せて、それを解消するための案が思いつくか。たぶんマーケに限定しないと思うので......。ヤバい。よくわからなくなってきたな。
岡田:(笑)。
垣内:シンプルに、商いをやっている人はマーケターだと思うんですよね。
吴:なるほど。
垣内:だから、売上を立てるための手段を、言い方は悪いですけど、営業も駒だと思って全体を設計するのがマーケターじゃないですか。なので、手段を限定せずにどの手段を取るかを差配するのが、一番の育成だと思うんですよね。
吴:OJTというと乱暴すぎる気がするんですけど、その概念と権限を与えて、ちゃんと考えてやってもらうのが一番ですよね。
垣内:そうですね。
吴:あとは、プロの力を借りながらということですね。
垣内:「社内調整も含めて、その人たちの気持ちをちゃんと汲みながらコミュニケーションを取る」というのができていればいいと思います。プロ管(プロジェクト管理)って、社内調整も社外調整も必要だと思うので、おそらくそこが一番マーケターに必要な能力ですよね。
吴:なるほど。
岡田:では、第1位です。第1位は「予算」で33.2%でした。「必要な予算の確保が難しい」「予算を割く必要性が理解されない」「補助金と売上金とで顧客の満足度を上げてどう利益を出すか」というコメントが来ています。
吴:「予算がつかない」「使えるお金が少ない」というのが悩みみたいです。
垣内:先ほど言った「ぶち上げる」というのが1つの方法ですね。
吴:ぶち上げる(笑)。
岡田:(笑)。
垣内:無理やりお金につなげて言う。例えば、顧客調査の1つとしてNPS(Net Promoter Score:顧客ロイヤルティを測る指標)調査があるんですけど、あれを普通にやってもお金につながっているように見えないんですよね。
なので、無理やりお金につながっている絵を描いて、「NPSが何個上がると売上がいくら上がるんだ」というでっち上げの数字でもいいので作ってやる。でっち上げていれば、結局ライフタイムバリューには効くのでいいと思うんです。
何でもいいので、「これは金につながる」という絵をいかに描くか。始めてしまえばそれが証明できるような、「ぶち上げ」というのが1つの方法ですね。
例えば、「AIのPoC(Proof of Concept:概念実証)の予算が900万円余っているんですけど、PoCということにしてもらってもいいですか?」と言って受注して、AIをやったようにちょっとだけ書いて、PoCの委員会に提出して、実質はフォームを改善しているとか......。
そんなのって、いっぱいあると思うんですよね。そのくらい予算を別のところから取ってくる。
わかりやすいので言うと、「マーケ費はないけど人材費用だったら取れる」とかで、フリーランスに外注しちゃうやり方もあったり。費目として余っている予算をかき集めるとか、各社でうまくやる人はやりますよね。
吴:確かにそういうのはありますね。我々も今まさに予算の策定時期ですけど、マーケって短期的な成果を見られるとけっこう厳しい面が多いので、違う見せ方をして、そっちでお金を積んでおいてマーケで使うというのは確かにリアルですね。
会社によってもだいぶ違うとは思うんですけど、そこの予算取りをどういうふうにやるかはあるかもしれないですね。
垣内:本音と建前があるんですよね。マーケは中長期の施策なので、例えば「このウェビナーをやります」「リストを200件取りました」というのはあるかもしれないですけど、200件って、ほとんどが5年後とかに効いてくるものなんですね。
でも、一気に受注すれば元が取れるわけじゃないですか。なので、「一気に死ぬ気で受注する」というのも目標として掲げておくとか。本音と建前的に「短期で達成するもの」と「中長期で達成するもの」の両方を追っておくとかは、よくやりますよ。
吴:お金を出すのは会社や上司になるんですが、ちゃんとそこの「理」があって理屈があれば、おそらく出してくれる。「そこをいかにずる賢くぶち上げるか」という言い方もあったとおり、見せるしかない。お金を持って来るというのは、マーケターの大事な仕事のような気がします。
垣内:中長期は、本気で経営者のコミットを抑えないとダメですね。例えば、うちは「研究レポート」と言って「デジタルマーケティングの知見を幅広く拡散する」ことをやっていますが、費用対効果は見ていなくて、私がやると言っているからやっているだけです。肌感で言うとものすごく効果があるんですけど、CPA換算すると垂れ流しなわけじゃないですか。
テレビCMも同じで、やっても意味がないけどやっているものって、だいたい社長がやりたいと言ってやっている。本当に中長期で効くようなものは、経営者がコミットしないとできないんですよね。
だからレンジにもよりますけど、ある程度の説明責任を果たすか、経営者を巻き込むことをやっていくかという話になると思うんですよね。
吴:ここまで「Top10」を見てきたわけですが、スキル的な問題より、「関わりをどう持つか」がかなり重要な気がします。社内調整ですね。
垣内:社内マーケティングはスキルがいらないですからね。
吴:そうですよね(笑)。何回か聞いているから「そうですよね」と言っているんですけど、最初に聞いた時は驚きでしたからね。
岡田:ありがとうございます。
岡田:続いては「悩み解決の時間」だったんですけど、「Top10」の間にけっこうお話しをいただきました。これは「Top10」をまとめたものになっているので、あらためて「まとめ」というかたちで聞いていきたいと思います。
人に関する悩みは、「そもそも人がいない」「マーケ担当者のスキルが足りない」「育成ができない」とか、多々ありました。「そもそもマーケ担当者は社内調整が重要」といったところですが、そのほか、何か付け加えることやまとめはありますか?
吴:僕が気になっていることです。マーケ担当者が今いるところは育成でしょうけど、「マーケをこれから立ち上げたいなとか、やってみたい人たちに、どういう人をアサインするのがいいのか?」という質問をしたくて。
例えば、すごく大雑把に2種類に分けて、「オタク気質な方・データをいじるのが好きそうな方」と「頭でっかちじゃないけど人たらしっぽい方」でいうと、今日の話だと後者ですよね。
垣内:極論を言うとデータなんて味付けなので、絶対に後者ですね。
吴:味付けですか。
垣内:最初の調査の話にもありましたが、データドリブンで何か見つかるなんてあり得ないので、言いたいことをデータで補強するだけなんですよね。
やっぱり社内調整できるほうがいいと思うので、BtoBであれば、それこそ営業経験者かつ、わりと成績のよかった人か、めちゃくちゃ営業に好かれている営業事務のほうがうまくいくでしょうね。
吴:なるほど。でも、売れている営業をマーケに持っていくというのは、かなり勇気のある決断のような気がします。
垣内:ダラダラ営業させていると、営業は辞めますからね。
吴:そういうことか。
垣内:飽きるじゃないですか。再現性の高い営業担当者ほど飽きるんですよ。「毎日こんなのを売って飽きたんだけど」という人をマーケに連れていくとかはやったほうがいいと思いますけどね。
吴:なるほど。おもしろいですね。
岡田:あとは先ほどの採用の件ですが、マーケター採用コストの高騰は今後も続きますでしょうか? 採用コストって上がっているんですかね。
垣内:たぶん一定で止まると思っています。「デジタルマーケター」と名乗っている人は、そんなに使える人は多くはないと思うんですよ。
吴:(笑)。
岡田:(笑)。
垣内:なぜかと言うと、さっきの定義で言えば、SEOとかリスティングができても社内調整ができないんです。なので、「俺が知っているリスティングの知見を使って」と言われても、「いやいや、社内はそういう話じゃないんだよ」となるんですよ。だから、「結局ダメじゃん」という揺り戻しもあると思います。
価格はどんどん上がっていますが、結局「そうじゃないな」というのはあると思うので、そういう意味で言うと、高騰し続けるものではないと思うんですよね。ただ、私がデジタルの世界に入った時は、日陰も日陰の仕事だったわけですよ。
それに比べると、今はデジタルマーケティングやDXがわりとビジネスの本流に入ってきているので、下がることはそんなにないと思います。昔に比べて適正値になっていると思うので、上がり続けることはないかなと。幻滅期というのは、そのうち来ると思います。
吴:なるほど。確かに営業はだいたい相場が決まっていて、やっぱり売れている人は高いし、売れていない人は低いというのがあるんですけど、先ほど言ったとおり、みんなはマーケをよくわかっていないから、ある程度の幻想みたいなものがある。
本流のマーケの仕事ってめちゃくちゃ大変で、CMOだと5,000万円とか、要は売上責任が全部マーケにあるというのがスタートなので、「これからバレてくる」というとあれですけど、一部しかやらない人たちは、それが当たり前になってくると頭打ちがやってくる。できる人は高いけど、できない人は安いという、きっと営業と同じようになるんだろうなと。
垣内:「デジタルの知識もあって社内調整もできて」という人は、めちゃくちゃ高いはずです。
吴:そうですよね。今ですら、すごく高い。
垣内:なので、普通に社内調整できる人にデジタルを教えるほうが早いと僕は思っています。
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