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老舗百貨店松屋の元売場担当者が語る! 現場目線のアプリ運用テクニックとは?(全1記事)

2023.08.30

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せっかくDXをしても、現場の「納得感」がないと形骸化する 老舗百貨店・松屋のシステム担当者が語る、業務効率化の要点

提供:アステリア株式会社

紙ベースで行われていた毎日の食品表示チェックをいち早くアプリ化し、法令対応も管理アプリでクリアするなど、DXを推進してきた老舗百貨店・松屋。当時の売り場担当者で、現在は同社でシステム部門に所属する長部良佑氏が、モバイルアプリ作成ツール「Platio」を使ったDXのノウハウを紹介します。

創業150年超、平均年齢は46.2歳の老舗百貨店

長部良佑氏(以下、長部):株式会社松屋の長部と申します。よろしくお願いいたします。今回は短いお時間ではありますが、「老舗百貨店松屋の元売場担当者が語る! 現場目線のアプリ運用テクニックとは?」ということで、お話をしたいと思っております。

本日は、簡単にこのような項目をお話ししたいと思っています。3番、4番では、私たちの会社が導入したHACCPの管理アプリの作成秘話や、作成の時に気をつけたことをご説明します。

まだ導入(件数)は少ないんですが、アプリ全般をいろいろ作っています。私は元売場社員ですので、その知識も踏まえて参考程度にお話ししたいなと思っております。

まず簡単に、株式会社松屋という会社についてご説明したいと思います。松屋というと、全国的には某牛丼屋さんがかなり有名だとは思うんですが、弊社は銀座と浅草に店舗を構える、百貨店業を主な生業とする企業です。

創業は1869年11月3日となっておりまして、おかげさまで2023年の11月で155年目を迎える、一応「老舗」と呼ばれる企業でございます。

2023年3月より新社長に古屋(毅彦)が就任しまして、新たな体制でスタートを切っています。事業所は銀座と浅草に2店舗ございますが、最近はコロナも落ち着いてきましたし、インバウンドの解禁もありまして、かなり盛り上がっている状況です。

従業員数はプロパーの社員で550名ほどいまして、平均年齢は46.2歳と、平均年齢的にはちょっと高いです。最近はITリテラシーがどんどん上がってはきているんですが、一般の企業に比べてそんなに高くはない企業なのかなと思っております。

プログラミング未経験でシステム課に配属

長部:簡単に私の自己紹介をしますと、名前は長部良佑と申します。出身地は東京で、サッカー・スポーツ観戦等々が趣味です。

現在は、デジタル化推進部システム課ITインフラチームに所属しております。主な業務としましては、社内ネットワークの安定稼働を目標に、保守運用などを含めて、コロナ禍で社内でもかなり増えてきたデジタルデバイスの導入や管理を、ベンダーさんとも協力してやっております。

一番見ていただきたいのは社内歴です。私は新卒でこの会社に入社して早15年ぐらい経つんですが、最初は入社と同時に銀座店のキャリア向けの婦人服を担当しました。仕入れや催事の企画などをやりまして、浅草店に異動になりました。

和洋菓子を担当させていただいたり、異動で店内のプロモーションを管轄する部署に行ったりして、2019年の3月から現職の部署に入っております。

ここにいるみなさんがどうかはわからないんですけれども、SE経験はもちろんないですし、プログラムもまったく未経験です。ITに関してはそれなりの知識はありましたけれども、変な話、まったくの素人と言っていい人間だと思っております。

そんな私は「Platio」の導入の時から携わっておりまして、弊社では2020年の3月に導入が決定しました。

コロナ禍を機に、社内のDXに注目が集まるように

長部:目的としては、2020年6月に努力義務化されるHACCPの実施状況をチェックするアプリを作ってほしいということで、いろいろと他社製品と比べた結果、Platioの導入を決めました。

これは新規のものだったので、何もベースがなかったんです。なので、いきなりアプリを作るというよりは、既存業務をちょっとアプリ化してみようということになりまして、食品の日付チェックをアプリ化しました。

4月から現場で運用を開始してもらおうと思ったんですが、みなさまもご承知のようにコロナウイルスの関係で緊急事態宣言が出て、店舗が休業に入ってしまいました。

そのあと6月に営業を再開したんですが、社員が輪番で出社したりと体制が整わず、結局、7月、8月くらいに日付チェックアプリが現場で運用開始されました。現場での反省点を活かしつつ、今日ご説明するHACCPの実施状況管理アプリを2021年の4月に導入したという経緯です。

みなさまの会社も同じかもしれないんですが、コロナを契機に「社内のDX」「デジタル化」「アプリ化」というワードがかなり出てくるようになりました。このPlatioは、その先駆けとなるツールとなっております。

今、お話ししたPlatioで作ったアプリは、私が現場といろいろ相談をして作っているんですが、お恥ずかしながら今は実運用で動いているのがこの2つぐらいです。

時間の関係上、上(表示ラベル日付チェックアプリ)は今日はご説明できないのですが、Platioさんのホームページ内に紹介ページがございますので、そちらを見ていただければなと思います。今回は下の「HACCP実施状況管理アプリ」の説明をしたいと思います。

2021年6月から完全義務化された「HACCP」とは

長部:「そもそもHACCPって何なの?」というところから説明しないと理解いただけないかと思うので、簡単にご説明をします。食品を扱われている企業さんは、もしかしたらHACCPをお耳にしたことがあるかもしれません。

(スライド右側は)厚生労働省からのホームページをコピーしただけなんですが、食品の製造過程にはいろんなものがあります。定点観測で安全性に問題がないかを確認して・記録することを繰り返していって、食品の安全性を担保するチェックの仕組みです。食品を製造されているみなさんも含めて、2021年6月より完全義務化されています。

百貨店としては、イチから原材料を仕入れての製造はしていないんですね。百貨店のデパ地下とかに入っているお総菜屋さんは、それぞれ独自のテナントさんが(原材料を)仕入れて、店内厨房で調理をしているんです。

売り場である百貨店として何を行うべきなのか、弊社の衛生担当者と保健所に確認したところ、「各テナントさまに毎日チェックしていただいているものを、最低でも月に1回はチェック状況が正しく機能しているかどうかを確認して、データで管理しなくてはならない」と言われましたので、それに対応するアプリを作ることが求められていました。

運用イメージとしてはこのようなとおりです。月ごとに担当社員は変わるんですが、各ショップの方々がチェックしたものを1人の担当社員が売場ごとにチェックして、弊社の衛生担当者に報告をして、スマホもしくはiPadでデータをチェックして、問題がなければOKの通知を出す。

衛生担当者が「ちょっとここが抜けているよ」「ここ、大丈夫?」という疑問点はアプリ内ですべてレスを返して、また再報告をするというツールを作っております。データが数ヶ月分溜まりましたら、データビュアー(アプリに登録したデータを閲覧・集計できる機能)でエクスポートして、Googleドライブ等に保存するというフローを組んでおります。

急いで作った最初のアプリは、使いづらさが目立ち失敗

長部:もともとPlatioを導入した経緯としまして、100種類以上のモバイルアプリのテンプレートをご用意いただいているので、HACCPの(管理に対応している)ものもいくつかあるとお聞きしました。「これは使えるんじゃないかな?」ということで、テンプレートをベースに作ろうと思ったんです。

ただ、既存のテンプレートはテナントさま向け、要は製造者向けのアプリだったので、百貨店としては使えなかったんです。これからご説明するものは、写真日報をベースとして作っております。

ちょっと前置きが長くなりましたが、アプリの詳細をご説明したいと思います。アプリの中身はすごくシンプルに作りました。「どのようなことが必要なんですか?」と現場のヒアリングをしましたら、当たり前だけど、まず「報告日時」はいると。

弊社の百貨店の中には売場名がありまして、同じ食品フロアでも「お菓子担当」だったり「弁当・総菜の担当」と、係が分かれておりますので、その係名が表示として必要だと。

銀座店・浅草店を含めますと、係が担当するテナントは100から150くらいあるんですが、どこのテナントをチェックしたかがわからないといけないので、チェックの対象としたテナントさま名を表示します。

月ごとに変わるユーザー名、チェックした担当者を入力しなければいけないので、名前が必要ですよということで、このような(「確認者名」の)項目を出しました。

最初は「とりあえず早く作ってくれ」と言われたので、プロトタイプとして対象テナントを全部聞いて、売場名を全部表示するような仕組みにしたんですが、150以上あるので選ぶのにすごく時間がかかってしまって、「これはないよね」という話になりました。

報告者側も受け手側もわかりやすい設計に

長部:そこで活用したのが、もしかしたらみなさんもお使いかもしれないんですけど、(スライド)右下のPlatio式。

記述を見て裏でプログラムが動いていると思うんですが、これくらいの簡単な記述で式を入れるだけで、特になんのプログラミングをすることもなく(使えます)。例えば「売場」を選んだら、その売場に対象となるショップだけを出す。これで、対象ショップ数はかなり絞られて選びやすくなりました。

「名前」に関しては、最初はリスト化しようかと思ったんですが、先ほど申しあげたように異動の多い会社で、期ごとに担当者や所属社員が変わるので、自由入力でその月の担当社員がアカウントを入力するようにしております。

もう1つが、「飲食店営業」「菓子製造業」だったり、HACCPの管理でいろいろな業種ごとにチェック項目が決められておりまして、それに対するチェック項目を出すようにPlatio式でコントロールしておりました。

これも最初は、テナントさんを選んだら自動的に項目が表示されるようにしようかと思っていたんですが、季節ごとに取り扱う商品が変わったりすると、チェック項目も増えたり減ったりします。なのでユーザーのほうで、「この月はどのグループでチェックしなきゃいけないのか」を選択してもらってチェック項目を出します。

やはり報告漏れがあってはいけないし、衛生管理者に未チェックの部分がわかりやすくなければいけないと思いましたので、デフォルトでチェックしていない状態でアプリが立ち上がります。

赤だと文字が見えにくいので、実状はオレンジくらいになっていると思うんですが、色をつけて「チェックができていないよ」というところをわかりやすくしました。もし未チェックのものがあれば、報告者側もわかるし、受け手側もわかるという工夫をさせていただきました。

未経験者こそ、悩んだらサポートセンターにすぐ相談

長部:ちょっと話がはずれるんですが、私もこのアプリを作っている時に、初めてサポートセンターを利用させていただきました。今はリニューアルしてかなり使いやすくなったとお聞きしています。

最初にプッシュ通知の機能をつけたんですが、ぜんぜん機能しなかったんですね。先に実装していた表示チェックも同じプッシュ通知を入れていたんですが、それは問題なく機能していました。

よく考えられる、iOSのアップデートやアプリの再起動、ログインし直しとかいろいろ試したんですけど、ぜんぜんプッシュ通知が働かなくて。ここだけが機能しなかったので、1人で1~2週間悩んでいて、もうにっちもさっちもいかなくなってサポートセンターへ問い合わせたところ、けっこうすぐにレスが返ってきました。

今はもう対応済みらしいんですが、旧「プレート」は、今は「ミニアプリ」という名称になっています。これが、ある一定の文字数を超えるとプッシュ通知が機能しないことがわかりました。「そんなの聞いてなかったよ」という話だったんですが、ご指摘のとおりミニアプリ名を少し短くした結果、問題なく解決することができました。

何が言いたいかというと、アプリを3日で作れるのはすごくいいんですが、特に私みたいにいろんなことが未経験な者だと、どこかで詰まって自分で解決できないことに悩んじゃう時間は非常にもったいないと思います。

たぶんみなさんも(サポートセンターを)使われていると思いますが、「わからなくなったら少し悩んで、すぐサポートセンターに」というのが、私の部署内での鉄則となっております。

既存業務のアプリ化・新規業務のアプリ化の共通点

長部:これがPlatioの中身だったんですが、これだけだとちょっとつまらないかなと思いましたので、このようなアプリを会社から提供されて使っていた元売場担当者としての目線も入れて、アプリ化はこの2つに分かれるんじゃないかな? ということをお話ししたいなと思っています。

大きく分けると「既存業務のアプリ化」と、もう1つが、何もやっていないものをいきなりPlatio化する「新規業務のアプリ化」。

これはあくまでも私見でもあるんですが、既存業務のアプリ化でやるべき業務は、もともと紙ベースでやっていたもの(をデジタル化するだけ)なので、かなり明確なものです。

今まで紙で行っていたものを、会社の方針とか、コロナ禍での「非接触」というキーワードでアプリ化するということだったので、デジタル化することによって利便性の向上が必ず求められる。これは絶対だと思いました。

逆に新規アプリ化でいうと、実現すべきことがコロコロ変わったり、すごく不明確な部分(があったり)、どうしたらいいのかがなかなか伝わってこない。

新規のため利便性の比較対象がないので、最初にバッと作ればとりあえず現場は触ってくれるだろうなと。ただ、自分でイチから作るので、かなり余計な機能をつけがちになっちゃうかなと思います。

一番重要な部分が共通する部分でして、みなさんもそうだと思うのですが、作る側と利用者は一致しないパターンが多い。私も現場ではこのアプリをほとんど使ってないので、私が作る側・現場が利用者となっているんですが、現場の利用者が使いやすくないとアプリは絶対に浸透しない。これは、どの会社さんでも同じなのかなと思っております。

そして「会社としてこういう理由だからPlatioを導入するんだよ」というはっきりとしたデジタル化の意図がないと、現場社員も納得して使ってくれない。そうしないと、どんどんPlatioが活用されなくなっていくので、ここが作る上で非常に重要なのかなと思っております。

良かれと思ってつけた機能が最善とは限らない

長部:お時間もそんなにないので駆け足になってしまいますが、アプリ化の際に注意したこと・共通点です。1番は当たり前なんですが、どのようなことに困っているのか、どのようなことをデジタル化したいのかをヒアリングして、ちゃんと要件を固める。

「極力シンプル・スマートに」というのは、メンテナンスのことも考えてなんですが、導入して1発目のアプリバージョン1でそのまま行くことはまずないと思うので、なるべくシンプルでスマートにして、メンテナンスを楽にすることが大切です。

先ほど申しあげたように、わからないことはすぐサポートに問い合わせていく。これはさっきも言ったんですが、自分の最善が他人の最善とは限らないです。

自分が良かれと思ってつけたものが、いいと思われる時もあるんですけど、「こんなのいらないよ」と思われる時もあるので、最初のヒアリングをうまく活かしつつ、シンプル・スマートにやっていく。

Platioさんの勉強会でこのようなことを言っていいのかわからないんですが、弊社が何かデジタル化をする時に、Platioが第1選択であることはもちろん変わりないんです。

ただ、「別にPlatioを使わなくても、この業務ってこういうほうがもっと簡単になって使いやすいんじゃない?」というものに関しては、もちろんPlatioでアプリ化を検討はするんですが、例えば弊社はGoogleワークスペースユーザーなので、「スプレッドシートで管理したほうが簡単なんじゃないですか?」とか、臨機応変にDXを進めております。

百貨店ならではの“紙文化”のデジタル化を目指す

長部:最後になりましたが、個人意見も含めた今後の展望というか、これから私たちがやっていきたいなと思っていることを2つほど挙げさせていただきます。

1つ目は、テンプレートにある受付アプリをちょっと活用して、電子上の招待を行えればなと思っております。

弊社は百貨店ですので、お客さまをご招待するものがいくつかあり、一般的に言われるダイレクトメールと言われる紙で送っているんですが、郵税がかかって高騰もしていて出す通数も多いので、経費的にもかなり上がっております。

メール上でQRコードなどを発行すれば、いらっしゃったかどうかも受付アプリで管理できるので、やってみたいなと思っております。

次は、できるかどうかはちょっとわからないんですが、弊社ではRPAも試験的に導入しております。

「Power Automate Desktop」というWindowsさんのRPAツールを使っているんですが、それと組み合わせて、例えばブラウザでやれる作業があるのでデータをエクスポートしたり、エクスポートしたデータを削除するのを半自動化できないかなと考えております。

そろそろお時間になると思います。駆け足ですみません。Platio自体のご説明というよりも、全般的な話になってしまいましたが、これで株式会社松屋の説明を終わらせていただきたいと思います。ご清聴ありがとうございました。

(会場拍手)

とにかくシンプルな設計が運用をラクにする

司会者:長部さま、ありがとうございました。事例のページには載っていないその後のお話を聞けて、絞り込み選択できるのもすごいなと思ったんですが、場合によっては入力させるように残しておくというのは、すごく活用のヒントになるなと思ってお聞きしておりました。

1つご質問なんですが、最後のまとめの1歩手前にあったスライドで、「シンプルにアプリを作る」というお話があったと思います。アプリをシンプルにする以外に、メンテナンス面で工夫されていらっしゃることはありますか?

長部:シンプルにすると、項目自体が少なくなるのでメンテナンスは楽になります。項目を選ぶ時に、CSVでインポートすることもできるじゃないですか。だから、CSVの元ファイルは現場に渡しています。

「更新してほしければ、そのCSVを変えて私に送ってね」というふうにやっているので、渡してCSVをあげるだけです。現場に少しやってもらうという面では、メンテナンスを楽にしているのかなと思います。

司会者:なるほど。長部さま、どうもありがとうございました。

(会場拍手)

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