大企業からスタートアップへの転職は「勝ちパターン」を持っておく

角田潤彌氏(以下、角田):質問があればそれに答える時間を10分ぐらい残してはいるんですけども、いかがでしょうか?

藤岡清高氏(以下、藤岡):ありがとうございます。すみじゅんさん。こう言っちゃ失礼ですけど、風貌からすると哲学者から諭された感があって。みなさん、すみじゅんさんは哲学的な考え方をお持ちかもしれませんけども、バリバリのビジネスパーソンですから(笑)。

ありがとうございます。あと10分ちょっとありますので、ぜひご質問をお願いします。と思ったらさっそくきていますね。

角田:たくさんきていますね、ありがとうございます。

藤岡:Tさんから、「スタートアップだと、自分の実務レベルとのギャップがどの程度なのかつかむのがより難しいイメージなのですが、スタートアップへ転職する方はそのあたりをどのように図っているのでしょうか」という質問です。

角田:逆に藤岡さんに聞いてみたいですね。

藤岡:俺ですか(笑)。

角田:プロじゃないですか(笑)。

藤岡:今日は企業の方が多いので、大企業から初めてスタートアップに行くという前提でお答えはしますけども、最初はわからないというのが(多いです)。大企業って看板で仕事している可能性もあったりするから、まず今いる大企業で絶対成果が出せるという「勝ちパターン」を持っていることが大事かなと思いますね。

会社の看板があるかもしれないけど、「こういう状況でこういう課題を出されたら、俺は100パーセント成果出すぜ」という仕事人にまずなっていることが前提で、それもないのにスタートアップに行って通用しないと、全部自信を失ってしまう。なので立ち戻れるものは絶対持ったほうがいいですね。

「俺はこの状況なら絶対結果が出せるんだ」と。例えば野球選手で言うと、「俺は送りバントはほぼ90パーセント成功できるんだ」とかですね、「ライト方向に確実に打てるんだ」とかあると思うんですけども、最低限今いる職場で勝ちパターンを持っていること。

その上でスタートアップに行って、仮に通用しなかったら、何が通用しなかったか差分がわかったりするんです。でも今の職場で成果が出せるものがない中で、違う環境に行って成果を出せないと、何がダメで何ができたのかもわからなくなってしまうので、まず自分で軸を持った上で転職をするのが大事なのかなと僕は思いますけども、どうでしょう?

スタートアップで成功するための3つの要素

角田:ありがとうございます。これはよく私が外向けにご説明しているんですけど、3つ、スタートアップで成功するための要素があって。

まず1つが「論理的思考能力」。つまりどんなお題がきたとしても、それを論理的に、辻褄を説明できる能力が極めて重要だと思っています。

なので、ご自身のやっている仕事がやらされ仕事で、何のためにやっているのかわからないとか、他の会社にいった時にそのプロセスを違うかたちで転用して使うことができないといった人の場合は、ちょっと苦しい可能性が高い。ふだん自分の仕事をちゃんと論理的に理解できているかどうかって、けっこう重要かなと思っている。

もう1つ、頭が良くても「実践できない人」はダメなんですね。だいたいみなさん若かりし頃に量的にたくさんやって、(スタートアップに転職するのは)量から質に転換するタイミングになる方々が多いんですよね。こういう方々ってスタートアップに来ても実務レベルは間違わないことが多いというか、うまくいくことが多いんです。

量から質に転換するための実践力を持っていて、物事を論理的思考能力によって辻褄を合わせて考えることができる。さらにその2つプラスアルファもう1個が、「その会社のビジョンやミッションと合致しているか」なんですよね。前者2つがあったとしても、例えばまったく考え方が違う人と働いちゃうと、(結果が)ぜんぜん違っちゃうんですよね。

生産性を気にしていてみんなが自律しなきゃいけない会社と、膝詰めで会ってコミュニケーションしながらやっていく会社ってまったく考え方が違います。技術があったとしても合う合わないがあるので。

実務レベルという観点では、先ほど申し上げたとおりで論理的思考能力、今やっている業務のプロセスをちゃんと分解してきっちりロジックでもって立て直すことができたりとか、再現性を持ってやることができるか。

それを実践して成果が出せるか。知っているだけじゃなくて、理解して行動できるかどうか。このレベルがあれば、ギャップはほぼないと思います。そうではないとすると、(考え方)全部がギャップになると思います。という感じですかね。

藤岡:いや、本当にそのとおりです。

スタートアップに初めて転職する人はした方がいい「言語化」

藤岡:僕も補足すると、スタートアップに初めて転職する人は、今のすみじゅんさんの話で言うと、「自分はこれをしました」というだけではなくて、「このビジネスを達成する上でこういう課題が必要だと感じて、なぜこのように感じたのか、それに対してどのように解決すればいいのかと考え、自分はこういうふうに行動を起こした。その結果、こういう成果を出した」と言語化できて、これを再現性があるようなストーリーに落とし込める(ようになること)。

これをスタートアップの社長とか採用担当者と話した時に、考え方がズレていないと思ってもらえれば、「たぶんこの人は活躍できる」と思われるんですよね。

すみじゅんさんの言うように論理的に考えて、ちゃんとやってきたことを言語化できて、再現できるかどうかを説明できれば、ズレがなくなってくるのかなと思いますね。

じゃあどんどんいきましょうか。次の質問はきていますか?まだきていないかな。

角田:インタラクティブな場なので、なんでも質問してください。ちなみに先ほどの実践のところで、僕がよく外部向けに説明している資料を共有します。先ほど口頭で申し上げたことを絵で整理するとこういう感じです。

上が論理的思考能力で、左が実行力で、ミッション/バリュー合致度があります。なのでみなさんはエージェントに単純に紹介されるだけではなく、これをご自身で整理した時に、ミッション/バリューの合致度とか、先ほどコンピテンシー面接マニュアルのお話しをさせていただきましたけども、ご自身の人生がどういう方向なのかなとかは、きっちり分析したほうがいいのかなって思っています。

20代で転職歴無しでも、ある程度の活動量と論理的思考能力でカバー可能

藤岡:そうですね。今質問がきたので読みますね。「他社でも通用する能力を20代から考えてきました。一応それなりにスタートアップで通用していると考えています。そんな思考回路は概ね成功していたのでしょうか」。

角田:成功していると思います。例えば今私がいるRevCommって、成功も科学しているんですね。私は「幸福」を科学する人なので、「成功」も科学するんですけども、こうやって会社にフィットする人の傾向を分けています。

たぶん今質問してくれた方って、20代で転職歴なしの方だと思うんですね。そうすると今おっしゃっているような他社でも通用することというのは、左下で書かれているんですよね。「年齢が20代であれば論理的思考能力でカバー可能」。

ある程度の活動量と論理的思考能力でカバーする。つまりたくさん量をやって自分で実践して成果を自分のものにしていることがちゃんとできていれば、普通に挑戦させてくれるんですよね。

ただ、右上になってくるとほとんどいなかったり、年を取ってくるとビジネスプロセスの知見がなきゃいけないとか、プロダクト知見がなきゃいけないとかどんどん難しくなってくるので。なので「20代」という意味では(思考回路は)正しいと思います。

入社後ギャップに直面するのは「なにをやるかわからない状態」で来た人

藤岡:次の質問もきました。「大企業からスタートアップに転職した方が入社後にギャップに直面する典型的なパターンを教えていただけますでしょうか」。

角田:これ、藤岡さんのほうが(笑)。

藤岡:そうね。私は私なりにあるんですけども、すみじゅんさんのご意見からおうかがいしていいですか?

角田:先ほどの面接とかに対してきっちり準備されていなかったり、ご自身がやることがすり合わせされていなくて、なんとなく入るパターンって、全部ギャップになりますね。それはまさに典型的なパターンです。なにをやるかわからない状態で来た人はほぼダメですね。

藤岡:そうですよね。私も補足すると、典型的なということで、スタートアップだとなんだかんだ言って結果をかなり求められるかなというのがあります。

大企業だと、言われたとおりやっていれば怒られなかったりするんですよね。上司から「これやれ」「あれやれ」とHOWのことを求められるので、言われたとおりにやって、それで結果が出なかったら「仕方ないよね」って済まされちゃったりすることが意外と多いと思うんです。

スタートアップだといきなり「この成果を出してこい。やり方は自分で考えろ」みたいなことが多くて、HOWがないままでいきなり成果を求められちゃったりするので、「えっ、どうすればいいんですか?」となる。大企業からスタートアップに行った人が最初に戸惑うところです。

行動指針の指導がないので、「それは自分で考えろ」とか言われちゃったりするんです。たぶんそこは発想の考え方を変えないといけないな。当たり前っちゃ当たり前ですけど、「目的を達成する」という動きをふだんから考えてやっていれば、スムーズにフィットできるんですけど、大企業だとなかなかそうはならないのかなと思いますね。

「数値化できないこと」はほぼない

角田:そうですね。もう1問ぐらいいけそうですか?

藤岡:はい、次にいきます。「数値化できることが成果という考え方があります。正しいと思いますが、なかなか数値化できないことを論理的に説明するのはあまり意味がないのでしょうか」。

角田:意味がないことはないと思いますね。論理的にというのは、客観的に同一に考えられるような状態を作ることなので、数字だとそれがやりやすいだけなんですよね。ただ、数字には暴力的な部分もあったりするので。

論理的に数値化できないことが本当にあるのかというと、意外になんでも数値化できちゃうんですね。例えば「企画する」とかって数値化しづらいとかよく言うんですよね。想像力を働かせる、クリエイティブな仕事をするという感じなんですけども。

実を言うと私は過去にコンサルティングでご支援させていただいた会社さんで、とある有名な自動車会社なんですけれど、この会社さんってさんって想像力を発揮するところまでマニュアル化されているんですよ、すごいですよね(笑)。

それを見て「数値化できないって本当にあるのかな?」というのが当時の私が思ったことです。コンサルティングファームに行って、数値化できないことはほぼないと学びました。

数値化できるようにひねり出す努力が必要

角田:客観的に何かを作るということは、「タグ」を作ることがほぼできるので、そういったことがある程度できた段階で、論理的に説明できるわけですよね。論理的に説明できることは、相手に客観的に理解されるということになるので、説得して物事を変えていくというプロセスの中では意味がないことはまったくなくて、むしろ意味がある。

もっと言うと、例えばこのご質問をされた方の業務自体が、極めてその事業に対して重要だとすると、むしろ客観的に理解させてあげる状況を作らなきゃいけないはずなんですよね。

じゃなかったら「数字だけですべてを終わらせなさい」という話になって、その時はたぶん失敗するはずです。(数字にするのが難しいことを論理的に説明することは、)むしろすごく意味があることだと思います。なので自信を持って、意味があることだと思ってやってみてください。

藤岡:まったく一緒です。数値化できるようにひねり出す努力が絶対必要で、そうすると仕事も楽しくなると思います。あと自分のやったことが数値化されて、成果が出るという実感も得られるんでね。

逆に数値化しないと、曖昧で済ませられるかもしれないし、手応え感も得づらい。「自分の仕事ってどんな成果出したんだろう」ってモワッとしちゃうと、それはそれで手応え感がないので、楽しくないかもしれませんね。

幸せになるポイントは「不確実なところ」に行くこと

藤岡:今質問がきています。「スタートアップへの転職予定がなくても行っていいんでしょうか」、いいんです。

角田:むしろ行ったほうがいいと思いますよ。なにかのきっかけになるかもしれませんしね。

藤岡:じゃあすみじゅんさんから一言もらって終わりたいと思います。一言だけお願いいたします。

角田:ありがとうございます。不確実性に勝つためには、不確実なところに行くことがポイントだと思うので、ぜひお会いしてなにかお話しできたらなと思います。よろしくお願いします。

藤岡:ぜひみなさん、リアルでもお会いできるのを楽しみにしています。今日はすみじゅんさん、ありがとうございました。

角田:ありがとうございました。