年齢によってミスマッチが起こる可能性も

角田潤彌氏(以下、角田):次、一気に2つ出していきます。「年齢×キャリア 関係ない環境」、なんかいいですよね。でもこれ両方に言えるんですよ。「良い」と「簡単」と「大変」と「悪い」で。これは何かと言うと、これ(「若」と「老」)で違うんですよ。

若いか歳をとっているかによって変わります。簡単に言うと、この2つの方々に共通するのはこれなんですね。「実力があれば短期で昇格できる」。一気に上がれます。ただ考えてほしいのは年齢なんですよね。その人の立っている位置なんですよ。

若ければ、失敗してもやり直せるんですよ。ただそれなりにシニアのポジションに入ってくると、実力が伴わなくなると、もうこれはキャリアロストする可能性もあるんですね。なのでそう考えると、若いうちに挑戦するほうがより良い。

ある一定の年齢以上になる場合はどこからスタートするのか、その会社が必要とするポジションって何なのかということをよく確認してやらないと、悲惨な目に遭う人もいなくはないという、そういうリスクもあったりします。

なので立場によって、良い部分と悪い部分が両方あるんですね。逆にここらへんって藤岡さんは気をつけられていたりする部分はあります? 横で伴走する立場として。

藤岡清高氏(以下、藤岡):本当ですね、特にこの若いほうは失敗が許されるし、何回もチャレンジできたりするのでいいんですけど、「老」のほうですね。ここはやれることを、個人側と企業側でしっかりすり合わせておかないと、結果を早い段階で求められてしまうので。自分が成果を出せることは何なのか。会社がそれをちゃんと価値と感じてくれているか。

どういう時間軸で成果を出すのかというのをすり合わせていかないと、ミスマッチになってしまうことが多いので、ここは気をつけなきゃいけないんですが。逆に言うと、成果を出せる方であれば何歳でも仕事ができるというのは、スタートアップであれば良いことだと思います。

角田:なので本当に自分の腕に自信があって、ちゃんとそこは詰められるようなキャリアを持っている方だったら本当にいいんですけれども、単純に給料が高くて、自分の実力がわからないままに来てしまうと苦労されている方もいるので、ここは注意が必要なのかなとよく思う部分だったりします。

降格もあるスタートアップでの「キャリアロスト」

角田:ここまで説明してきたんですが、「簡単で悪いこと」ってないです。

だいたいこんな感じですかね、というのが良かったことであったり、横で見ていて大変だったりすることであったりという部分だと思っておりますので、ここはぜひご理解いただけたらなと思います。

じゃあ次ですね、まさに今日の本質的なトピックになってくるんですけども……。

藤岡:すみません。すみじゅんさん、ちょっと質問が来ていて、「ここでキャリアロストってどういうことでしょうか」ということなんですけども。

角田:ありがとうございます。みなさん方はたぶんご自身のキャリアという意味では、大手企業、中小企業、スタートアップ、いろんなところにいて、会社側ってどんな感じで成長していってほしいかというのを一定聞いていることがあるんですよね。特に大手で昔から続いている会社って、なんかSなんとか等級とかMなんとか等級とか、「5年でこのポジションになってくれ」とかってたぶん言われていると思うんですよ。

入社した時に言われるか、もしくは入社前の説明の時に言われるか。「だいたい何歳でマネージャーで」とか言われたりするんですけども、スタートアップに来ると、それが一瞬崩れる可能性があるんですね。

例えばマネージャー職を前職でやっていたとしても、スタッフからスタートしてみましょうとか、経験がはまっていて、たまたまマネージャーだったんだけども、マネジメントのポジションでスタートしてみましょうみたいなこともあるんですけども、先ほど藤岡さんがおっしゃったように、ご自身のキャリアとちゃんとすり合わせができていなかった場合って、けっこう簡単に降格します。

スタートアップに挑戦する時の「すり合わせ」の重要性

角田:「これは労務的にも降格って問題ないんですか」とよく言われることがあるんですけど、例えばすごく高い給料で、平均年収が300万円しか出せないような、すごくアーリーなスタートアップに「すごく盛って1,000万円で入りました」って人がいた場合って、本当にその1,000万円の能力が出せなかった時に、例えば給料が下がることがあっても労務的にそんなに大きな問題にはならない可能性が高いです。会社の状況を踏まえて、両者ですり合わせをした結果下がったりするケースがあります。

そうすると1,000万円の年収があった人が仮に500万円に一気に下がってしまったとすると、その人は市況感的には500万円の価値の人になっちゃうんですね。そうすると、せっかく今まで持っていたキャリアとかのつながりがなくなった状態で、給料も半分に下がってしまったというと、一転して迷子になっている状態になるんですね。

これをキャリアロストと表現しています。なので本来その前の企業にいたら、もしかしたら1,000万円でずっと行けたかもしれないが、挑戦、リスクを取った結果リターンが返ってこなかった。

それで500万円になってしまって、スタッフポジションになってしまいました。すると次の仕事がすぐ見つけられるかというとそうでもなかったりするんですね。これがキャリアロストです。

そうなってほしくはないんですけども、実際なる方も一定いらっしゃる感じなのと、私実は昔上場企業で、子会社で人材エージェント業をやっていたことがあって、そういう方々が駆け込んできたのを実体験として持っていまして、「あー、前ですり合わせておいてください」みたいな、先ほどの藤岡さんがおっしゃったようなことを丁寧に話したことがあるんですね。

なのでどういうエージェントの人と話をして、どういう会社を選ぶのか。そこからもう重要なんだなと当時強く思った感じです。エージェント業のことを悪く言うつもりはないんですけど、彼らも目標があって、例えば35パーセントのフィーをもらって次の会社に紹介しようとする。かつその人たちが成功するかわからない部分もあるわけですね。

そうした時に数字の目標が重すぎて、とにかくどこでもいいから受かればいいやという感じになっちゃうと、みなさんのキャリアがそこで消えてしまう可能性があるので、自分ごととしてしっかり考える。こういう話を聞いて、どういったところに問題があるのか、ちゃんと深掘りしてほしいなというのが1つあったりします。

幸せとは「自己肯定感」と「自己有用感」の掛け算

藤岡:ありがとうございます。じゃあ次にいきましょうか。

角田:はい。次に、「なぜスタートアップで働くことが私たちを幸せにするのか?」というところにいきたいと思います。ちょっと勉強チックになってきちゃって恐縮なんですけども、幸せって何なのかとみなさん考えたことがあるのかと気になっています。たぶんいろんなことを言われると思うんですね。

異口同音じゃなくて異口異音になるんです。「幸せってこうですね」「ああですね」と。私、アンケートというか統計的にいろいろ調査したことがあるんですけど、これは人によってバラバラなんですね。

「お金があること」とか、本当にバラバラなんですけども、ちょっとこれを分解してみたいと思います。私の中で完全に方程式があるんですね。幸せってちょっと難しい言葉を出すんですけれども、1つは「自己肯定感」。もう1つ、「自己有用感」。これの掛け算です。

掛け算ってけっこう怖いんですね。なぜかというとどっちかがゼロになったりマイナスになると、突然ゼロとかマイナスになるからです。足し算だったら自己肯定感がなくても、「自己有用感があります」と言ったら、なんか幸せそうな感じの式になるじゃないですか。

でもどっちかがなくなる、どっちかがマイナスになったら、これが全部マイナスになっちゃうんですね。なのでこの2つのバランスはとても重要です。「じゃあその2つは何?」ということをちょっと説明していきたいと思うんですけども、まず1つ目、自己肯定感。一応定義上こう書いてあります。

「自分自身を受け入れ、自身の価値や能力を認める内的な感覚」「自分自身に対してポジティブな評価や信頼を持ち、自信や満足感を感じることができる能力を指す」「自分に対してポジティブな態度を持って、失敗や困難にも立ち向かいやすく、健康的な自己評価を維持する傾向がある」というのが自己肯定感です。

「自己有用感」は「手応え感」「手触り感」と言い換えられる

角田:自己肯定ってよく聞きますけれども、ちゃんとこうやって定義を読んでみると「あっ、そういうことなのか」と思う人が多いという印象だったりします。じゃあもう1つの、自己有用感はこちらですね。

「自分が他人や社会にとって価値のある存在であるという信念であったり、感覚」です。それで「自分自身が自分の行動や貢献を通じてなにか重要なことを達成できると感じることを指す」。これが高い人は、「自分の能力や才能を活かして他人を支援したり、自分の仕事や努力が意味のある成果を生み出すと信じることができる」そうです。

「自己有用感を持つということは、自己満足感ややりがいを感じることにつながり、自己成長や幸福感を促進する」ということです。今2つこの話をして、みなさんこれはどっちが重要だと思います? 藤岡さん。突然抽象的な話がきて、「どっちも重要だろう」と言われそうな気もするんですけど。

藤岡:どっちも重要なんですけども、スタートアップで働くという文脈だけでいくと僕は自己有用感をとても大事にしていると思っています。すみません、これは僕の個人的な意見なんですけど、自己有用感って手触り感とか手応え感みたいなところと置き換えるのって正しいのか、間違っているのか。

角田:合っていると思います。さすがです。

藤岡:いえいえ、僕はこの言葉が好きなんです。僕はスタートアップの世界に実は20年近くいるんですけど、この世界にいる楽しさって手応え感、手触り感をすごく感じられることなんですよね。

大企業にいた時は自分がどんなにがんばっても、会社にどう貢献しているかわからないし、誰から感謝されているかわからないんだけど、小さい会社にいると誰に対して価値を出しているのか(わかったり)、「ありがとう」と言ってくれる人が目の前にいたりして、「自分は誰かの役に立っているんだな」という感じがしているので、それが自己有用感なのかなと思って、僕はこれがとても良い言葉だと思っているし、好きですね。

角田:さすがですね。転職のプロの方ってそこを理解されている。

「幸せ感」が落ちてしまう理由

角田:この2つは掛け算なんですけども、どっちが先にくるかというと有用感なんですよ。幸せな人って実を言うと幼少期にすごく親から愛されて、もう意味なく必要とされているんですよ。意味なくと言ったらすみません、怒られちゃいますね。「生まれてきてくれて本当にありがとう」と。

それって「自分がこの世の中に必要とされているんだ」という強い気持ちになるんですね。そうすると「私は必要とされているんだ」と自分に自信がついてきて、自己肯定できて、さらにがんばって人から必要とされていってどんどん幸せになっていくんですね。

なので人から必要とされることをやる、人から必要とされているものの方向にいくってすごく重要な感覚で、今まさに藤岡さんがおっしゃること、本当にそのとおりだと僕自身も思っています。さすがです。

藤岡:子ども、赤ちゃんがなんかもう無償の愛を受け取るのが、自己有用感というのはすごくわかりやすい例えだなと思いながら聞いていました。

角田:ありがとうございます。それが大人になっても同じなんですよね。大人になると、じゃあ無尽蔵にみなさんが必要としてくれるかというとそうでもなかったりして、自分がやっていることは本当に必要とされているのかと、みなさん立ち止まることがあって転職されたりする。

そうした時に、本当に世の中で今必要なものって何なんだろうという方向に向かっていけるかって重要で。そこが意外に欠けちゃっている。なので世の中が新しい価値を見出してそっちに寄っていくようになっていればいいんですけれども、そういうものがない場合とか、停滞感が蔓延している場合って、みんななんか幸せ感が落ちていくというのがあるんですよね。

というところがあって、それが社会問題になったりします。