2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
リンクをコピー
記事をブックマーク
大野誠一氏(以下、大野):みなさんこんにちは! ライフシフト・ジャパンの大野と申します。今回、この「キャリアの夏フェス」というちょっと不思議なイベントにお声がけをいただきまして、これから1時間、「人生100年時代とキャリア」について、お話をさせていただきたいと思っております。
まだ夕方の時間でもありますけれども、今日は企業内でのセミナーなどの時に比べて少し肩の力を抜いた、気楽な感じで聞いていただけるようにしたいなと思っています。その一方でお話ししたいこと、資料はすごくたくさんあって、おそらく1時間では話しきれないんじゃないかと思います。途中もしかすると部分的に端折りながら進めさせていただくところもあるかもしれません。そのへんぜひご容赦いただければと思います。
今日はお題をいただきましたので、「さあ、これから、人生100年時代の旅に出よう」というタイトルで、お話をさせていただきます。
これが私たちライフシフト・ジャパンのメインビジュアルです。キャッチフレーズは、「さあ、人生の主人公へ」。自分自身の人生の主人公は自分って、当たり前のことなんですけれども、よく考えてみると意外と「自分の人生、生きてるのかな?」みたいな疑問を持つこともあって、けっこう難しいところもある。
ライフシフト・ジャパンは、一人ひとりが自分の人生の主人公として、人生のハンドルを握って生きていけるような世の中を作りたいなという、そんな想いで立ち上げたプロジェクトです。
私自身は1958年、昭和33年の生まれで、64歳になりました。もともとリクルートで仕事をしていまして、約20年、まだ紙の情報誌の時代のリクルートで仕事をしてました。その後だいぶ雰囲気が違うんですが、パナソニックという会社(に入りました)。
大企業なので、ちょっと転職してみてびっくりしましたけれども、そこでデジタルテレビのネットワーク対応とか映像配信サービスの開発をやり、アクトビラというジョイントベンチャーを立ち上げて、代表を務めました。2011年からは、ローソングループでエンターテイメントの仕事などもやりました。
右下にバイオリンを持ったもじゃもじゃ頭の男がおりますが、これは葉加瀬太郎ですね。彼とは、今も一緒に仕事をやっていたりします。
そんなことで、いろいろな業種業態でいろいろな仕事をしてきた中で、2017年からライフシフト・ジャパンというソーシャルベンチャーを立ち上げて、人生100年時代の生き方や働き方を考え始めたという、そんなキャリアです。
私たちライフシフト・ジャパンは、「人生100年時代をワクワク楽しく生きていける『ライフシフト社会』を作りたい」、こんな想いで集まった仲間たちが立ち上げた、ソーシャルベンチャーだと思っていただけるとうれしいです。
主にやっていることは3つです。3本柱と言っていいと思いますけれども、1つ目はこのライフシフトという言葉は、実は言葉の定義がはっきり決まってる言葉ではないんですよね。
そういう状況なので、若い方からミドル、シニアの方まで含めて、いろいろな世代のさまざまなライフシフター(ライフシフトの実践者)を探し出して、インタビューをしてご紹介をするという活動を、一番ベーシックな活動としてやっています。2018年にはNHK出版から、このロールモデル集を1冊、出版をさせていただいておりますが、基本的にはこの活動が私たちの一番ベースです。
2つ目の柱が、一番力を入れている活動で、一人ひとりが人生100年時代をどう生きるかをデザインするためのワークショップと、1on1スタイルのダイアログ・サービスを、個人向けに提供しています。これが私たちの活動の骨格になっています。
そしてもう1つ、一人ひとりがこれからの新しい生き方、働き方を選択していけるようにするためには、「会社」というものがどう変わっていくといいのかということも、けっこう大きなテーマだと思っていて、「カイシャの未来研究会2025」という研究会活動を通じて、いろいろなアウトプットをしています。
この研究会では、日本を代表するHR系の論客の方々や大学の先生などと一緒に、いろいろディスカッションをしてアウトプットをしようとしています。
今日はこの「さあ、これから、人生100年時代の旅に出よう!」というテーマをいただいているんですけれども、「人生100年時代」と「キャリアの夏フェス」ということで、人生100年時代とキャリアの関係を、みなさんと一緒に考える1時間にしていきたいなと思っています。
実は今日は、セミナーという位置づけになっているので、1時間、私からのお話を中心にさせていただきますが、来週にはワークショップもあります。ワークショップでは、今日のお話を聞いていただいた方々と、本当の意味で一緒に考える時間を取りたいなと思っておりますので、今日のお話を聞いて、もう少し深めたいなという方は、ぜひワークショップにもご参加いただけるとうれしいです。
それでは「キャリア」について考えていこうと思います。最近は、ChatGPTが大活躍してので、ちょっとChatGPTに「キャリアって何ですか?」って聞いてみると、こんなことが返ってくるんですね。
「キャリアは個人が仕事や職員を通じて進む道や経験を指し云々」と。今回お集まりのみなさんは、キャリアの専門の方が割と多いんじゃないかと思うので、このぐらいのことは知ってるよ、ということじゃないかと思います。
次に「キャリア・プランとは?」と聞くと、ChatGPTも少し表現が変わってくるんです。「計画は柔軟に見直され修正されるべきです。キャリアプランは個人のニーズに応じて異なりますが、明確な目標設定と計画的な行動を通じて、自身のキャリアを形成し、成長するための指針を提供する。これがキャリアプランです」。このように返ってきました。
また、最近、キャリアというと、「キャリア自律」ということが日本中いろいろな会社で叫ばれていると思います。一種のバズワードみたいになっていると思うんですね。
そこで、今度は、「キャリア自律って何ですか?」とChatGPTに聞いてみると、「キャリア自律は個人が自らのキャリアを主体的に管理し、自己の目標や価値観に基づいて進むことです。自己決定と自己責任、自己評価と成長、ワーク・ライフ・バランスの重視、自己実現と意義の追求が要素です。個人が自己のニーズを意識し、柔軟にキャリアを進めることが重要です」。こんなふうに返ってくるんですね。
「キャリア自律」となってくると、主体性、自己の目標とか価値観、自己決定、自己責任、自己評価みたいな、けっこう重たい言葉で返ってくるようになってくるんですよね。
さて、今日お集まりのみなさんは「キャリア自律」と聞いてどう感じますか?
今日はおそらくキャリア自律を推進する役割を担っている人事の方もいらっしゃるだろうし、日常的に「キャリア自律しろよ」と求められてる方もいらっしゃるかもしれないんですが、「キャリア自律」と聞いて、皆さんは、どう感じますか? 「ワクワクする」「どんよりする」、どちらでしょうか。
チャットに「キャリア自律」と聞いてワクワクするか、どんよりするか、コメントいただけるとうれしいです。
じゃあこの「キャリア自律」とは何なのか。さっきChatGPTのコメントはありましたけども、もともとアメリカで1980年ぐらいから言われ始めた言葉らしいです。そのベーシックな定義は「目まぐるしく変化する環境の中で、自らのキャリア構築と継続的学習に積極的に取り組む、生涯にわたるコミットメント」ということらしくて。ちょっと難しい言葉が出てきましたけども、これがアメリカのCACあたりが、当初設定していたキャリア自律の定義らしいですね。
キャリア自律とは何なのか。実は、先ほどご紹介した研究会を一緒に推進していただいている、明治大学大学院の野田稔先生の資料をお借りしてるので、ご紹介したいと思います。
まず、かつて「キャリア」は会社に任せておけばよかったという時代がありました。この資料は、野田先生手作りの、動きのあるパワーポイントなんですが、エスカレーターに乗っていくと、会社が最後まで面倒を見てくれて、終身雇用で家族の世話までしてくれる。昔々、そんな時代もあったよね、という感じでしょうか。
ところが、今はそのような時代ではなくなってきましたよね。最初のうちは面倒を見てくれるけれど、ずーっと乗ってればいいよねというような時代じゃなくなって、黙って上まで登らせてくれるエスカレーターは存在しないんですよね。
今はどうなってるのかっていうと、途中まではサポートしてくれるんだけど、それからは一人ひとりが山登りをするみたいな時代になった。ここからは自分で登るんですよっていうのが求められ始めました。
じゃあこれがキャリア自律かっていうと、そういうわけじゃないんですね。さらに登り終わったあとに、自分は何がやりたいのか、何ができるのかっていうことを、会社とか社会に宣言しなきゃいけない。そしてその宣言を周りの人が認めてくれた時に、自由自在な人生を得ることができる。これが野田先生の定義されている「キャリア自律」です。
みなさんが考えていた「キャリア自律」というものと、この野田先生の定義は、フィット感があるでしょうか。
先ほど「キャリア自律と聞いてどう感じるか?」という問いにいくつかコメントいただきましたが、この「キャリアの夏フェス」に出てくる人は、ほとんどの人がワクワク派でしたね。「ワクワクしかありません」みたいなコメントもありました。かなりワクワク派が多いとすると、この野田先生の定義も割としっくり理解できるかもしれないですね。
そんな中で、じゃあ「人生100年時代」と「キャリア」となるとどうなるんでしょう。ここでもう1回、ちょっとくどいんですけども、ChatGPTに聞いてみました。「『人生100年時代』のキャリア・プランとは?」と聞くと、ちょっと表現のニュアンスが変わって来るんですね。
「『人生100年時代』のキャリアプランは、長期的な視野と柔軟性を持ち、複数のキャリアパスを考慮します。ライフロングラーニングとスキル継続的な習得、意義や目的の追求が重要であり、自己成長と社会貢献を追求しながら、多様な経験を活かして充実した人生を築く計画です」。
さっきの「キャリア自律」とか「キャリア・プラン」っていう段階とは、ちょっと違う言葉が出てきますよね。長期的な視野、柔軟性、複数のキャリアパス、ライフロングラーニング、それから自己成長と社会貢献、こんな言葉も出てくる。少し視野が広がっていくんだなぐらいのことは、感じていただけるんじゃないかと思います。
私たちはこの「人生100年時代」というキーワードから、この活動を始めているんですが、今や「人生100年時代」って言葉自体は、もう本当に広く誰でも知っている言葉になりました。
ではこの「人生100年時代のキャリア」に関しては、どのぐらい日本のみなさん、一般的な日本人の認識が深まったのかなと考えると、意外とまだまだ大きな変化は起きてないんじゃないかなっていうのが、私の個人的な感覚です。
昨年、私たちは、「人生100年時代マインド調査」という調査を行いました。先ほども「ワクワク・どんより」というキーワードを聞きましたけども、私たちはこの調査でもこういう聞き方をしています。「『人生100年時代』と聞いてどう感じますか?」。みなさんはどうですか?
今日お集まりのみなさんは、もしかするとキャリア自律もワクワク派なので、人生100年時代もワクワク派が多いかもしれませんね。これもちょっとみなさん、思うところがあればどんどん、チャットに書き込んでいただければと思います。
ところが、世の中全体では、「人生100年時代」と聞いて、「ワクワクする」と言ってる人はわずか6.1パーセントしかいません。「どちらかというとワクワクする」を加えても38パーセントということで、実はどんより派のほうが多数派なんですね。
そして世代的に集計をしてみると、70代だとワクワク派が過半数になってくるんだけども、もしかすると今日一番お集まりいただいた中に多いかもしれない30代、40代、50代あたりは、かなりどんよりしてる人が多いという結果になっています。
ちょっと聞き方を変えて、「今、生き生きしてますか?」という質問と「ワクワク・どんより」をクロス集計すると、これは当然だとは思うんですけれども、「今とても生き生きしてるよ」と答えられている人では、4分の3がワクワク派。一方、「まったく生き生きしていない」という人は、9割がどんより派なんですね。
今日の皆さんは、キャリア自律であれだけワクワク派が多いので、かなりワクワクしていて今も生き生きしてるという人が多いのかなと思いますが、世の中全体では実はこんな状態です。
次に、「人生100年時代の備え」について、いろいろな項目を立ててみて、特にキャリア関連の項目もたくさん入れて聞いてみました。
ブルーのラインが「必要だと思う」、グレーのラインが「実際にやっている」というデータなんですが、一番上に来ているのは「計画的な貯蓄」で、65パーセントの人が必要だと思っていますが、実際にやっているという人は35パーセント。
2つ目には「健康・体力作りのための継続的な活動」。55パーセントの人が大事だと思っているけれど、実際に何かやっているという人は26パーセント。こんな結果でした。
「人生100年時代」と聞くと、まず最初に気になるのはお金のことと健康のことなので、この集計では上のほうに来ているんですが、実際に行動を起こしている人はまだまだ少ない。これだけたくさんの項目があるのに、特に「行動・行動はしてません」という人が34パーセント。つまりひとつも選べないって人が34パーセントもいるってことなんですね。
そういうことで、先ほどもちょっと触れたように、「人生100年時代」という言葉は広がったけれど、そのことが問いかけている問題については、まだまだ僕たちは十分考えきれていないと言えるんじゃないかと思います。
この各項目を「やっている」という人と、先ほどのワクワク・どんよりをクロス集計してみると、こんな結果になるんですね。見ていただくと、項目が細かくてすぐパッと見にくいかもしれませんが、下から3つ目に「計画的な貯蓄」、一番気になると言ってた項目があるんですが、あまりワクワク・どんよりとは関係が生まれてないんですね。
下から6つ目に「健康・体力づくり」があります。これも気になる人は多いんだけども、「実際にやってますよ」と言ってる人も、そんなにワクワクしているわけではない。
つまり「人生100年時代」と聞いて、最初に気になるのはお金のことと健康のことなんだけども、そこに何かアクションをしたとしても、急にワクワクしてくるわけじゃないってことなんですね。
このクロス集計で一番上にあるのは、やってる人はまだ少ないんだけど、「これからのライフデザインについての専門家への相談」、2つ目は「移住や二拠点居住など勤務地に縛られない暮らし方の探索」、3つ目は「新しい知識や技術を身につけるためのリスキリング」、こういったことに取り組んでいる人は、ものすごくワクワク派が増えている。
つまり今日は「キャリアの夏フェス」というイベントなんだけれども、こういう働き方や暮らし方について、「人生100年時代」を意識しながら考えたり、勉強したり、インプットしたりしている人たちは、ワクワク派が多いってことなんですね。
今日は、そういう方々が集まっているから、キャリア自律についてもワクワク派が多いし、今いただいたコメントを見ていても、「人生100年時代」と聞いて、どんよりしてるって感じの人は少なくて、ワクワクしてる人が多いのかなって感じかと思います。
先ほどの細かい項目をまとめてみると、ウェルビーイングとか自己探求に関するアクションを起こしている人や学びに関する行動を起こしている人は、ワクワクが増えていく。一方で、お金のことは心配なのでそれは大事なことなんだけども、お金に関連する備えをすることがワクワクにつながるわけじゃないんだなってことが、この調査でわかりました。
そんな中で、この「『人生100年時代』のキャリア・プラン」、広い意味でそれを「ライフシフト」と捉えていこうと思います。「人生100年時代」という言葉が、私たちに問いかけているものは何だろうなということを考えるキーワードとして、「ライフシフト」を掘り下げていこうというのが、私たちの想いです。
2024.11.13
週3日働いて年収2,000万稼ぐ元印刷屋のおじさん 好きなことだけして楽に稼ぐ3つのパターン
2024.11.21
40代〜50代の管理職が「部下を承認する」のに苦戦するわけ 職場での「傷つき」をこじらせた世代に必要なこと
2024.11.20
成果が目立つ「攻めのタイプ」ばかり採用しがちな職場 「優秀な人材」を求める人がスルーしているもの
2024.11.20
「元エースの管理職」が若手営業を育てる時に陥りがちな罠 順調なチーム・苦戦するチームの違いから見る、育成のポイント
2024.11.11
自分の「本質的な才能」が見つかる一番簡単な質問 他者から「すごい」と思われても意外と気づかないのが才能
2023.03.21
民間宇宙開発で高まる「飛行機とロケットの衝突」の危機...どうやって回避する?
2024.11.18
20名の会社でGoogleの採用を真似するのはもったいない 人手不足の時代における「脱能力主義」のヒント
2024.11.19
がんばっているのに伸び悩む営業・成果を出す営業の違い 『無敗営業』著者が教える、つい陥りがちな「思い込み」の罠
2024.11.13
“退職者が出た時の会社の対応”を従業員は見ている 離職防止策の前に見つめ直したい、部下との向き合い方
2024.11.15
好きなことで起業、赤字を膨らませても引くに引けない理由 倒産リスクが一気に高まる、起業でありがちな失敗