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AI時代の『トランスフォーメーション思考』―初公開!AIの力で、未来の臨場感を高める方法―(全5記事)

「6つのD」で考える、ChatGPTの“異常さ”とこれからの世の中 専門家が指摘する、AIの民主化に気づけない危険性

MBAオンラインキャンパス主催のイベントに、『トランスフォーメーション思考 未来に没入して個人と組織を変革する』の共著者である植野大輔氏、堀田創氏が登壇しました。書籍に書かれていないアップデートされたエッセンスも交えながら、「AI時代の『トランスフォーメーション思考』」をテーマに議論されました。本書では、3章に書かれた「30年後の未来から現在を見つめよう」について語られました。

「未来を知るにはググればいい」

堀田:次のページにいきましょうか。

植野:3章はいろいろなことを書いていますよね。

堀田:そうですね。

植野:もうちょっと3章の話をしますか?

『トランスフォーメーション思考 未来に没入して個人と組織を変革する』

堀田:僕がけっこうおもしろいなと思ったのが、確か(植野)大輔さんのやつですよね? 「未来を知るにはググればいい」というのはやはりおもしろいキーワードですよね。

植野:あぁ、はいはい、ググれと。

堀田:確かによく「未来はどうなるかわかんないじゃん」と言います。まさにabundance360(Xプライズ財団CEOで連続起業家のピーター・H・ディアマンテス氏が、2012年から2025年までの開催を宣言して主催するクローズド・コミュニティ)もそうだし、いろいろな記事にも「未来はこうなります」と書いてある。ある程度ニュースを読めばわかるし、あえて未来を自分で創造していく必要が特にない。それがポイントかなと。

あまり着想的な作業じゃないんですよね。ただ読む、それをちゃんと理解する、そこだけが重要だなと、あらためて今も新鮮なメッセージだなと思います。

植野:でもこれ、僕が言っているんじゃなくて、今ミラノ工科大学教授のロベルト・ベルガンティ先生が言っていて。「デザイン・ドリブン・イノベーション」で世界的にすごく有名なイノベーション研究の大家の先生です。私がいたボストンコンサルティンググループのパートナーとベルガンティ教授が対談している動画があって。みなさん検索されたらあるかもしれないんですが、そこで「みんなは『戦略が』とか『アイデアが』なんて言うけど、ググってみろ」と。

「デジタルストラテジーバンクとかで検索する、もう何億件と出てくるぞ。それを片っ端から見たらアイデアなんてもうあるじゃないか。世界中の人が考えているんだ。問題はそれを実行しにいくことをしないことで、アイデアじゃないんだ」と言っていましたね。

堀田さんがおっしゃるとおり、(ググった)アイデア見て「あっ、これはいいな」と一定量を読み込む、理解する、その作業量を積むと「あっ、こういうことは、そりゃこうなるね」というのが見えちゃう。

だからすごくシンプルな……。もちろん「現地現物」と言いますから自分で行ってみる、触ってみる、体験してみる。これは強いですけど、まず導入としてググったらいいんじゃないかと。

堀田:そうですね。

植野:ちょっとChatGPTにやられてググる人が減ってくるのかもしれないんですけど。ChatGPTはまだテキストしか返してくれないから、ググったほうがいいかもしれないですね。非連続ないろいろなものにたどり着けるのはググるほうかもしれないなと。

「6つのD」でわかる、AIが民主化されるまでのステップ

植野:このあと堀田さんの説明であるかもしれないですが、ChatGPTでも臨場感を未来に任せる方法はあるんですかね? 壁打ちに使うとか。

堀田:そうですね、ちょっとあとでデモをしてみたいと思います。

植野:ぜひぜひ、楽しみにしています。4章にいきますか?

堀田:そうですね。

植野:実は4章は「コスパが良い」と言ったら怒られるけど、すごくお得です。まぁでもちょっと(書いたのが)1年半前だから古くなっているのもあるかもしれませんが、重要技術について40~50ページでまとめています。本当に重要なエッセンスだけをパッと得る意味では、大変お得な4章だと思っています。

堀田:そうですね、この1年半の間にAIの未来の③「人間のクリエイティビティを拡張する」というのが、2022年でとんでもないことになりました。人間の全部を拡張となり始めたのは、ChatGPTや生成の話がすごく大きくて。

植野:あと6D'sはどうですか?、もしよければ、6つのDは図表もあるので解説いただけますか? あまり知られていないけどすごく大事なことを言っている気がして。

堀田:そうですね。6D'sというフレームワークがあります。(図表の)1つ目はデジタル化、この2個目がdeceptive(欺まん的)という概念で「ちょっとなんか怪しいな」「本当か?」みたいな(感じです)。ChatGPTは今GPT3.5なんですけど、もちろんGPTが1だったり2だったりしていたわけですよね。

GPT2の時はたぶんあまり知らなかった方もいらっしゃるかもしれないんですけど、知っている人から見ると「とはいえ、おもちゃだな」「これはさすがにこっちじゃないんだろうな」と思っていた時期がある。

破壊的(disruptive)というのは、まさに今起きているわけですよ。「あれ、これいけるんじゃないか」という状況。これはまだ途中なんですよね。これが行き切ると起きることが3つあります。非物質化(dematerialize)、無料化(demonetize)、民主化(democratize)の3つです。

1つは民主化、まさにAIの民主化が起きたのがChatGPTだと思うし、GPT3.5に関しては同時にもう無料化も起きているわけですよね、だからすごく安く、すごく高品質なものが手に入ると。

非物質化とは「その結果、こういうデバイスがいらなくなりましたよね」ということがどんどん起きていくこと。特にこのセカンドステップ(deceptiveなデジタル化のあたりのデジタル化とdeceptive(欺まん的)の周辺)で、GPT2のちょっとおもちゃみたいなのを見ながら、「これはとんでもない世の中になるぞ」と未来を読むのが醍醐味。みんはは信じないので、そこを読めた人はけっこう良いポジションにいくのが1個。

破壊的なことが起きている最中に「変革」ができる企業は強い

堀田:それから破壊的なことが起きた時に、人間のメンタリティは「とはいえ、これってブームなんじゃないか」とみんなが言いたがると思うんですよね。でもそんなことはない。コロナが起きた時に「コロナによって世界がもうガラッと変わってぜんぜん違う世界になりますよ」と思うか、「まぁ言うても世界はあんまり変わらないよね」と思うかでけっこう変わったじゃないですか。

植野:はい。

堀田:あれを機に、経営のあり方を変えられた人はすごく強い。一方で、そこでちゃんと企業変革ができなかった企業は、これから辛くなっていったりするわけですよね。

「これはもうただの幻想」「ハイプだ」とそれはそれでいいんだけど、破壊的なことが起きている最中に、そこで元に戻るんじゃなくて、未来を見据えていくほうがより現実に近いんだろうなと。それが6D'sのフレームワークのおもしろいところですね。

植野:もう1回ちょっとまとめると、まずデジタル化が起きますと。これはいろいろなものが01のデジット記号みたいにコードやデータになっていくことなんですかね。その技術が広がってワーッといって、1回目のハイプが起きるのかもしれない。だいたいうまくいかずに「あれ、これ違うんじゃない」というハイプ・サイクル上の幻滅期が起こる。

deceptiveと言いましたっけ? それでdisappoint(失望する)。まさにハイプの幻滅と同義ですね。とはいえ技術は着々と進行していて、ある変曲点を迎えた瞬間、破壊的な技術になる。

そうするとワーッと広がり、さらに生産コストが安くなって無料化の状態が起き、もっともっと広がると今まであった物理的な存在、物質を消し去ってしまう。そんな6つのDが起きるという話ですね。

ChatGPTに対する意識の違いから感じる、日本の危機感

堀田:そうですね。あともう1個あるのが、これはよく言われる話なんですけど、ChatGPTは2ヶ月ぐらいで1億ユーザーまでいっているんですよね。破壊的な期間が2ヶ月ぐらいで終わっちゃうんですよね。もう民主化して無料化しちゃったという。

植野:いろいろなものの普及速度が今すごく上がってきていますよね。

堀田:そうなんですよね。

植野:どこかで統計が出ていましたが、昔iPhoneでもたぶん3、4年かけて市民権を得たものが、ChatGPTはこの数か月でもう日本人の10人に1人は使ったことがあると。10人に1人が先端技術を使ったことがあるってすごいことですよね。

堀田:いやぁ、そうなんですよね。一方で民主化した技術に対する統計がどこかにあったんですが、アメリカのエグゼクティブでは58.何パーセントがもうすでにChatGPTを業務に導入しているのに対して、日本のエグゼクティブクラスでは10パーセントちょっとしかなくて。

やはりそこらへんの意識のキャッチアップは出ちゃう。要は「破壊」がもう「民主化」していることに気づかず、いまだにデジタル化の手前ぐらいの人たちがけっこう多いのは、ちょっと危機感がありますよね。

植野:日本は、まだデジタル化の手前(図表の余白の部分)にいる人が多いと。なるほど、わかりました。

ビジョンを戦略に落とし込む「トランスフォーメーションマネジメント組織」

植野:変曲点はAI以外にもモビリティ、ロボティクス、エネルギーなどもあって、それぞれすべてが30年後の日本だけじゃなくて世界を激変させるような技術があるというところですね。金融・食品もあると。5章いきますか?

堀田:そうですね。5章は植野節がもうたくさんありまして。

植野:ビジョンを描いたんだけど、なかなかそれを戦略に落とし込んだり組織を動かしたりやりきることができない時に、どうすればいいか。BCGやファミリーマートでの実際の変革の経験をまとめ上げて書いたところですね。

今日のためにもう1回図表を整理したんですが、この右側(スライド)の図5-⁠5、XMOというのは変革マネジメント組織です。トランスフォーメーション・マネジメントオフィスというところです。

ここでさまざまな変革のプログラムを走らせていくわけですけど、経営トップや変革責任者CDOのステアリング・コミュニティを作って、最低でも隔週ぐらいで必要な進捗確認をして経営判断をしていく。

それぐらいトップがコミットして、スピード感を持ってやっていくのが大事です。それをきちっと司る司令塔になるのが、このトランスフォーメーションマネジメント組織です。そこにはプロジェクトマネジメント、プログラムマネジメント、いろいろなスキルが要ります。

経営トップに響く「チェンジマネジメント」という言葉

植野:資料を整理していて思ったのが、この1枚(図の5-5)をDX JAPANというビークルでまさに自分が企業に機能提供しているんだなと。ここを組み立てられなくてどうしても進まない会社さんが多いんだなと。

例えば変革ステアリング・コミッティで、情シス部長やいろいろな部署から呼ばれた課長だけでDX会議をやっていて、経営陣はノータッチ。これでDXは進むわけないですし、メンバーも後ろ盾がいないところで変革の強烈な判断なんかできないですよね。

また会議体自体も、すごく儀式的になっていて、各部署が勝手に報告して「時間が来たんで終わります」と言って議事録だけ書いて「何を確認した。何の報告があった」という感じ。いかに変革を進めて、そのためには何を判断してもらうとか、どこを立て直しにいくとか、プロジェクトをうまく軌道修正するというスキルがない会社が残念ながらとても多くて。

経営企画やDX推進室などでXMOを立ち上げてもらって、ほぼこの立てつけをする支援させていただいています。はっきり言って自分はこの図をやっているんだなと思った。これがないと絶対にDXは進まないなと思いますね。

堀田:いい話ですね。やっぱりそれで変革に対して本気になれる組織が増えると、うん。言っているだけじゃ意味ないですからね。

植野:最近堀田さんが仕込んでいるネタの1つかもしれませんが、けっこういろいろな会社の経営トップが「チェンジマネジメント」という言葉を好んで使うなと。「会社が変わらない」「組織が」「人が古いままなんだよ」という時に、僕が「チェンジマネジメントをやっていないんじゃないですか」と言うと、みなさん「そうそうチェンジマネジメント、それだよ」と。

チェンジマネジメントって、そんなに使ったことのない言葉なんですけど、イメージが湧きますよね。変革や変えることのマネージをやっていないから「必要なのがチェンジマネジメントだ」と。

経営層たちの心に一発で刺さる単語ですね。DXより「そうだ、チェンジマネジメントをやらなきゃ駄目だ」ということが起こる。ここは『トランスフォーメーション思考』の続編なのか、進化系なのか、堀田さんと日本のためにひねり出したいところですね。

新しいチェンジマネジメントのあり方が出てくる可能性も

堀田:そうですね。ちなみに、この前シンガポールでカンファレンスで登壇した時に、やはり共通しているんだなと思ったのは、どれだけAIの話をしてもチェンジマネジメントがないとなかなか......という話をしていて、「やっぱりそうだよな」と。みんな世界中でチェンジマネジメントに困っているんだなと、あらためて思いましたね。

植野:AIはいろいろなことを人間の代わりにやってくれるんですけど、「この仕事を、人間の代わりにやってね」という判断をするのは人ですからね。人間側が踏み留まっていたら、AIが登場する余地がない。

あと国内、海外もなんですかね。ビジネススクールやMBAを取られた方は、きっと何かの授業でチェンジマネジメントという言葉には触れたと思うんです。一方で私の知る限りチェンジマネジメントのテキスト的なものは、ジョン・P・コッター先生ですか。

いろいろと本を書かれていますけど、彼ぐらいしか専門の方はいらっしゃらない。本質なことを言っているからかもしれないんですが、20年間でいろいろな本を書かれていますけど、本の内容のアップデートが起きていない印象も持っていて。そこに目下AIがこれだけ爆発的に普及しているので、新しいチェンジマネジメントのあり方が出てくるんじゃないかなという気がしています。

堀田:そうですね。

植野:そして最後ですね。「あなただけのMTPをつくろう」。

堀田:これはステップバイステップなので、あとでやってみたいと思います。

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