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会社の肩書きにとらわれない! 企画のプロと考える、個人ブランディング入門(全3記事)

頭の中が“モヤモヤしている状態”も、実は重要なフェーズ アイデアからプロジェクトを生み出す「言語化」のやり方

会社員をしながら200以上の個人プロジェクトを立ち上げてきた、企画のプロデューサーの大木浩士氏。現在はプロジェクトを立ち上げたい個人の支援もしている大木氏が、仕事をしながら“自分のやりたいこと”に向かって一歩踏み出すためのヒントを語ります。本記事では、アイデアをプロジェクトとして形にする際のポイントについて解説しました。

プロジェクトの発端は、1対1の雑談から

小林こず恵氏(以下、小林):4th place labでも、思いはあってもまだ自分の中でうまく咀嚼できてなかったり、「『これ』というものがない段階で人にうまく伝えられない」「巻き込めない」という声もけっこうあるんです。

大木さんが人を巻き込む時や人に声を掛ける時、「こういうところを大事にしているよ」というものがあれば教えてください。

大木浩士氏(以下、大木):基本、まずは雑談です。

小林:雑談(笑)。

大木:はい。僕の中には夢やアイデアがある。一方で、他の皆さまの中にも、叶えたいことや願望があったりする。それらをざっくばらんにうかがいながら、接点をみつけたり、思いを理解し合ったりする感じが多いですね。

小林:なるほど。

大木:大切なのは、1対1で話す機会をつくることです。気になる人と知り合うことができたら、「すみません。一度オンラインでお話を聞かせてください」「今度オフィスに行って、ちょっと雑談でも」とか、だいたい僕はそういうところから縁が深まり、プロジェクトのスタートにつながりますね。

小林:きっかけを作っていくのが大事なんですね。ちなみに、私が大木さんと今回ご縁をいただいたのも、この本(『まずは小さくはじめてみる』)を読んで、大木さんに連絡しようと思ってSNSで連絡をさせていただいたんです。

大木:重要、重要。

小林:こういうご縁ってうれしいですね。

頭の中にあるアイデアを言語化する

小林:話を戻すと、初めの一歩はみなさんとつながりながら・対話しながらスタートしたとのことですが、そこからどうやって具体的なプロジェクトになっていくのですか?

大木:気になる方とお会いして話をしても、単なる情報交換で終わってしまう場合も多いです。でも、例えば今回の小林さんみたいな感じで、意気投合してすごく盛り上がってしまう場合もある。「一緒にこれをやってみましょうか」みたいに話が発展することもあるわけです。

今日も昼間、何人かの方とオンラインで打ち合わせをして、2つほど形になってしまいました。実は今日、僕は2つのプロジェクトを生み出しているんです(笑)。Facebookを見るとわかると思うんですけど。(プロジェクトの発端は)そういう感じですね。

小林:そういうことなんですね。

大木:プロジェクトを生み出す時は、仮でよいので具体化していくことが大切です。「こんな感じのタイトルで、開催するのは、仮で何月何日何時から」みたいに、まずはたたき台を作る感じで、頭にあるものを言語化します。

言語化する際は、紙にまとめます。それは1枚かもしれないし半ページくらいでもいい。文字にしながら、やりたいことを整理することは必ずやりますね。

自分自身のメリットを考えることも大切

小林:「じゃあ、これをプロジェクトにしてしまおう」と、なぜそんなにフットワーク軽く動けるのかな? と思います。(何が)どんどんかたちにしていくエネルギーになっているのか、なんていうのは気になるところですね。

大木:最近は頼まれることが多いですね。今日は2つのプロジェクトが生まれましたが、2つのうち1プロジェクトは、僕に対して「こんなことできませんか?」みたいな相談があった。

プロジェクトを形にする際は、メリットを考えることも大切です。何もメリットがないものは、どうしても動きにくい。自分にとって何か意義を見つけないと、気持ちがなかなか前を向きません。時間は限られていますから。

「この取り組みは、自分にとってどんな意味があるだろう」「それを行った後に、自分にどんなよい変化が生まれるだろう」、そんなことを考え、整理しながら、もし意義が見いだせたなら「ぜひご一緒しましょう」みたいな感じで、話が前に進むことがよくあります。

あと、お互いの目指す方向性や実現したい未来が本当にぴたーっと合う人もいます。それが今日のもう1つのプロジェクトなんですね。

小林:なるほど、そんな奇跡が。

取り組むプロジェクトは絞る? それとも手当たり次第?

小林:この話に絡んだ質問が来ていて、「プロジェクトを複数思いついた時、1つに絞ったほうがいいんじゃないかと思ってしまうんですが、『同時進行のプロジェクトは何個まで』とかマイルールはありますか?」。

大木:本当におっしゃる通りです。絞ったほうがいいと思います(笑)。

小林:それはなぜですか?(笑)。

大木:やはり集中できるからですね。ふだん会社で仕事をしている方は、どうしても会社の仕事プラスアルファになる。その「アルファ」にかけられるものは、せいぜい1個とかだと思うんですよ。

なので、おっしゃるとおり絞ったほうがいいと思います。でも、僕は性分的に、どうしても複数やりたくなってしまう場合も多い(笑)。(東日本大震災の)被災地で「やりたいものは全部やろう」と決めちゃったので、僕の中にそれがルールとしてあるんですよね。

小林:なるほど。

大木:手当たり次第に何でもかんでもとは思わないですけど、「これはどうやら意味があるものだし、僕にとっても大切だ」と思ったら、もうやっちゃおうという感じになります。

チームを作って、意識的に頼ることが大切

小林:(今まで携わったプロジェクトは)1,000個くらいあるというお話ですが、単発で終わったものもあれば、継続して終わったものもあると思います。

大木:そうそう、ありますね。

小林:先ほど、「立ち上げた後に運用が大変じゃないですか?」という運用の質問がありました。それぞれの関わり方・濃度がみんな違うと思うんですが、やはり時間も限られているので調整をしている感じですか?

大木:例えば、セミナーやイベントを継続的にやっていこうとなった場合、4th place labさんも月1でやっているんですよね?

小林:月1回から3回くらいやってますね(笑)。

大木:来月分や再来月分とか、たぶん3回分ぐらいを同時進行で動かして、いろいろ企画を作ったり打ち合わせをしているんじゃないかと思いますが、複数のプロジェクトに携わっているとそういう状態になりますよね。

小林さんは1人でやっているのかもしれないけど、僕は絶対にチームを作るんですよ。できるだけ1人でやらない。

3人くらいのチームを作ることを心がけていて、自分のほかに2人の仲間がいますので、どうしても身動きが取れない場合はその2人に「ごめーん。ちょっと今週は動けなくて、これとこれをやらなきゃいけないからお願いできない?」と、頼るのは大切かなと思います。

小林:いや、大切ですよね。私も手が回らなすぎて、4th placeの参加者のみなさんにも、いろいろやってもらっているくらい(笑)。

自分のやりたいことと、仲間のやりたいことは別

小林:そういう存在が本当にありがたいなと思いますけど、チームを作る時にどういうふうにチームメンバーを見つけてくるというか、どういうふうにチーム作りをしているんですか?

「何かやりたい」と仮に決まったとしても、そこからうまくチームがつくれなくて大変、なんて話も聞きます。

大木:そうですね。ありますね。

小林:誰をどう巻き込むか、難しいですよね。

大木:相性もありますし、難しいです。最初は「この人いいんじゃないか?」と思ったら、思ったより相性が悪かったりとか(笑)。なので、広く・浅くいろんな人と知り合っておくことが、まずは大切かなと思っています。

一緒に取り組めるかどうかはわからないけど、広く浅く、多くの人を知っておく。「この人はこういうことを考えている人だよな」「この人ってこれで悩んでいたよな」というリストが、僕の頭の中にあるわけです。

何か新しいことを立ち上げようと思った時に、自分の中のリストをめくりながら、「そういえばこの人って、これをやりたいと言っていたよな」と思い出したり。あとはFacebookを見ながら、「この人、関心を持つんじゃないかな?」と思い、声をかけてみるという感じですかね。

本の中でも書きましたが、自分の中にやりたいことがあるとしても、仲間になってほしい人の「やりたいこと」も、また別であるわけです。

自分のやりたいことだけ我を通して実現するのではなく、丁寧に話を聞き、みんながやりたいことをちゃんと理解した上で、折衷案というか、みんながやりたいことが実現できるような企画づくりは、意識して取り組んでいるかもしれません。

小林:丁寧に話を聞く。なるほど、ありがとうございます。「大木さんと一緒にプロジェクトを作ってみたいです。わくわく」なんていうコメントもあります(笑)。

アイデアを形にする時のポイント

小林:私のほうから、もう1つよくある話で聞きたいのが、「何をやりたいかわからない」という話もある一方で、「いろいろなことに興味がありすぎて、何からカタチにしていかいいかわからない。全部同時にやりたくなっちゃう」という悩みもあります。

でも、大木さんがおっしゃったように本業がある中で活動をしていくので、どういうふうに取捨選択というか、優先順位をつけたらいいのか? というところで悩んでいるという話も聞くんですが、どうしたらいいと思いますか?

大木:いろんな考え方があると思います。3つほどヒントを申し上げますね。まず1つは「簡単にできるものから形にする」です。企画やアイデアって、本当に形にしてなんぼだと思うので。

少人数のセミナーでもいい。小規模な勉強会でいい。考えているだけじゃなくて、形にした実績がある。これがすごく重要だと思うんですよね。なので簡単に形にできるものから動いてみる。それが1つ目ですかね。

2つ目は「偶然の一致」を大切にすること。実は僕の中にはいつも20案ぐらい、やってみたいものがうごめいています(笑)。

小林:まだプロジェクトになっていないけど、(企画の)タネということですか?

大木:はい。

自分が身につけたいスキルに取り組んでみる

大木:アイデアや構想が自分の中にたくさんある。そんな中、あるアイデアに関して偶然の一致のような出来事が起こる。意気投合する人と出会ったり、背中を押してくれるような出来事に遭遇してみたり。

そんな時は、「流れが来ているな」「これをやれってことなんじゃないかな?」のような考えが浮かんできます。そういうものについては、優先的に動いてみるようにしています。

小林:そうすると、常にアイデアやキーワードが頭の中にあって、何か別のアイデアとと触れた時に「あっ。今なんじゃないかな?」と、動くということなんですかね。

大木:そうですね。あと3つ目は「自分のこの能力を高めたいんだよな」というものを、まずはとにかくやってみる。

小林:「こういうスキルを身につけたい」というのがあったとしたら、どうしたらそれを身につけられるかを考えていく、ということですか?

大木:例えば、僕は昔プレゼンが苦手で、人前で話すことができない人間だったんです。でも、「なんとかできるようになりたい」そんな思いが強く生まれ、人前に立つ経験を重ねていた時期がありました。今となっては、その取り組みがとても役にたっています。自分の伸ばしたい力を伸ばすという視点。大切です。

小林:確かに、それは挑戦する意義がありますよね。ありがとうございます。

頭の中に「もやもや」がある状態も重要

小林:一方で、先ほど「まずは紙に書いてみる」というお話がありましたが、興味があるキーワードはあるんだけれども、そこからぜんぜん具体的にならない時って、どういうことからやったらいいんですかね?

よく聞く話で、「地域を盛り上げたいんだよね」「もっと楽しく働けるような社会を作りたいんだよね」というなんとなくの思いはずっとあるんだけど、(具体的な打ち手がわかならい)方って、けっこういらっしゃるなと思うんですね。

大木:なるほど。

小林:「いつもそこで止まってしまう」なんてことが多かったりするんですけど、そういう時にまずは何から言語化していくのか、何からアクションしていけばいいのか、このあたりはいかがでしょうか?

大木:「なんとなくぼんやりキーワードがあるけど、どうしていいかわからない」という状態はすごくわかります。そういう時は、無理にプロジェクトを作らなくてもいいと思います。

もやもやしたキーワードがいっぱい頭の中にわーっとある状態って、実はそれはそれで重要だと思うんですよ。

紙に書き出して発想を整理する

大木:そんな時に大切だと思うのは、刺激的な情報に触れること。ユニークな人と話をしたり、行ったことがない場所に足を運んでみたり。そんなことをしながら、自分の中に新たなひらめきをつくること。

もやもやした状態をキープしつつ、新しい刺激的な情報に触れてみる。すると自分の中のキーワードが、一気につながりだすことがある。それはジグソーパズルが突然つながりだしたり、積み木が一気に組みあがったりする感覚に似ています。

小林:なるほど。

大木:そういう状態になるまで、焦らず少し待っておくというか。ちょっと様子を見ながら、いろんなものがつながり始めるタイミングを待ってみる。または少しずつ小さな気づきを自分の中にためていく。そういう時期も必要だと思います。

小林:先ほどの「偶然の出会い」じゃないですが、キーワードをいつも持っておくことで、何かと触れた時に化学反応が起きるのではないか? ということですかね。

大木:はい、そうですね。まずは頭の中にキーワードをたくさん抱えておく。でも、ずっとためこんでおくと、他のことが考えられなくなってしまう場合もある。そんな時は、紙に書き出すことも大切です。

考えを紙に書き出しおいて、「これは紙に書いたから、頭の中から外しちゃっていいよね」という状態にする。そうすると、頭の中にスペースが生まれるので、新たな発想が生まれやすくなります。

またその書き出した紙は、簡単な企画メモのような感じでまとめておくようにしています。そしてそれを、いつもカバンの中に入れておく。何かあった時に、すぐに人に見せられるようにしておく。そんなことにも取り組んでいます。

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