2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
オープンAPIの先へ~事業会社とバンキングシステムを統合する海外API活用例~(全1記事)
提供:伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
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名古屋清次氏:「オープンAPIの先へ~事業会社とバンキングシステムを統合する海外API活用例~」と題しまして、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)からお話しいたします。
はじめに自己紹介をします。金融機関さま向けのソリューション企画推進を担当しております、名古屋と申します。これまでも長く金融業界で活動しており、大規模なクラウド化のプロジェクト、仮説検証型のアジャイル開発、それから新領域やAPIビジネスの企画に携わっていました。どうぞよろしくお願いいたします。
本日のアジェンダは4つです。「金融動向から振り返るAPIの位置付け」「海外活用例に見る新たなAPIの適用モデル」、このモデルの中で登場する「OpenLegacyのご紹介」「CTCのAPIエコシステム」へと続けさせていただきます。
昨今、APIというキーワードが盛んに取り沙汰されていますが、その背景にある金融動向についてまず振り返っていきます。あらためて申し上げるまでもなく、現代の金融環境は大きな変化にさらされています。
紛争やパンデミックといったリスクが現実のものとしてサプライチェーンを直撃しているほか、サステナビリティや無形固定資産といった企業の価値を測る尺度が拡大し、消費行動や顧客接点がデジタルに移り変わっています。こうした環境変化を背景に、金融機関自身のビジネスモデル変革について気運が高まっているものととらえております。
ビジネスモデルの変革・DXの方向性について、経済産業省のDXレポートから引用しております。全社的な収益の向上にあたっては、既存ビジネス効率化としてのITではなく、サービスの創造や革新にあたるバリューアップが鍵とされています。この必要性について、アンケート回答では7割が理解している一方で、実際に成果が出ている企業は1割未満とされています。
このあとのスライドでは、CTCでもご支援させていただいたキャッシュレス決済の事例を通じて、自社のアセットを活かすバリューアップの取り組みと、APIの位置付けについてお話しします。
今回のお客さまは、複合的なサービスを手がけていらっしゃる非金融事業者さまです。事業範囲が拡大する中で、顧客の理解や接点の確保が断片的であり、例えば世帯の構成がわからないとか、サービス間の導線が不明瞭、顧客自身の属性もノイズが多いといった課題を抱えていらっしゃいました。
こうしたリアル・デジタル、その事業間のクロスユースや日常的な接点を設けるハブとして、キャッシュレス決済を立ち上げられたことが今回事例の背景になっています。
こちらは決済にまつわるアーキテクチャを示しています。中心にあるAPIサービスをCTCが手掛けており、顧客モバイルアプリのAPI呼び出しを起点として、外部のコード決済サービス、情報配信や各事業との連携を行う基幹システム接続といった構図になります。
これらの仕組みを事業として統合させることを考えると、そこには目に見えないさまざまなインターフェースが存在しています。顧客とサービス、内部と外部、クラウドとオンプレミスといったかたちで、これらを効率的に連携する手段としてAPIを利用しておりました。
APIの結びつける力がこういったアーキテクチャ、ひいては課題解決につながる、新たなビジネスモデルの構築に寄与した事例になっております。
アジェンダのまとめとして、APIがどのような事業領域に適用できるか、その位置付けについてまとめております。
事業の独自性、環境変化に関する大小の軸で分類すると、バックオフィスのような共通したシステムをクラウド化して置き換えたり、自社システムを外部サービスと連携して補完するような効率化・省力化に関する領域についてはAPIを利用する立場となります。
その一方で、BaaS(Banking as a Service)に代表されるような新たな収益源の構築、マイクロサービスや内製化による競争力の強化といった、バリューアップを行うためにAPIを提供することが、今後の金融環境においてより鮮明になってくるのではないかと考えています。
アジェンダの2点目として、国内オープンAPIの動向を踏まえつつ、海外の新たなモデルについてご紹介します。まずオープンAPIの経過について振り返ります。金融機能の分解と再統合といった海外フィンテックの流れを受けて、オープンAPIの導入がKPIとして設定され、努力義務が課された改正銀行法が交付されました。
2020年の契約締結期限の際には、本格対応を見越したAPI契約が大多数の銀行でなされておりました。そして現在地点ですが、FISC(金融情報システムセンター)が昨年公表した内容では参照系APIが70パーセント超に対して、更新系APIに関しては10パーセント前後にとどまっていて、オープンAPIに関しては低調に推移しております。
これはなぜかという点ですが、電子決済等代行業者、いわゆるフィンテック企業からすると、幅広い金融機関と低額で接続してプラットフォーム化したい思惑がある。一方でAPI公開にかかるコストもさることながら、新たな収益源としたい金融機関との間で、収益構造にジレンマが生じているといったことが1つ考えられます。
そして、共同センターの制約によって各行独自の施策が打ち出しづらいといった課題が見受けられます。
そういった経緯を踏まえつつ、金融APIの利用形態について整理します。横軸に参照・更新、縦軸に対外公開・自社利用といったかたちで区別しますと、オープンAPIに関しては口座管理サービスとの接続で義務化されていて、今は参照系用途が大多数になっています。
非金融サービスへの後払いや少額保険といった、更新系用途で組み込んでいく形態が今注目されています。そして、自社利用に関してはマスターデータへリアルタイムにアクセスすることで、経営管理や業務・マーケティングといった活動で利用されるほか、自社のWeb/モバイルのバックエンドとしてAPIを利用することでサービスリリースを高速化していくといったアプローチに分類できます。
続いてご紹介する海外APIの適用モデルは、組み込み型金融にあたります。先ほど申し上げたとおり、一般的には非金融事業者のフロントサービスへ組み込む考え方になりますが、今回の事例に関しては事業会社のバックオフィスとAPIで相互に接続することで、バンキングシステムを統合するといった新たなモデルになっております。
ご紹介するモデルを立ち上げられたのは、ある米国銀行さまになります。同行の法人向けデジタルチャネルとしては業務担当者向けと、システム連携用の大きく2つ存在しています。
2点目のシステムチャネルは財務管理や貿易金融として、SWIFTやERPと接続するものですが、ここにAPIを適用した背景について続けさせていただきます。
法人ファイナンスは多くのプロセスやシステムが組み合わさっており、まず人やファイルが介在することで、リードタイムや品質やガバナンスの面で課題がありました。同行はこれらをシステム化/自動化するインテグレーションの仕組みも提供されていましたが、システム群を統合させるためには顧客側のリソースやスキル、時間の不足などが障壁となっていました。
こうした顧客側の要因で統合が進まない状況を打開する取り組みが「バンキングAPI」になります。顧客のシステムに踏み込んでAPI化を促進して、オンボーディングをサービス手動で引き上げていくといった発想で、有人チャネルとシステムチャネルの両面で顧客体験を加速していくことが、このAPIの位置付けになっております。
具体的な仕組みとしては、財務管理にあたっては事業法人グループの親会社・子会社が関係していまして、企業側から金融機関のAPIを呼び出すといった形態が通常になります。米銀が手掛ける「バンキングAPI」の新規性は、同行あるいは企業システム間での連携を加えた、双方向でのAPI利用という点にあります。
これはどのように実現しているかという点ですが、まず企業内にAPIを構築する。これは米銀がAPIサービスの一環として手掛けています。そして財務管理システム(TMS)やERP、内製システムといった個々のインターフェースへアクセスしやすくするソリューションとして、OpenLegacyを採用しています。OpenLegacyは基幹システムと連携するAPIを自動生成するもので、この新たなモデルの原動力になっています。
実際の財務管理プロセスについて、簡単な流れをご紹介いたします。内製システムから資金繰り予測データを、それからグループ子会社から支払いのリクエストをします。そして、財務管理システムから支払いのデータを集約して、米銀に送信します。
入出金情報が還元されればERPへ消し込みデータを連携するといったかたちで、さまざまなプロセスが自動生成されたAPIを通じて、相互に連携している様子が見ていただけるかと思います。
このようにOpenLegacyを活用することで、システムごとのインターフェースを吸収してAPIを自動生成することと、標準化が行われることで「バンキングAPI」との高い連動性を確保できることが、今回のモデルの特徴になっています。
「バンキングAPI」の意義についてまとめたいと思います。まず一般的なAPIの価値として、特定メーカー・製品にロックインされることなく、Web技術のスタンダードとして互換性・生産性・拡張性を得られます。
さらにOpenLegacyを活用することで、さまざまなシステムと接続するAPIを自動生成して効率化すると同時に、標準化・再利用によってプラットフォーム化していく効果が得られます。
その結果として、「バンキングAPI」は事業会社とバンキングシステムを統合して、顧客はサービス体験を加速、米銀がエコシステムを拡大していくということで、より良いサービスに進化しています。これは一昨年公表時点になりますが、実際、法人ファイナンスのAPIについて、累計で10億を超えるトランザクション規模へ発展しています。
この新しいAPIの可能性を秘めたOpenLegacyとは何者であるか、3点目のアジェンダを続けさせていただきます。OpenLegacyの特長をあらためて3点ご紹介します。
「既存プログラムを改変することなく10倍短期間で」「最小限の開発作業で75パーセント低コストに」「多層のミドルウェアを介さずにダイレクトな接続にすることで5倍高速」といったことを謳っています。
この数字はAPIをスクラッチで開発した場合と比較した、OpenLegacyの効果として評価された実際の数字になっております。
自動生成したAPIの適用例について、3つご紹介します。まず上流から下流へバッチ処理でデータ連携しているケースになります。このような形態ですとデータが分散したり、リードタイムによって鮮度が低下してしまうので、APIによってマスターデータへのアクセス性を向上させて、リアルタイムの情報を連携するといった使い方になります。
それからレガシーシステムに関しては、元来独自性が高い環境になるため、横断的なデータ連携が困難といった課題もよく聞かれます。OpenLegacyはWeb標準としてのAPI化だけではなくて、部品化・再利用によって生産性の向上も取り入れることができます。
最後に、これはオープンAPIの対応で典型的な例ですが、多段なミドルウェアを挟んでAPIに変換するような非効率な構造です。OpenLegacyはAPIにコネクターを内包しているため、複雑なアーキテクチャになったり性能を犠牲にすることなく接続性を確保できるといった利点が挙げられます。
何度か登場しておりますOpenLegacyのコネクターについて、代表的なものをご紹介いたします。独自性の高いトランザクションやミドルウェア以外に、ターミナルに描画するようなスクリーン情報の取り扱いも可能になっています。
データベース内のストアドプロシージャや、SAPやTemenosに代表されるエンタープライズシステムのほかに、スタンダードなプロトコルやファイルまで、企業内のアセットを広くカバーしています。
APIの自動生成のプロセスについても簡単にご紹介いたします。レガシーシステムに相対するかたちで、OpenLegacyのレガシー側部品を生成します。既存のプログラムを改変することなく連携のロジックを生成して、各種のインターフェースに対応したコネクターが接続を自動的に確立します。
さらにAPI側部品で生成したロジックとひも付けます。これらはノーコード/ローコード開発や部品の標準化・再利用によって、従来はベンダーに依存していた環境から、内製志向へレガシーシステムのあり方を転換するものになっています。
生成されたAPIのデプロイについては、クラウド・コンテナ・サーバレスといった現代の環境に対応していて、CI/CDのプロセスに組み込むことも可能です。
どれだけ早く簡単にこのAPI自動生成ができるのかを知っていただきたく、CTCの環境でデモンストレーションした動画をご覧いただければと思います。
それではOpenLegacyの特長について、まとめさせていただきます。まず既存プログラムを改変することなく、バックエンドの標準コネクターを通じて部品として構成・再利用することが可能です。
これは複数のバックエンドを組み合わせたAPIといったかたちで定義できるもので、デプロイ先を選ばずにマイクロサービス化できる点から、「10倍短期間・75パーセント低コストで・5倍高速」なAPI公開が可能になります。
最後のセッションは、国内金融機関のDX・モダナイゼーションに役立てていただける、CTCのAPIエコシステムをご紹介します。先ほども取り上げましたが、APIの利用形態になぞらえますと、いずれのケースでも基幹システムへの接続を含めたエンドツーエンドの統合が金融DXの大きな論点であり、OpenLegacyがご支援できるものと考えております。
これをサポートするCTCソリューションについて、3つご紹介いたします。まず1点目ですが、自社のWeb/モバイルサービス提供の迅速化にあたって、デジタルビジネス・プラットフォームをご紹介します。
顧客とバックエンドをつないで新たな価値をサービスとして届ける時に、企画もさることながら、多くの企業が開発・運用フェーズでの実効性に課題を抱えています。
クラウドネイティブの開発スキルや体制を確保して、差別化機能へ注力し、セキュリティとコストを両立しながら、ビジネスフェーズに合わせてアーキテクチャをスケールさせていくといった、デジタルビジネス提供の仕組みをサービス型でご提供するものが「maps」になります。
金融サービスとして多数の実績を持つクラウドネイティブ開発運用の実践力をはじめとして、プラットフォームとして機能することで共通的な部品を再利用して差別化機能に特化したり、セキュリティが担保されたテナント構成の上で、コンテナのスケーラビリティを活かしてビジネス展開をサポートします。昨今の潮流となっている、分業化の一環としてデジタルビジネスへ組み込んでいただくといったコンセプトのソリューションです。
続いて、デジタルマーケティング関連のソリューションをご紹介いたします。金融DXの一環としてデジタルマーケティングが加速しています。冒頭でもご紹介したキャッシュレス決済のように、顧客理解と接点を深めるフレームワーク「CAMG」がございまして、大きくは方針検討支援、CDP構築、データ活用の支援フェーズから構成されています。
金融の業態に応じたアセスメントやカスタマージャーニーの策定・ToBeの明確化をはじめ、顧客データプラットフォームとなるCDPのパッケージ活用・セミオーダー開発から、施策連携の基盤をもとにマーケティングのPDCAの自動化を図っていきます。
それから、チャネルやバックエンド業務に応じた施策展開、APIなどのシステム間連携まで、一連のライフサイクルをフレームワークとしてご提供しているものになります。
最後に、これまで申し上げてきたAPIの利活用にあたって必要となる基盤ソリューションをご紹介します。内外へのAPI公開にあたっては、利用者の認証、サービス間のアクセスコントロールにあたる認可、APIの管理が必要になります。これらを基盤として、オールインワンパッケージとしてご提供するものが「C-FAPI」になります。
「FAPI」というキーワードはあまり聞き馴染みがないかと思いますが、ファイナンシャルグレードAPIと呼ばれる、金融機関などが扱う機微な情報をサービス間で安全に扱う最新のグローバル規格になっております。
このFAPIによって、金融機関の信頼を「守る」だけではなくて、コンテナやマイクロサービス化をはじめとしたAPI開発の構想の策定、標準・効率化の「攻め」と合わせて、金融DXを支える位置付けになっております。
今回のセッションについて、まとめさせていただきます。競争・差別化領域におけるバリューアップとして、サービス間を連携するAPIが欠かせない存在となっております。
金融APIの類型として組み込み型金融が注目されていますが、バックオフィスと統合する戦略的な海外API活用例として、米銀はOpenLegacyの活用によって事業会社とバンキングシステムの統合を果たして、顧客体験を加速させています。CTCはOpenLegacyをはじめとしたAPIエコシステムを通じて、国内金融機関さまのDX支援を行っております。
ご紹介内容についてご不明な点などありましたら、こちらまでお問い合わせいただければと思います。Webサイトにも関連情報を掲載しております。以上で今回のセッションを終わらせていただきます、ありがとうございました。
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
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