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“半径5mの関係性の見直し”から始めるキャリア自律と組織風土変革 ~『著者と考える「人事のデザイン」』シリーズ(全4記事)

少子高齢化で変化する「ブラック企業」の考え方 時間を消耗・才能を浪費してしまう職場に欠けているもの

株式会社エンファクトリーが運営するプラットホーム「Teamalncer(チームランサー)」主催のセミナーより、著者と考える「人事のデザイン」シリーズ第1弾の模様をお届けします。『社員がやる気をなくす瞬間 間違いだらけの職場づくり』著者の中村英泰氏が登壇し、キャリア自律と組織風土改革における「関係性」の重要性を語りました。本記事では、3つのメガトレンドと職場の変化について解説されました。

半径5メートルの関係性から見直す「人的資本経営」

小島千奈氏:ではさっそく、本日のゲストの中村さまにご講演をお願いできればと思います。中村さま、ぜひよろしくお願いいたします。

中村英泰氏(以下、中村):よろしくお願いいたします。今日は、総勢50名超の方がお申し込みいただけているのかなとは思います。

タイトルとして掲げている「人的資本経営」をいよいよ始めていく必要があります。ご参加いただいているみなさまの中には、「みなまで言うな」という方もいらっしゃるかもしれません。今日は、そこを執り行うに当たって1つフォーカスして、「半径5メートルの関係性から見直す」ことを皆さまと確認して参ります。

そもそもというところからすると、組織の生産性をより持続的に向上させようと思った時に見ていく視点は2つあります。1つは事業性というところです。これは「高める」とか生産性の「効率を上げる」などです。

その一方で「深める」というものがあって、これは関係性と言われる部分です。箱ではなくて、そこで働いている人たちが何かをするとした時に、エンファクトリーさんが掲げている「専業禁止」なんて言葉もすごくインパクトがあって、まさにこれからの働き方の選択肢としてトレンドになっていくんじゃないかなと思います。

それは何かと言ったら、世の中を見せることなく縛っておくことはできなくて、もう人は動き出している。いわゆるデジタル化とともに、働く人たちの多様で多層な考え方というものは確実に存在し、もはやレイヤーが崩れてきているんですね。組織の中でどれだけヒエラルキーを持ってやろうとしても、それはもう過去のものとなろうとしている。そうしたなか、組織の生産性は「社員がお互いに深い位置で互いに手を握り合える」ことがポイントになるのではないかなと思っております。

そうしたことを背景に、今日はみなさんと、限られた時間ではありますが、なぜ今職場風土づくりから取り組まなければいけないのか。私が10年間かけて取り組んできたことを、1つの集大成として出版した1冊の書籍『社員がやる気をなくす瞬間』を一部参考にしながらお伝えします。

『社員がやる気をなくす瞬間 間違いだらけの職場づくり』

ちなみに書籍は、昨年末に出版させていただいて、おかげさまで全国主要書店では2面、3面といったかたちで面陳していただいています。出版不況と言われる中で、発売から3ヶ月で増版がかかり、おそらく今、『職場風土づくり』という領域では日本で一番読まれているバイブルになっているのではないかなと思います。

あらためてですが、そんなことを織り込みながら、みなさまに明日から取り組んでいただける、持ち込んでいただけるようなものを一緒に考えていくような中身にしていきたいなと思っております。

人口減少が進み、「良い人を採用する」ことは夢物語に

中村:では、まず最初に2つご一緒させていただきたいなと思います。1つはメガトレンドです。今、世の中がどんな情勢になっているかというところ。あとは変化ですよね。働く現場では確実に変化が起きていて、そのあたりを見ていきたいなと思っております。

では、まず最初にメガトレンドのところですが、3つ挙げさせていただきました。最近は「ターニングポイント」と言われるように、私たちが右か左かそれとも真ん中か、この3つではないですが、5つ、6つ、7つと、いろいろと選択肢が出てきていて、あれもこれもしなければいけないなかで、適切な1つを選択することを求められています。何が起きているのか、状況を整理しましょう。

まず、組織に欠かせないメガトレンドって何かというと、3つあると思っております。1つは、「人口の減少」です。異次元のスピードで進んでいるのではないかなと思います。

統計的なところで1つだけお伝えすると、2023年の新成人、20歳になられた方、今年は18歳(になられた方)と、ちょっとイレギュラーですが、120万人弱です。一方で新たに生まれた子どもって2022年は何名だったか、「80万人を切った」なんて言われるじゃないですか。

20年後にはその4割減の若手に対して、良い人を採用するなんてことは1つの夢物語になるんじゃないかなと。企業によってはまだまだ勝ち抜けるようなところも、今日ご参加いただいている中にあると思いますが、そうした変化の中で、「あれあれ? おかしいね。最近、人が集まらないね」なんて声も聞こえています。

人材育成のプランがない「新ブラック企業」

中村:そして、「異次元の高齢化」です。間違いなく「人生100年時代」で、80歳まで働けるような職場に、仕事にしていかないと組織の生産性が持たないということもあります。

しかし、同時に私たちが70歳になって職場を出て新たに転職するなんて、そんなモデルを描くのではなくて。確かに終身雇用とか1社で勤め上げるというのは、数は少なくなってきているので、そのモデルもゼロではないと思います。

それが必ずしも人を否定する1つではないとした時に、異次元の高齢化、どうやって職場をトランスフォームしていくのかということも重要な1つではないでしょうか?

そして先ほどもお伝えしましたが、「労働価値」が多様で多層になっております。私は今46歳なんですが、働き出した頃は「黙れ中村、手を動かせ」と言われましたね(笑)。「嫌なら辞めろ」と言われたんですけれども、今はそんな時代じゃないですね。

私も大学でキャリアの授業をさせていただいているのですが、この3年、4年くらいで「ブラック」という考え方が顕著に変わってきております。

これは書籍(『社員がやる気をなくす瞬間』)の中でも触れているのですが、1つ引用すると、これまでのブラック企業というものは何だったかというと、1つは「過重労働」です。あとは「賃金の未払い」。そして最後は「労災隠し」と言われる、この3つが確実にブラックでした。

今は「新ブラック企業」と言われるんですが、私が一緒に授業をしている学生に「中村先生、『いい会社』って何ですか? 僕、ブラック企業は嫌なんです」「わかりました」ということで1つ伝えているのは、「採用担当者の人に『5年働いたら私って何者になれますか?』とストレートに聞いてください。その瞬間、目が泳いだりそらしたりする会社は、たぶん育成のプランがないですよ」。

「確実に人材というものが材料ではなくて、才能の『才』に、今、人的資本経営のトレンドと共に動いてきているとしたら、確実にスタンスも変わっているはずですよね。そこに手当てしていない会社は、おそらく時間を消耗する。投じた何かというものは、その職場で浪費していくものになるからブラックなんじゃないの?」という話を私がしているだけではなく、多くの若手が共感するように変わってきています。

そうした中で、人的資本経営というのは3つ。「経営戦略と人材戦略の連動」「As is・To beギャップの定量把握」「企業文化への定着」、これは1つの指標ですのでさらっと流したいと思いますが、そうした大きなメガトレンドを背景に持ってしても会社が持続的に生産性を高めていく必要はあります。

その中で、人がちゃんと持続的にキャリア形成とともに自律していくんだというところに向けた人材戦略との連動というのは欠かせませんよと。そしてそこには、単なる旗を掲げるだけではなく、「As is」「To be」にしなければいけませんよというのは特に重要な観点だと思います。

職場の風土作りは「事業性」を高め「関係性」を深める

中村:ここへ、一言だけ付け加えさせていただくと、私はずっと人材サービス会社で働きながら、いろいろな職場・組織を見てきた。そして10年前に組織を飛び出して、働くことを通じて役に立っているということが実感できる、そういう職場風土を作るんだということをパーパスに、今、株式会社職場風土づくりという体を持っていろんな企業さまと関わらせていただいているんです。

その間も、いろいろなトレンドの組織論というものが出ては消え、出ては消え、例えば最近だと「ティール組織」ってもう一大トレンドになったんじゃないかなと思います。私も買いました(『ティール組織』)。

そして「パーパス」。今は「パーパス」とか「エンゲージ」とか言われますよね。あと、「心理的安全性」という言葉も響いていると思いますし、それに伴って評価制度も大きく変えたり、今ですと「ジョブ型へ」というところを基に動いているのではないでしょうか。

そして法的なところからすると、おそらく働き方改革、そしてハラスメント防止法なりに基づいて、職場というのはこの数年で確実に働きやすくなってきている。一方で、今日ご参加いただいている方たちの中でも実感値があると思うんですが、「働きがい」がどんどんなくなってきていますよね。

間違いとか正解の話からすると、やってきたことが間違いではないんです。ただ、先ほどお伝えした組織というところにおいての、事業性の側面においての関わり方にあまりにも重きを置いて、関係性という部分へあまり手当てをせずにしてきた会社が今、人の定着で苦しんでいたり、エンゲージスコアが高められず悩んでいます。

だけど、何をやってもなかなかうまくいかない。これは一層事業性のところに手当てをすればするほど、結果というのは見えていたりするわけですね。

なので、今日は職場風土と「半径5メートル」と冒頭に掲げて「何だろう?」と思った方がいらっしゃるかもしれないですが、今後も、事業性の部分はやっていかなければいけないと思います。人的資本経営ですでに開示を求められていて整えている会社もあると思います。そこは整えていくべきですが、同時に半径5メートル。私たち人ができることというのは、相手を思い描け想像ができる範囲のことですね。

例えば従業員数が1,000名を超えている会社だと、1,000人向こうの人の気持ちなんかわからないですよ。あらためて、私たちがイメージできるのは職場で顔を合わせて日々仕事をしている半径5メートルの人たちとの関係性を、ちゃんと作っていくんだということ、それをできるようにすることです。

『そういうことができる人が、職場での日々の仕事を通じて自律型に向いていくということを実現する』これが本日のセミナーのコンセプトだというところをまずはイメージしていただきたいなと思います。

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