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【“ズラし”て勝つ】成功する新規事業を生む「リフレーミング」とは?(全3記事)

「絶対にいける」と感じることができる事業開発の条件とは? 「これならできそう」と判断するために解明が必要な3つの要素

大企業の新規事業やサービス開発を行うデザインコンサルティング会社株式会社NEWhが主催するセミナーに、同社執行役員の石塚賢氏が登壇。「成功する新規事業を生む『リフレーミング』とは?」と題して、事業開発の全体像や前提、そしてNintendo Wiiに見る事業の「成功の確信」を獲得した事例などが語られました。

セミナーのゴールは「成功の確信が持てた」状態になること

石塚賢氏(以下、石塚):株式会社NEWhの石塚と申します。本日はよろしくお願いします。

今日は、主に「リフレーミングって何?」という話をしていきたいと思います。まずイントロダクションとして、本セミナーの効果・効能についてお話をします。

例えば、みなさんがいろいろ事業開発をしていく中で、ユーザーインタビューをしたり調査をしたりということがあると思います。

ユーザーインタビューをしても、「なんか内容や結果にしっくりこないな」「自社のビジネスゴールを達成できるようなアイデアがなかなか出てこない」「いい仮説が思い浮かばない」という経験をした方もいらっしゃるのではないかと思います。

今日のセミナーは、ユーザーインタビューをしたり、検証・検討をした結果から、「顧客の課題が特定できたぞ」「いけそうと思える事業アイデアを生み出せたぞ」「筋のいい仮説を設定することができたぞ」という状態になることをゴールとして考えています。

自己紹介が遅れましたが、私、株式会社NEWhの石塚と申します。ふだんはサービスデザイナーとして、大企業の新規事業やサービス開発のプロジェクトを担当しています。主にはUXデザインや共創的デザインを担当させていただくことが多い人間です。

NEWhという会社についても、少し紹介をさせてください。これで「ニュー」と読みます。我々は、大企業の担当者のみなさんと一緒に新規事業やサービスの開発を行っていくデザインコンサルティングの会社です。開発を得意としています。

NEWh自体は、私のようなサービスデザイナーと、ビジネスデザイナー(市場環境調査をしたり、ビジネスモデルを設計する人たち)、あとは、プロジェクトデザイナーといって、プロジェクト全体の設計、管理、進行を担う3つのチームがあります。

Sun Asteriskという会社が親会社で、オフショアの開発拠点を持つ、開発に強い会社です。我々がクライアントと向き合いながら、「お客さんに求められるサービスは何か」を一緒に考えて設計する。一方でビジネスとしても成立し、スケールするかを見ながら、しっかりと物も作ることができる体制を、グループ全体で持っています。

今日のセミナーは、みなさんと一緒にどんどんディスカッションをしていきたいと思っていますので、思いついたことをチャットに投げていただけると非常にうれしいです。

事業開発の全体像や前提

あらためて本セミナーの効果・効能はこんな感じ(スライド)です。

みなさんの中には事業開発をされている方もいらっしゃると思いますが、まずは事業開発の全体像や前提についてお話ししたいと思います。

言わずもがなですが、事業開発は考えないといけないことが多い世界です。検討する変数が多い故に、しっかりと仮説と検証を繰り返しながら、事業において必要な変数を着実に定義していく。不確実性を徐々に減らしながら要件を固めていく営みが事業開発かなと思います。

仮説と検証を繰り返しながら変数を定義していく際に、どういった検討すべき変数があって、どのような不確実性に立ち向かう必要があるのか? 「どういう変数を検討すべきか」に関しては、ビジネスモデルの構成要素の1つだと思っています。

例えばビジネスモデルキャンバスやリーンキャンバスなど、ビジネスモデルを定義するフレームワークは世にたくさんありますが、大枠はこんな感じ(スライド)かと思います。

(スライド)左にマーケットサイド(市場)ですね。世の中の市場に関する検討要素があって。右に事業者、ビジネスを考える主体となるカンパニー(事業者)サイドの検討要素がある。さらにマクロの視点の情報とミクロの視点の情報がある。こういう構成図になっています。

例えば、ターゲットは成長するのか。もしくは十分大きいのかという市場性に関するところも、しっかりと見ないといけません。

一方で、お客さまが本質的に何に困っていて、重要な課題は何なのかは、ミクロの視点でお客さんに寄り添って明らかにしていかないとだめだったりします。

マクロとミクロの視点は顧客に関してもありますし、優位性にもあります。考えたサービスは、(マクロの視点では)どういったところが競合に勝てるのか。それを見ていくために、ミクロの視点でこのサービスに求められる価値は何なのか。どういった手法で価値を提供するのか。そういうことも見ていかないといけません。

それらをしっかりと確立していきながら、少しカンパニーサイドに寄った収益性や価値提供の仕組みもしっかりと考えていく。事業開発の成立条件の変数として検討していく必要があります。

事業開発でどういう時に「絶対にいける」と確信が持てるのか?

これらの仮説検証を繰り返しながら、6つの要素(市場性・本質性・優位性・受容性・収益性・実現性)を明らかにしていきますが、この6つの要素でも、マクロとミクロの視点でやることが変わります。

マクロの市場性や優位性、収益性は、主に定量的に比較可能な状態を作る。ロジックを持ってしっかりと成立し、魅力を語れる状態。つまり「確証」がある状態を作っていきます。

一方でミクロでは「お客さんはこれに困っているよね。こういったサービスや価値が求められるよね。それは、こういう仕組みでできるよね」と徹底的に解像度を高めて、絶対にいける感覚を作り出す。「確信」がある状態を作ることが必要です。

では、実際に確信と確証を持てる状態とはどんな状態なのか。これらはどうやって作っていくのか。

特に確信は定量的には非常に測りづらく、サービスによって成功の状態も変わってきます。かつ共通認識も作りづらい状態です。

今日のセミナーのゴールは、「事業開発において確信が得られた状態とはどういう状態なのか」「確信を獲得する方法とはどんなものか」をみなさんと確認していくことと思っています。

まずは、確信が得られた状態についてです。特に今日は、ユーザーの課題やユーザーがどういう人かにフォーカスしてご説明します。

確信が得られた状態とは、(スライドの)こんなことかなと考えています。

顧客・課題に関しては、「そう! それに困ってるんだよね」とお客さまが言えるような、本質的かつ重要な課題の発見ができている。

これは顕在化した課題だけではなくて、お客さま自身が自覚できていない潜在的な課題も含まれます。ここが「重要性・本質性」のところですね。

続いて「受容性」。これは、「そうそう! そういうサービス欲しかったんだよね」とお客さんに求められるアイデアの創出ができている状態。かつお客さんの検証ができている状態です。

最後の「実現性」は、顧客・課題を明らかにして、課題を解決するアイデアについてもお客さまに評価をしてもらったあとですね。「こんなサービスだったら自社でも提供できそうだ」と価値提供に向けた自信がしっかりと持てている。仕組みが設計できている状態です。

この3つの状態が、確信が得られた状態です。アイデアを考える際は、顧客の課題を解決しているだけではだめで、ちゃんと自社で提供できるかどうかを検討していかないといけないところがポイントです。

Nintendo Wiiに見る、確信獲得の事例

確信獲得の事例を少し説明したいと思います。Nintendo Wiiという有名なプロダクトがあります。(参照1)

このWiiは事業開発において、ユーザーの課題や価値・仕組みに対しての確信をちゃんと得た状態で、プロダクトを作って成功した例の1つかなと思います。(参照2)

WiiとWii以前の据え置き型のゲーム機とは、もたらす価値や仕組みがぜんぜん違いました。例えばWii以前の据え置き型ゲーム機では、主なターゲットは若年層で、プレイ人数は1~2人、そして音と映像の品質が提供価値になっていたと思います。

ユーザーが利用するインターフェイスは、十字キーと、〇、△、×、□のボタンで、脳の判断を直接フィードバックするタイプだったと思います。

一方でWiiは、ターゲットやプレイ人数がガラッと変わりました。ターゲットはファミリー層で、家族みんなで遊べるゲームを目指した。主な提供価値は、ターゲットが変わったので、家族みんなで遊べるゲーム体験になります。(参照3)

家族には老若男女いろいろな方がいるので、複雑な脳の判断を独特なインターフェイスでアウトプットするよりかは、なじみのある体の動きを直接ゲームにフィードバックできるかたちになっています。

Wiiは、しっかりとした調査と観察を通じて、ゲームの価値の捉え直しを行いました。(参照4)(参照5)(参照6)

この価値の捉え直しについて説明していきます。任天堂のゲーム機も含めてWii以前の据え置き型ゲーム機の調査・観察を通じて、お客さまのインサイトを獲得していったそうです。要は「お客さんはこれに困ってるよね」という情報を獲得したということですね。

調査・観察を通じて、ゲームをする子どもはリビングでの滞在時間が短いとわかった。「ゲームによって、家族関係が希薄になる」ことが、ゲーム機を持つ家庭の課題として浮上しました。

そこで、この課題を解決する新たな価値やターゲットを捉え直しました。家族の団らんを阻害しない、みんなで遊べる、複雑な操作のいらない「体感的な体験」を作ることで、より家族の団らんをエンゲージする」状態を作ろうとした。

そのためにコントローラー自体を動かして、直感的に、身体的にゲームを操作することができる仕組みを作りました。

これがいわゆるヒット商品の肝になりますが、そのためにしっかりとユーザーの課題や求められるアイデアの確信を得ていった。そこが非常に重要なポイントかなと思います。

顕在的な課題も含めて、明らかになっていないユーザーの本質的なニーズや価値観を理解・再定義して、求められる提供価値や提供手段を発見したり、捉え直したりできる状態。

それを確信が獲得された状態と我々は定義しています。

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