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第1019回 仕事に効くパワーワード『作業化すると劣化する』(全1記事)

効率を追求して「作業化」「標準化」した仕事はいずれ劣化する “効率性の罠”にハマらずに、業務を進化させる方法

日本最大のビジネススクール「グロービス経営大学院」が、ビジネスパーソンに向けて、予測不能な時代に活躍するチャンスを掴むヒントを配信するVoicyチャンネル「ちょっと差がつくビジネスサプリ」。本記事では、「作業化」「標準化」した仕事のメリデメとデメリットの解消法について語られました。 ■音声コンテンツはこちら

効率を追求して「作業化」「標準化」した仕事はいずれ劣化する

中村直太氏(以下、中村):グロービス経営大学院の中村です。このコーナーでは、心に響いた言葉をシェアしながら、仕事やキャリアに役立つヒントをひもといていきます。

今回の言葉は、「作業化すると劣化する」です。みなさんはこの言葉をどのように受け取られたでしょうか? 自分自身を戒めるためか、私のメモに太字で残されていた言葉です。

私たちが携わるほとんどの仕事は、基本的には効率追求の名のもとに定型化、標準化される傾向にあります。

新しく何かをスタートさせた時には、まだ完成度が低く、たくさんの改善点が目について、資質向上に向けて、試行錯誤が繰り返されます。そして試行錯誤を積み重ねた結果、完成度が高まり、質の向上よりも、「より短時間で」という効率化や「誰でもできるように」という標準化がなされます。

それ自体は必要なことで価値のあることだと思いますが、標準化された仕事は作業としてこなすことができてしまいます。「作業としてこなす」とは、より高い理想や問題意識は持たずに、いったん思考を停止して、ただやるべきことをやっていく状態を繰り返していくことです。

そのように、作業化するのはもっとも効率のいい仕事のやり方かもしれませんが、いずれは劣化していく運命をたどります。なぜなら、過去に最適であったものが、そのまま未来永劫最適であり続けることはないからです。

例えば、多くの会社で存在するであろうフォーマット化された顧客対応のメール。かつては多少情報過多になったとしても、丁寧にたくさんの情報を盛り込んだほうがよかったかもしれませんが、最近はどうでしょうか?

一定以上のテキスト量になると、一目見て閉じられてしまうかもしれません。最低限の情報を完結に記載しながら、「詳細はWeb・動画で」と促したほうが、結果的に情報を受け取ってもらえるかもしれません。

今挙げたような例は当たり前にわかっているつもりでも、過去にある時点で最適化されたフォーマットが、私たちの仕事を作業化させる力は強力です。いつしかフォーマットが正解となり、その良し悪しを疑うことすらなくなっていきます。この状態を戒めてくれるのが、今回の言葉、「作業化すると劣化する」だと私は理解しました。

効率性のメリットを担保しながら、業務を進化させる方法

では、どうすればいいか? 定型化や標準化がもたらす効率性のメリットは十分に受けながらも、仕事を劣化させないためにどんなことができるでしょうか? 

ありきたりですが、定型化、標準化されたものの定期的な見直しを仕組み化することが重要です。その際には、その仕事をする当事者以外の視点が入ってくると、より有効です。

例えば、グロービス経営大学院で提供しているクラスは、3ヶ月ごとに大小含む修正を入れる仕組みがあります。その仕組みがあるだけでも、現在提供しているクラスが正解なのではなく、常に進化させていこうという意識が組織全体に浸透します。

さらに、その修正にあたってとても参考になるのは、受講生のみなさんからいただく反応やアンケートです。当事者の視点だけに偏らない多様な視点が、現状を見直す必要性に気づかせてくれます。思っている以上に、その仕事をする当事者には気づけないことがたくさんあることをいつも実感します。

同時に、「見直しの際に必ず1つは改善する」と決めることも効果的だと思います。私が尊敬する教員が、小さな1ヶ所でもいいから、必ず前回から改善してクラスに登壇することを実践していました。それ以来、私も見習って、その意識を持っています。

その意識を持つと、クラスに登壇している最中から、改善点に気づいてメモを取ったり、本を読んでいる時や、ある印象的な出来事に出くわした時に、「これは使えるかも」と、クラスの内容と接続するようになりました。前回と同じで、何かをすることに違和感を抱くようになりました。

もちろん、変えることが目的ではありませんが、それくらい強い意識が必要なほど、フォーマットに抗って何かを変えるのは、私たちにとって簡単なことではないのだと思います。

従来の知見やノウハウをベースに、仕事を進化させる

ですので、もしみなさんの仕事で、「作業化して劣化しているな」と思うものが仮にあるとしたら、定期的に見直しを仕組み化してみることをおすすめします。

ただ、見直すこと自体が作業化し、実態として何も変わらない状態を避けるために、見直すポイントに気づきやすいよう、第三者からの多様なアイデア、フィードバックをもらうのが望ましいと思います。

そして、見直しの際に必ず1つは改善すると決めると、フォーマットの慣性に抗える強い意識を持って取り組むことに効果的だと思います。

作業化された仕事をこなしている状態は、作業化以前に試行錯誤された知見やノウハウの貯金を食い潰しながら仕事ができている、成果を上げられている状態だとも捉えられます。

その恩恵に応えて、過去の作業化を悪としないためにも、その作業化された仕事を基盤としながら、次のより高い基準の仕事に進化させていくことが重要なのではないでしょうか?

まとめます。あらためて、今日の言葉は「作業化すると劣化する」でした。過去のある時点で最適化されたフォーマットが、私たちの仕事を作業化し、劣化させていくことを認識した上で、劣化させないために何ができるかを考えてみました。

こんなことが考えられるかもしれません。どんな仕事が作業化しているだろうか? その作業化された仕事を次の基準に進化させるために何ができるだろうか? ピンとくることがあれば、ぜひ考えてみてください。 

今回も最後まで聞いていただき、ありがとうございました。今日もすばらしい1日をお過ごしください。

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