CLOSE

非上場のDMMが「持株会」を始めたワケ(全5記事)

非上場企業のメリットは、10年先への投資ができること DMM亀山会長の、事業を大きくさせる「投資」の考え方

音声メディアVoicyにてDMM.com会長 亀山敬司氏が配信している「亀っちの部屋ラジオ」より、「非上場のDMMが『持株会』を始めたワケ」の回を書き起こしにてお届けします。「持株会」とは、自社の株を従業員が購入・保有できる制度です。本記事では、亀山氏が考える「非上場」ならではの持株会のメリットを解説しました。

純資産での「持株会」は、非上場だからできる仕組み

亀山敬司氏(以下、亀山):はいどうも、DMMの亀山です。『亀っちの部屋』週末版ラジオ始まります。

野村高文氏(以下、野村):音声プロデューサーの野村高文です。今回もどうぞよろしくお願いいたします。テーマは前回に引き続き、「持株会」に関する話をうかがっていきたいと思います。

亀山:前回、持株会の話はだいたい話ししたから、そこから「非上場と上場」の部分の話ができたら。

野村:そうですね。前回の冒頭でも、実はこの仕組みって、非上場企業に取り入れると、いろいろ参考になるところがあるというようなお話があったんで、今日はよりちょっとフォーカスを広げて、そちらのお話をうかがえたらなと思ってます。

亀山:今回の「純資産で株売ります」っていう仕組みは、ある意味非上場だからできる仕組みなんだよね。上場企業だったら株主総会で反対多数で否決(笑)。

野村:「株価、もっと高くつくでしょう」みたいな。

亀山:なにそれって言われて、上場会社またこれはできないんだよ。絶対、ほとんどね。なのである意味独断だからできるっていうのはあって。でもなんやかんや言っても上場会社は一部で、世の中の多くの会社は非上場が多いと思うんだよね。NewsPicksも非上場になったことだし(笑)。

野村:そうですね(笑)。

亀山:非上場の会社同士で、非上場のいいとこも含めて話ししたいなというのを思ってます。

野村:わかりました。率直にうかがって、非上場の会社がこういう仕組み取り入れるっていうのは珍しいのかなと思ったんですけど、そのへんっていかがなんですか?

亀山:そうだね、あんまり聞いたことないけど、知ってる会社でも、いくらかそういうことやってるっていうのは聞いたので。

野村:そうだったんですね。へえ、知らなかった。

亀山:やってるとこあるんだなっていうのもあったんで、そこら辺けっこうアドバイスしてもらったのよ。「こういうところ注意したほうがいいですよ」みたいな話はね。ただほとんど、それぐらいしか聞いたことないんで、あまり一般的じゃないんだけど。今回いろいろ聞いた中でもしおもしろいなと思ったら、ぜんぜんパクってもらっていいから。

野村:(笑)。仕組みに著作権はないと。

亀山:そうそう。むしろこの仕組みっていうのは、例えばわかんないけど、老舗の羊羹屋さんとか、ある程度安定的に豊かに、何十年も利益出してる会社ってあるわけよ。そういった会社は、けっこう使い勝手はあるんじゃないかと思ってて。

もちろん「子どもに、少しでも財産残したいんだ」みたいなことを思ってる時はちょっと違うんだけど(笑)、いくらか社員にもそういうのもいいかなと思うことがあれば、毎年いくらかずつ利益が出てたら社員たちもそれで「自分たちも一緒にやれるんだ」と思えるし。取り入れてもいいんじゃないかなっていうのは思ってるんだよね。

野村:そういうことですね。

亀山:だから上場を目指すのもいいんだけど、ある意味非上場の中で自由にやれることもいっぱいあるし、そういった面ではいろいろ見ながらパクってもらったらいいし、やり方聞きたかったらちょっとぐらいは教えてあげるよ。

「経費になる投資」と「資産にしかならない投資」

野村:それでいうと、「非上場企業にとって」っていう話をうかがいたいんですけど、非上場企業にとって、そもそもこれを取り入れるメリットは、どのあたりが一番大きいと思われますか?

亀山:そうだねぇ。でもその前にもともと上場と非上場でどういうふうに考え方が変わってくるかっていう(話を)。

野村:ぜひぜひ。

亀山:ゲームのルールが変わるからね、上場すると。例えば前回、投資するから利益がない、みたいなこと俺が言ってたと思うんだけど、一般的には、出た利益で投資するんじゃないかと思う人が多いと思うんだよね。

それはそのとおりなんだけど、それは例えば土地とか有価証券とか、債券とかの場合は、出た利益で投資していく考え方になるんだよね。資産になるからね。

でも俺の言ってる「投資」っていうのは、基本は事業への投資だから、人とかね。投資といっても、税引前のやつで投資できるわけ。

野村:はい、そうですね。

亀山:経費になるから。だから貸借対照表に載るような、土地とか株っていうのは資産にしかならないのね。それでいうと投資っていっても、広告費とかね、すぐに経費になるものもあれば、例えばゲームやコンテンツの場合は1年から5年ぐらいで償却できるわけ。

そういったものに投資をしていくってことが、「経費になる投資」ってことかな。俺の言ってる投資はね。

野村:そうですよね。確かに株とか土地とか債券だと経費にならないから、普通に利益計上されて税金を払わなきゃいけないってことですよね。

亀山:そうそう。だから仮にいえば、経費なら100億円投資できるとしても、そういった資産に投資する時は税引後が、例えば100億円の経費が計上できるのに、税引後だと65億円ぐらいしかできないってことなんだよ。

うちらの場合はそれでいうと、貸借対照表っていうかな、B/Sの中に残っているものは、どちらかというと「のれん」とか、そういうものが多いわけじゃない。有価証券、土地があるとしたら、例えば太陽光発電の売り買いをする時に、開発に2、3年かかったりするから、その分が在庫みたいな感じになるんだけど。

野村:在庫あるんですね。資産として。

亀山:開発中にいろいろお金使うからね。

M&Aする時は「できれば営業譲渡で売ってください」と言う

亀山:あとは他の部分は、ほとんど売掛金とか現金とかっていう話になるんだよね、どちらかというとそういう点でいえば、例えばうちらがM&Aする時あるじゃない。会社を買う時に、どちらかというとその株式で買うよりも、できれば営業譲渡で売ってくださいっていうのよ。

野村:それはどういうことなんですか?

亀山:株式で買うと、株式が残るんだよね。だから10億円の会社買いました、株式が10億円残ったままになるんだよね。資産が10億円増えるわけよ。でも営業譲渡で買うと、その10億円が5年間で経費にできるんだよ。

野村:あ、そうなんですね。で、5年ずつ減価償却していくってことですよね。

亀山:だから「のれん」自体が経費になってくから、結局税引後の利益で考えると、のれんのほうが得なんです。

だからうちら会社のM&Aする時は、株なら10億円だけど、営業譲渡なら12、3億円だよって言う。そっちなら高く買いますっていう話になるんだよ。先方が営業譲渡でもいいよってなると、じゃあそっちでまとめましょうってなる。

野村:へぇ、そうなんですね。先方からすると株式で売る、要は子会社やグループに入るよりも、営業譲渡のほうが多少の得になるんですか?

亀山:ケースによるんだけど、結局営業譲渡だとその会社の利益になるから、向こうはまた法人税かかってくるんだよね。

野村:そうですよね。

亀山:だからその点でいうと、その相手の会社の状況によるんだけど、仮に相手の会社が仮に繰損があったりとかした場合だったら、営業譲渡でもいいよという。ちょっといろいろ複雑だけど、相手にとってはそれでもいいってケースがあるんです。

野村:そういうことですね。なるほど、わかりました。

「純利益」と「営業利益」のどちらを見るか

野村:さっき「利益を投資する」って話だったんですけど、それはもうバランスシートに載らないものに、つまり事業の種まきにもうどんどん投資をしていっているってことですね。

亀山:それが会社買うとか、土地買うよりも一番効率的には良い投資なんだよね。B/Sの見た目は良くないかもしれないけど、でも実際問題は、それ自体が一番効率のいい投資。

つまり会社っていうのは、なんだかんだいって純利益を求めるのが最終目的だと俺は思ってるんだけど、でもこれが意外と、上場会社の役員の人によく聞くんだけど、「そうじゃなくて営業利益を見てる」っていう人もいるわけ。

野村:営業利益を見ると、その後に税金が引かれますもんね。

亀山:そうそう。だからそういう現象はあって。うちの会社は、“八百屋の親父”が大きくなったような話じゃない。だから八百屋の親父はどう考えるかというと、「うち儲かってまへんで」っていうわけ(笑)。

野村:はい(笑)。そうですよね。

亀山:要は税金少しでも払いたくないから、だから「いや本当儲かってまへん」。

野村:そうですよね(笑)。「そんなそんな、利益なんかぜんぜん出てないですよ」と。

亀山:「さっぱりですね」って言いながら、少しでも手取りを増やそうとするわけ。せっかく利益1,000万円出たのに、税金持っていかれたらつらいなって思うから、どっちかというと中小企業はなるべく利益出てない風を目指すじゃない。でも上場するとさ、みなさん「うち儲かってますよ」って言わないと。

野村:確かに。ぜんぜん発するメッセージが違うわけなんですね。

亀山:そうそう。「うちもうぜんぜんこんだけ利益出てまっせ」っていう話になるわけよ。結局のところ会社で一番大事なのって、最後の純利益。

だけど、みんなに見てくださいよっていうと、税引後の純利益も、もちろん投資家見る人は見るけど、中には営業利益で「あ、儲かってるな」と思う。でも純利益が意外と悪かったりする時もあるわけよ。でも「うちは営業利益上がってます」って言うと、ちょっと社長は鼻高いわけよ。「うち儲かってまっせ」みたいな。

野村:そうですね、「儲かってます」って言えますよね。

亀山:だから項目によってちょっと違うんだよね。

オーナー企業のほうが、長い目で物事を見て投資ができる

野村:確かに。1個質問してもいいですか? 先ほど、要はバランスシートに載らないもの、要は「事業」に対して投資をするって話があったじゃないですか。ゲームだったら5年ぐらい仕込んだら回収できるってお話があったんですけど、一般論として株とか不動産とか債券って、ある程度利回りが読めるじゃないですか。だから「資産」って言うと思うんですけど。

何パーセントとかで利回りで回収できる、みたいな見込みがあると思うんですけど、事業の場合って投資が本当に投資なのか、それとも浪費しちゃってるのかが、わりとぶれるのかなっていう感じがしたんですけど。

亀山:そうだね。これは現実そうで、ただの経費で終わっちゃうわけですが、それが戻ってくるパターンもある。だけどそれを何年で見るかの考え方が大事で、結局例えばさ、今年新しいサービス立てて、広告バンバン打ったとするじゃない。

それが5年後ぐらいになったら徐々に売上が上がってきて、利益になるよっていう、どちらかというとそういうことがやりたいと思っても、一応「赤字」になるわけよ。

だから事業自体として会社の経営者が、「なるべくこれ、もう5年先ならこれやっておくべき広告なんだ」とか「やっとくべき開発なんだ」とかって思っても、株主総会開いた時には「なんだこの赤字は」みたいな。

野村:そうですよね(笑)。めっちゃ転落しとるやんかと。

亀山:「今年めっちゃ悪いじゃないか」みたいな話にはなりやすいのよ。オーナー企業からすれば、「これ5年先、10年先やるためには、これ今やっとこ」と思うと、けっこう判断が自由にできるじゃない。でも上場会社だと、良くなる頃に下手すると社長はクビになるわけ。

野村:「こんな赤字決算出してるからもうあいつはダメだ」みたいになっちゃうってことですね。

亀山:それが1年か2年で決められたら、赤字のところで首切られて、辞めた後になったらそれが業績上がりましたみたいな。

野村:そうすると次の人は、「見事なV字回復」みたいな感じで言われるっていう。

亀山:そうそう。だから「その時の投資、俺のおかげなんだけど......」ってクビになった後に嘆くわけよ。そうなりたくないから、どうしても長期投資に向かないんだよね。オーナー企業のほうが、長い目で物事見て投資ができる。もちろん当たり外れはあるけど、明らかに当たるかなと思ってるものでも、上場会社の人はなかなかやりにくかったりするんだよね。

野村:構造上もうそうなっちゃうってことですね。

亀山:そうそう。だから今初期投資してる会社も何社かあるけど、それは別の事業で黒字出してて、その分投資してますって、一生懸命PRしてるじゃない。

「今ここで投資した分が将来返ってきますから」みたいな感じだけど、これ株主からすると「いやいや、もうちょっと配当してくれよ」っていう気持ちになるじゃない。

だから「いやこれはもう未来のためには大事です」ってけっこう説得しないといけないし、そこでみんながそれを信じてくれたらいいんだけど、信じてくれなかったら「ちょっともう社長変えてくれない?」とかって思うわけじゃない、みんな。

野村:そうですね、はい。

亀山:特に大きい会社になればなるほど、なんていうかな、社長が株持ってないことが多いからね。わずかしかないとか。そういう点では、やっぱどうしても長期的にやる時には難しい。

5年後、10年後を見て投資する

野村:そうか、じゃあ非上場の場合は、ある意味オーナー社長が胆力をもって、「もうこれは例えば5年とか10年でやるんだ、回収するんだ」っていうふうに決めたら、もう一時的に赤字を出して、赤字っていうか相当利益を減らしてでも。

亀山:赤字でもやりたいっていう人はいると思うんだよね。超過しててもね。というのでいうと、ただ事業って、そんな1年2年でうまくいくのほとんどないよ。

野村:はい、わかります(笑)。そうですよね。

亀山:5年後、10年後の投資してるやつが良くなるんだから。だからうちらも10年ぐらい前までほとんど利益出ないでやってこれたっていうのは、別に上場もしてないし、そういった意味では長い目で見たら投資ができてきた中で、現在に至ると。

結果それが会社の運営規模とか全体を強くしたことで、社員の給料も上げてやれるとかってなってくるわけよ、結果的にね。でもそのへんっていうのは、特に人への投資も、どうしても時間かかるじゃない。新卒教育してとか、新卒増やしたら生産性のない人間2、3年抱えているわけじゃないですか。

野村:そうですよね。一時的にはすごい生産性は下がりますよね。

亀山:そうなっても、でもこれが、この社員たちが5年後、10年後に戻ってくるんだと思う感じだと、新卒取りやすくなるよね。

野村:そうですね。

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
著者フォローや記事の保存機能など、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

会員の方はこちら

関連タグ:

この記事のスピーカー

同じログの記事

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

  • オファー承諾率アップ・入社後のミスマッチ防止につながることも 重要だけど後回しにされがちな「人員計画」の考え方

人気の記事

新着イベント

ログミーBusinessに
記事掲載しませんか?

イベント・インタビュー・対談 etc.

“編集しない編集”で、
スピーカーの「意図をそのまま」お届け!