両利き組織を目指すための「リスキリング」

小田木朝子氏(以下、小田木):じゃあ、第3ステップに進んでいきましょう。今、いろんな問題の見方と、どうやったら1ミリでも前に進めるかという着眼点が出てきたところです。

ここからは、両利き組織を作ることに踏み出したい私たちが、今日からできる一歩や、どういったことをお守りにしながらトライを仕掛けていくかについて、3つずついただきたいなと思います。まずは6つ並べたいと思いますので、また沢渡さんから行きますか。

沢渡あまね氏(以下、沢渡):はい。ありがとうございます。

小田木:沢渡さんとかなぶんさんの、キャッチボール方式になっていますので。

沢渡:そうですね、その流れでいきましょう。小田木さん、まずは下のテンテン(点線部分)から行こうかなと思うんですけれども。

小田木:テンテンから行きますか。(スライドを)使いこなすなぁ。

沢渡:最近、「リスキリング」という言葉も注目されているので、リスキリングとの交接点の話をしながら、最後に3つお話したいと思っています。

僕はリスキリングをこうやって因数分解してるんですが、「能力のリスキリング×プロセスのリスキリング」だと思うんですよ。新しい能力を身につけてもらうことと、仕事のやり方やコミュニケーションや関係性など、プロセスのリスキリングの掛け算だと思っていて。

これ、日経クロステックの「IT職場あるある」でも書いたので、もしよろしければ、詳しくはそこを見てほしいです。無料で見られます。

職場の景色が変わらないと可能性は見つからない

沢渡:「能力」は「意識」と置き換えることもできますね。プロセス、例えば仕事のやり方とかコミュニケーションの仕方は習慣化していきますから、「習慣のリスキリング」と捉えると思うんですが、この掛け算で、組織やそこで働く個がアップデートされると思うんですね。

あるいは未来に目が向くとか、今までとは違う行動が賞賛されるようになっていく。この2つだと思うんですね。

この前提で、リスキリングはちょっと1回置いといて、先ほど申し上げたとおり「景色を変える体験を増やす」ことが1つ目のポイントです。

例えば、ふだんとは違うメンバーと仕事をするとか、1割だけでも未来のことに時間を使ってみるとか、社外の人とプロジェクトを組んだり、越境で共感し合う機会を作っていくとか。これって景色を変えることですよね。景色が変わらなければ、可能性や適性も見つかりません。

2つ目が、先ほどの因数分解の話に戻って「能力のリスキリング」。短期だけではなく、中長期に目指す姿を達成するために必要な能力ってないだろうか? と、その能力を今までどおり、人事の人が中心となってリスキリングを進めていく。

ITツールも活用してコミュニケーションを醸成

沢渡:3つ目が「プロセスのリスキリング」。短期的なものだけではなく、中長期的な変化も評価する制度を作っていくとか。どうしても対面やアナログだけだと、半径5メートル以内の人としか関係性を作りにくいじゃないですか。

それこそITツールやグループチャット、オンラインミーティングを使いながら、同じ社内でも他の事業所の人と連携して課題が解決できるようになる。メールではなくチャットのほうが、マネージャーとメンバーにフラットなコミュニケーションが生まれる。

それによって、そこから自己効力感を持ったり、マネージャーもメンバーに安心して任せられる領域が増えていく。これは、日々のコミュニケーションの仕方、仕事の仕方、マネージメントの仕方をリスキリングしないと進められない。

繰り返しになりますが、プロセスのリスキリングは人事単独ではできないですから、IT、経営企画、経理・総務のような、主にコーポレートの各部署と連携・越境しながら突破していく。ここが大事になっていくのかなと思います。

小田木:ありがとうございます。

沢渡「IT職場あるある」でも詳しく書いたので、ぜひお楽しみに。

小田木:ありがとうございます。すごいタイミングで記事が公開されますね。

沢渡:そうですね。たまたまなんですけど。

まずは人事が「ちょい悪」になってみる

小田木:じゃあ、かなぶんさんの3つをお願いします。

横山佳菜子氏(以下、横山):はい。「まずは自分から『ちょい悪』になろう」。

(一同笑)

沢渡:今ね、かなぶんさんの後ろに特攻服が見えたな。

横山:私たちのお客さんにも、けっこう人事の方もいらっしゃるんですが、人事って「しっかりしてないといけない」「正しいことを言わないといけない」「答えを持ってないといけない」みたいな。

沢渡:聖人君子でなきゃいけない、みたいなね。

横山:そうです。「ビジョンを推進するからには、ちゃんとビジョンを理解しないといけない」とか。でも、人事の方もマネージャーの方も、けっこうわからないじゃないですか。なので、自分から「ちょい悪」になってみることが、まずは大事かなということが1個目ですね。

もう1つは、「一次情報を取りにいこう」ということも、みなさんにもお伝えしたいなと思って。「私たちのチームは、両利きになることによって何を実現するんだろう?」「どんな課題解決するんだろう?」ということを明確にしましょうと、さっきも言ったんですけど、その時に一番大事なことは一次情報ですよね。

なので、チームの外にも話を聞きに入ってほしいですし、メンバーは素で一次情報の宝庫ですので、ぜひ聞きに行ってほしいなと思います。たくさん一次情報を取りに動きましょう。そうすると、絶対に見えてくるものがありますよ。マネージャーや人事の方も、「一緒に悩もう」って言われるといいのかな、なんて思ったりもしてます。

組織変革はトップを巻き込んで行う

横山:最後は、ぜひトップを巻き込んでいきましょう。「両利きの経営」の提唱者であるチャールズ・A・オライリー氏が言っている、「変革はトップダウンとボトムアップがミットするところで起こる」という言説が、私はすごく好きで。

チームとして・組織として、ボトムアップで何かを上げていく時には、トップダウンとうまく交わらないと変わっていかないので、ここにいらっしゃるマネージャーや人事のみなさんは、その交差点をうまいことをつくる。場をつくることも、したたかに狙ってほしいなと思っています。

沢渡:かなぶんさんの3、すごく私も共感するんですが、変革が走り始めた組織は現場とトップが対話をしてますね。

横山:まさにそう思います。トップも、未来をつくろうと思ってないわけでもないんですよね。当たり前なんですけど(笑)。

沢渡:当たり前です(笑)。

横山:(経営層も「未来をつくろう」と)思ってないわけじゃないし、下からも「本気でやりたい」と思っているということを、ちゃんとセットアップしに行く。ここをうまいことやっていくのが、ミドルまたは人事のみなさんにできることではないかなと思います。以上です。

小田木:ありがとうございます。「トップの巻き込みが一番ハードル高そう(苦笑)」というコメントもいただきましたが、できるところから。トライを仕掛けられるところから、ちょっと景色が変えられそうなところから、みたいな感じで取り組めるといいかもしれないですよね。

横山:まさに。

小田木:ありがとうございます。

NOKIOOから企業にできるお手伝い

小田木:ということで、お2人に3つずつ出していただきました。今、私も時間を見てびっくりしましたが、あっという間にラスト10分を切っている状況です。まだまだしゃべりたいし、まだまだワイガヤしたい気持ちがたくさんありますが、みなさん、最後までありがとうございます。

残りの時間で、今日出てきたいろいろな観点を振り返っての2人からのメッセージとをいただきたいなと思います。

今日を振り返ってのメッセージ、最後に一言ずつご用意をいただけますでしょうか。

2人にメッセージを考えていただいている間に、今日ご参加くださったみなさまに、私たちは具体的にどんなお手伝いができるかを紹介させていただきます。みなさんも今日の90分を振り返りながら、ぜひこちらの情報もゲットしていただければなと思います。

沢渡さん、かなぶんさん、シンキングタイムお願いできますか。

横山:承知しました。

沢渡:はい。

小田木:その間に、私たちは今日のお土産を……お土産って呼んでいいかな? みなさんにご提供したいと思います。まずは今日の観点で行くと、これからの両利きに必要なスキル開発とか、どんな武器を提供するのかというのは、たぶんみなさんもイシューとして立ったんじゃないかなと思います。

私たちNOKIOOは、これからの組織に必要なスキルや経験を仕掛けていくという観点で、まさに対話をしながら不確実なものに向き合うために必要なビジネススキルを、「これからのチームワーキング」という定義をしております。

1つ目は、私たちが提供できる、人材育成プログラムやコンセプトをご紹介する機会を作っております。90分腹落ちに対して、50分のオンライン会議方式で、少人数でワイガヤできる機会として情報提供をさせていただきます。

次回の90分腹落ちセミナーのゲストは?

小田木:そして2つ目です。今日ご提供する情報は、全部で2つあります。2つ目は、次回の90分腹落ちオンラインライブの企画のご紹介です。次回もゲスト回なんですが、ちょっといつもとカラーが違います。

三井住友海上火災保険さまという社名が入っておりますけども、実際に現場でひとと組織作りに奮闘する、人事担当者様をお迎えします。リアル人事の立場としての挑戦トライアル。そこから見えてきたことを題材に、おなじみ沢渡さんと3人でワイガヤがする機会を作らせていただいております。

今回は徹底的に具体の事例に迫りながら、腹落ちセミナーを展開する。これが5月の企画になります。沢渡さん、そんな感じですよね。

沢渡:そうですね。私も、この三井住友海上火災保険さんのスマートワークチームと2年間伴走して、今年はもう3年目に入ったんですが、さまざまな変化が生まれてきました。

今日お話しした「プロセスのリスキリング」により、どう個が変化してきたか、組織が変わってきたか。そのストーリーを当事者の永井さんにじっくり語っていただこうと思いますので、みなさんお楽しみにしてください。

小田木:ありがとうございます。うまくいかないことや難しかったことも含めて、組織カルチャー変革に取り組む人事のリアルをオープンにお話しいただけるかなと思っておりますので、ぜひ次回も楽しみにお越しいただければと思います。

「変化の共感から組織の景色は変わる」

小田木:そして最後に、私たちが運営するチームワーキング発信メディア、Voicy『今日のワタシに効く両立サプリ』。いつもはゲストの方と楽屋裏放送を配信をしておりますが、今日はすいません。

私が御殿場にいる関係で、このあと楽屋裏放送を収録することができないので、沢渡さんファン、そしてかなぶんさんファンの方には申し訳ないですが、今回は私の1人振り返りを配信します。よかったらお聞きください。

ということで、ラスト2分になりましたが、沢渡さん、かなぶんさん、メッセージはOKでしょうか。

沢渡:はい。じゃあ、私からいきましょうか。

小田木:ありがとうございます。

沢渡:私のメッセージの前に1つだけ。さっきかなぶんさんがおっしゃった、「ちょい悪になろう」という言葉、すごく共感したんですよ。まずは、そこの所感だけ述べたいと思います。

ある有名な人が、こういうことを言ったんです。「鯛になるのではなく鰈になれ。泥にまみれろよ」と。

横山:(笑)。

小田木:「どっちおいしいかな?」ということじゃなく、そういう意味ですね。

沢渡:鯛って聖人君子かもしれない。ところが、まずは泥にまみれた鰈であって、いろんな酸いも甘いも、現場の悩みや経営の悩みに寄り添いながら、どう(組織を)泳いでいくか。

鰈になっていくって大事だなと思って、その感想をもとに、最後に私のメッセージです。「変化の共感から組織の景色は変わる」。みなさんが変化をプロデュースしていこう。こんなメッセージとしたいと思います。

横山:いいですね。

小田木:ありがとうございます。

挑戦している人ほど孤独になりがち

小田木:じゃあ、かなぶんさんお願いします。

横山:お手伝いしている、ある企業さんの人が「うちの会社を応援してくれる人はいっぱいいるけど、伴走してくれる人がいないんですよ」と言ったことがあって、それがすごく印象に残っています。

沢渡:なるほど。

横山:がんばっている人、挑戦してる人、両利きになって組織に価値をもたらそうと挑戦してる人ほど孤独で、寂しい思いをしてるというのは、すごくあるなと思っています。

なので、今日の最後のメッセージは、ここに来られてる方は両利きもがんばりすぎないで、ぜひチームでやろうとお伝えしたいなと思っています。そのための「ちょい悪」ですし、そのために「なんか俺もわかんないんだよね」って(経営層や人事が)言うところから始めてもらえるといいのかなと思います。

小田木:そうですね。「わからないから一緒に考えようよ」という、その一言をカードとして持っていたら、すごくいいかもしれないと思いますね。

沢渡:そうですね。

チャレンジに伴走してくれる人の重要性

沢渡:壁打ち相手とか、兼好法師みたいな役割の人がいるって、すごく大事だと思うんですよね。

横山:わかります。私はよく「グリフォン」って言われていて、答えは出せないけど、なんとなくその場で「がんばろう」という気にしていくとか、つないでいくって言われてるんですけど。

沢渡:(笑)。

横山:そんな役回りでもありだよ、ということを伝えておきたいです。

沢渡:私たちも喜んで伴走しますので、よろしくお願いします。

小田木:ありがとうございます。元気になりました。では、ちょうど時間になりました。みなさん、今日もご参加いただきまして、ありがとうございました。

沢渡・横山:ありがとうございました。

小田木:本日の腹落ちセミナーは「どうつくる? 『両利きの組織』」ということで、おなじみの沢渡あまねさんと、佳菜子さんことかなぶんさんと3人でお届けいたしました。

沢渡:来月もぜひご一緒しましょう。

小田木:(視聴者から)「お昼前にお腹いっぱいです」というコメントをいただきました。それでは、ぜひ次回もお越しください。最後までご参加ありがとうございました。

沢渡:ありがとうございました。

小田木:『スラダン』推しでしたね。

(一同笑)

沢渡:わかりました(笑)?

小田木:バスケから、途中で『ドラゴンボール』になりましたからね。ありがとうございます。

沢渡:すみません、世代です。

横山:ありがとうございます。

小田木:私もドンピシャ過ぎちゃって。ありがとうございます。