2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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沢渡あまね氏(以下、沢渡):そして小田木さん。今日はみなさんに、ぜひ最初に聞いてみたいことがあって。僕のわがまま、1ついいですか。
小田木朝子氏(以下、小田木):どうぞ。
沢渡:冒頭で、「両利きの経営とは、目先と未来、短期と中長期を両立すること」とお話ししましたが、実際にみなさんが、短期・目先の時間と未来の時間をどれだけ取れているか。これをぜひ聞いてみたいなと思って。
小田木:なるほど。(スライドを)ご用意してますよ。
沢渡:あ、さすが。
横山佳菜子氏(以下、横山):(笑)。
小田木:これ、やっぱり聞いてみたいですよね。
沢渡:うん。聞いてみたい。
小田木:あなたの仕事は、現在(短期)比率、未来(中長期)比率、つまり現在のことにどれぐらい時間を使って、未来のことにどれぐらい時間を使っていますか? まずは現状がどうか、ちょっと書き込んでいただいていいですか。
沢渡:(視聴者コメントで)「自身は3:7」「ほとんど短期、時々中期」。リアルな声をありがとうございます。
小田木:ありがとうございます。
沢渡:「組織は9:1」。「5:5」、いいバランス。「6:4」「8:2」「5:5」「8:2」。
小田木:もしかしたら、現状では7:3なんだけれども、理想というか、本来は5:5にしたいとか、こういう対比もありそうですよね。
沢渡:そうですね。
小田木:ありがとうございます。
沢渡:これはぜひ、チームで1回振り返りをしてほしいんですよ。そうすると、「やばいなぁ。今、目先の仕事しかできていないなぁ」「未来にばかり(目線が)行き過ぎていて、少し戻ったほうがいいな」、このような俯瞰ができるんですね。
「現実は8:2、目標は4:6」。ありがとうございます。よい振り返りですね。
小田木:「自分8:2、希望5:5」も来ましたね。
沢渡:「以前9:1、今7:3」。なんか語呂がいいな(笑)。
横山:何があったんでしょうね~。
小田木:でも、10:0も0:10もないっていうのが、今日のポイントですよね。
横山:思いました。
沢渡:そうですね。
小田木:さっき私も、「どっちか片方に集中できればどんなに楽か」みたいな、心の声が出ちゃいましたけれども。
やっぱり、どっちがいいか・悪いかというよりも、自分たちに必要な、もしくは求められる比重で両輪を回すというところが、今日来てくださった方の多くのテーマなんだなと、あらためて確認ができました。ありがとうございます。
沢渡・横山:ありがとうございます。
小田木:では、チャットDEオリエンテーション、最後にもう1ついきます。「両利き」という看板を掲げた今日のセミナー、どうして参加しようと思いましたか?
参加のきっかけとか、「こんなことに関心があって」「こんな問題意識を持っていて」と、一言書き込んでいただけるとうれしいです。「いつもの習慣で」みたいな感じで、キーワードレベルでもけっこうです。
沢渡:そうですね。お願いします。
小田木:そうそう。「ぴんと来た」といった一言でもけっこうですので、みなさんが今日はどんなことが聞けたらいいと思いましたか? もしくは、どうして参加しようと思ってくれましたか? 書き込みをお願いします。
沢渡:ちなみに、かなぶんさんは現在・未来比率、いくつ:いくつぐらいですか? ちなみに、僕はだいたい7:3ぐらいです。
横山:そうですね。私も、今のシーズンは7:3、6:4ぐらいでしょうかね。
沢渡:確かに。シーズンによって変わったりしますね。
横山:事業的なところで、そろそろオンシーズンに入るんですね。そうなってくると、時には10:0があるかもしれない。
沢渡:なるほどね。私もそういう意味では、4月はわりと“種まき”の時期で、3:7ぐらいだったりします。
横山:確かに。ありますよね。
沢渡:時期による違いもあったりしますよね。ありがとうございます。そう言ってる間に、コメントをいただきました。「揺れ動くバランス」。いいですね、なんか物語がありますね。
小田木:この一言の後ろに、いろんな問題意識や関心がありそうですね。
沢渡:そうですね。ストーリーを感じるな~。「日本のイノベーションの低迷」。これ、本当に悩ましい。なんとかしたいですね、かなぶんさん。
横山:いや、本当に重たい。パンチのある言葉だと思います。
沢渡:「年度の初めに気づきを得たい」。みなさん、4月はスタートの時期ですよ。うれしいじゃありませんか。
横山:最高ですね。
沢渡:「元気をもらう」。ありがとうございます。
小田木:「それぞれのバランスがあると思うので、いろんなバランスを感じてみたい」というコメントもあって、まさにそうなんですよね。
例えば、「7:3であれ」とか「5:5であるべき」みたいな声が前提というよりも、今の自分たちに必要な比率は何か。これそのものの探究だったり、定義や景色あわせという観点もありますよね。
沢渡:そうですね。うれしいですね。
小田木:「両輪をうまく回すためのヒントを探しにきました」。ありがとうございます。
沢渡:「永遠に追い続けたいテーマ」。もう、そのとおりですね。たぶん、完璧な答えや成功法則ってないと思うんですよね。環境や組織と対話しながら、どうやっていいバランスを保っていくか。トライ&エラーしていくか。そんなことなのかなと思います。
小田木:個人的には、「外の空気をここに吸いに来ました」と言ってもらえるのが、超うれしいんですよ。
沢渡:うれしいなぁ~。
小田木:うれしいですよね。
沢渡:フレッシュエアーを提供できていればいいなぁと思います。
小田木:フレッシュエアー(笑)。
横山:(笑)。
小田木:私も、御殿場の風を届けたいなと。
沢渡:御殿場の風。浜松の風を送ります。
横山:沢渡さんの後ろから、ダムの風が出てますよね。
沢渡:ありがとうございます。
小田木:マイナスイオンがかなり放出されています。
沢渡:「#ダム際ワーキング」推進者ですから。
横山:最高です。
沢渡:よろしくお願いします。
小田木:これはどうですか? 「『わかっているけど、なかなかできない』をなんとかしたい」って、もうこの葛藤がわかりすぎる。
沢渡:そうですね。あー、うれしいな。私の書籍を読んで「お話を聞いてみたいと思っている」と。ありがとうございます。もう、感動の放流を送ります。
小田木:いつもよりたくさん出てます。みなさん、コメントありがとうございます。一つひとつ拝見しております。
小田木:こんなふうに、みなさんの関心や期待、課題感も含めながら進行していきたいと思いますので、引き続きチャットボックスをオープンにしながらご参加ください。
「おや?」と思ったら書き込んだり、「へー」「ふーん」とというコメントも大歓迎ですので、ぜひライブな感じで進めていきましょう。
沢渡:お願いします。
小田木:それでは、第1ステップ。そもそも今、何が問題なのか。なぜ両利き組織が必要なのか。一方でなぜ実現が難しいのかという、この問題の景色合わせから入っていきたいと思います。
今回もおなじみのホワイトボードを準備しています。では、この問題の言語化、どちらからいきましょうかね。
沢渡:じゃあ、常連の私から行きましょうか。
小田木:そうですね。常連の沢渡さんから。
横山:ありがとうございます。
沢渡:かなぶんさん、お先に失礼しまーす。
横山:お願いしまーす。
沢渡:私の3つは、1つ目はもうみなさんお気づきのとおり、組織としての両利きの必要性が高まっている。見方を変えると、既存のビジネスモデルが賞味期限切れを迎えつつあると思うんですね。
例えば、私の出身の自動車産業もそうです。今までのように、大量生産・大量消費の構造の元に、プロダクトアウトで同じ車だけ作って売っていては未来がない。これは、自動車業界各社も気づいているわけですね。
ゆえに、例えばMobility as a Serviceのような「新しいうまみ」探しをしていかないと、組織として成長が頭打ちになります。組織、箱としての両利きの必要性が1つ目です。
沢渡:2つ目は、今度は組織ではなく個人ですね。そこで働く、あるいはその組織に関わる個人としての両利きの必要性。
人生100年時代と言われています。言われたことをきちんとこなしている、さらには同じ組織の合理性に合わせているだけでは、転職をしたり、あるいは定年後も雇用延長で、自分にとっていい環境で仕事をし続けることが難しくなっていってると思うんですね。
これを私は「自分経営戦略」と解説しています。自分がいかにサステナブルで、それぞれのライフステージに合ったいい働く選択肢を選び、いい組織との握手の仕方をしていくか。
「キャリア自律」という言葉もそうですが、目先の成果を出すだけではなく、中長期的な成果を出していけるようなやり方や、自分の中でも仕事の両利きを両立させていかないと、自分としての経営戦略をなかなか立てにくくなってきている。
そして、選択肢が狭まっていってしまう。このような、個人の両利きの必要性を感じています。
小田木:なるほど。
沢渡:そして3つ目が、そうした時に組織と個を別で考えるのではなく、組織の関心事、すなわち組織のテーマと個人のテーマの「交接点」の設計をしていく必要があるのかなと思います。小田木さん、点線のところに書いてほしいんですが、まとめるとですね……。
小田木:沢渡さん。このフォーマットを使いこなしてますね。
沢渡:もう慣れましたから。慣れは何よりの成長の材料ですね。習慣化、大事。
横山:すごいですね。
小田木:本当に。
沢渡:この3つをまとめると、「現在&未来」「組織&個人」。この2つをプロデュースしましょう。組織開発者・人材開発者として、ここがすごく重要になってくるのかなと思います。
小田木:だから両利きという発想が必要なんだよ、というまとめですかね。
沢渡:そうですね。かなぶんさん、michinaruさんのホームページを見ていたんですが、Our Styleのこのメッセージが好きなんですよ。michinaruさんは、「Andに向き合う」というメッセージを発信されていて。
横山:ありがとうございます。
沢渡:現在・未来、組織・個人もそうですが、この「And」をどうプロデュースしていくか。このストーリー作りや風土醸成がすごく大事だなと思っています。
小田木:ありがとうございます。2番目の、「個人として、今必要なスキルや経験と、今後必要になってくるスキルや経験のためにどう時間を配分するか」という観点も、確かに両利きだなと思いました。
沢渡:そうですね。そのストーリーがつながっていくと、組織も、そこで働く個も強くなっていく。これが組織開発の要諦だと思っています。
小田木:ありがとうございます。
小田木:次は、かなぶんさんにも3つ出していただいて、6個並べましょうかね。
横山:1つ目は「顧客価値、あるいは存在価値の観点から必要である」ということを言いたいなと思います。当然、お客さまに価値を提供するのが組織としての存続要件であると置いた時には、当たり前のことなんですが。
かつてフォードが自動車開発をした時に、「お客さんに聞いたって、『もっと速く走る馬が欲しい』と、言っただろう。『自動車が欲しい』なんて誰も言わなかった」ということをよく言いますよね。
なので、「お客さんは本当に自分が欲しいものを知らない」という前提に立った時に、お客さまの代わりに、お客さまが欲しいと思うものを探索し続けておく。企業・組織、あるいはチームがそれをやっていないと、顧客価値、存在価値は先細りしてしまうよねという、比較的ベーシックな話です。
沢渡:いやぁ。すっごく重要なエッセンスが凝縮されたメッセージですね。
横山:ありがとうございます。でも、今までやってたことをとにかく磨き込んでいくという深化のパラダイムでいくと、わかっちゃいるけど忘れがちというか、難しいところだったりするんですね。だから、「サクセストラップ」という言葉もあるんでしょうけど。
沢渡:そうそう。「ベーシックですが、めっちゃ響きました」と、コメントをいただいてます。
横山:ありがとうございます。
沢渡:(視聴者コメントで)「そのとおり。私の気持ちを代弁してくださった」。ありがとうございます。
横山:こういうことは、「イノベーションを起こそう」と思ってからではできないというか。なので、土壌をずっと置いておかなきゃいけないねというのが、1番目でお話ししたかったことですね。
横山:もう1つが、多様なリソースを活用するという観点からも(両利きの組織の)必要性があるよねということを、みなさんと共有したいなと思います。
昨今、「多様な人を採っておかないといけない」とか「多様な人がいたほうがいいよね」と言って、ダイバーシティでいろんな採用をされていると思います。
でも、ずっと守り一辺倒の組織の中で活躍できる人って、悲しいかな、やっぱり同質性の高い人だったりするんですね。多様な人の活かしどころはどこ? という部分が、すごく出てきます。
なので、新しい考えを持った人や、新しい風を吹き込んでくれるような人、挑戦的な人に活躍のフィールドを提供するためにも、組織は両利きを標榜していないといけないと思っています。
沢渡:かなぶんさんの2番って、1番とすごく密接な関係にあると思ったんですよ。例えば、「顧客の目線になりなさい」といった時に、顧客の目線やユーザー体験をしたことがない人だけで考えても、顧客の疑似体験はできないと思うんですよね。
よく経営者が、「経営目線になりなさい」って社員に言いますが、「いや、経営したことないのにわかりません」が社員の本音だと思っていて。
そういう意味では、経営を疑似体験するとか、経営を体験した人を中に取り入れていくとか。さまざまな人と対話したり、さまざまな人の考え方をインストールしていかないと、視点って固定化されると思うんですよね。
横山:まさに。
横山:「うちの組織自体は変わるつもりはないけど、多様な人はいてもいいですよ」という状態にしていると、(多様な人を採っても)なかなか活躍はしづらくて。
「このフィールドを使って、新しい価値を生み出してよ」とか、場合によっては「組織側も変わることを辞さないよ」というフィールドを提供できてこそ、顧客価値、存在価値につなげていけるんじゃないかなと。1と2の関係性は感じますね。
沢渡:まさに組織開発ですね。ありがとうございます。
横山:3つ目が、沢渡さんのおっしゃっていた2番の話と、たぶんすごく重なるところだと思います。個人の能力開発×キャリア自律の観点です。
私たちは今まで、既存事業に最適化した人材育成や組織づくりを一生懸命やってきたということを、自覚したほうがいいと思っています。
なので、新しい事業をつくるとか、新しい価値を生み出す。あるいは、未来視点で物事を考えて挑戦することに適した人材は、私たちもあんまり育成してきてないんじゃないか? というふうに思ったほうがいいんじゃないかなと感じています。そう考えると、自然発生的に両利きは起こらないんです。
ただ、ここで大事なことは、「うちの社員は、探索的なことや挑戦的なことをあんまりやりたがらないんですよね」と言う方がすごく多いんですが、やってみたら実は性に合ってるなと思うかもしれない。
沢渡:すごくわかるなぁ。
横山:そんな楽観的な物の見方もしておけると、能力開発×キャリア自律という観点からは、個人の道を開いていくんじゃないかなと考えます。
沢渡:今のかなぶんさんの話を聞いていて、3つの開発が必要なんじゃないかなと僕は思いました。個の能力開発・組織開発・経験開発。
横山:まさに。
沢渡:経験開発ってすごく大事で、かなぶんさんがおっしゃったとおり、その仕事だけでは見えなかった自分の強みや得意ってあると思うんですよね。それも、広義には能力開発の1つかもしれないですけれども。
今、僕の生まれ故郷のかなぶん、金沢文庫で、小学生・中学生・高校生時代を過ごした時のことを思い出したんですが、僕は小学生の頃にミニバスチームでバスケットボールをやっていたんですよ。
高校の頃は遊びでバスケットをやってたんですが、もともと背が小さく、かつ運動が得意でないのもあって、フェイントやゴール下のせめぎ合い、敵が来る中でのシュートとか、トリッキーな動きが絶望的に苦手だったんですね。
ある日、たまたま転がってきたボールでロングシュートを放ったら決まったんですよ。「これだな」と思って、ひたすらロングシュートだけ決められる練習をして。
だから、目先の得点を取ることはぜんぜんできなかったんですが、時間をかけて、何回かに1回ロングシュートをひたすら決めるスリーポイントゲッターでいこうと。そこを見てくれていた先生は、体育の成績もいいスコアをつけてくれました。
沢渡:これってやっぱり、ゴール下のせめぎ合いしかやったことがない人は、悪気なくそこで自己肯定感を失ってしまったり活躍機会がないけれども、「いやいや、ロングシュートを打てるやん」という経験をいかに組織の中で作っていくかが、すごく大事だなと思いました。
小田木:ありがとうございます。(視聴者から)「私は金沢八景」というコメントいただきました(笑)。
沢渡:近くですね、隣です。
小田木:あと、かなぶんさんの2番の、既存事業に最適化した組織作り・人作りをしてきたというところ。
「それで既存事業で成果を出してきた」という積み上げの大きさと、だからこそ変えることの難しさも、すごく実感されている方が多いのかなと思いました。
この必要性の観点は、お互いにほぼ確認みたいな感じで、必要性にノーはなさそうです。ここから次のステップに進んでもいいですか?
沢渡:ぜひ。
横山:もちろんです。
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