相手のことを考えるには「人の振り見て我が振り直せ」

福田聖輝氏(以下、福田):(「謙虚」について)トルストイは「謙虚な人は誰からも好かれる。それなのにどうして謙虚な人になろうとしないのだろうか」とかいう言葉を残しています。それから、デール・カーネギー「あなたの話し相手は、あなたのことに対して持つ興味の100倍以上もの興味を、自分自身のことに対して持っているのである」と言っていますが、これは私がモットーにしている言葉です。

こういう気持ちを一応持っていないと、いくら自分のことを言っても相手には響きません。やっぱり相手のことを中心に考えていかなくちゃいけないということなのだと思います。

じゃあ実際にはどうしたらいいんだろうということですね。とりあえずというところで、やっぱり「人の振り見て我が振り直せ」というのが一番当たっているのかなと思います。他人の行動をよく観察して、自分の行動に置き換えていく習慣をつけるのがいいのかなと思います。

「あの人はいい」と感じたことは真似して、自分が嫌だと思うことは辞めればいいんです。だから、「あ、そうだよなぁ」と思っただけじゃなくて、それを1個ずつ実践していくことが大事ではないかなと。

2回のがんを患って実感した「失敗」

福田:これまでいろんなことをお話ししてきましたけども、何よりも大事なのは健康なんですよね。私は2回失敗したといいますか、しょうがないんですけど、2回がんを患いました。

1回目は58歳の時で、胃癌になって胃を3分の2取りました。この時はまだ早期発見だったからよかったんですよ。しかし、2回目は72歳で、最近ですが、前立腺がんになったんですよ。これは多くの男性がかかると言われていますけども、私は4年間人間ドックを受けていなかったんですよ。だから、ものすごく悪化していて、もう手術もできないような状況になっていました。

今もそうです。だから、4月5日から5月18日まで、毎日放射線治療を受けてるんです。今日も午後から行くんですけど。早期発見できなかったからそうなっちゃったんですよね。

だから、みなさんはちゃんと人間ドックを受けて早期発見をして、早期治療に務めてくださいとお願いしたいです。何よりもやっぱり体が大事ですよね。体が言うことを聞かないと、仕事も何もうまくいきませんから、そういうことなのだと思います。

ストレスを溜めないために、時には「開き直り」も重要

福田:それからもう1つは、ストレスを溜めない工夫をしなくちゃいけないということだと思うんですよね。

やっぱり明るく元気に仕事をするためには、ストレスを溜めちゃいけない。これはみなさんご存じだと思いますけど、脳と胃腸はすごく関係が深いんです。ストレスを感じると胃腸が悪くなったりするというお話を聞いたことのある人は多いと思います。

でも、やっぱりそれをなんとかコントロールしていかなくちゃいけないので、1人で悩まないとか、くよくよ考えちゃいけないと言われるんですよね。反省はしなくちゃいけないけども、悩んじゃいけませんよというふうに思っています。起きてしまったことはしょうがないんだと開き直るのも必要です。

私が失敗したのは、私をこのポジションにつけた人が悪いんだというぐらいまで、開き直ってしまうことも必要じゃないかなと思っています。

あとは、食事も大事です。私は今どんぶりいっぱいのキャベツを食べていますけど、とにかく若い人も、お年を召した人も、健康が一番です。そして、健康のためには、やっぱりストレスを溜めないことが必要だと思います。

誰でも知ってるような「当たり前」を継続、実践する

福田:ここまで、私が45年間続けてきたことについて、いろいろとお話をさせていただきました。私が、人の心の動きを考えるようになったのは、20代後半で受講したデール・カーネギーのセールス・コースがきっかけです。今では、これも私の運命だったのかなぁと思っております。

人それぞれ価値観や生き方が違うわけですけれども、どう生きるかは自分で決めればいいだけですよ。しかし、1つ言えることは、人は1人では生きていけないですし、仕事も1人では完結しないということです。

そして、そこに人間関係の難しさとおもしろさがあるんじゃないかなということなんですよね。仕事というのは、人が動いてなんぼだと思うんですよね。人をどんだけ動かせるかが大事なことなので、そのために自分の人間性を上げていかなくちゃいけないと思います。

確実なことは、人間関係において人間性は大きな要素であって、人は人間性で判断されることが多いということです。自分の人間性を高めることは、会社・家庭・社会生活、どんな場面でも不可欠ですから、向上に努めることは大切だと思います。

結論として、人間性を高めることが運を引き寄せることになるのだと思います。そして、人間性を高めるためには、「挨拶しましょう」「ありがとうを言いましょう」「人の悪口を言っちゃいけませんよ」など、誰でも知ってるような当たり前のことを継続して実践していくことが大事です。

いろんな本が出て、いろんなことが言われていますけど、言われていることは、昔の『論語』の世界から一緒なんですよ。だけど、それを実践している人も、また少ないのです。だから、当たり前のことを継続して実践していくことが大切だというのが、私の結論でございます。

50歳での本社異動は、自分で望んだわけではなかった

福田:6分ほど時間が延びましたけど、以上が私の話でございます。早口でしゃべったので、何言ってるかわからないところもあったかと思いますけれども、少しでも参考になれば幸いでございます。どうも、ありがとうございました。

畑俊彰氏(以下、畑):いやぁ、福田さん、ありがとうございました。まだ10分から15分ほどいただいても大丈夫ですか? 

福田:大丈夫です。

:もし、もう少し残れる方がいらっしゃったら、ぜひ残っていただいて。今のお話を聞いて、感想でもコメントでも聞きたいことでも、心の中にちょっと浮かんでいることでもなんでもかまわないので、みなさんの胸の中にあるものを吐き出す意味も含めて、ちょっとチャットにいただけたらうれしいなと思います。

ありがとうございます。さっそくヤマダさんから「50歳で本社異動となったとのことですが、当時の福田さんはそれを望んでいたのでしょうか? また、異動となるまでの時期や時代はどのような気持ちでキャリアに向き合っていたのでしょうか?」というご質問をいただいています。

福田:望んだか望まないかと言われると、別に私は試験を受けていたわけでもないですので、自分から望んだということではなかったですね。私は東京支社にいたんですけど、本社からいろいろと指示文書や施策が来た時に「それは東京ではやらない。私はこうやります」というようなかたちで反対していたんですね。すると「そんなに言うんだったら、自分で来てやれ」と言われたので、本社異動となったというのが、本音のところです。

一番の武器は「経験」

福田:はっきり言って、その頃の本社では、キャリアの方たちがほとんどでしたので、私ができるとは思わなかったんだと思います。

外から「いや、それはだめだ」と言っていても、実際に自分でやるとなると、簡単にはいきません。ただ行って、どんなことを気をつけていたかというと、私の一番の武器はやっぱり経験だったんですね。いろいろと経験していることです。

最初に行ったところは、キャリアのみなさんや部下のみなさんを含めて101人の部だったんですよ。担当部長さんも7人ぐらいいるような、本社の中でも最大の部みたいなところでした。

でも、判断をする時に「これはこういうことで、これじゃ回らないよ」ということをお話しすると、ちゃんと受け入れてくれて、うまくいくことが多かったです。いろんな意見があっても、やっぱり自分の意見はきちんと言っていたことがよかったんじゃないかなと思いますね。

:なるほど。ありがとうございます。ちなみに「本社に来い」と言われるまでは、キャリアみたいなものについてどう考えていましたか? 今お話しいただいたようなことは考えていたのでしょうか?

福田:私がですか? 

:そうです。福田さんが「自分のキャリアをこうしていきたい」みたいなことって考えて生きてたのかどうかということです。

福田:はっきり言って、そんな大志を持ってたわけじゃないですね(笑)。どっちかとていうと、言われるところに行って、そこでできるだけ成果を上げていくというかたちで、野望とかそんなものはなかったんです。正直言って、そんな自信もなかったです。

ただ、外で見てる時は、すごいところだと思っていたんだけども、自分で中に入っていくと「この程度のことか」「これだったら俺でもできるな」みたいなことはありました。

:なるほど。じゃあその積み重ねの結果として、ああいうキャリアを歩まれたっていう感覚なんですかね。

福田:そうですね。

ノンキャリアで取締役になれたのは、運

福田:私の場合はまさしくそうですよね。それから1つはやっぱり民営化の影響が大きいです。民営化の影響もいろいろあると思うんですけども、私たちにとってはチャンスだったと言えるんでしょうね。

民営化されない限り、私みたいなノンキャリアの人間が本社にいって取締役になることはありえない話ですので、これはもう運なんだと思います。

その時に、意識してではなく積み重ねとして、こういう仕事ができるような準備があったことが大きいと思います。だからこれはやっぱり運です。運をつかむためには、準備が必要だったということなんじゃないいかなと思います。

先ほどお話しした内容に当てはめていくと、だいたいストーリー的にはそんなことが言えるんじゃないかなと思いますね。

:なるほど。ありがとうございます。ヤマダさん、いかがですか。お答えになってますか。

ヤマダ:ありがとうございます。すごく刺激をいただきました。元気をいただきました。

:ありがとうございます。続いて、タマキさんからは「とても心に響きました。この講演会に参加できたことは、今後の人生にとってとても重要な意味を持っています。私も数年前に病気をして、生き方や働き方を変えました。また、デール・カーネギーからの学びは、私の考え方や行動を変えたので、そこも共感しました」という感想のコメントをいただいています。

福田:ありがとうございます。

:タマキさん、ありがとうございます。

タマキ:こちらこそ、ありがとうございました。

:ありがとうございます。イマイチさんからは「毒を吐かない、愚痴を言わない、悪口を言わないということに共感すると同時に、反省しました。また、解決しない問題はないということにも大変共感しました。本日はありがとうございました」というコメントをいただいています。ありがとうございます。

福田:ありがとうございます。

イマイチ:ありがとうございました。

病気になったからといって、諦めはしない

:キムラさんからは「福田さん、ありがとうございます。福田さんの話の情報量がすごく多くて、例示も異次元でスケールが大きくて、とても勉強になりました。自分はこれから勉強・実践を心がけて、『こうありたい』と思う気持ちを大事に成長したいと思いました」というコメントをいただいています。ありがとうございます。

キムラ:こちらこそ、ありがとうございました。

:ヤマシタさんからは「オンライン塾を経営しています。勉強で成績を上げることが仕事ですが、人間性・EQ・SQも同時に必要だと思っています。教育は幸せになるためにするものだと思っているので、テストの点数に現れない心理学やコーチングの勉強もしようと思っています。講師という子どもに近い大人が見本を見せてあげることで、人間性・EQ・SQを磨いてあげたいとより強く思うようになりました」というコメントをいただいています。ありがとうございます。

福田:ありがとうございます。

:福田さんもヤマシタさんも、もともと日本郵便に勤めていて、僕の近くで一緒に働いていた仲間です。続いて、ヨシオカさんからは「闘病中とお聞きして、びっくりしております。病気になられたことで、人生観は変わられましたか?」というご質問をいただいていますが、いかがですか?

福田:あんまり変わらないんですよ(笑)。いや、変わらないと言いますか、今までは健康にほとんど関心を持っていおらず、自分は不死身だと思ってまして……。

:(笑)。

福田:年もとらないんじゃないかと思っていたんですけど、やっぱり70歳を過ぎると、階段を降りる時や高いところに上る時に少し怖いと思うようになって、年を意識するようになりました。病気になってからは、僕は自分で食事を作って食べているんですけど、食事の大事さなどをいろいろと学びました。

ただ、僕はそれこそ今全国を旅していて、2024年くらいまでにあと24府県を車で回らなくちゃいけないんですが、病気だからといって、それは諦めたくない。

でも、そのためには、自分で車を運転しますから、やっぱり健康で自分の体力がないといけません。そういうことを考えるようになりましたね。だから人生観で言うと、大きな変化というよりも、もっと自分の体を大事にしなくちゃいけないなぁと思うところに関しては変化がありましたね。

:なるほど、ありがとうございます。いやぁ、なかなかいろいろ考えさせられる1時間半でした。ありがとうございます。

ではでは、本当にみなさん、貴重な時間をありがとうございます。福田さんも本当に、今日ここに向けてあらためて準備をしてくださってありがとうございます。

福田:こちらこそ、ありがとうございました。少しでも参考になれば本当にうれしいです。

:ありがとうございます。15分弱ぐらい当初の予定をオーバーしてしまいましたが、ここまで多くのみなさんに延長でお付き合いいただいて本当にありがとうございます。