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評価制度が会社を長期自動成長させる(全3記事)

営業職以外の数値化しづらい部門の評価制度のつくり方 評価の「項目」と「基準値」を明確にするために必要なこと

株式会社識学が主催した経営層向けのオンラインイベントに、創業当初から営業部門を率いてきた同社副社長の梶山啓介氏が登壇。「評価制度が会社を長期自動成長させる」と題して、インセンティブ制度の弊害や、勤務態度をマイナス評価の対象にしない理由などを解説しました。

営業職以外の数値化しづらい部門の評価制度のつくり方

司会者:ここからは質疑応答に移ります。最初のご質問は、「業務評価の定量化が困難なケースの対応例はございますか」ということです。

梶山啓介氏(以下、梶山)先ほど「完全結果」をご紹介をしましたが、定量化、基準を明確化する時のポイントは、いつまでに、どういう状態かという期限と状態に分解することです。

期限は、四半期とか1ヶ月とか決められますよね。。どういう状態かを決めるのは、テクニカルなところが必要になります。

1つ目は、人は必ず比較をするので意外と決められるという話です。例えば総務部にAさんとBさんがいたとして、どちらのほうが評価が高いかを聞くと、Aさんのほうが評価が高いと。

その時、「Aさんのほうが仕事が早い」「やっている業務量が多い」みたいに、AさんとBさんの違いを出してもらうんですね。評価の高い人と低い人の違いとして出てくるものが、評価項目に入れる項目になります。

2つ目の、特に管理部などにおすすめなのが、いつまでに誰の承認を得るかを決めることですね。承認の条件を細かくすればするほど集中しやすいのでいいのですが、「期限内に上司である私の承認を得ていればOK」とするのでもありです。

もう1つ、管理部などにおすすめしているのはポイント化です。ルーティーンの業務をある程度項目化して、重要度でポイントをつける。そのポイントを1人あたりどれだけ増やせたかを見ていきます。

作るまでは煩雑さがありますが、意外と同じような業務が重なってくるので、運用はそんなに難しくありません。もしこれで足りなかったら、また追加でおっしゃってください。

インセンティブ制度の弊害

司会者:続いて、「識学を学ぶ上で一番難しいと感じる点が、営業職以外の評価の構築だと思います。事務職、例えば総務・経理や営業アシスタント等に属している社員の、何を結果として評価するのが良いでしょうか」。

梶山:さっきの話に通じますが、比較をしてもらいたいんですよね。総務・経理の方でも、営業アシスタントでも、2人以上いたら優劣がつくはずです。その時、何をもってこの人のほうが評価が高いのかという差分が項目になります。項目を何にするかと、項目をどう定量化するかで分けて考えてもらえればと思います。

最悪、項目まで出して、定量化まではできないというのもありと言えばありだと思いますね。それを1回回すことで、完全結果の定量項目を作るということでもいいと思います。

我々の営業アシスタントや事務職は、レベルを1個上げています。例えば営業アシスタントであれば、ルーティン項目のポイントの積み上げがベースですが、輪番制で営業があげたものに対してどれだけ処理できたか。ミスをした分に関してはマイナスをつける。

マイナスを取り返すには、業務量しかないので業務量にばらつきが出ますが、例えば業務改善の意見を上げて、上司が承認すれば、ポイントを渡すとかですね。

司会者:続いて、「評価制度について、インセンティブと通常の給与との棲み分けは、いかようにするべきでしょうか」という質問です。

梶山:結論はどのようにでもできますので、インセンティブ制度の弊害だけ先にお伝えします。1つは、インセンティブは、間の管理者の評価者としての機能が弱くなるんですね。

多くの場合、インセンティブは経営層が決めますので、営業マンは間の管理者に恐怖を感じるより、インセンティブを決める経営層に目がいく。そのため、間の管理職を育てにくいのが1つ目。

2つ目は評価の連続性の担保が難しくなります。ある月に成績を上げた人が翌月めちゃめちゃ下がったりすると、それで差し引きされますが、インセンティブだと、先ほどの話のように、マイナスではなくゼロという感覚になります。

今月は達成してインセンティブがもらえた。翌月は未達成だからインセンティブをもらえない。「インセンティブをもらえない」という認識なので、マイナスではなくゼロになると。インセンティブ制度の弊害は大きくこの2つです。

では、どうやって給与と棲み分けるか。インセンティブの対象とする期間を毎月とかにせず、どれだけ短くても3ヶ月にしたほうがいいと思います。管理者は、そんなに機能しなくてもいいと腹をくくり、スピード感を持って走らせるのがいいかなと思いますね。

評価の「項目」と「基準値」を明確にするために必要なこと

司会者:続いて、「営業は販売成績といった数値で評価がしやすいと思いますが、間接部門の評価はどのようにするべきでしょうか」。

梶山:これも、先ほどの質問と関連しますが、違う角度で1点付け加えると、いきなりきちんと評価項目を作るのは難しいので、最初に「だいたいこういう役割を求めるかな」という淡い役割を3つか4つ作っていただきたいですね。最大で5つ。

例えば間接部門でどれだけ生産性が高まったかとか、提案の数とか、期限内にどれを終わらせたとか、大きな項目を1回出してみる。そこでイメージをつかみ、段階を経て基準値を明確化していくと出しやすくなります。

司会者:「経理業務などの業務評価の具体例はありますか」という質問も来ています。

梶山:大きなくくりで言うと、間接部門は会社全体の業績を上げるために、現場サイドの負担をいかに減らすかという役割になってくる。なので、上の層に行けば行くほど、会社の売上と連動する領域を増やしていくんですね。

部長レベルだと、30〜40パーセントくらいを会社の業績との連動にする。残った部分にルーティン業務を入れずに、例えば、経理のDXシステムに移行できたかといったプロジェクト単位のものを入れる。それを四半期ごとに設定するイメージですね。下にいけばいくほどタスクレベルになってくる。

司会者:続いて、「零細中小企業では、社長のさじ加減で、評価や昇給額が決まることが多いです。今回紹介いただいたような評価制度は、従業員規模で言いますと何人くらいの規模から必要だとお考えでしょうか」。

梶山:私は3〜4人でも作ったほうが楽だと思いますね。ちなみに私どもは社員数が3〜4人の頃から評価制度を作っています。評価制度を作るというよりも、その人の役割を明確化する指標を作ると思っていただきたいんですよね。

「あなたはこういう役割でこう動いてほしい」という指標がないと、生産性は上がってこないので。先ほどの評価シートである「役割定義」。これを作った上で、評価にどうつなげるかは、また別で考えてもらってもいいと思いますね。なので、お答えとしては「従業員規模が小さい時から」になります。

定量化できないものは評価項目に入れない

司会者:「マイナス評価を定着させる方法はありますか」。

梶山:そういう文化であると最初から決めることが一番大きいですかね。規模が大きくなったところに入れるのはけっこうしんどいですが、そういうところに入れるなら、役割定義をして自分の役割が評価制度と連動するという期間を長めに持つのがいいと思います。

1年、必要だったら1年半とかかけて、役割定義がちゃんと業務に適して、評価に移すことができると確認してからマイナス査定を入れていく。

マイナス査定が、最初ちょっと怖いようであれば、さらにテストを加えて、プラスに比べてマイナス額を小さくするとか。マイナス評価の概念に慣れさせて、そこから金額幅を上げていくのはいいかなと思いますね。

司会者:「事業部が分かれており、兼務している場合は平均しかないのでしょうか?」。これは評価の話ですね。

梶山:原則はやはりそうなります。どちらかの比重を多くすると、僕の経験上(評価がどちらかに)寄ってしまうので、重要度がよっぽど違わない限り、平均でとったほうが僕はいいと思います。

司会者:「評価項目の定量化は、KGIとKPIを組み合わせるのが効果的でしょうか」。

梶山:KGIとKPIの組み合わせでいいと思いますが、KPIをどこまで入れるかという話と連動します。評価項目は5個ぐらいにして、KPIに入る項目は、週報などの報告フォーマットの項目に入れるイメージですね。なので、KGIだけが評価項目に入っているほうがイメージ的には近いと思います。

司会者:「いわゆる情意評価はどのように考えればよいでしょうか。全体の基準の中の評価ウエイト配分や評価の項目設定の留意点など」ということです。

梶山:情意評価が数字的ではないものということであれば、我々としては結果で表せないものに関しては入れないという考え方ですね。

感情的な部分が入らないという話ではなく、基準が明確かどうかをポイントとしているので。例えば積極性を基準化して、明確化できれば入れてOKとしています。なので、評価項目の質がどうかよりも、測り方の基準が明確かどうかに重きをおいてください。情意評価の捉え方が間違っていたら申し訳ないです。

勤務態度をマイナス評価の対象にしない理由

司会者:「マイナス評価者のフォローについて、どのような施策が最も効果的でしょうか」。

梶山:厳しい言い方をすると、マイナス評価者をフォローしなければいけない時点で、後ろめたさがある状態なので、項目の精度が悪い気がします。フォローが必要だと思う限りは、マイナスを反映させないほうがいいと思いますね。

「みんながフェアな状態でやった中でマイナスなんだな」となったら、話は変わってきます。視点を未来に向けさせるような話をしてあげたほうがいいですね。

なぜマイナスだったかは、評価項目に出ているので、「あなたはこういう点がだめだったからマイナス評価だけど、今後はこういうところをリカバリして、将来的にはこうなってほしい」と、視点を未来に向けてあげられたらと思います。

司会者:残り時間が少なくなってきましたので、たくさん質問をいただいていますが、こちらで最後とさせていただきます。「勤務態度等の部分もマイナス評価で評価しますか」という質問です。

梶山:これは僕らが「姿勢のルール」と呼ぶところで、『リーダーの仮面』にも入っていますが、マイナス評価に入れないのが僕らのやり方ですね。

なぜかと言うと、例えば「遅刻しない」をマイナス評価に入れると、遅刻してもいいという選択肢を残すことになるので。そこに関しては、評価以前の話ということで、上司が注意し続ける。できない人がいるようであれば、営業職だったら営業から外すとか。これは前提であるという処理をするのが、僕らのアプローチの仕方になります。

ただ、例外的にどうしても入れたいというケースもあります。勤務態度の順守率がすごく低い時は効果がありますが、60~70パーセントぐらいまでみんなが守るようになったら外したほうが100に近づけやすいですよという話をしています。

司会者:みなさま、たくさんのご質問をいただき、誠にありがとうございました。こちらでひとまず終了とさせていただければと思います。

梶山:どうもありがとうございました。

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