「勝手に国家戦略会議」という大上段な会の始まり

司会者:今日はお忙しい中、お集まりいただいてありがとうございます。

川原卓巳氏(以下、川原):こんばんは。

木下斉氏(以下、木下):こんばんは。

司会者:リュウです。よろしくお願いいたします。

川原:よっ! EXILEの。

司会者:EXILEじゃないです(笑)。やめてください。

木下:EXILEじゃないでしょ(笑)。

司会者:何を話そうか、飛んじゃうじゃないですか。やめてください(笑)。

まず、今回ご参加いただくみなさま、ご質問や感想はぜひチャットに書き込んでいただければと思います。ということで、卓巳さん、木下さん、さっそくですがおつなぎしてもよろしいですか?

川原:だめです。

木下:はい。ばっちり大丈夫です。

司会者:これ、絶対に「だめです」と言う人と、「いいです」と言う人が分かれるんですよ……。なんでオーナーが「だめ」と言うんですか? っていう……。

木下:この状態で「だめです」と言っても、しょうがないよね(笑)。

司会者:どっちかというと、僕にとっては卓巳さんのほうが狂犬ですわ。

木下:(笑)。そう、実は隠れ狂犬だからね。

川原:いやいや、私は従順な良犬です。

司会者:犬は犬なんですね。

木下:(笑)。

川原:犬は犬です(笑)。

司会者:ということで、みなさんぜひ楽しんで、この貴重な1時間を過ごしていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

川原:はーい。ありがとうございます。じゃあさっそくいきますが、木下さん、あらためてよろしくお願いいたします。

木下:よろしくお願いします。共演は「Voicy FES」以来ということで。

川原:いやー、楽しかった。楽しかったけど、ぶっちゃけ酔っぱらってあんまり覚えていないんだけどね。

木下:重富(寛)さんのビールをガバガバ飲みすぎて。やっぱりおいしかったんですけどね。あの時も1時間お送りしたんでしたかね。

川原:そうですね、正味1時間ですね。

木下:あの時に「続きをやろう!」とか言いながらそのままになっていたので、今日はここから「勝手に国家戦略会議」というかたちで、復活をして。

酔っぱらいの会から、急に大上段な会に進化したというあたりで掘り下げていければと思います。

木下氏の「地域活性化」キャリアのスタート

木下:まずは自己紹介ですかね。

川原:そうですね。おそらく、私のことを知って来ていただいている方と、木下さんのことを知っていただいている方と、どっちも知らないけどタイトルやネーミングに興味を持っていらっしゃった方と、3通りいると思います。

冒頭で木下さんと私からも自己紹介させていただいて、あらためてこの「勝手に国家戦略会議」を、なんでやろうと思ったのかをお話ししてからスタートしていきたいと思います。みなさん、ゆるゆるリラックスして聞いていただけたらと思います。

川原:じゃあ木下さん、いつもの狂犬プロフィール、お願いします。

木下:(笑)。そうですね。どうもみなさん、初めての方もたくさんいらっしゃると思いますが、木下斉と申します。よろしくお願いします。ざっくり言うと、僕は地域活性化を仕事にしています。

東京の早稲田大学の周辺に、早稲田商店街という商店街があるんですが、高校1年の時に地域活性化の活動に参加をしました。

なんでそんなところに行ったのかというと、僕は1982年生まれなんですね。小学校6年生の時に阪神淡路大震災(1995年1月)があって、その同じ年の3月に地下鉄サリン事件がありました。中学2年の時に、同い年のやつが神戸児童殺傷事件を起こしました。通称「酒鬼薔薇事件」ですね。

どうやら世の中はすごく変わっているんだけど、学校で教えていることは変わらないから、「これは学校の中にずっといるとやばいな。もう学校は終わっとる」と思いました。

「学校に行かない」という選択肢ではなかったんですが、極力自由がきく学校に行こう、大学受験もないところに行こうと思って、高校・大学がつながっている7年間の一貫教育ということで、大学の付属高校に行きました。

1年生の夏から、早稲田の商店街の活動に参加をしました。あれこれ行っているうちに、高校3年の時に、全国のいろんな商店街の方々と共同出資会社を作ったというのが、一応僕の地域活性化のキャリアのスタートです。

「狂犬」と呼ばれるワケ

木下:それで、僕のことが「狂犬」と書いてあって、初めて見る方は「どういうことなの?」という話だと思うんですけど。

僕はそういう事業で地域と向き合う中で、補助金や交付金とかに依存する、要はそれ(補助金や交付金)があるからやる、みたいな事業が多いと感じたんですね。そういうのは終わっていると。もう、ぜんぜん良くならない。

あくまで自分がやる事業があって、たまたま予算を使うならまだしも、「何かをもらえるから事業をスタートする」みたいなことをやっているから、どんどん日本の地方は悪くなっているんだと。

今、地方交付税交付金という制度とかで、お金がない地域にいっぱいお金が配られる仕組みが日本にはあるんですけど、これは戦後にGHQが持ってきてできた制度なんですね。

それまでは基本、自分たちの産業、つまり自分たちの地域の経済力で地域を成り立たせるというのを、みんな当たり前にやっていたんです。だけどいつの日からか、何か文句を言えば国から金が来る、みたいな話になって。

「これだからできない」「あれだからできない」「恵まれていないんだからお金もらうのが当たり前だ」とか。過疎債といって、「田舎だから、過疎だから、お金をくれ」ということを言っているのが普通の業界なんです。

僕は国の委員会の委員なんですけど、そういうところで表立って「それが腐っている」という話を毎回言ったりしています。

よく最後に「座長一任で、今日の会議の議事録はよろしいですか?」と言われたりするので、「よろしくないでーす」みたいなことを、20代ぐらいからずっと言っていたんです。

「座長一任だったら、座長と事務局だけで会議をやっていればいいじゃないですか」「座長だけじゃなくて、僕らも委員会の委員なんだから、それはだめですよ」と言っていたら、いつの日からか「狂犬」と言われるようになって(笑)。

僕は普通のことを言っているつもりなんですけど、とにかく経産省や国交省や総務省や内閣府とかとそういう話をしていると、異常者のように扱われて「狂犬」と呼ばれたり、「出禁だ」とか言われるんですけど。

だいたい、税金でやっているところで国民を出禁にすること自体がおかしいのでね。ぜんぜん関係なく、普通に出禁になっているのも知らずに、どんどんそこに入っていくので二度と呼ばれない会とかもいろいろあるんですけど。ただ、間違ったことは言っていないと思っています。

「できない」と言われたことを「ほら、できるじゃん」と見せる

木下:やっぱり、地域が地域の力をもって良くなっていくところに、日本の本当の底力が発揮される可能性があるんじゃないかなと思っています。

今、仕事的には、地方の方と共同出資の会社を作って、「税金がないとできないと」言い張っているものを補助金ゼロで、例えば船の新規航路の事業を始めて、それで何十万人という人を呼んでくるとか。

あとは、貧乏すぎる人口3万人ぐらいの町で、地元のチームと一緒になって、公民連携で民間の資本を集めて、図書館と民間施設が一緒になった施設を作るとか。

関西のすごく難しい立地の地区で、その地元のメンバーを中心に、公営住宅を民間資金と一緒になって建て替えていくとか。

そういう人材を育成するために、さっきスレッドに書いてもらった「都市経営プロフェッショナルスクール」を私がマネージしています。

ここで育てた人材が今、全国でそういうことをどんどん仕掛けています。地場で、「できない」ということをみんなでやって、国に「ほら、できるじゃん。なんでできないの? なんでそんな『支援しなきゃできない』という前提なんですか?」みたいなことを嫌味に言うのが、僕の立ち位置です(笑)。

川原:性格わりぃなぁ(笑)!

木下:よろしくお願いいたします。

川原:あ~あ。もう自己紹介からにじみ出る、この「らしさ」。本当好きだなぁ~。

木下:にじみ出る、無理やり感。

川原:そう。本来は自己紹介しているだけなんだけど、もうすでにやっている本質までたどり着いちゃうという。言葉と行動が一致しているからね。

木下:(笑)。でも、私も40歳なので、かれこれ25年こういう仕事をしているんですが。そんなことをやっている中で川原さんとも出会い、今日もこういう会をできるようになっているのは時代の変化というか、本当にうれしいなと思っています。よろしくお願いします。

川原:そっか。すでに25年もやっていらっしゃるんだもんなぁ。そら、狂犬と呼ばれるわ。

(一同笑)

木下:ですよねぇ。

大人になれと声をかけてきた人は「だいたいろくでもない」

川原:それもあとで話したいんだけど、25年この仕事をやっていて、地方創生だったり国の委員をやって、その業界にずぶずぶというか、染まってもおかしくなかったし、牙を丸くしたほうが生きやすかったと思うのに、いまだに牙ギンギンな理由って何なの? 

木下:(笑)。これはやっぱり、そのほうが良くなるからですよね。僕個人だけがどうこうと思えば、別にそんなの言わないでもいいし、「木下くん、うまくやったほうがいいよ」「大人になりなさい」みたいなことを、昔から何回も言われるわけですよね。でも、そういうことを言っている大人って、だいたいろくでもないやつが多いんですよ。

川原:(笑)。

木下:そうなりたくないじゃないですか。

川原:でも、一応言っといてあげる。これね、ログミーでログは残ることになっているから! 

木下:(笑)。いや、ぜんぜん大丈夫です。いつも言っているから、知っている人は「あ、また木下が言っている」「平時運行だなぁ」って感じだと思いますよね。山手線ぐらい平時運行だと思います。普通に運行している感じです。

でも、やっぱりそう言う人はいっぱいいたんですよ。だけど25年ぐらいやっていると、「予算ありきで、予算を効果的に使ったほうがうまくいくよ」「大人になって」とか言う人は、どんどん予算漬けになって、だいたいみんな消えていくんですよ。

予算漬けというのは、シャブ中と一緒だといつも言っているんですよね。麻薬に手を出して、「俺は麻薬をうまく使える」みたいなことを言う人がいるんですよ。だけど、絶対にうまくいかないんですよね。

川原:わかる。

木下:さっき言ったように、依存していくんですよね。基本予算を使わないでできることは、使わないでやる。どうしても規制緩和をしなきゃいけないとか、中には国側の制度を使わないとできないこともあるので、それはまあしょうがないと思うんですけど。

でも、まずは自分がやる動機があってやる話じゃないですか。だけどだいたい麻薬中毒者は、使わなくてもいいのに使うんですよ。「次は何をやったらもらえるか」という話になっちゃうんですよね。

「もらうことが目的になってません?」という話をすると、すごい形相で見てくる人が中にはいるんですね。

川原:(笑)。

木下:「ああなってはいけないな」という反面教師みたいな人が、上の先輩たちにいっぱいいたので。

「極力インディペンデントで」というスタンス

木下:基本的に僕はいろんなパターンで、こうやってVoicyもさせてもらっているし、noteもやっているし、地域の人と一緒に事業もやる。自分としての事業の柱は、極力インディペンデントで、独立・中立でという事業のモデルでやっていくのが私のスタンスです。

どこかの自治体とだけどっぷりやるとか、国のどこかの機関からお金をどっぷりもらうというかたちになると、中長期で自分がやりたいこと、やるべきことを・やるべきタイミングでやれるようにはならないなと見ています。

なので、自分で自分を追い込んでいるわけではないけれども(笑)。「そこはあかんよね」とこれだけ言っていれば……。ログミーにも書かれるかもしれませんけど、「予算がもらえるからやるんです」なんていう事業は、もうやれないじゃないですか。

川原:やれない(笑)。

木下:それぐらい、やっぱり自分のポリシーは公言したほうがいいなというスタンスです。

川原:いやぁ、すばらしい。本当のことをやろうとしていて、ちゃんと傷ついている人って好きだなぁと思います。

木下:でも、自分も最初からここまでそうだと思ってやれているわけではなくて。何回も予算関連事業とかに巻き込まれたり、もちろんいろんなことがあったんですよね。

違和感が残る終わり方がたくさんある中で、「それはだめだな」ということにだんだん気づいてきて、より先鋭化してる部分はもちろんありますね。

欧米の地域再生の考え方

木下:最初から全部がわかるわけでもないですし、地域で事業をやるのに、お客さまからお金をもらうのは本当に難しい部分もあって。立ち上げた会社の最初の3年は、なかなか黒字化しなくてすごく悩んで。

「世界の町の再生事業の調査」というのを、募集も何もしていないので、僕が勝手に起案書を書きました。そして知り合いづてで、いろんな財団とかにプレゼンしに行って。すると、どうにか民間の財団法人が研究予算をつけてくれて、お金をもらって。

アメリカやヨーロッパとかの、都市再生のモデル研究をやりに調査に行ったら、基本はやっぱり民業なんです。世界中の基本は、土地の値段を上げるために町作りをみんなやっているので。役所が「やれ」と言ってやっているのは、日本ぐらいなんですよね。

でも、活性化すると得する人って地権者なんですよね。そこの地域の人気が出れば住みたい人も増えるし、お店を出したい人も増えるし、事務所を開きたい人も増えるので。活性化すると、物件、土地、建物を持っている人って自動的に儲かるんですよね。

だから、アメリカなんかはすごく如実です。「それはあなたたちのためだから、まずはあなたたちが一番お金を出してください」と。それで将来人気が出て、土地の値段が上がれば、アメリカも日本もそうですけど、固定資産税という税金を自治体は取ることができます。

「あなたがやる事業で、固定資産税がだいたい15億円ぐらい増えそうだから、じゃあ自治体として5億円投資しますね」みたいな感じなんですよね。日本は、お願いしにいって、「恵まれないから、しょうがないからあげましょう」みたいな事業になっちゃうんですけど。そこはビジネスライクで。

「できない」と言われたことをできるようにした事例

木下:でも、そのほうが実際にうまくいっているんですよ。だから日本でもそうしましょうねということで、町で共同の会社を作って、ビルの運営管理を町中で40棟一緒になってやるとか。そういう事業を通じて利益を出して、町に必要なことに再投資したり。

それも日本は、「合同でやるのは文化的にできない」とか、いろんな人がよくわかんないことを言うんですよ。

文化とか関係ないわけですよ。でも急に「農耕民族だから」とか言って、変なおじさんが出てくるんですよ。お前、農耕やってねえだろ! いつの時代だ! 弥生時代かって話です。何の根拠もないような適当なことを言って、できない理由を言う人がいるんですよね。……なんか、腹が立つじゃないですか。

だから、「いや、できましたよ」「はい、できた~」「できるんだよね」という話から、実は制度化できるものもたくさんあるんですね。

道路を使って、企業広告とか宣伝をやるのは無理だと言われましたが、学生時代から始めた会社で最初にやったんです。

映画の「ジャパンプレミア」を公道上にレッドカーペットを敷いて、新宿でやって、国交省や経産省の課長さんたちに協力していただいて。経産省とか、そういう規制緩和の実験事業でやったりしたら、できるわけです。

そうすると、町にお金が落ちるんですね。それまで映画館やシネコンみたいなところではやっていたけど、なかなか日本の町のど真ん中ではできなかったので、じゃあそれをやろうと。

新宿の伊勢丹の近くにモア4番街という通りがあるんですが、「そういう事業ができたよね」と仲間に見せると、「日本でも道路で企業広告ができるんだ」という話になって、それがすごくプラスになってくるんですよね。

僕にとっては、それがこういう事業の基本としてあって、できないと言われることをできるようにして、制度を変える必要があればどんどん変えていく。

もちろん、僕が言うことに対して「狂犬だね」と言う人もいるんですけど、一方で「ちゃんとした人」と言うと変ですが、わかってくださる方もいるから、僕も25年こういう仕事ができているところがあります。

最近だと、地域再生って本当にいろんな国がみんなやっているので、地方でも東京でも、そういう現場でやられている方々は同じような考え方の人がいるんです。それもすごい変化だなとは思いますね。すごくおもしろい時代になってきたなぁと思っています。

川原:25年やっているから、ほぼじじいの観点。

木下:そうなんですよ(笑)。中途半端に長くやりすぎて、じじいの観点になりつつあるのは、本当にその通りなの。