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『1日1アイデア』出版記念イベント 〜幸せな仕事と人生を手に入れる、一生モノのアイデア力の育て方〜(全3記事)

「いいアイデア」に縛られると、かえって何も思いつけない 「∞(むげん)プチプチ」開発者のアイデアの出し方・選び方

スタートアップカフェ大阪が主催したイベントに、『∞(むげん)プチプチ』などのヒット作を生み出した、おもちゃクリエイターの高橋晋平氏が登壇。起業に興味・関心を持つ人へ向けて、新著『1日1アイデア 1分で読めて、悩みの種が片付いていく』(KADOKAWA)の内容を解説しました。

アイデアの質は量からしか生まれない

高橋晋平氏(以下、高橋):ここからアイデアをどうやって考えるかという話です。アイデアの拡散方法と収束方法。アイデアの種をどうやったらいろいろ思いつくのか、どうやってそこからいいアイデアを選ぶのか。これは基本のことです。

まず、どうやっていろいろなアイデアを考えるか。この本もそうなんですけど、僕はTEDトークやTwitter、Voicyという音声メディアなどで毎朝、アイデアの考え方を話しています。見ていただけるとうれしいです。

今日は一個だけすごく重要なことを伝えます。それは、アイデアの質は量からしか生まれないという話です。いいアイデアを見つけたければ、できるだけいっぱい選択肢を考えることに尽きます。

これに反すると、逆に何も思いつかなくなるという話をします。ダーツを例にして話します。ダーツが考える課題だとして、例えば、どうしたら猫背が治るかとか、どうしたら親と和解できるかとか、どうしたらイライラが減るんだというお題がそれで、ダーツの矢がアイデアです。「あれはどうかな?」「これはどうかな?」と考えるわけですよね。

この時に、真ん中がいいアイデアだとしましょう。真ん中に当てようって思った瞬間に投げれなくなるんですよね。例え話として会社の現場で、圧が強めの怖くて偉い人が「いいアイデア期待してるぞ!」と言った瞬間にもう何も思いつかなくなりますよね。

それはこのダーツの矢を1本だけ渡されて、なんか会議にその人が現れちゃって、「よし、今日はもうアイデア会議だから、出してくぞ!」って言った瞬間にダーツが1本になり、なかなか投げれなくなるという状態です。それは何も出てこなくなりますよね。

アイデア=いいアイデアと思っていると、何も思いつけなくなる

そこまで大げさじゃなくても、アイデア=いいアイデアと思っちゃってる人は「あ、なんも思いつかない」「いいアイデア思いつかない」「あ、発想力ない」。それでズーンってなっちゃいますよね。

そうじゃなくて、なんでもいいから投げるという話で、的は見なくてもいいです。お題を1回設定して、的を捉えようと考えなくていいから、外れたことから出していきます。

実現不可能なことだったり、ごく普通の、コーヒーが落ちて「あ、謝ろう」とか、そういうのから出していくと、人ってだんだん別のことを思いつき出すんですよ。非現実的なことや、普通のしょうもない、使えないことなどのアイデアを出していきます。

10個でダメなら20個と考えて、1人で考えるのは無理なんで、人に相談するんですよね。親と仲悪いんだけど、どうしたらいいかを僕も人にたくさん相談しました。いろいろアドバイスがあったり、自分で気づいたりして選ぶ。

別に一個を選ぶ必要もなく、ハードルが低いものからやっていけばいいんですよ。「これはやりやすいからやってみよう」「うまくいかなかったな」「これはうまくいったわ」というぐらいのトライアンドエラーで選ぶ話です。

お題を「拡大解釈できないか?」という視点

今日はスタートアップカフェ大阪さんだから、もう少し詳しいことを言おうと思って、スライドを追加してきました。仕事の企画あるあるです。

お題が明確ならいいですけど、考えやすいお題ってあるじゃないですか。例えば、カプセルトイの企画なんて、めちゃくちゃ考えやすいんですよ。カプセルに入れて、売れればいいんだから。

だけど、もうあまりにも成熟しすぎた業界とか、すごい規模の売上が求められているとかだと、的が非常に小さいんですよ。心当たりある人もいると思いますけども「どうしろっちゅうねん」みたいな感じですよね。この時は基本やることは一緒です。

いろいろなアイデアを考えてるんですけど、的が小さい以上、効率が悪いので、このお題を拡大解釈できないかを考えてみていただきたいんですよね。

玩具業界の話なんですけど、5~6年前にIoTが流行って、ネットにつながるおもちゃをネットにつないでサブスクでチャリンチャリンさせようと、玩具業界の偉い人たちが各社こぞって言い出しました。

僕もネットにつながるおもちゃ、一緒に考えたいみたいなお題をいただいたんですけど。「いや、繋がらないほうが良くないですか?」とずっと言っていました。作り手側のランニングコストも高くなるし。

この時期に、例えば、プロジェクターで、天井に絵本の絵が映って、お話を30個読み聞かせしてくれる寝かしつけおもちゃのようなものがヒットしたんです。インターネットにつなげる必要なんてなくて、1台買えば、子供に与えておくだけで勝手にずっと遊べるもの。おじいちゃん、おばあちゃんでも安心して買えます。

あれがネットにつないでストーリーを都度購入できるとかだったら、ダメだったと思いますよね。

「なんでもいい」ほど考えにくいものはない

例えば、ネットにつながるおもちゃを考えろと言われたら、そのお題を出した上司と話し合って、そのネットにつながるって、どのレベルのことかを話して。

煙に巻きながら、当時の僕だったら「ネットにつながるって、このおもちゃのホームページがおもしろいとかでもいいんですか」と言いますね。上司が「ホームページかぁ。いいんじゃない」みたいな感じで。でもネットにつながってないじゃないですか。商品のホームページがおもしろいだけだから。

ホームページと連動して「ホームページにおもしろいコンテンツを載せましょうか」みたいな感じでうまく騙していくというか、進めるみたいな。こういった、お題を拡大解釈する相談をします。

逆に、お題が曖昧すぎることもありました。「なんでもいいから、新規事業を考えろ」みたいに言ってくることがあるじゃないですか。「なんでもいいぞ。好きなことをやるんだ」と言って、「わかりました」って提案すると、「あ、それはうちの会社でやることではない」みたいな感じになりますよね。

「そのお題はなんだろう。本当になんでもいいのかな」。なんでもいいほど考えにくいものはない。カプセルトイは本当に考えやすい。サイズも値段も決まってるんです。

おもちゃは難しいんですよ。値段も大きさもなんでもいいわけですから。だから、制約条件を「どういう範囲にしましょうか?」「とりあえず、どこ狙います?」と聞いて、「このキャラクターで考えますか」「いったんぬいぐるみで考えますか」「高齢者向けで考えますか」みたいにターゲットを絞るといいですよね。ちょうどいい制約条件は大切ですね。

いいアイデアとは「現時点で満たされてない人の欲求を満たすアイデア」

ここまでが拡散方法で、次にアイデアの選び方なんですけど、いいアイデアとは何なのか。僕は現時点で満たされてない人の欲求を満たすアイデアがいいアイデアだという説明をしています。

アイデアは人を幸せにするためのものであり、幸せという状態に対して、ギャップがあることです。「これをやってみたら今よりもうれしくなるよね」ということです。今あるもので代替することができないアイデアが、いいアイデアだと思ってます。

具体例で言うと、違いがあるものとか、新しい価値があるものが欲求を満たすという話なんですけど。まったく新しいものじゃなくても、枯れた技術の水平志考の話だったり、それに近いかもしれないです。

機能は満たしているものはあるんだけど、全部デザインがダサい時に、イケてるデザインの同じ機能のものを作ったら、それは新しいアイデアなわけです。だって、欲求を満たすから。それを使いたかったけど、いいものがなかったという。

人の欲求を満たすものが、お客さんの購買する意欲も高める

僕は眼鏡の上からかけられるサングラスがすごく欲しくて、ずっと探していました。夏の日差しが強い時に、眼鏡を外して度付きのをかけ替えるのはどうしても面倒だから、上からかけたいんですよね。

だけど、その眼鏡オンサングラスが、僕調べでこの世にあるもの全部がダサいんですよ。ここにサングラスかけて歩くと大きめだし。「怪しいやつがいるぞ」みたいになるのしかなかったんです。

それを甘んじて使っていました。もしかっこいい眼鏡オンサングラスがあったら、もう絶対欲しいわけですよね。それが、違いがあることの例だったりしますよね。

あと、5,000円で欲しい機能を実現していたものを1,000円で作ったら、新しいですよね。今までないから。違いがあるから。だけど、今ないから、という理由だけで斬新すぎるものを作ったら、価値として下がってしまうんですよね。

例えば、おもちゃはキャラクターをつけることが多いですけど、小学生向けのおもちゃに、幼稚園児が好きなキャラクターをつけてしまったがために、誰も買いたくないものになってしまうこともありますよね。

欲求を満たさない方向に行ってるから、アイデアの役割として選ぶべきではないと思います。

人の欲求を満たすものが、お客さんの購買する意欲も高めるんですね。だから実行者の作る原動力にもなりえるんです。

事業計画のアイデアは「値段をつけて10人に聞く」

これで最後かな。まとめると、どうやって選ぶかというと、まず自分が欲求を感じるものを選び、それだけだと自分だけの価値観になるんで、自分のためのアイデアだったらそれでいいんですけど、事業企画の場合は、値段をつけて10人に聞くのが一番いいと思ってます。

大掛かりな調査とかまでしなくても、近くの人に、必ず値段をつけて聞いてほしいんです「この商品どう? いい?」って聞くと、そりゃ「いい」ってみんな言うじゃないですか。「いいね」「おもしろいね」って言うんですけど、それは売れることとぜんぜん関係ないです。

「これを月1,000円でやろうと思ってんだけど、どう?」と聞く。「いや、月1,000円は出せないねぇ」みたいなことが、やはりリアルですよね。でも「月1,000円でこんなものがあったら絶対いいじゃん」って、10人中2人が言ったら成功の可能性が充分あると思っています。

まとめますと、お題を設定しましょう。そして1回、お題を設定するんだけど、正解を求めないで、量だけたくさん出しましょう。最後に、いいアイデアを選びましょう。

それはお客さんや自分自身の要求を満たすものであり、試して見ることができるものがよりいいですよね。なかなか試せないと、きついです。行動のハードルが低いものから、やってみればいいよねって感じです。

『1日1アイデア 1分で読めて、悩みの種が片付いていく』(KADOKAWA)

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