「ノータイムポチリ」との出会い

熊谷翔大氏(以下、熊谷):おはようございます。グロービス経営大学院の熊谷です。水曜日は「仕事に役立つABC」と題して、仕事の成果を高めるために、当たり前だけど馬鹿にせず、ちゃんと取り組みたいことをテーマにお話しします。

今日は「『YES』という姿勢を楽しもう」がテーマです。日々の仕事において小さいものから大きいものまでさまざまな判断に迫られていると思います。広げて捉ると、仕事に限らず、キャリアや人生においても判断をしないといけない。もちろん、その時々の状況に応じて判断は変わるとは思いますが、ざっくり分けると、判断はYESかNOのどちらかですよね。

例えば職場で「新しい企画を考えているんだけど、プロジェクトに参加してくれない」とか、「おもしろそうなセミナーがあるけど、一緒に参加してみない?」みたいなお誘いがあったとイメージしてみてください。あなたはYESと返答するか、NOと返答するか、どのように決めていますか? ご自身の中で返答のスタンスや意思決定する時の偏りはあるでしょうか?

今の私は「迷ったら『YES』を選ぶ」と心の中で決めています。少し本題からそれますが、「今の」と言ったのには訳があって、実は私自身の性格の根っこは非常に優柔不断で、迷いの多いタイプなんですね。でも、とあるきっかけがあって「迷ったら『YES』を選ぼう」と決めたんです。

そのきっかけとなったのは、小野裕史さんという方のセミナーに参加した時のことです。小野さんはふだんは投資家をされているんですが、プライベートで始めたマラソンで、北極点や南極点で走ったり、ついには砂漠のマラソンで世界一になったりという、めちゃくちゃおもしろくて素敵な方なんです。しかも小野さん自身は35年間まったく運動したことがなく、マラソンを始めたのも、軽いノリでエントリーしたフルマラソンがきっかけらしいのです。

その小野さんはセミナーの中で、ココロの羅針盤に従って時間をかけずにポチッと押して一歩踏み出すことを「ノータイムポチリ」と呼んでいて、「ノータイムポチリの積み重ねで人生が変わりますよ」という話をされたんですね。

それを聞いて「おもしろいな」と思い、基本的には「ビビッと来たら『YES』を言うようにしよう」と決めました。

日々の小さな話も、転職みたいな大きな判断も、「『YES』って言おう」と決めているおかげで、いろいろと好転したり、想像以上に自分自身が成長できたり、思わぬ素敵な人との出会いがあったりしました。

基本的に「YES」で応じることのメリット

本題に戻ります。今日はこの「基本的に『YES』を言う」姿勢のいいところを3つお伝えしたいと思います。まず1つ目は、「YES」と言ってから考えると、意外とできることが多いです。判断に迷う時はいろいろと考えてしまう。私も含めて人間は弱いものですから、できない理由を探したくなるんですよね。

でも「YES」と言ってしまえば、やるしかないと腹を括って、その状況の中でなんとかやり抜く方法を考えるのではないかと思います。なんとかやり抜く方法を考える自分を引き出すために、「YES」と言うと決める。その姿勢に尽きると私は感じています。

続いて2つ目のいいところは、「YES」と言ってする後悔のほうがスッキリします。「あの時やっておけばよかったな」という「やらない後悔」は後味が悪いですよね。

それよりは「YES」と言って前に進み、やってしまって失敗した、後悔したというほうが変に悔いが残りません。そして「YES」と言って前に進むほうが、自分の成長につながったり、チャンスに変わったりするのではないかと感じています。

最後の3つ目は、「迷ったら『YES』を言う」と決めておくほうが気持ちが楽です。迷うのってエネルギーが必要なんですよね。でもスタンスが決まってしまうと、気持ち的に非常に楽になります。

最初にお話ししたように、私はもともと優柔不断だったんですけど、「基本は『YES』と言おう」と決めてから、仕事の場面でも、プライベートな場面でも生きやすくなったなと感じています。

以上、「基本的に『YES』と言う」姿勢の良いところについて、3つお話しました。もし仕事やキャリア、人生において何か迷う場面がきた時には、「基本的には『YES』と言ってやってみよう」みたいな感じで、前に進むのもありではないかと思っています。例え大変そうでも、少しでもビビッと来たのであれば、おもしろそうなほうを選びましょう。

イメージとしては、「うわ、また『YES』って言ってしまった。どうしよう。まあでも、やるしかないか」みたいな感じで、ポジティブに捉るといいのではないかと思います。それでは本日も素敵な1日をお過ごしください。