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web3の現状と世界から見た日本の現在地と成長性(全4記事)

新しい組織のあり方「DAO(自律分散型組織)」についてのよくある誤解 第一人者が語る、web3の世界で「分散化」したいこと

TOKYO創業ステーションの6周年を記念したスペシャルイベントの模様をお届けします。テーマは「web3×起業」。web3領域のスペシャリストをゲストに迎え、世界的に注目されるweb3を深掘りしていきます。本セッションでは、web3領域の第一人者である株式会社フィナンシェの國光宏尚氏と、ベンチャーキャピタリストとしてweb3領域に携わるi-nest capital株式会社の放生會雄地氏、web3リサーチャーの三井滉平氏が登壇した『web3の現状と世界から見た日本の現在地と成長性』をお届けします。

「意思決定の分散」と「DAO(自律分散型組織)」は関係ない

三井滉平氏(以下、三井):では、もうそろそろお時間なので、続いて最後の質問にさせていただけたらなと思います。「これからは中央集権型はなくなると思いますか?」という質問をいただきました。長いスパンでディセントラライズド(decentralized)みたいなムーブメントみたいな話も、最初にいただいたと思うんですけど。

そもそも分散化させるべきなのかみたいなところ。分野によったりプロジェクトによるとは思いますが、そのあたりで中央集権と分散化の未来というか、中央集権型、完全になくなって分散型に移行していくのか。ここは中央集権でここは分散化みたいな、それぞれの意見みたいなところもあるのかもしれないんですけど、最後にお二人におうかがいしてもよろしいでしょうか。ではまず國光さんからおうかがいしてもよろしいでしょうか。

國光宏尚氏(以下、國光):ここでいうと、特にDAO、自律分散型組織。これが「これまでの株式会社に変わる新しい組織だ」みたいな感じで言われてたりするやつなんですけど、この自律分散型組織、DAOという時に、世論がよく勘違いしているのは分散型。みんなで一斉に決めると思っている部分ですね。これは完全な勘違いで、意思決定とDAOってなにも関係ないんですね。

というのも、例えば今ブロックチェーンのDAOで、一番成功しているのってビットコインなんですね。でもビットコインの初期というのは、サトシ・ナカモトさんが1人でコードを書いていたから、恐ろしいくらいサトシ・ナカモト完全独裁体制で始まってて。

その次、イーサリアムもかなり成功しているけど、イーサリアムの意思決定がどこまで分散化しているかは議論も出てくるだろうし、ポルカドット(Polkadot)に関しては「うーん」というところだと思います。

そういった意味でいくと、意思決定の分散化というのは、結局ステージによっては分散化したほうがいいところもあれば、意思決定権がリーダーに集まったほうがいいとか、そういう話なんだと思ってて。僕はあまり意思決定というところというのと、このDAOは関係ないと思っています。

web3で重要なのは「インセンティブの分散化」

國光:ただ、より重要なのは報酬。インセンティブの分散化というところが、僕はweb3の中ではすごく重要やと思ってて。どういうのかでいくと、今までの資本主義とかweb2の問題点というのは、あるべき姿はがんばったらがんばっただけ貰う。貢献に応じて報酬が来る。これが理想のかたちだと思うんですね。

ただ、今までの資本主義とかweb2というのは、この報酬というのが貢献じゃなくて、ごくごく一部の資本家に思い切り偏っていたというのが問題。あとこれは僕がよく例で言うのが、YouTubeというweb2の一番成功例みたいな感じがあった時に、今の時価総額20兆円くらいなんですね。この20兆円というのがどこに行ったかというと、YouTubeを作った人。YouTubeに投資したVC。YouTubeを買ったGoogleというところが、この20兆円を占めているんですね。

ただ、YouTubeの成功というのを考えると、もちろん彼らも貢献したけど、彼らだけじゃなくて、まったく流行っていなかった頃に、動画を投稿し続けた名もなきクリエーターとか、それを見続けたファン、友だちに紹介した、記事にした、コードを書いた。いろんな人というところがYouTubeの成功に貢献しているはずなんですね。でも、その人らに対する報酬はほとんどゼロ。

でも、もしweb3バージョンのYouTubeというのがあったとすると、YouTubeトークンみたいなのがあって、初期に動画を投稿するとちょっと貰える。友だちに言うと貰える。友だちに知らせると貰えるみたいなかたちで、みんながこのYouTubeの成功というところに対して貢献して、その貢献に応じてちょっとずつトークンが貰えるみたいな。

結果、これがみんなのがんばりで大成功して、ネットワークバリューが20兆円とかなってくると、多くの人というのにちょっとずつ分散されていくみたいな。

よく言われているのが、イーサリアムの中で正直ヴィタリックの影響力、むちゃくちゃでかいと思うんですけど、ただトークンの保有率という意味の彼のパーセンテージって、0.5パーセントくらいと言われているんですね。それに対してイーロン・マスクはもともとのテスラは30%。スペースXは48%と言われています。

そういった意味で、よくディセントラライズドとか非中央集権といった時に、多くの人は意思決定の民主化と思いがちなんですけど、僕はより重要なのは、報酬とかインセンティブの分散化、民主化というところなのかなと。

web2で大成功した人も気付く「取り分」の問題

國光:たぶんこれ、みなさんもやられている中で気づくと思うんですけど、多くのトークンプロジェクトというのは、ホワイトペーパーの中にトークンアロケーションというのを記載するんですね。トークンアロケーションというのを記載する時に、だいたい我々ファウンダーとかが取るチームアロケーションってあるんですね。ここが15%から20%って多くないですか?

これ、もともと僕が昔やっていた時、40%から50%やったんですよ。でもこれが空気観的に40、50%とかやと、「ちょっと中央集権っぽくない?」という圧力が来るんですね。となるとコミュニティにしっかり貢献しなければいけないという、ピュアな圧力がかかるわけですよ。これを僕は「web2魔女狩り」とは言ったりするんですけど。

放生會雄地氏(以下、放生會):(笑)。

國光:そういった意味でいくと、結局僕のプロジェクトって、なんだかんだでチーム取り分というのが15%から20%。これっていうのも関わっているチームメンバーで、まあまあ平等に分けていくというのが、なんとなく文化であって。

5人、6人で始めたら、15%やっても1人、5人やったら3%とか。今後のストックオプション的なものだったら2%とか。なのでまとめると、僕はこの意思決定は分散化は、プロジェクトのステージステージで、一番効率的なやり方とやったらいいんじゃないかと思って。それ以上に重要なのは報酬。インセンティブの分散化という部分なんだろうなって感じというのはすごい思っていますね。

なのでこれはみんなにweb2の大成功した投資家とか、web2の大成功した起業家も、やり始めるとみんな気づくんですよ。「あれ? 俺の取り分減るやん」みたいな。というのが、普通なんですよ。

従来だと、1人で起業すると100%から始まる。 毎回の資金調達って10%から20%でダイリュージョンす。 それを上場まで4回から5回繰り返す。 だいたい上場した時の仕上がりって、創業者が30%くらい。チームメンバー、いろんな人たちが10%くらい。60%くらいがVCみたいな。

一方でweb3では、いきなり15%くらいでみんなで分散するところから始まるという。そういった意味でいくと、僕はけっこう、これはイチ個人の生活的にはそんなにうれしくはないけど、世の中にとってはいいことだと思いますよ。

中央集権自体はなくならない

國光:やはりごくごく一部のお金持ちが、何兆円も持ってとか、何千億円も持ってという感じなら、参加した人たちが自分の貢献に応じて、より幅広くメリットがあるほうが、社会全体にとっては絶対プラスと思うので。意思決定の分散化というのは、そんなに来ないと思ってて。そうじゃなくてインセンティブだったり、報酬の分散化みたいなものと僕は捉えてますね。

三井:なるほど。

國光:それがDAOかなと。

三井:ありがとうございます。では最後、放生會さん、お願いしてもよろしいでしょうか。

放生會:そうですね。私も中央集権自体はなくならないと思っていて。意思決定の部分と切り離して考えなきゃいけないなと思っています。これは先ほどのディセントラライズドインターネットとかも絡むんですけど、ディセントライズドインターネットって、ブロックチェーンを活用して、データが一極集中しないとかそういう話なんですよね。

なので、これを経済的な価値に置き換えると、ノード運用者に対する報酬としての例えばトークノミクスを設計していったりとかって話になっていくので、経済的な効用の分散化であるとか、そういったものになってくるのかなと思うんですけれども。

これもやはりステージがあるので、一番最初の設計図を書くような段階であるとか、ホワイトペーパーを書くような段階って、リーダーシップを持っている誰かがいて、しっかり意思決定をしていって、ビジネスのロードマップを作っていくわけですよね。こういったところは中央集権的だと評されるし、こういったところというのは普遍的だろうなと思っている部分ですね。

少し話が取っ散らかっちゃう部分はあるんですけれども、中央集権と言えば国なんだと思うんですね。やはり国家自体はなくならないと思うんですが、中央集権と分散化したものって二律背反ではなくて、併存していくんだと思っていて。

中央集権的な存在に対するものとして、分散化したものというのも、このクリプトを活用したものの延長線上として、出てくるんだろうなとは思ってます。そういったコミュニティとして。

中央集権的な存在が衰退していく可能性はある

放生會:分散化したコミュニティが中央集権的な存在のすべてを排斥していくということは、なかなかないんだと思っていて、一方で中央集権的な存在が分散化したコミュニティを取り締まっていくような効力であるとかといったものは、どんどん衰退していく可能性というのはあるのかなと思っていて。

こういったところを期待したいのは、やはりビットコインのようなものであるとか、こういったものってやはり取り締まりはできないわけですよね。誰かからビットコインを取り上げることというのは、鍵を漏らさない限りは規制することはができないわけなので、そういったものが普及していくことで、相対的に中央集権が弱くなっていくというような発想は、あるのかなというところだと思います。

ただ、気をつけなければいけないのは、繰り返しになりますけれども、意思決定であるとかそういった話ではなくて、経済的な効用であるとかそういった部分になってくるんだというところですね。

三井:なるほどなるほど。ありがとうございます。さて、もっといろんなお話をおうかがいしたいながらもお時間が来てしまいましたので、これにて終わりにさせていただければなと思います。僕自身もすごく勉強になったお時間でした。お二人、どうもありがとうございました。

國光:はーい。

放生會:ありがとうございました。

三井:では運営の方にお返しします。

司会者:ありがとうございます。國光さん、放生會さん、三井さん、貴重なトークをありがとうございました。

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