2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
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前野隆司氏(以下、前野):さっき、ソーシャルラーニングってあったじゃないですか。あれは、周りの人と話をしてソーシャルな感じで学べばいいんですか?
中原淳氏(以下、中原):そもそもラーニングはソーシャルなものだと思っていて、人は他者に関わられたり、他者からフィードバックをもらったり、他者とディスカッションしたりする時に一番学ぶと思っています。
ただ僕は、今の学びの環境は、逆に振れていると思うんですよ。例えばAIが入って、あなたに最適な問題・ドリルを出します。回答しました。回答項目にしたがってまたAIが考えてくれて、最適な問題を出しますと。
学びが個に閉じていて、しかも最適化されている。これは「個別最適な学び」と言うんですけど、これが大事だというほうがたぶん今、趨勢になっている。
他人とディスカッションとか、他人からのフィードバックなんて、はっきり言ってかったるいし、タイパもコスパも悪いわけですよ。そして、今こっちがだんだん劣勢になっている。
どっちもそこそこ大事なところはある。暗記も必要な時はあるんだけど、ともすればこういうタイパの悪いもの・コスパの悪いものはバンバン切られていると思うんですね。だからうまいバランスをちゃんと取らないと危険だなと、正直思います。
前野:確かに。現代社会で人々が村社会から都会に出て、個別最適化を目指したことに似ていますね。本当は村社会にいて、もっとコミュニケーションを取ったほうが幸せですよね。ただ村は、祭りに出ないといけないし、おせっかいなおばあちゃんがいるし、面倒くさいしと言って、個別最適化に向かう。
マスコミもそうですよね。画一的なのは嫌だから「私はトランプさんの言うことだけ信じます」みたいな、言論の分断が起きて個別最適化に向かっている危険はすごいですよね。
中原:いいバランスが必要だと思うんですけどね。僕も旭川出身ですけど、いかに、ここから出るかしか考えていなかったですからね。いや、旭川好きなんですよ。でも、若かった僕は、東京に出たかった。
前野:(笑)。
中原:だって、余談ですけど、中学校・高校の時に、たとえば女の子と手をつないで帰るじゃないですか。田んぼとか、堤防とか通ってかえるわけですよ。でも、僕が家に着く前にうちの親が、それを知っているわけですよ(笑)。あんた、さっき、女の子と、どこどこにいたでしょって。「なんでわかんの?」と言ったら、こういうわけです。「さっき、おばちゃんが見たって」。
前野:(笑)。
中原:わかりますか、このリアリティ(笑)。いかにここを出るかを考えて、こっちに来るじゃないですか。でもね、もう東京で暮らして二十何年経っていますけど、そうすると「こんどは、田舎がいいなぁ」なんて思うわけですよ。「どっちなんだバカ」と言いたくなりますけどね(笑)。だから両方うまいバランスを取っていくことが大事じゃないですかね。
前野:確かに。日本って「原発賛成か、反対か」とか「ソーシャルラーニングか、個別か」みたいに極端な議論になりがちですよね。別に、ソーシャルに・個別に、協力し合いながら学べばいいんですよね。
中原:そうだと思います。みなさんがどう思うかわからないけど、僕が学生にいつも言っているのは、「あれか、これか」という二分法で、いろんな人があなたに選択を迫ってくると思うけど、たいていの場合、「あれか、これか」では解決しない。
「あれも、これも、どうやってやるか」とか「あれも、これも、じゃない」ものをどう探すかのほうが、たぶん真実に近いんじゃないか、と言っています。「なんかまた先生が暑苦しいこと言ってる」みたいに、たぶん学生たちは聞いていないと思うんですね(笑)。相手に受け取ってもらうことは大事ですが、なかなか伝わらない。
前野:(笑)。単純なほうがわかりやすいですから、なかなか伝わらないですよね。「AかBかじゃなくて、そこじゃないここにあるんだよ」と言っても、まだ慣れていない人にとっては「AかBしか見えないです」みたいな。
前野:さて、我々ばかり話しているので、ソーシャルラーニングの時間に移ってまいりましょう(笑)。みなさんの話も聞けるといいなと思っています。質問はきていますか?
司会者:はい、今14個質問がきています。Zoomのチャットに、質問のサイトへのリンクがあります。答えを聞いてみたい質問への投票ができますので、開いてご覧ください。人気の高い質問から、時間の許す範囲でお答えいただければと思います。
では、一番人気の質問を読み上げます。「学び方(知識注入型)からソーシャルラーニングへ変えるために、何が必要でしょうか」。
中原:いろんな答え方はあると思うんですが、日本の小学校の学びは、グローバルでもわりとインタラクティブなほうです。厳しいのが中学・高校で、大学も厳しいです。大学はいろんな国からの働きかけによって、けっこう変わってきているんですけど、中高は入試があってなかなか変わりにくいところがあるのかなと思います。
僕が研修とかで企業に呼ばれた時、「うちの従業員は、絶対に先生が言うように語らないと思います」とか「意見を言わないと思います」と、よく言われるんですけど。ほとんど大嘘ですよ。ちゃんとした機会を作ればぜんぜん大丈夫だと思う。
今から実験してみましょうか。ここまで、僕ら2人でいろんなお話をしたと思います。自分の頭の中で「あの言葉が印象に残ったな」とか「あんなことやこんなことを考えたな」でもいいんです。難しいことを言わなくていいです。
ここまで僕たちがしゃべった中で感じたことを、お近くの2名か3名かでしゃべってみてください。ソーシャルラーニングをやって死んだ人はいませんから(笑)。ぜんぜん大丈夫。
(会場笑)
じゃあ今からいきますよ。3分間でいきましょう。近くの人を探してください。
……いかがでした。ね、できたでしょ? だからソーシャルラーニングなんてちゃんとした機会と、ハードルを下げた問いがあれば誰でもできると思います。だからどんどんやってみて、という感じですね。
中原:どなたか、何か思ったことや質問があったら、出してくれませんか。どうでしょう。緊張する? 大丈夫だよ、死んだ人はいないですから(笑)。
(会場挙手)
どうぞ。
参加者A:ありがとうございます。先ほどの「企業の事例くれくれ君」のところがすごく刺さったので、その話をしていました。企業側の立場として、ウェルビーイングが大事なのはわかり、それをどうやったら実践できるのか、何をやったら高まるのかを知りたく、どうしても事例を求めてしまう。
一方で先生がおっしゃった「ある会社でうまくいったやつが、ほかのところでも通用するわけじゃない」も、そのとおりだと思うんです。企業のコンディションはぜんぜん違うので。
だとしたら事前にアンケートとかで企業の実態をあぶり出して、そこの弱点に刺さるプログラムを持っていくとか、そんな方法論を作ったりする必要があるのではないかな……というお話をさせていただきました。
お二人からすごく良い意見をいただいたんですけど、企業側の立場で言うと、会社でそれを採用する時にやはり言い訳が欲しい。それを企業として購入するわけですから「これをやったらうまくいっている事例があるんです。実績があるんです」という言い訳が必要な気もします。そのへんで盛り上がりました。
中原:ありがとうございました。
(会場拍手)
別に事例がダメだと言っているわけではなく、事例と、自分の頭で考えることと、自社の状況の3つだと僕は思うんですね。Aさんは違うかもしれないけど、多くある「どこか他社の事例をコピペすれば自社で必ずうまくいくに違いない」というケースが、僕が「やめたほうがいいんじゃないの」と言っているやつです。
これがなぜダメかというと、自分の頭で考えること、思考を放棄しているからです。もう1個放棄しているものは、おっしゃるように、自社の状況を調べることを放棄している。そうすると、なかなかうまくいかないかなと思います。
経営者に「これ大丈夫なのか」と言われて、他社の事例を持っていくんですよね。「大丈夫です、ここでうまくいってますから」と言うんだけど、本当は「自分の頭で考えてる?」って経営者に言いたいよね。
(会場笑)
「競合他社がやっている事例をうちの会社でもやる」って、それをビジネスでもやりますかって。競争優位が必要なんじゃないの? 違いが必要なのにも関わらず、同じことをやるっていうのがね。それで思考停止したらダメですよ。ちょっともう1回、慶応で学ぼう(笑)。
(会場笑)
中原:ほかはいかがでしょうか。どなたか言っていただいて。
(会場挙手)
はい、いきましょう。
参加者B:すてきな学びを得たので、シェアしたいなと思って手を挙げてみました。個別最適化の難しさのお話をされていて、AかBか、都会か田舎か、みたいな二者択一になってしまう話を聞いた時に、私は自分の上司をパッと思い浮かべました。
(会場笑)
「あの人は常にAかBかしか言わない……」みたいな(笑)。そういう人の気持ちを変えるとか、そのスタンスをもうちょっとグラデーションにするにはどうしたらいいんですかねと聞いたら、「余裕がないとそういうのを考えるのが難しいんでしょうね」とおっしゃってくださいました。
「ああ、あの人は余裕がないのか」と思って(笑)、何か余裕を作ってあげるようなサポートができれば、変わるかもしれないなと思いました。
(会場拍手)
中原:ありがとうございます。お互いさっきまで他人だったかもしれないんだけど、そこでいい学びが生まれたわけじゃないですか。これがソーシャルラーニングですよ(笑)。
司会者:続いて、21票を獲得した質問です。「学びに興味がない方や、自分の成長を諦めているように見える方に、何か支援できることはあるでしょうか」。
中原:めちゃくちゃ泥臭いんですけど、基本的にはスモールステップならぬ「ベビーステップ」です。ほんのプチでもいいです。プチプチプチぐらいでもいいかもしれない。それくらいのことに挑戦したり、学んでみて、なるべく早く達成感を感じることかなと思うんですよ。
プチ挑戦やプチ学びかもしれないけど、それが習慣化するとだんだん楽しくなってくるので、ハードルを下げた学びから始めるのが大事だと私は思います。
司会者:ありがとうございます。前野先生もぜひお願いいたします。
前野:同じです。
(会場笑)
中原:楽しないでください(笑)。
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