「チャランポラン」「気が変わる」はAIやロボットにはできない

佐野創太氏(以下、佐野):寄せられたコメントの中に、「親の遠距離介護初動期でストレスかかる中、異動・新規事業立ち上げが重なりストレスMAXです。しかし力に変える人を見ていると勇気が湧きます」と書いてあって、羽生結弦選手の例も書かれているんですけど、高ストレスをバネに変える人がいるじゃないですか。

本間正人氏(以下、本間):それをバネに変えられたらすばらしいと思います。

佐野:それこそ今、裏番組ではWBCが。

本間:ダメ! それ言っちゃ!

佐野:みんないなくなるかもしれない。

本間:きっと大丈夫だよ。WBCは投手交代が長いじゃないですか。見るのかったるいんじゃないかな。あとでサマリーバージョンで見たほうが、タイムパフォーマンスいいですからね。だいたい勝つと思います。

佐野:だいたい勝つ(笑)。

(一同笑)

佐野:たぶん勝つと思います。プレッシャーという言葉かもしれないですけども、ストレスをバネに変えられる人はなんかやっているんですか?

本間:これ、やはり自分に言い聞かせているんだと思いますよ。

佐野:言い聞かせている。

本間:「ピンチをチャンスだと思う」みたいな、見方を変える。これもAIができないことで、AIは、最初に初期値を設定した方向からしか見られないわけですよ。でも人間はあっちから見たりこっちから見たり、気分変えてみたり気が変わったり。

今までは、「お前はチャランポランな奴だな」とレッテルを貼られてきたんだけど、チャランポラン、気が変わるなんてAIやロボットにはできないことなんですね。人間が「ここで乱数を発生させて」と設定して、ランダムに見えるようにはできるかもしれないけど、本当の意味でチャランポランにはなれないんですよ。

AIもそうだけど、ロボットって言われたことをやるようにできているわけだから。だから「気が変わる」なんてすごいことだし、見方を変えられるというのは、人間が持つすごい力なんですね。ピンチをチャンスに変えたり、試練を自分のバネに変えられるのも、すばらしい人間の能力だと思うな。

人生の中での「真善美」の再考

本間:あと、この「遠距離介護初動期でストレスがかかる中、異動・新規事業立ち上げが重なり」と書いてあるじゃないですか。どっちが他の人によって代替可能かというと、たぶん新規事業の立ち上げですね。

会社の状況はわかりませんけど、大概、他の人がカバーできるのが会社の仕事です。その方の上司はその人が仮に抜けたとしても、結果を出さなきゃいけない。というか、出すのがマネージャーのお仕事になりますからね。

親子関係は、他にご兄弟がいるのかどうかわからないけれども、基本的に他の人に代替不可能な部分が多いんだろうと思います。もちろんケアワーカー、ケアマネージャーの力とかも借りた上での遠距離介護だと思うけれども。

あとで「あの時お父さんお母さんのそばにいてあげればよかった」という悔いを残さないために、例えば休職するというオプションを選ぶのもありかもしれない。

日本のこれまでの社会は、私生活を犠牲にしてでも、会社のために尽くすことが尊ばれてきたけど、それが人生の中での真善美、正しいことなのか、美しいことなのか、良いことなのを再考する必要があるのではないかなと僕は感じます。

幸せにつながる「オキシトシン・セロトニン・ドーパミン」のバランス

佐野:最近読んだ本で、オキシトシン・セロトニン・ドーパミンという幸せを感じるホルモンみたいなのが3つあるみたいで。

本間:なるほど。

佐野:仕事の成功や達成はドーパミンで、みんな最初にこっちに行っちゃうんですけど、その本に「順番が違う」と書いてあって。最初は健康に関連したセロトニン、次に愛情につながるオキシトシン、そのあとに成功や達成をやるべきだみたいに書いてあって。

本間:最近「心理的安全性」と言われるようになったのは、セロトニンとかオキシトシンの役割が重視されていて。「ドーパミン、ドーパミン、ドーパミン」と言っていたら、体を壊す人がいっぱい出たわけですよ。

本人の選択だから「ドーパミン、ドーパミン、ドーパミン」でも別にいいんだけど、でもどっちがいいかというのを、ちょっと立ち止まって考えるのは、僕はありだと思いますよね。

佐野:そうですよね。会社にいると集合ドーパミンみたいな感じで。

本間:本当だよね。特に日本は同調圧力が高いから、「ドーパミン、ドーパミン、ドーパミン」と、もうあちこちでドーパミンだらけになって。人材系の会社のR社の昔なんて、営業の人が帰ってくるとクラッカーが鳴るらしいの。ファンファーレが鳴るみたいな、ドーパミン大会だったわけで。

佐野:確かに。

本間:昭和はそれでよかったのかもしれないけど、もうそういう時代じゃないですよ。やはり家庭も大切にして、自然環境も大切にして、ダイバーシティも当たり前の人権として大切にする。オキシトシンとセロトニンがちゃんと働いている社会が持続可能なんだと僕は思うな。

佐野:子育てしていると本当に思います。

本間:オキシトシンが出まくっているでしょう。

佐野:出まくりで、正直こんなに子どもがかわいいと思わなかったです。

本間:ねえ!

佐野:毎日写真を100枚くらい撮っています。「オキシトシン、オキシトシン、オキシトシン」みたいな(笑)。

本間:この時はゼロストレスですからね。

佐野:それは間違いないです。ドーパミンを求めている時間帯は、どんな時でもストレスがかかりますね。

本間:きっとストレスを乗り越えるために、体はドーパミンを分泌してるんですよ。

佐野:確かに。

本間:大きな力を出さなきゃいけないから、ドーパミンやアドレナリンを出して、「この危機、このピンチを乗り越えなきゃいけない」ってしているわけ。それがずっと続くと体が痛みますからね。

1週間は「168時間」で考える

本間:この内分泌系の話も、20〜30年前はよくわかっていなかったんだと思う。僕たちが子どもの頃にオキシトシンって聞かなかったじゃないですか。僕は少なくとも聞いていないよね。だからようやくわかってきたことなんだと思うし、まだまだわからないことのほうが圧倒的に多いんだと思いますよね。

佐野:そうですよね。前にキャリア相談に来た方と、1週間のスケジュールを出して、セロトニン、オキシトシン、ドーパミンの3つで色分けしたら、ほぼドーパミンなんですよ。「ああ、もう危険ですね」と一目で気づいたようでした。どうやってセロトニンの時間を増やすか、オキシトシンタイムを増やすかみたいにスケジュールしていったら、1ヶ月後にはゼロストレスに近づいたと話してくださいました。

本間:今日持ってきていないけど、『できる人は1週間を「168時間」で考えている』という本が、中経出版から出ていましてね。1週間7日間だと思うと、7分の5っていう円グラフはけっこう重たいわけ。

佐野:うん。重いですよね。

本間:7分の5って半分超えちゃってんだからさ。「俺の人生、仕事漬けか」になっちゃうわけ。でも冷静に考えてみると24×7=168で、フルタイムの仕事って労働基準法上は40時間ですよね。

そうすると168分の40だと、4分の1ちょっと欠けるというグラフになるわけね。7分の5だと思って「仕事漬けか~」と思うのと、「168分の40だ」と思うのとでは、ぜんぜん捉え方が変わると。AIではできない話なんですけどね。睡眠時間もあります。1日何時間ぐらい寝る人?

佐野:僕は7時間。もうちょっと寝たいけどだいたい6、7時間です。

本間:6、7時間ね。そうすると7×7で49時間寝ていると。40時間働いているから合わせて89時間。168から引くと79時間の可処分時間が残るという計算になります。大谷さんは1日12時間ぐらい寝るらしいですけど。

佐野:僕らももっと寝なきゃ。

本間:いや、あの体、やはりすごいよね。

佐野:でかいですよね。

本間:いや本当に。高校生の時から35キロ増えたんだって。筋力トレーニングもして、大リーグに行ってからは試合が終わった後、ユニフォームのままステーキ食うんだって。やはり筋肉が消耗するわけですよ。その時にタンパク質を一気に補う。

多くの日本の選手は、試合が終わってロッカールームでダベって、汗流して、2時間ぐらいしてから食事を取る。それだとプロテインの吸収が遅いんだって。そんなのもやはり昔は習ってないから。科学的に体の内側のことを研究して、あの体になっていくわけだからさ。

話を戻すと、168時間の中にどれだけセロトニンタイム、オキシトシンアワーを設けるかが、クオリティオブライフに直結していくんだと思うんですよ。

佐野:間違いない。

学校教育では習わない、「視点変更」の大切さ

本間:老後、ホームとかに入ると、今度はセロトニンオンリーになっちゃって、毎日が日曜日。そうすると張り合いがないじゃないですか。

だからAiやロボットを使って、80歳になっても、85歳になっても、90歳になってもできる仕事を社会が生み出していく。今、特例子会社が障害のある人たちに仕事を作るということをやっているけど、AIやロボット使ったら、75歳80歳85歳で元気な人がいっぱいいるわけだから、そういう人たちができる仕事を生み出していく。

そして、世界を見ようよ。高度成長している国が人口ボーナスの国がいっぱいあるんだから。そういうところでやっていくことを考えるのが、僕は社会を明るくすることになると本当に思いますね。

佐野:視野を広げるって大変ですね。自分がいるところがすべてじゃないというか。

本間:この「視野を広げる」を仏教の言葉では「観自在」って言うんですよ。

佐野:「観自在」。

本間:「観」は観光の「観」で「観る」という字ね。「自在」が「自ら在る」。般若心経を知ってる? 「観自在菩薩 行深般若波羅蜜多時 照見」。観自在菩薩という、人間を超えた菩薩の境地は、視点変更を自在にできるわけですね。でも視点変更も、学校教育の中で習わないじゃないですか。

佐野:習わないですね。

本間:学校教育では、「これが正しいんだ」「そうですか」みたいな話になって、「〇肉〇食」と書いたら、正解なんだったっけ。「焼肉定食」じゃないやつ。「弱肉強食」。

佐野:弱肉強食(笑)。

本間:「牛肉生食」っていうのもあるんですけど。

佐野:(笑)。

本間:それじゃなきゃダメというのは、AIとかロボットにかなわない領域で、新しい答えを作っちゃうのが人間ならではの力なわけですよね。

佐野:視点を変えて新しい答えを。

本間:ChatGTPに「何ですか?」と聞いたら「弱肉強食」って答えるから、人間はそれ以外のやつを考えた方がいい。

佐野:出てくるものからして変えていくと。