部下に複数業務を与える際のポイント

司会者:「小売店舗でOMO(オンラインとオフラインの融合)型の運営を目指しています。そうなると、現場の社員に店舗の接客もEC運営も成果を求めてしまうのですが、どのように考えればよろしいでしょうか」。

安藤広大氏(以下、安藤):求めること自体はしょうがない。分業できない状態であれば、それを求めることはしょうがないと思いますね。両方とも求めてもらってもいいのではないかなと思います。

ただ、改善作業を進めていく時に、どっちも何個も設定するのは、社員側が混乱すると思います。複数業務を与える時には、優先順位をしっかり与えてあげるのと、あとは時間的制約を逆に作ってあげる。例えば「EC運営は何時から何時でやりなさい」と、やってあげたほうがいいのではないかなと思います。

司会者:「事業構築の初期において適切なKPIが設定できない。どのような仕事の仕方が適切か、マネジメント側も仮説しかない状況下で、どのように目標・KPIを設定するか、どのように考えたら良いか教えてください」。

安藤:これはもう決めて動かすしかないです。決めて動かして、間違っていたら修正するという回数を、事業構築の初期段階であればあるほど、確定するまで、このサイクルのスピードが速くなってくるイメージです。

司会者:「フルコミッション40名の営業が所属する会社を経営しています。あまり縛りのない自由な会社で、個人の所得も丸わかりになるので、売上や数字を全体に公表していませんでした。しかし、最近数字を共有して競争意識を芽生えさせほうがいいのではと思うようになりました。営業の数字は皆に公表すべきでしょうか?」。

安藤:やり方はいくらかあるかなと思うんですけど、公表してもいいと思いますし。あとは例えばうちの会社でいうと、大きく公表はしていないんですけど、誰が達成しているかいないかくらいは、全社会議の時にそれぞれの責任者から発表されたりとか。

あと競争環境を促進するためにMVPとかをやっていますね。一番数字を残した人間を、その数字の内容とともに表彰することで、競争環境を促すことはやっていますね。

数字に向き合うことは、自分の「不足」に向き合うこと

司会者:「これまで数字を追う働き方をしておらず、むしろ苦手意識を持つスタッフに伝えて、納得し行動してもらうには、どうしたら良いでしょうか?」。

安藤:数字に向き合うことは、自分の不足に向き合うことなので、苦手意識とかで逃げ続けてはいけないですよね。要は数値化とは、明確化するだけの話なので、明確化から逃げるのは、自分が人から評価されることから逃げ続けることになりますので。

なのでその人にとっては、それで逃げ続けた結果成長ができなくて、将来得られるものや、本来得られるもの、ないといけないものが、どんどん減っていく。「君が成長していくためには、数字に向き合わないといけないんだよ」としっかり伝えてあげるしかないと思いますね。

司会者:「高い、根拠のない目標を設定させて未達を繰り返している企業にいます。達成癖を付けさせるために、まず何をするべきでしょうか?」。

安藤:短い期間でちょっと達成できるような目標を設定する。もしくは、例えば売上ではなくて、お客さまに何件提案できたかとか、ちょっと手前の件数で設定することかなと思います。

司会者:「識学を入れていることを採用活動のプラスにするには、どのような方法がありますか? 失礼な言い方になりますが、識学がイメージ先行で『軍隊のよう』と思われている節があるので、応募してくる人が萎縮するのではないかと思い、ご質問です」。

安藤:我々自身は採用がうまくいっていますからね。そういう意味では、僕らはやはり成長できる環境はここにあるということを、メインのメッセージとしてお伝えさせていただいています。

イソップ寓話『3人のレンガ職人』の解釈

司会者:「誤解や錯覚を擦り合わせるには、面談しかないでしょうか?」。

安藤:いやいや、そんなこともないですよ。起きた事象に対してこちらがルールを決めればいいので。面談しかないこともないとは思いますけど、こちら側が明確にルールを設定することですね。

認識にズレがあったり、わからないことがあれば、部下からしっかり提案なり相談が上がってくる状況を作っておけば、その時々でルールをしっかり決めればいいので。こっちから取りにいく必要はあまりないと思いますね。

司会者:「『3人のレンガ職人』の話がありますが、これは部下が納得して仕事をすることの代表例と思いますが、これについていかがでしょうか」

安藤:何やったっけ。

司会者:教会を作る職人さんと、人を救いたいと思う職人さんと、ただレンガを積んでいるというお話ですね。

安藤:ちょっとパッと答えられるかわかりませんが、例えば、僕は識学を広めることで、人々の可能性を最大化するという企業理念のもと、みんなが集まってきているんですね。その理念達成に貢献したいという気持ちで、それぞれが仕事をしています。なので、レンガ職人の話はまったく否定していないですね。

その理念に会社が近づいていればいるほど、部下のみなさんは今の仕事に意味を見出すわけです。ただし「今この仕事が、企業理念の達成にどうつながっているかはわからなくていい」と言っています。

つまり、このレンガが教会のどの部分かはわからなくていい。でも、結果的にこれが人を救うことにつながっていればいいので、「ここのレンガを積みたい」というところに納得感を求めてはいけないですね。

当然、そこの理念に共感して人が集まってきているわけなので、そこに共感しなければこの会社にいないわけだから。ただ、レンガを積む、例えば営業をするというイチ機能を担ったのであれば、その機能を選択する自由は与えられていないということですね。

変数の検証が苦手な管理職へのアドバイス

司会者:ありがとうございます。11時、定刻となりましたが、いただいているご質問がもう1つありますので、ご質問への回答を続けさせていただこうと思います。大変お忙しい方もいらっしゃるかと思いますので、お忙しい方は順次ご退出いただいても、まったく問題ございません。

「真の変数を見極める力、またはPDCAのサイクルを回しながら変数の検証を行うことが苦手な管理職に対して、どのような指導が有効でしょうか?」

安藤:これがうまくなるには、動かす数字を絞り込むことで、組織を動かす回数を増やすしかない。部下に対する会議の時に、必ず重要指数は1つに絞り込みなさいと。それがちゃんと翌週動くようにマネジメントできたかどうかが、まず1つ目のクリアポイントです。

動いた結果、成果につながらなかったのか、つながったのかを、繰り返しやっていくしかないですね。そういう設定をする。「重要KPIを1個に絞り込みなさい。その数字が動いたかどうかと、動いてダメだったか、動いて良かったのかを報告してきなさい」ということを、これも毎週繰り返していくしかないと思います。

司会者:定刻を少し過ぎてしまいましたが、本日のセミナーはこれで終了とさせていただきます。安藤社長、ありがとうございました。

安藤:ありがとうございました。