違うと感じても「3ヶ月はスタンスをとるな」

中川英高氏(以下、中川):今けっこう質問を多くいただいています。みなさん15分ぐらいオーバーしても大丈夫ですか。後、(予定が)入ってたりしていませんか。いいですかね。

上田顕氏(以下、上田):いけます。

中川:ありがとうございます。じゃあ、19時35分まで、質疑応答コーナーで進めたいと思います。じゃあ、次に行きますね。

「本日はお話、ありがとうございました。2点(質問が)ございます。現場の空気を読む、合わせる話がありましたが、具体的にそのためにどういうことを実施されましたでしょうか。ファンドや親会社、オーナーが送り込んできた経営者は、どうしても現場や古参の社員から外部の人という色眼鏡で見られると思うので、信頼を勝ち取るために、こんな言葉が効いたとご教示いただければ幸いです」と。

けっこうリアルな……。「経営者として入社される際、ご自身からSO、生株などの交渉はされましたか。具体的には、どれくらいのボリュームが現実的に要求していいラインなのでしょうか」(笑)。

野本周作氏(以下、野本):そういうことを聞いてしまうから、周りからあーだこーだ言われるんじゃないかなと思いますけどね。

中川:おぉ!?

野本:ひどいことを言いました。

中川:ま、この場だからというのがあるのかもしれませんけど。

野本:言えるわけがないですね。

中川:また、個別に当社にでも聞いていただければと思います。2点目はさすがにちょっと、大勢の前では難しい話だと思うので。1点目だけご回答いただければと思います。どうしましょうかね。じゃあ、次は野本さんからおうかがいしてもよろしいですかね。

野本:3社目に入った時に、戦略コンサル出身の人がいて、採ってくれたんですね。今はぜんぜん違う会社にいってしまっていますが、その人に「3ヶ月はスタンスをとるな」と言われました。

「これ違うのにな」と思って「違うのに」と言って、「もし、それが合ってたとしても、何一ついいことはないから、すべて俺に言え」と言ってもらったんですね。本当にそれは正しかった。今思えば、それでも僕、スタンスをとってしまったことがあって。やっぱり、後ろから刺されたこともあったんですよね。

だから今、僕の部下とかにも、それは口酸っぱく言ってるますね。

「見られ方」も、郷に入っては郷に従え

野本:あとは僕の業界だからかもしれないんですけど、4社目ですね。PEファンドのフォトウェディングの会社に行ったら、やっぱみんなフォログラファーとかメイキャップとか、クリエイティブな人たちですよ。

僕は、3社目がウェディングの会社だったので、もう(髪を)七三にバチっとして、バチッとしてスーツで行ったら、「怖い」と言われるんですよね。「こんなにこやかにしてるのに!?」と思うんですけど、まあ、そりゃそうだよなと思うので。そこからロン毛にしてパーマにしたんですね。

ロン毛にしてパーマにしたら、ちょっとチャランポランな感じに見えたらしく、成功。そのまま、髪を切る機会がないまま、うちの会社に入りました。「あの人だけ新しく入ってきた役員の中でちょっとおかしい」みたいな感じになってしまっていますね。それが逆に良かったみたいです。

だから、会社によって違うんですけど、その中で、郷に入っては郷に従えなのか、その中でファニーに見えるような見られ方をするみたいな。見られ方は、やっぱりすごい。思ったよりすごく見られてるから、そこは注意しろ、と思います。でも、僕は全部中途半端な役職から入っているので、またお二人とは違うかもしれないですね。そんな感じです。

2番目(の質問)はそういう話もあって、オファーレターにも書かれたんですけども、色々ありすぎて、ちゃんと実行されたことがないという、うちの会社での経験です。

あのなんちゃら株とかどこ行ったのかなぁ〜、みたいな。ずっとコロナとかで大変なので。だからそういうものは、僕はあってないようなものだと思ってやっています。すみません。

中川:ありがとうございます。本当これはいろんなケースがあると思いますね。では、小野澤さんお願いできますかね。

業界に対する愛を逐一語る

小野澤香澄氏(以下、小野澤):はい。3ヶ月スタンスとるな、という話、先に聞いておきたかった! 3ヶ月経っちゃった(笑)。

野本:すいません、出会えるのがもうちょっと早ければ。

小野澤:ここに参加されているみなさん、ラッキーですね(笑)。自分の中でやっていることで言うと、この業界に対する愛を逐一語っています。もともとその業界に対する愛だけでいるような存在なので、それはやっています。

具体的に言うと、入社した後の自己紹介の場をいただいたんですけど、その時に私の恋愛遍歴を自己紹介しました。みなさんからしたら本当にどうでもいい情報だと思うんですけど、小学校の時に○○君がいて、そこから始まって、最終的に結婚したのはマッチングアプリです、と。

リアルの場であった相手と付き合うしか無かった制約からの解放、いかにマッチングアプリがすばらしいかと話をした時に、ちょっと場がわくわくとした記憶があります。

一言でいうと、そこにいる方たちが大切にしていることと自分の共通点は何かを考えて、言葉で表現し続けること、ではないかなとは思います。

中川:なるほど。おもしろいですね。ありがとうございます。

「気楽に相談できる関係」をいかに早く作れるか

中川:じゃあ、上田さん、お願いできますか。

上田:私もわりと空気作りという意味だと、めちゃくちゃ飲みに行っています。正直あんまり言えないですけど、コロナ中でもぜんぜん行きます。何をやっているかというと……それこそ品川の塚田農場さんとかめちゃくちゃ行きました。

当たり前ですけど、今日聞かれてる方々クラスだと、見られ方が当然外様(部外者)で、「今度すげえやばいやつが来る」とか、「なんか変わった人が来る」みたいな、もう当然全社警戒しています。

私も時々現場に行く時もそうですけれども、あからさまにそれはわかります。なので、とにかく同じ目線でコミュニケーションをとってあげることを考えています。やっぱりどうしてもキャリアがすごくピカピカな方だと、現場に行くときになんだか遠慮してしまう。恥ずかしいというか。

そこの殻を破れるかどうかが、さっきの3ヶ月じゃないですけど、最初の3ヶ月の動きで変わるかなとは思っています。私は、一番最初は野球の時代がそうだったんですけど、どうやって現場を支援して入り込むかというスキルに近くて。結局そこでつまずく方が多かったんです。

我々も一緒で、プロ経営者のような人とは僕もたくさん会っているんですけど、みんなだいたいいかに現場をつかめるか(に注力している)、別にそれが飲みニケーションでもいいですし。

なので、私わりと今もリアル派です。あんまりテレワーク賛成派ではない。実は基本的に全員会社に来させていて、コミュニケーションをしっかり取っています。

とは言っても、外部から来てる人でしょ、という意識はもちろんあるんですけど。外国人選手と思われていても、みんなが本当に気楽に相談できる関係を、どれだけ早く作れるかが勝負かなと思っています。

実際に結果を出すのは、自身へのリターンより、結果を重視する人

上田:2つめはキャリアインクさんに聞いたほうが、たぶん事例もたくさんご存じなので、いいと思います。あとは、私は昔、野球選手の年俸交渉をやっていたほうなので、逆サイドにいたんです。

まあ、僕の経験上、やっぱり年俸とか契約でわちゃわちゃする選手はあんまり伸びないと思います。なので、僕は今は逆サイドで、それこそプロ経営者として1年契約でやっていますが、結果を出さなかったらだめだし、出せばもう勝手に評価してくれるだろうと信じてやっている感じです。

中川:まずは結果をということですよね。

上田:そうですね。

中川:本当これ、当然大事だと思うんですけど、やっぱり結果を出さないと自身へのリターンもないので。結果を出すことを重視していただければ。自身へのリターンより結果を重視するほうがやっぱり、実際に結果を出してるのかなと、いろんな方の話を聞いていて思いますね。

じゃあ、次に行きますね。これでたぶん最後になってしまうかもしれません。「本日は貴重なお話をありがとうございました。みなさまそれぞれいくつかのポジションを経て、自らのキャリアを作ってきておられると思いますが、キャリアを切り替える判断をされる時はどのような基準、判断軸で行っておられますでしょうか」。

では次は、小野澤さんからお願いできますか。

小野澤:司会進行を無視して大変恐縮ですけど、私、一番最後の質問に答えたいので、今回はスキップして、時間作ってもいいですか?

中川:いいですよ。わかりました。

小野澤:なので、お二人に……。

中川:本当だ。最後(の質問は)、小野澤さん向けですね。じゃあ、このキャリアを変える時の決断の話は、残り2人。

「自分がやらないといけないこと」をどこまでできているか

中川:上田さん、次おうかがいしてもよろしいですか。

上田:はい。判断軸。基準ですか。そうですね。私は、今まではわりと、キャリアもゴール設定を明確にやってきました。例えば経営者になりたいと決めていたら、とにかくそこに行くためのなんとなくのざっくりマイルストーンがあって、そこを一定数できたら、と(目標を)置いている。

結果なのかなという感じもしますかね。置いた目標に対して、どこまで自分ができているか。例えば私は、野球で言えば、ちゃんとフロントの中枢で、『マネー・ボール 奇跡のチームをつくった男』(マイケル・ルイス著。実話を元にしたアメリカの書籍)じゃないですけど、実はそのこと(スカウト、チーム編成)をしっかりとやるという目標に対して、当然自分なりにここまではできたかなと。

じゃあ例えば次のファンドだと再建をしっかり果たす、を目標に置いている感じですかね。

なので、業界とかそういう軸は当然まったくない。自分がやらないといけないことに対してどれぐらいできているか。ちょっと抽象的で難しくて申し訳ないんですけど、そんな軸を置いていますね。

中川:置いたゴールに達成したタイミングで(キャリアを切り替える)という感じですかね。

上田:そうですね。達成とかある程度の満足感が、人間どうしても出てしまうところがあるので。特に私は性格的に、ずーっと長くやるのは、できない人間です。

たぶんそういう転職をされる方はそういう方が多いと思う。そこを思ってやっています。

CxOレイヤーのポジションをオファーされるために必要な経験は?

中川:わかりました。せっかくなので、同じ質問をみなさんに回答いただくよりも、適切なお一人に1個の質問に回答いただくほうがいいかなと、今思いました。次の質問に移らせていただきますね。

「本日は貴重なお話、ありがとうございました。部長クラスのレイヤーから次のキャリアとして、CxOレイヤーのポジションをオファーされるために、どのような経験が必要と感じられますか。

みなさまにおかれましても、部長クラスからCxOレイヤーに切り替わったタイミングがあると思いますが、その際に、ご自身のどのような経験、ポイントが評価されたと考えられますでしょうか」。それをぜひ、野本さんにおうかがいできればと思います。

野本:いい振り方ですよね。事前打ち合わせの時にした話の、アシストパスだと思うんですけど。

中川:いやいや、たまたまです(笑)。

野本:どのような経験が必要か。今、この質問をしてくださった方が、どういうところにいるのかは正直わからないので。また話がずれてしまったらごめんなさいね。3社目の時に、キャリアにおいて自分がやれる仕事は終わったなぁ、みたいなのがあったんですね。

基本的に、伸び悩んでいるのを伸ばす、落ちているものを上げるという「事業の角度を作る」のが、僕の一番得意技というか、バリューが出るところです。1回伸びてしまったものを伸ばし続けるというのは、たぶん僕のフェーズではないので。

どうしようかなと思って、いろんな人に話を聞きに行っていました。宣伝ではないですけど、キャリアインキュベーションのトップの、荒井さんとお話をした時に「野本さん、最終的にCEOとかプロ経営者を目指すんだったら、まず今の会社でCOOだね」と六本木のカフェで言われたんですよ。

結果として、3社目でCOOになることは叶わなかったんですけど、この間まで当社のCOOでした。やっぱり、まったく転職する気がないのにいろんな話がくるんですが、、やっぱりCOOポジションですね。

COOにはCOOのポジションしか来ないし、たぶん部長には部長のポジションしか来ないと、僕は思っています。もしかしたら来るかもしれないけど、それはよっぽど運がいいかなと思います。

できるかぎり、まず自分がキャリアアップというか上にいきたいと思っているなら、僕が提示するのは手段なのであれですけど。1個上のポジションに上がれる横滑りをするのが、たぶん一番だと思います。

斜めにポーンと上がっていきたいと思うんですけど、そんな都合のいい話はないですから。やっぱり横で滑って上がって、上がったらまた横に滑って上がってという、これが一番いいのではないかなと、私はそう思いますけどね。

中川:わかりました。ありがとうございます。