参加者からの3つの質問

君島朋子氏(以下、君島):会場のみなさんから質問を受けたいと思います。じゃあ、最初の方からお願いします。

質問者1:お話ありがとうございました。私は、マーサーという外資のコンサルファームで組織人事コンサルタントをしているんですが、プロフェッショナルとしてのキャリアや今後を考えた時に、やはり「選ばれる力」も非常に重要ではないかなと思っています。

クライアントに選ばれる、会社に選ばれる、仲間に選ばれる、後輩に選ばれる。山口さんがおっしゃったEQとか、Kollさんがおっしゃっていた心という部分も、選ばれるプロフェッショナルという観点で非常に重要なのかなと思うんです。

そういった観点で、意識されていることや、こういった要素が重要だよというお話があれば、ぜひおうかがいしたいなと思います。

君島:どなたにお聞きしたいか、ありますか?

質問者1:山口さんにお願いできますか。

君島:じゃあ、あとで山口さんにお答えいただければと思います。2番目の方お願いします。

質問者2:とてもエキサイティングな話をありがとうございました。みなさんが最近、直近で失敗したことに対して、どういう内省をしてどういうふうに行動と考えを変えたのか、もし具体例があればお聞きしたいと思いました。よろしくお願いします。

君島:ありがとうございます。これは、直近で失敗したことをお話ししてくださる方におうかがいしたいということですね。じゃあ、次の方。

質問者3:本日はありがとうございました。みなさんもいろんキャリアを渡り歩いてこられたと思うんですが、新しい組織に入った時にすぐに成果を求められたり、力を出さなきゃいけないという立場におられたと思います。そういうところで力を出すポイントを、柳沢さん、教えてください。

君島:ありがとうございます。じゃあ、山口さんからお答えいただいていいですか?

山口文洋氏(以下、山口):転職をされる方の何を見るかというと、僕自身が人間性の内面を見る力をけっこう鍛えてきたつもりなので、あまり可視化できない非認知的な側面は見るようにします。

特にトップエグゼクティブとか、キーマンを取る時にはリファレンスを取りますね。その人たちから信用・信頼されているかが、今までの積み上げの本当に大切なことの前提になるのと思っているので、そのへんを丁寧にやって人材を獲得しています。

仕事の失敗は井戸端会議ではなく、オープンに議論する

君島:じゃあKollさん、次の質問にお答えいただいていいですか?

Jesper Koll氏(以下、Koll):毎日失敗ばかりです。だから、髪の毛はない。

(会場笑)

Koll:そして、残っている髪の毛はグレイです。本当に失敗がたくさんあるんですが、あるプロジェクトをチームの中でちょっと間違えた人材に渡して、失敗になったことがあります。

80という目標であれば彼の能力ならできると思いますが、でも目標は110だった。だから、彼に渡したそのプロジェクトは失敗しました。やはり、そこで何をやるべきかが大切なんですよ。

その時に、まずチーム全体で話すべきだと思います。彼にはチャンスを与えたわけなんですが、実はこれは彼の失敗ではなくて、私の部長としての失敗なんです。

彼の80をもうちょっと押し上げるためには、失敗をどう役立てるかが一番大事です。繰り返しますが、失敗がいろいろあっても、失敗についてはオープンに議論するべき。What can be learned. だって、人間だよ。

AIも失敗するけど、誰も理解できないからAIは失敗を隠す。でも、我々は人間だからすぐわかるよ。「彼が失敗した」という話、日本人は好きでしょ。

(会場笑)

Koll:でも、そういう話を井戸端会議でするのはやめて、オープンでやる。そうすると、間違いなく失敗から建設的なソリューションが出てくるんです。

君島:ありがとうございます。さっきの内省力にもつながるお話でしたね。

何が「本当の成果」かがわからない日本企業

君島:じゃあ、最後の質問に柳沢さんからお答えいただいていいですか?

柳沢正和氏(以下、柳沢):ありがとうございます。短期的な成果を目指すことは、絶対にやめたほうがいいと思いますね。いろんなところに転職したし、いろんな人が転職してきましたが、短期的に成果を出そうとしてうまくいった例はほとんどないですね。

短期的な成果ではなくて、何が成果かを見定めて、第三者の意見をもらうことが大切だと思います。私は「スポンサー」という言い方をしますが、自分の上司以外にも1人か2人スポンサーがいると、会社生活や組織生活がすごく変わっていくと思います。

「どこに期待値があるのか」という若干ポリティクスなこともあれば、ビジネス上で何が求められているのかを相談して、自分の成果のターゲットを決める。

自分を引き上げてくれるシニアなスポンサーが必要なので、メンターで悩みを聞いてくれるとかじゃなくて、上司以外の誰かでビジネスの相談相手を必ず見つけることが大切だと思います。

Koll:これに関連して、ちょっといい? 「本当の成果は何ですか?」というのは、外国人の目から見てすごくおもしろい。ところが日本の企業では「What is success」ということは、何も出てこない。ステークホルダーどうのこうのがあって、まずは数字目標とか何かないの? と。だから、これはすごく大切なポイントなんです。

我々は今、新しい会社を設立すると、間違いなく企画としては「What is success.」ということがあるわけなんですよ。あなたの部署では、そういう企画はあるの?

質問者3:はい。

Koll:良かったです。いいですね。

(会場笑)

Koll:まずはそれを言いたかったわけなんですが、もう1つ。サクセスであるか失敗であるか、責任を取らないといけないわけですよ。責任を取ることはすごく大切なことです。特に外国人の目から見て、日本の会社の中で責任文化はどこまでなのかは、ちょっと考えていただきたいです。

君島:どうもありがとうございます。ずしっと来るアドバイスをいただきましたね。

「山登り型」と「川下り型」の2つの人生

君島:残り時間も少なくなってまいりました。最後にすばらしいパネリストのみなさんからプロとして一言、キャリアに迷えるみなさんにアドバイスやエールがあればいただきたいと思います。じゃあ、柳沢さまから順にいただいてよろしいですか?

柳沢:みなさんにお伝えしたいのは、みなさんすごくラッキーだということです。私も長年あすか会議に来ていますが、あすか会議の人たちとFacebookでつながって、みんなものすごくサクセスしています。

地位とか名誉だけではなくて、満足されているんですね。なので、このつながりをすごく大切にしてください。ナイトセッションでお会いする方もたくさんいらっしゃると思いますが、そこに限らずぜひつながってください。刺激を受け続けることが一番大切だと思います。

君島:どうもありがとうございます。続けて山口さま、お願いいたします。

山口:僕自身も今、どうにかこうにか教育を変えたいと自分なりの北極星を定めて、リクルートやスタディサプリも卒業して、今度は違ったリタリコという会社からそこを目指してチャレンジを続けています。

北極星が見つかった瞬間に、自分はプロとしての自覚と使命感をすごく持ったなと思っています。ただ、この山登り型の人生って、僕も36、7歳くらいになってやっと自分の使命が見つかったんです。逆にそこまでは川下り型だったので、みなさんも川下りでいいと思うんですよね。

どこかで山登り型の、自分なりの北極星みたいなものが見つかる。これが直感だったりするんですよ。この直感に出会った時に、みなさんが守らなきゃいけないこと、しがらみがあると思うんですが、直感と勇気を持って、それを乗り越えてチャレンジしていってほしいなと思っています。

「キングオブ関西」「キングオブ渋谷」を越える設定

君島:最後に、Kollさんもぜひ一言お願いします。

Koll:Very simple. もっとチャレンジしてください。この国は本当にいいですね。あなたたちはラッキーということだけではなくて、ちゃんと考えているでしょ? 日本人は熱心ですよ。ラテン系じゃないでしょ? 阪神ファンはちょっとラテン系ですけど。

(会場笑)

Koll:でも、もうちょっと熱心でプライドがあってもいい。そして、世界は怖いとかそんな話はやめてください。世界はit's perfectly fineということで、自動販売機もあるし、おいしいお酒もある。本当にもっとチャレンジしてください。

私もエンジェル投資をやっているんですが、いつもすばらしいアイデアやすばらしいビジネスプランが日本にはある。アンドレプレナーがいらっしゃるわけですが、規模や目標が小さすぎる。

「キングオブ関西でいい」「キングオブ渋谷でいい」ということではなく、島国日本を越えて、世界の舞台でグローバルスタンダードを設定してください。そういう自信を見せてください。そうすると、非常にハッピーになる。

そして、チャレンジ精神。彼(山口氏)も彼(柳沢氏)も言ったことですが、ダイバーシティをインド人と話して、イタリア人と話して、ブラジル人と話していれば、おもしろくていいアイデアは間違いなく出てくるわけなんです。いつも日本酒だけ飲むと、つまらないでしょ。たまにはドイツビールもおいしい。

(会場笑)

Koll:もっとチャレンジしてください。

君島:それでは時間になりましたので、このセッションは終わりにしたいと思います。ためになるだけじゃなくて、おもしろいお話もお聞きできました。すばらしいパネリストのみなさんに、もう1回盛大な拍手をお願いいたします。

(会場拍手)