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プロフェッショナルとしてのキャリア形成(全4記事)

成長・活躍する人材が適性検査「SPI」で高いスコアを出す項目 仕事で失敗をしても「大いなる学び」を得られる人の共通点

グロービス経営大学院が主催した「あすか会議2022」。本セッションでは、マネックスグループのJesper Koll(イェスパー・コール)氏、LITALICOの山口文洋氏、そしてゴールドマン・サックス証券の柳沢正和氏が登壇したセッションの模様をお届けします。「プロフェッショナルとしてのキャリア形成」をテーマに、これからのプロフェッショナルに必要な「3つのK」や、好きな領域で設定した目標の多くが「未達」になるわけなどが語られました。

自発的な行動が支持されなかった日本

君島朋子氏(以下、君島):Kollさんも、柳沢さんが「先輩」とおっしゃったぐらい金融のプロです。エコノミストとして花形でいらっしゃるんですが、プロとはどういうものか、そして日本企業に働くみなさんがこれをどう考えたらいいのか。ぜひうかがっていきたいなと思います。

Jesper Koll(以下Koll):大変恐縮です。私も35年以上ずっと日本にいるんですが、お酒を飲まないとペラペラ喋らないんですよ。

(会場笑)

Koll:のちほど飲みましょう。私はドイツ生まれですが、数学を勉強して、そして大失敗があったんですね。映画監督になりたくて、フランスの映画学校に行きたかったんですけど、でも金融機関に入るということになって。

そしてエコノミストという立場で国際機関のOECD(経済協力開発機構)、それから米国大学の博士コースに入って、1985年からはずっと日本にいて、1回も出たことがない。やはり外国人の目から見ると、日本はすばらしい。日本は最高ですよ。だってプロフェッショナルって、あなたたちの文化の「職人」のことです。もう京都などは「Oh, my God!」みたいな。

(会場笑)

Koll:日本のスキルはすばらしい。世界の舞台で負けないスキルなんですよ。アナログの世界では日本が1位で、これはプロフェッショナルの1つです。

でも、外国人の目から見て、日本は1つのペーペー社会ですね。特にサラリーマン。会社に入ってどんなスキルを得ても、やはりエスカレーターでしょ? 先輩後輩があって、米国みたいに35歳でビリオネアになるというのは、日本では無理ですね。だから大谷さんとかは、みんな外に出ちゃう。

これは非常におもしろいんですよ。職人文化だと、世界一の間違いないスキルで毎日毎日やっているんですね。改善文化です。

でも、逆に英語で言う「エンパワーメント」。自分自身から発するということが、どうしても日本の文化や普通の会社では支持されないんです。出る杭はカポンということになっちゃうわけですね。

(会場笑)

Koll:そういうテンションだと、みんなつらいですね。特に男はつらい。でも、あなたたちの世代、これからの時代はすごくいいテンションになると思います。

プロフェッショナルが備える精神

Koll:もう1つの話で、たぶんプロフェッショナルの話につながると思います。私はドイツ生まれですが、ドイツの文化はわりと日本の文化に似ています。でも、アメリカの文化はちょっと違うんですよ。

米国のジョブアプリケーションなんかだと、1回失敗しないとあまりおもしろくない。僕はハーバード大学を卒業して、なんとかゴールドマン・サックスで仕事をしています。1回自分でもスタートアップをしましたが失敗した。だって、スタートアップはほとんどは失敗です。でも、失敗は楽しい。

どうですか。日本の文化では失敗は楽しいですか? やはり逆ですね。失敗は話せないし、失敗を隠す。そうすると、東芝みたいな問題が出てくる。

(会場笑)

Koll:「プロフェッショナルとは何ですか?」というと、もちろんスキルや職人的なことが必要です。でも、ある意味これは誰でもできるわけなんですよ。そうではなく、チャレンジ精神がないとプロフェッショナルにはなれない。

最後に言いたいのは、プロフェッショナルについてすごくびっくりしたことです。私がJ.P. Morganに入社した時、調査部長として入ったんです。私のボスはジェイミー・ダイモンという、金融界で非常に有名なJ.P.MorganのCEOなんですが、入社して2日目に彼は私に言いました。

「おめでとうございます。あなたは今、日本の調査部長になりました。第1のチャレンジは、来週までにあなたのサクセッサー(後任)を考えてください」と。

Oh,my God! 入ったばかりでもう「次は誰か」という話になっていて、これは大変です。でも実は、本当のプロフェッショナルは、自分の名刺(肩書)、自分の立場についてはぜんぜん怖くはない。いつも未来に向けて考えているわけですよ。

そして会社、あるいはチームとしては、下の人たちの出る杭を打つのではなくて、出る杭をエンパワーすることがすごく大切です。出る杭は絶対に失敗するけど、それをサポートするんです。「よくやった。ありがとうございます」とか、他のチームメンバーも「やってみたい」となることが、本当のプロフェッショナルです。

チームのメンバーをエンパワーする。これが本格的なプロフェッショナルで、プロフェッショナルリーダーシップになるのではないかと思っています。以上です。お酒は?

君島:ありがとうございます。お酒はまだないです。ごめんなさい。

(会場笑)

君島:でも、お酒がなくてもすごいメッセージをいただきましたね。プロは未来を向いて考えているから、地位なんかに恋々としないんだということがわかって、「職業部長」ではなくプロにならなきゃなと、私も強く思いましたし、みなさんもきっと思ったんじゃないかなと思います。

これからのプロフェッショナルに必要な「3つのK」

君島:このままの流れで、プロフェッショナルに必要なスキルやマインドって何なんだろう? ということを聞いていきたいなと思います。もう1回Kollさんにお聞きしてもいいですか。「プロフェッショナルに必要なスキルやマインドはこれだよね」というところについて、追加があれば。

Koll:いい? ごめん、お酒飲んでないけど。

(会場笑)

Koll:飲んだら、たぶんもっと楽しくなる。でしょ?

(会場笑)

Koll:飲みニケーションとかも、実は日本ではすごくいいことですよ。チームでやると「よし! チームでやる。楽しみ」となる。

(会場笑)

Koll:アドバイスは「トリプルK」です。私が京都大学にいた時のトリプルKは「顔、車、金」。これがあれば、デートできるということでした。

(会場笑)

Koll:「顔、車、金」のあとは、我々金融業界ではバブルがあって、野村証券から「きつい、汚い、危険」というレポートがありました。

そうじゃなくて、プロフェッショナルについてのトリプルKの1つは「好奇心」。自分のネタ、自分のこと、スーパースキルだけではなく、まったく別のことについて考えてください。これが最初のKです。

2番目のKは「心」です。だって、人間と人間は1人で仕事するの? アーティストは本当に1人だけでやりますが、ドナルド・トランプは1人のことばかり考えているでしょ。

(会場笑)

Koll:ドナルドも本当にそう言うと思うんですが、我々はプーチンみたいな独裁者ではないんですよ。人と人、だから心と心。それは本当にプロフェッショナルに必要な要素です。

そして最後のKはvery easy。この会場は何ていうところ? 国立京都国際会館。どんな仕事にしてもグローバルです。例えばメディカルアドバイザー、サイエンティスト、エコノミスト、何でもどこでもいつでもグローバル。

最後のKは「国際的」で、これもcurious(好奇心)につながっていくわけですよ。日経新聞だけ読んでもダメ。

(会場笑)

Koll:『Financial Times』とか他の新聞を読んだり、僕はドイツなのでドイツの新聞をちゃんと読むことは、すごく大切なことです。

狭い世界の中で、日本は島国です。非常にcomfortable(快適)でしょ? ぬるいよ、日本。「oh, my God! 怖い」なんて言いますが、ぜんぜん怖くないよ。だからこそ、最後のKは「国際的」。ありがとう。

君島:ありがとうございます。「好奇心」「心」「国際的」。しっかり覚えちゃいましたね。心に刻みこまれた3つのKです。

好きな領域で設定した目標の多くが「未達」になるわけ

君島:今度は山口さんに、プロとして生き抜くには、どんなスキルやマインドが必要かをうかがいたいと思います。

山口文洋氏(以下、山口):そうですね。Kollさんの話が本当にそのとおりだと思います。僕もいろんな教育系の取材で言っていた言葉や単語が、そのまま出ていました。大前提で、僕もキュリオシティじゃないですが、はっきり言って本当のプロって好奇心がすべてですよ。

ずっと教育畑でやっていて思うのは、いかに子どもの好奇心を潰しちゃいけないかがすべてです。「好奇心」というのも、さっきのnon-cognitive abilityの非認知能力の中に入ります。

本当に好きで夢中になることを、グッとあと押ししてあげることが大事です。逆に言うと、本当に好きなことなら、自分で目標設定できるんですよ。

親から「この勉強をしなさい」とか、上司から「この仕事をしなさい」じゃなくて、自分が夢中になったことって、「どうしても仲間と一緒にここまで行きたい」と目標を作るんですね。「ここまで行きたい」という目標って理想だから、絶対にアスピレーションなんですよ。だから、99パーセント失敗するんです。

でも、好奇心を持っていないようなよくわからない仕事で、他者から与えられた目標で、「100パーセント達成したらボーナスがいい」とかそういう話じゃなくて。好奇心の持てる仕事なら他者からの目標設定なんかどうでもよくて、自分の中で自己目標設定するんです。でも、だいたいそれは失敗する。

失敗する時も、自分の大好きなことだから悔しくて悲しいんですね。

仕事で失敗をしても「大いなる学び」を得られる人の共通点

山口:もう1個Kollさんの3つにプラスしていくなら、好奇心とともに必要なのが「リフレクション力」。内省力ってすごく大事です。

前職の話も出してあれなんですが、前職の時に「本当に活躍している人材はどういう特性があるのかな?」と、自分のメンバーをSPIで分析したことがあったんですね。その時に1個だけわかったのが、活躍する人材や成長する人材って、SPIやアセスメントの中で内省力が高いんですよ。

だいたい、どうでもいい仕事を与えられてやったら、みなさんも「目標がおかしかったから」とかって他責にしますよね。「上司が設定した目標が間違っているから、僕は未達成だった」と外的要因のせいにして、反省も何もしなくて愚痴ばっかりになる。

でも、自分で決定した目標や好奇心に基づく目標って、理想が高すぎて失敗する。そうすると、どう同じ失敗を繰り返さないようにするか、徹底的な自己反省をするんですよ。この反省が挫折とか失敗なんだけど、実はそうじゃなくて、逆に言うと本当の内省の中には大いなる学びがあるんですよ。

僕も本当に大した能力がないんですが、好奇心だけは旺盛な子どもだったから、子どもの時からいろんなことに勝手に興味を持って、夢中になっていました。「ここまで行きたい。でも、そこまで行けない」と涙して、なんでできなかったのかなと反省する。

反省すると1日2日悔しいんだけど、3日も4日も経つと「ああ、自分はここが足りなかったな」「こうすればよかったんだ」とか反省点が出るんですよね。

そういう癖づけの結果として、大人になって会社に入っても、言われた仕事をやるんじゃなくて、「その仕事だったら僕はここまで行きたい」と、上司や会社が決めた目標じゃないところまで勝手に行ったから、こいつおもしろいなと思ってもらえた。

ぜんぜん期待されていないところまで行くし、「こいつは本当に、徹底的に振り返ったり失敗して反省して、次にチャレンジしてくるな」という、まさに出る杭ですよね。

たまたま僕がいたリクルートは、出る杭をペコンとしない稀有な日本の会社だったんですが、その繰り返しでここまで自分が来られたのかなと思っているので、ぜひみなさんも直感で「これだ」と思うことに行ってくれたらいいと思います。

好奇心に基づく挑戦と反省、内省を徹底的に繰り返すと、今までの人生にない「俺、2次関数で成長したな」という感覚を、3年、5年で得られる。

ドラゴンボールでいうスーパーサイヤ人みたいな瞬間があると思うので、そこに行くような、直感で打ち込むものが見つかると、突き抜けた先で「本当の意味でのプロに、ちょっとなれたかも」と思える感覚を持てるのかなと思っています。

君島:ありがとうございます。すごく新鮮でした。好奇心と内省を繰り返していく先に、スーパーサイヤ人があるんですよね。すごくイメージが湧いてきました。

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