DX推進は部署単位では成功しない

岡村直人氏:DX全体の流れですが、スライドはうちがコンサルティングのフローで使っているところです。注目していただきたいのが、この「内部革新」の中に「ITの課題」「人の課題」「仕組みの課題」があって、それぞれフローがあって、その上に「企画設計」という上流の工程があるんですね。

のちほどの組織論でも出てくるんですが、組織の各部署に「それぞれやっておけ」と言っても解決しないんです。なぜならITの課題は、だいたい情報システム部門が担当しようとするんですが、先ほどの三位一体の改革を思い出してください。

IT部門は情報システムを導入しようとするんですが、人の採用や教育にノータッチですし、知識もないですよね。またITの情報システム部って、業務システムや営業やマーケティングには、まったく詳しくない場合がほとんどです。

だからIT部門はその人のことや現場の事業部をほとんど見ないで、IT化を進めていくケースが非常に多いんですね。人事においてもそうです。人事は人の部分はなんとかできるんですが、ITツールの選定や、それを使うための教育研修はほぼやったことがないです。

人事部門は、DXコンサルティング会社が売っているセミナーを持ってきて、基礎知識を作るところはできるんですが、人材への落とし込みや現場への落とし込み、または現場課題を吸い上げてそれをセミナーにするところは、非常に苦手としているケースが多いんですね。なので人事だけでも苦労する。

仕組みの課題は、多くの場合は事業部門という稼ぎ頭の部門が持っています。DXをやろうとする組織の場合は、デジタル知識が低い前提になりますので採用にはタッチできない。

本部が一括採用した人材が事業部に流れて、採用に直接タッチしていなかったり、その事業部が欲しい人材がいるのに、事業部が面接をやっていないケースがあったりします。

事業部の人たちは製造業だったりすると、この道数十年のベテランだけで、技術や自社の事業はすごくわかるんだけれども、ITに関しては「俺、ちょっと苦手だな」みたいな人がいるので、各事業部に任せておくだけだとうまくいかないんですね。

なので、経営や経営企画、DX推進などが橋渡しになって、情報システム部門、人事部門、事業部門をオーケストレーションしてあげないといけない。それらの橋渡しや設計をしてあげないといけない。こういったところが、DXを実際に進めていく上での非常に重要なポイントになってきます。

IT人材となるのは「若い子」

人の問題ですが、人材調達のオプション。人材紹介・調達をどうやってやろうかなと思った時に、選択肢は大きく「業務委託、流動化人材の活用」「社員の再教育」「採用競争力の強化」などがあるんですが、これらを異なる時間軸で組み合わせていくのが非常に大切です。

短期的にはそんなに簡単に採用できないですし、内定が出てから普通はその移籍まで3ヶ月かかる。3ヶ月後に入社してから、そのあと自社の事業を学んでもらって教育してもらうとなると、早くても半年〜1年かかってくるので、まずは業務委託人材などを使って、プロジェクトをリードしていく。

その間に社員再教育や文化育成、文化醸成、社内の文化をDXしやすい文化に変えていかないといけないんですね。こういうところを中期的な目線からやっていく。結果を急いじゃいけません。長期的には採用競争力を強化しながら、タレントポートフォリオの組み換えをやっていくという、マルチ制度で進めていきます。

例えば、ある企業は「うちの人間はデジタル弱いから」と言っているんですけど、特に若手人材は教えればけっこうなんとかなります。ガリバーの時も、その店舗で車を売ったことしかない20代の若者が事業責任者になって半年後や1年後には自分でSQLを書いて、データ分析して、その分析結果を持ってマーケティング施策を考えたり、営業戦略を考えられるようになりました。

若くて地頭のいい子は意外とできる。特にプログラミングが難しいんですが、データ分析も再帰や予測モデルは難しいんですが、どういう傾向があるかという過去のデータ分析は、手が届きやすいBIツールのTableau、Power BIなど市販のツールでできたり、SQLを書いたりできるので、このへんはけっこうできます。

マーケティングも、意外と若い子に教えればできます。本当にツールを使うだけなので、そんなに難しいことはないです。外注を大量に雇って、人月100万円や150万円を払うのであれば、内部の教育はセットでやったほうが、絶対コストパフォーマンスがいいと思うので、そういうところは検討すべきかなと思います。

DXに成功する企業のカルチャー

次に「組織風土と成果の関係」です。既存業務のDXをやっていこうとした時に、文化が非常にポイントになってきます。どんなに正しいやり方をしても、会社の文化がそぐわないとなかなか成果に結びつかないところが、IPAという独立行政法人の調査の中から見えてきました。

効率化、現場の効率性や生産性を上げようと思った組織が、成果が出たグループと成果がないグループに、それぞれカルチャーのアンケートを取ったところ、その変革を好まない組織や実力主義ではない組織。もう役職が固定化されていて上下の入れ替わりがなかったり、年功序列で下の人間に権限がない組織は、どうやっても成果が出ないです。

DXは、特に効率化や生産性向上をやる時は、現場の課題をどう改善するかにフォーカスすることになるんですね。マネージャーや役員は、実はもう現役を離れてからけっこう時間が経っていることがあって、今のリアルの現場の課題に肌触りがないケースが多いんです。

なので、業務をリアルに触っている現場の人間、かつデジタルに詳しい若い層が、むしろ実行していく上で主力になっていきます。この主力の人たちに権限がない、任せない文化だとほとんどのケースで結果が出ないです。

同じような理由で官僚的な組織も、結果がほとんど出ないです。なので、そういった会社は自社でDXをやるのは諦めて、別の会社を作る。権限委譲してやっていって、その成功事例を取り込むほうが建設的かなと思います。

デジタル化のカギは「よくわからないけど、任せる」

次、「DXによる既存サービスの高付加価値化」。例えばベネッセだと、「通信教育をデジタル化しましょう」「車をECで売りましょう」です。これは「サービス部門の権限や管理部門が強い」「個人の裁量が大きい」がポイントになってきます。

管理部門が強い会社は、DXを非常に説明しづらいです。結果よりプロセスを重視する。管理部門にとって人事評価が高いのは、基本的にミスを出さないことなんですね。管理部門はどんな良いパフォーマンスを出しても、給料がガーンと上がることはなくて、ただミスをするとガーンと評価が下がるカルチャーがある。なので、基本的に不確実なところを避けて通る。これは個人の問題ではなくて、どこの会社に行ってもアンケート取ってもだいたいそうです。

もうそういう組織の構造なので、個人のせいにしてはいけないです。なので、「セキュリティ上できません」「ルールだからできません「前例がないからできません」みたいなかたちで、そのあらゆる新しい試みがオーバーヘッド(負荷)になっていく。できないことはないんですけど、非常に時間がかかるんですね。

そうこうしているあいだにコストや時間もかかるので、なかなか高付加価値化が進まない。他の会社がやっちゃったというかたちになりやすい。

個人の裁量が大きいところもポイントになってきます。私なりの見解では、既存の組織サービスの高付加価値化は、やってみないとわからないというか、成功が保証できないんですね。

こういうのを合議制で満場一致で決めようとすると、どうしても自分の評価が下がらないほう、当たり障りのないところに結果が出るか、結果を出さないまま悶々と会議をしているみたいなケースになりやすいんですね。

そういった際に何が突破口になるかというと、誰か個人、マネージャーなり経営者なり若手なりが、「自分の責任でこれはやります」と言って、会社はそれを「よし」と認めてやらせてみる。仕事を任せることとは、理解できないけどやらせることだと思うんですよね。

完全にわかってOK出すのは、ただ承認しているだけで仕事を任せていることにはならない。「俺にはわかんないけど、できるかどうか俺は不安だけど、でもいいよ。やってみな」。こういうふうに任せることができる組織なのか、できない組織なのかによって、既存サービスの高付加価値化ができるかできないかが大きく分かれてくるなという印象を、現場を見ている側としては思っています。

DXによる新製品、新サービスの創出も、先ほどのカルチャーと似ているところはあるんですが、違うのは……データとして出てきているのは、「今後目指すべきビジョンが明確であること」という変革という部分ですね。変革や挑戦、スピードが重視されるのであればベターです。Nice to have。変革が挑戦を好むのはマストですね。スピードは速ければ速いほどいいというかたちです。

意味のないミッション・ビジョンの特徴

ビジョンに関しては、「グッズドミナントロジック(注:モノを中心とした経済活動の捉え方)からサービスドミナントロジック(注:モノは顧客に使用されて初めて価値を生み出すとする経済活動の捉え方)」と言うんですけど、モノからコトへのシフトが進んでいると言われるんですね。

マッチングやサブスクリプションの普及で、あえて所有しなくても同じサービスが受けられれば、それに対してお金を払う指向性の消費者が増えてきている。音楽CDを買わなくても、「ストリーミングで聞ければいいや」という人が増えてきているんですね。

そうした時に「うちは音楽CDの販売業です」という、自分たちの事業ドメインを自分たちで狭めるんじゃなくて、「自分たちは音楽を通じて顧客に価値を提供する。喜びを提供するんです」という、ある程度抽象化したレイヤーじゃないと、新しいビジネスができなかったりするんですよね。そういう意味で、いったん自分たちが目指すビジョンを明確にすることは重要だと思います。

一方でビジョン作っただけ、ミッション作っただけ、行動指針に定めただけみたいな、意味のないミッション・ビジョン・バリューをやっている会社さんも非常に多い。ミッション・ビジョン・バリュー作るプロセスは非常に楽しいんですよね。

みんなで合宿をして、会社のあるべき姿や、お客さんに対する本当の貢献価値を議論して決めていくプロセスは非常に楽しいんですが、結局会社としてそれが結果につながらないと意味がないので、ビジョンを定めてそこから導き出す。行動指針に落とし込んで、社員が一人ひとり動けて結果につながっているか。ここまでちゃんとトレースして、追いかけていくのが非常に重要です。

「DXのような変革に向いている組織風土ならよいが、そうでない場合はカルチャートランスフォーメーションが必要」とスライドに書いてあります。会社さんによっては、デジタルトランスフォーメーションも、ニアリーイコール、デジタルトランスフォーメーションみたいな会社さんもあります。

カルチャーを変えず、ツールを導入してDX完了とはまずならないので、ここは本当に会社会社でケースバイケースなんですが、自分の会社が未来に向けて残していくべき価値観と、変えていくべき価値観の見極めをしっかりやっていかないと、前に進まないと思います。

DX組織における人事戦略

「DX組織の類型」という話ですね。最初は人事系のお話になるんですけども、原初の組織、大昔の会社組織は、リーダーが自ら人事を行っていく。「お前、俺についてこいよ」「お前、よくやった。褒めてやる」みたいな感じで、リーダーが自ら人事を行う。人の問題と戦略は溶け合わざるを得なかった。人事は戦略そのものだったんですね。

ところが1920年頃から、企業合理化運動がアメリカで起こりまして、社員の賃金支払いや、採用手続きなどを集中的に行う部門として人事部が発生した。こういう経緯で人事部はできています。

経緯がもともと手続きを合理的にやるためなので、経緯からしてそうなんですけども、人事部は基本的に未来戦略というよりも日常業務、プロセス寄りのマインドやKPIで動いているケースが多いんですね。これは本当に人や性格の問題ではなくて、組織の成り立ちや役割としてそういうものだというだけです。

これから人事、組織を作る人たち、人事に限らず組織を作っていく人たちに求められるのは、未来にあるべき会社から逆算して、どういう人が必要かを考えていく発想ですね。経営者の戦略パートナーとして、企業戦略に基づいた人事戦略。

こういう人を採用して、今は営業が90パーセントでエンジニアが5パーセントだけど、30年後にはエンジニアが30パーセントになって、マーケティングが20パーセントになって、営業が50パーセントの組織にしていきます。これは毎年採用比率を変えれば、30年後に達成できるんですけど、非常に長期の戦略になるので、経営と人事がシンクしないと実現不可能なんですね。

そういう意味で、人事担当の執行役員や人事担当の取締役が日本企業は非常に少ないので、これからDX組織を作っていく場合は、「三位一体」を思い出していただいて、人事担当の役員や人事担当の執行役員を入れていく。CHROという職種もありますけど、非常にポイントになってくるかなと思います。

自己否定を伴う「変革エージェント」の重要性

「変革エージェント」については意識とスキルの転換を促す風土・文化・価値観を人材に反映する部分なんですが、企業の歴史が長くなってくると、愛社精神の高い人が残ってきます。DXはトランスフォーメーションなので、「今のままじゃダメなんだ。変わらなきゃいけないんだ」「変わらなきゃいけないんだ」という、ある種の自己否定を伴うんですね。

あまりにも愛社精神が強いと、「今が最高なんだ。変わらなくていいんだ」というマインドになっちゃう。調査すると、人事部門と広報部門はそういうマインドが高い傾向にあるんですけれども。

DXをやっていく場合は、人事や組織のリーダーに、「自分の会社はここはすばらしいんだけれども、ここの部分は変えていかないといけないよね」という、ある種の自己否定を伴うマインドを持って意思決定ができる必要がある。それが変革エージェントですね。通常の人事や組織作りの発想から離れていく必要がある。

だから、DXの組織や新規事業を作るマネージャーは、今までの組織で優秀だった人間を連れてきてチームを作るのではなくて、「新しいビジョンや新しいビジネスに必要な人材は何だ?」というところの創造や定義、戦略から入って、追って人材を作っていくということをやっていかなきゃいけない。

これはANAホールディングスも日経の取材で「既存事業の生え抜きは、新規事業には向かない」と明確に言っています。逆境に弱かったり、新しいことにチャレンジできないマインドが重視されると書いてありました。そういったところもあって、DX型の人事で、人事異動や採用を含めた部分はそういうマインドが必要ということですね。

DX組織設計の勝ち筋

DX組織のパターンです。①全社管掌型のパターン、②独立型のパターン、③機能横断型のパターン、④部分最適型とありますが、だいたいこれらのどれか、もしくはミックスで作られているケースが多いです。

ニーズごとにDXの組織設計をしていくケースがあって、顧客体験のDX、つまりエンドユーザー向けに事業を作っていくDXの場合は、独立型のほうが動きやすいと言われています。これは意思決定が必要なので、全社を横断しちゃったりすると、意思決定がどうしても遅くなるので、独立した意思決定ができることが大事ですね。

自社組織や内部革新の場合は機能横断だったり、AIのようなR&D的な実証実験などは内部でやったりします。組織が大きくなってくると、影響範囲が大きくなってくるので、それらをオーケストレーションするような全社管掌型の経営企画になることも多いですけど、こういったケースが多いです。

あるデパート・百貨店の方に「御社のDXの組織はどうなっているんですか?」とインタビューしたことがあるんですね。そこの百貨店は歴史が長いので人事も硬直化していて、なかなか新しい人材が、新しい事業が出てこないイメージがあったんですけど、その百貨店は次々と新しいデジタルサービスをやっていた。

「歴史があってレガシーだと思われていた百貨店が、なぜこんなに次々とデジタルサービスで事業を立ち上げられるんですか?」と聞いてみたら、「私はこういうふうに組織設計を考えています」というお話をしたら、「この組織設計はすごくいいですね。うちはこれを順番にやっていきました」ということを言っていました。

最初は全社管掌型の組織が、あるべき組織戦略やビジョンみたいなところ、あとは事業計画、数値計画を作って、その後、独立型で事業をぼこぼこ立ち上げていった。事業をぼこぼこ立ち上げていって、うまくいくものがだんだん出てきたので、それらのノウハウを横串として企業にフィードバックしていく。最後にこの部分最適型のように、事業部の中に入ったと言うんですね。

「最後に部分最適型のように入り込むのは珍しいですね」という話をしたら、「部分最適というか、事業部に入り込むところが一番ハードルがありました」とおっしゃっていました。

「百貨店は、既存の事業が売上の大半を持っているので非常に力が強い。一方でデジタルってビジネスの金額が小さいから、対等では話ができない。入れてしまうと最初から潰されてしまう。だから、一人前と認められて、ようやく事業部とその中に入れたのは、うちの会社では最終形でした」とおっしゃっていました。

そういうように、何か正解があるよりは各社各社でやり方はあると思うんですが、こういった目的や会社の風土に応じて組織設計するのが大事かなと思います。

いかにステークホルダーを説得するか

次にステークホルダーマネジメントについてです。「PMBOKのステークホルダーマネジメント」を引用しますけれども、これは重要度の分析ということで「権力」「緊急性」「正当性」で人をプロットして、一番真ん中に近い人から順にケアしていくというやり方です。

オチを言っちゃうと、こういう突出モデルや権力と関心度グリッドは、言い方は悪いですけど、権力が高くて関心度が高い人を注意深くマネジメントして、権力が低い人は片手間でやるような方針です。

これらの表はステークホルダーの関与度のマネジメントについての説明したものです。「この人をこっちに持ってこないと稟議が通らない」。これはけっこう、役員会を通す時のネゴシエーションで意識するケースは多いです。役員がずっと反対しているんですけど、「この役員を通さないと絶対事業化は無理だからどうしよう」みたいなところは、大企業になってくるほど絶対出てきます。

こういう図を作ったりマネジメントしている会社はほとんどないです。できるビジネスマンは、頭の中にだいたいこういうものがあって、社員同士で暗黙知としてマネジメントしているケースが多いです。

こういう表を作ったり資料化すると、万が一流出した時のリスクも高いですし、分析する時間ももったいないので、「こういう観点からステークホルダーを見ていかないといけないよね」「パートナーマネジメントを見ていかないといけないよね」という知識として入れていただいて、あとは暗黙知としてやっていくのがほとんどのケースじゃないのかなと。

私は昔、ゲーム会社で、コミュニケーションが大事なのでポケモンに例えていましたね。ポケモンはバトルのゲームなんですけど、タイプ・相性がありまして、ネゴシエーションはタイプと相性が非常に大事なんですね。

例えば「あのマネージャーはほのおタイプ、かみなりタイプなんだけど、俺は何でも地道にやるじめんタイプ」……。「あのマネージャーはじめんタイプで、すごく動かない山のような人なんだけども、俺はかみなりタイプでバチバチいくから説得が効かない。誰かみずタイプのつちと親和性が高いタイプはないか」と言ってましたけど。

それは余談ですが、そういったかたちでコミュニケーションしながら、暗黙知として攻略していくところが多いんじゃないのかな。それらの観点としてこういうものもあるよという情報共有になります。

デジタル化は「ツーマンセル」で動かせ

そろそろ最後ですね。DX進捗はビジョンの策定や投資、最近多いのはPoCをやってそのまま止まっている案件が多いです。止まっている理由をよくよく聞くと、組織がその後巻き込めていないんですね。なので、組織の巻き込みをやっていくんですが、その時に重要なのが経営というスライド上のマネジメントと、現場という下のマネジメントを別々にやるのが大事です。

経営者と直で話すところはリソースを取ってくる意味でも重要なんですけども、そういう人間はデジタルを回すのが得意とは限らないので、下のマネジメントは別の人間を立てて、事業責任者と執行者を分けてやるのが重要ですね。

DXリーダーですが、社内にリーダー人材がいないケースでは、外から引っ張ってくることが多いと思います。DXを推進していくに当たって、社内人脈、ネゴシエーションが非常に重要です。外から引っ張ってきた人間はネゴシエーション能力が弱い。社内での信頼貯金、信頼残高が少ないんですね。なので、改革をやろうとすると、すぐ残高が底をついて立ち往生してしまうケースが多い。

なので、デジタルをやる時は社内のネゴシエーションに強い信頼貯金をいっぱい持っている人間と、デジタルに強い外部の人間をツーマンセルで動かすのが非常にポイントになってきます。これはどっちのケースでもうまくいかないのをたくさん見てきましたので、ここはぜひ意識していただきたいなと。

不足人材の話は、前の部分でも触れたんですが、東京都内ではデジタル人材、特にエンジニアの採用倍率は8倍になっていて、1人の人間に対して8社からオファーがある時代です。

なので、企業が人を選べる時代はデジタルに関しては終わっていて、人材側に企業を選んでいただかないといけない。そのために、勝っている会社は情報発信して選ばれる理由を作って、結果勝っているので、人材戦略には時間がかかります。「長期的な戦略でいきます」と言った理由がここにあります。

というわけでステークホルダーマネジメントという観点での人事戦略をお話しさせていただきました。それではご清聴ありがとうございました。