2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
労務トラブルを未然に防ぐ就業規則の作り方(全1記事)
提供:freee株式会社
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佐藤仁氏:今日ご参加されてるみなさまの社内で、こんな従業員の方はいませんか。仕事をサボりがち。無断欠勤や遅刻が多い。必要のない残業をする。
あと他の社員とトラブルになる。他の社員に嫌がらせをする。メンタルや体調に不安を抱えている。与えられた業務を完遂できない。パワハラ傾向がある。俗に言うモンスター社員や問題社員と呼ばれている人です。
こういう方たちの存在は、会社を危険にさらします。従業員が極端に少なかったり、身内だけで経営しているところは別にしても、思い返してみて社内に1人は該当する従業員がいるのではないでしょうか。もはや他人ごとではなく、トラブルの火種は身近にくすぶっています。
では、実際に弊社にご相談いただいた会社さまの解雇の事例を見ていきたいと思います。Aさんは、たびたび遅刻を繰り返し、遅刻の報告もしません。また、上司から報告書の提出を求めても忘れてしまったり、業務上のミスも頻繁に発生させて、社長は困りはてていたそうです。
当然、社長は何度も注意したけど、一向に改善が見られませんでした。対応に困った社長が就業規則を見返すと、第53条第1項に、「勤務状況が著しく不良で、改善の見込みがなく、労働者としての職責を果たしえない時」(と書かれていました)。これを見て、もう「これだ!」と、びびっと来たそうなんですね。
社長はすぐさまAさんを呼び出し、「当社の就業規則第53条第1項に該当するので、解雇する」と通達したそうです。そしたらAさんは「不当解雇だ」と主張し、後日弁護士を連れてきたそうです。
裁判で争った結果、解雇無効という判決が出てしまいました。結論、Aさんは会社を辞めたんですが、解決金として1年分の賃金。あとは多額の弁護士費用。裁判に費やした時間と人事担当者、上司、同僚など、関係者は会社にとって利益を生まない不当解雇訴訟への対応に追われ、本来の業務が滞ってしまい、踏んだり蹴ったりだったとおっしゃっていました。
今回のケースではAさんは退職してくれましたが、下手したらそのまま会社に残るというケースも考えられる案件です。そんなことになったらぞっとしますよね。
みなさんは、今回のケースで何が問題だったのか、わかりますか? それでは見ていきましょう。
これは弊社の就業規則のベースです。就業規則を見たことがある人なら、記載の仕方が少し違うなと感じられた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そうなんです。弊社の就業規則は、書式がついています。社長が失敗してしまった原因は、口頭でしか注意をしていなかったことなんです。ただでさえ解雇はデリケートな問題なので、証拠集めが重要です。
ただし1回書面を交付してもだめで、会社は何度も何度も指導を行い、その度に書面の証拠を積み上げ、「これだけやったけどだめだった」というふうに、客観的に誰が見ても「そりゃそうだよね」という状況を作ることが大切です。
労働基準法によって、労働者は手厚く守られていますので、解雇することは、会社にとってものすごくリスクが高いことです。だからこそ感情的になって、ことを急いではだめです。慎重に時間をかけて、冷静に淡々と進めていく必要があります。
続いて休職の事例です。最近メンタル疾患になる方が増えてきて、直近は解雇のトラブルよりも相談件数が多いです。それではどんな内容だったのか見ていきましょう。
Bさんは、ここ最近気分が落ち込んだり、体のだるさを感じるようになり、ひどい時には会社に行くのも困難になり、会社を欠勤してしまう日もあったそうです。社長も心配になり、病院に行くことを勧めたそうです。
病院の診断結果は抑うつ状態で、3ヶ月の療養が必要と診断され、会社に診断書を持ってきたそうです。当然会社はBさんを休職させ、療養に専念してもらいました。
3ヶ月後、症状も落ち着いたので、復職をしてもらったのですが、しばらくしてまた症状が出始めてしまったので、病院に行ったら、再び抑うつ状態と診断され、休職させたそうです。
この状態がかれこれ1年以上続いていて、取引先からクレームが入ったり、他の社員がBさんの仕事をカバーしたりと、もうBさんを戦力としてカウントすることができず、困りはてていました。
そこで社長が就業規則を見返すと、第9条第3項に、第1項第1項により休職し、休職期間が満了しても、なお傷病が治癒せず、就業が困難な場合は休職期間をもって退職とする。
第1項第1号には、休職期間は1年以内と書いてあり、すでに1年経過しているので、社長は、休職中のBさんに「Bさんには申し訳ないけど、会社としてはお客さまから苦情も入っているし、他の社員に多大なしわ寄せがいっていて、今回は新しい社員を雇うことにしました」と。
「加えて、就業規則にも『休職期間満了後に復職できない場合は退職』と定めているから、本当に申し訳ないけれど」と退職の旨を伝えたそうです。その日、Bさんは何も言わなかったそうですが、後日、弁護士を連れて会社に来たそうです。
Bさん側の主張は「休職を繰り返しているが、その度に一度復職もしているし、休職期間は1年とあるが、通算するなどの文言も入っていないので、退職扱いは不当だ」と裁判で争うことになったそうです。裁判の結果、Bさん側の主張は正しいと、会社は負けてしまいました。
さて、みなさんは今回はどこが問題だったと思いますか。休職トラブルも解雇と同じで、非常にデリケートな問題です。それでは見ていきましょう。
こちらも弊社の就業規則のベースです。ここでも書式が出てきましたね。休職命令書とか再休職命令書とか。休職も口頭ですと、社長は「いつ命じた」とか、従業員は「言われてない」ということが始まります。
(休職についての相談は)ここ最近では、弊社に寄せられる労務相談の中でも、1、2を争うほどの案件です。でも、ご相談いただいても、(口頭だけでは)証拠がないので、決まって最後は金銭的解決になってしまうんです。
書式なしでは本当に戦えません。さらに、この会社の就業規則の休職については、内容も薄かったです。とてもデリケートな問題なのに、これでは起こるべくして起こったという感じですよね。
では、少し解説します。第18条を見てください。弊社の就業規則では、心身の不調により勤務が不適当と認めた時となっていますが、会社の就業規則には「欠勤が1ヶ月を超え」という記載でしたね。そんな縛りは要りません。休職は解雇を猶予するための期間です。
そもそも労働者は労務を提供し、その対価として会社から給与を受け取るという契約を交わしています。通常の労務提供ができない段階でもう債務不履行ですので、会社が勤務を不適当と認めた時は、休職を命じられるような記載の仕方がいいです。
続いて第19条の休職期間ですが、長すぎるのは得策ではないです。長すぎると今回のように、取引先や他の社員にも迷惑がかかりますし、休職している期間は会社負担分の社会保険料も発生します。
なので、休職期間は最大でも6ヶ月程度がよろしいかと思います。第22条では、今回の問題点となった休職期間を通算できるように記載しています。
6ヶ月以内に同一ないし類似の事由により、欠勤、通常の労務提供ができない場合は、再休職させるとともに、残日数の休職期間しかないことをはっきり明記しています。
また第23条で、同一ないし類似の傷病については再休職を除き1回という制限をかけています。ですので、同一の傷病については第19条に定めた休職期間しか休職できないことになります。
休職の際の肝となるのが復職の条文です。通常の怪我と違い、精神的な疾患は完治が難しいと言われています。そのため、今回のケースのように調子がいい時は出社できるが、気分が沈んでいる時は仕事ができないということを繰り返してしまいます。
そういったことにも対応できるよう、復職はしっかりと明記すべきです。弊社の就業規則を見てみると、主治医および会社指定の医療機関の両方から就労制限が付されていない診断書をもらい、復職の可否を判断すると明記しています。実務では主治医の診断書のみで復職させるケースもありますが、復職が難しい時には会社指定の医療機関も受診してもらうことが大切です。
会社は労働者に対して安全配慮義務を負っているので、完治していない状況で出社させて、何か起こった場合は使用者責任を問われかねません。お医者さんは責任を負いませんので、会社がきちんと復職の判断をする必要があるんです。
そもそも不完全な状態で復職させて、会社には来ているけどぼーっとしている人に給料を払いたいですか。不完全労務の提供は受容すべきではないんです。
ここまで事例を使いながら就業規則を見てきましたが、いかがでしたか。就業規則どおりにことを進めたのに、「えっ」となりませんか。就業規則の存在すら否定されるような結果になってしまって、散々ですよね。
でも、就業規則は必要なんです。就業規則に記載がないと、「何を根拠に命令しているのか」と、逆に従業員から反論されてしまいます。就業規則が命令の根拠になっているんです。
では、問題は何だったのか。整理してみましょう。1つ目は、就業規則の運用の仕方がわからないこと。だからトラブルになったんですよね。回避するには書面が必要です。
2つ目は、労務トラブルや労働審判、労働裁判の現場で役に立たない内容になっていること。負けないためには、記録や証拠が必要なんです。
重要なので、もう一度確認しましょう。左が厚生労働省のモデル就業規則、右が弊社が提供している就業規則です。
みなさん、想像してみてください。何も知らない人が見たら、モデル就業規則のほうは、解雇するには30日前に予告するか、30日分以上の賃金を支払えばいいと思っちゃいますよね。そうではなくて、条文に基づいて進めるための運用方法のほうが重要なんです。何度も言いますが、証拠となる書式がすべてです。
では、続いて、第2部は経営を揺るがしかねない労務トラブルとその解決方法についてお話ししたいと思います。今、映しているのは、令和3年度の民事上の個別労働紛争の統計です。いじめ、嫌がらせのハラスメントから、退職解雇と上位を占めていますが、みなさんは経営を揺るがしかねない労務トラブルはなんだと思いますか。
それはもう未払い賃金です。例えば、従業員50名の会社で毎月5,000円の未払いがあったとしましょう。労働基準監督署の調査が入って、2年間さかのぼって未払い賃金の支払いを命じられたらなんと600万円になるんです。もしこれが1万円だったら、倍の1,200万円。もう想像しただけで寒気がしてきますよね。
それでは、なぜ未払い賃金が起こるのか。代表的な例を紹介したいと思います。まずはそもそも勤怠をつけていないパターン。記録をつけないとだめですよね。そして必ず残業時間を計算し、残業手当を支払わないと、労働基準監督署につつかれた時に大変なことになります。
次は基本給の中に、残業手当が込みになっているパターン。こちらもありがちですが、きちんと基本給と固定残業代を分けて記載するように決められています。なので、このパターンに当てはまるところは、早急に就業規則の改訂が必要です。
また、基本給を基本給と固定残業代に分けるので、基本給が下がります。これは不利益変更にあたり、個別の同意が必要になります。
次もよくあるパターンです。固定残業代を払っているから、何時間働いても大丈夫と思っている経営者の方がけっこういます。固定残業代を支払っているから、残業計算をしなくていいというのは、間違った認識です。毎月必ず残業計算を行い、不足があれば追加で支給しなければなりません。
次は管理監督者です。確かに管理監督者は労働時間、休憩、休日が適用されません。だからと言って、役職をつけて、ちょろっと賃金をアップすればいいというものではありません。
管理監督者とは、経営者と一体的な立場であり、重要な職務内容、責任、権限を有していて、現実の勤務対応も、労働時間等の規制に馴染まないこと。また、賃金等もその地位にふさわしい待遇である必要があります。
ただ、管理監督者であっても1番の勤怠管理は必要です。会社は労働者の健康に配慮する必要があり、ノー管理というわけにはいきません。
⑤の休日勤務についてですが、振休や代休を認めているところは、給与計算が複雑になるので、注意してください。特に賃金締め切り日をまたいだ振休や代休を与えた場合、間違える確率はかなり高いと思ってください。
次にみなさまにとってはあまりうれしくない法改正が、2023年の4月にあるのでお伝えします。1つは休日労働を除く残業時間が60時間を超えた場合、割増率が5割になります。2023年の3月までは、大企業のみ対象でしたが、4月からは中小企業を含むすべての事業所が対象になります。実態が週に1日しか休めないような会社は、ちょっとかなり危険です。
もう1つ、未払い残業代の請求が、2023年の4月から丸3年さかのぼれるようになります。これは2020年4月の法改正ですが、現在さかのぼりが毎月移行している段階で、2023年の4月にマックスの3年になります。
労働者の中には、このタイミングで未払い賃金を請求してくる方がいる可能性があります。先ほどの例の場合ですと、2年が3年になることで、600万円の1.5倍になるので900万円になります。
新しい法律が施行されるので、当然就業規則の改定は必要になるんですが、実務的に重要なのは、給与計算の計算ルールの適正化とその設定です。
仮に労働基準監督署の調査が入った場合、就業規則の改定はしていないけど給与計算が正しい場合と、就業規則は改訂したけど給与計算がきちんとできていない場合と、どちらが問題があると思いますか。
前者の場合は、「就業規則を最新の法改正に対応していないから、修正してね」で終わりますけども、後者の場合の給与計算が間違っていた場合は、そうはいきません。「3年さかのぼって是正しなさい」となるはずです。それぐらい未払い賃金は重いことなんです。
また、クラウドをすでに導入していたとしても、設定がきちんとできていなければ当然に出てきた結果も間違っていることになります。これは未払いだけではなく、過払いの可能性も出てきます。
もし不安だと感じたら、社労士にクラウドの設定のリーガルチェックをしてもらうことをおすすめします。
弊社に依頼された会社さまの9割近くは間違っています。例えば割増賃金に含める・含めないの手当が間違っていたり、時給単価算出の要となる月平均の所定労働日数や所定労働時間数が違っていたり。はたまた社会保険料の等級が違っていたり、もう指摘するところがないという会社さまは本当にごくわずかです。
あと、あなどれないのが労働者代表の選出方法です。ありがちですが、社長が「Aさん、労働者代表よろしく。この就業規則の意見書に印鑑押しといて」ということをしてしまうのは非常に危険です。
労働者代表は、民主的な方法で選ばれていない場合は無効になりますので、すなわち就業規則の内容も無効になるということです。さらには会社と結んだ協定書関係もすべて無効になります。
実際に裁判にもなっています。簡単に概要を伝えると、労働者代表の選出方法の手続きに適正さを欠き、裁量労働制が否定されたことで多額の残業代の支払いを余儀なくされることになりました。今はこうしたところもつつかれる時代です。
労働者代表の選出方法に不安がある方は、弊社のホームページから楽楽代表のLPに飛んでみてください。楽楽代表について簡単にご説明すると、従業員に一斉メールを送るだけで従業員代表の立候補者が決まり、投票ができるというシステムです。
各従業員の投票の記録も残りますので、適正かつ簡単に労働者代表を選出できます。50名未満は無料で使用できますので、試しに使ってみてはいかがでしょうか。
さて、給与計算に話を戻しますが、給与計算を正確にやるのは難しいんだって思われた方、たくさんいらっしゃるのではないでしょうか。もうそのとおりです。
給与計算を行うにあたり、従業員情報から給与情報と保険と税金、あと台帳管理、マイナンバー。もう従業員1人につき、これだけさまざまなデータを管理するんです。人数が増えればなおさらですし、もう間違えるなというほうが無理です。
また、管理も紙のものもあればExcelのものもあったり、もうてんでバラバラだと本当に大変ですよね。
さらに給与計算を社内で行っている場合と、外注している場合の問題点(の違いについて)です。まずは社内は、毎月給与支払日までの数日間は給与計算業務で手一杯で、残業も避けられない。しかも担当者にしかできないので休んだら大変。
多くのデータを1人の人間が処理するから、時間がかかるし、担当者が限定されているので、替えがきかないんです。同じ経験をした心当たりがある方は、けっこういらっしゃるのではないでしょうか。
次に外注している場合ですが、毎月給与支払日直前にならないと明細が届かない。ちょくちょくミスがあるが修正が間に合わない。おかしなことですが、社内の担当者が二重にチェックしている。
外注先に問題がないとは言いませんが、計算に必要なデータが社内にしかないから、遅延やミスは起きるし、発注側の勤怠データの確定の遅れや給与変更データの共有不備なども考えられますし、給与計算ミスはもう起こるべくして起こってるんです。
給与計算の担当者もわざと間違えてるわけではなく、むしろ正しいと思っています。でも実際は間違っている。
この状況を打開してくれるのがクラウドの給与計算です。手間やミス、無駄な作業時間、データの紛失、担当者への依存などは、これですべて解消です。
データ管理から煩雑な計算業務や手続きまでを自動化できるため、人事担当者の業務の負担を大幅に軽減できます。また、社外の専門家とリアルタイムでデータが共有されるのも利点です。弊社もよくZoom等で画面を共有しながらご相談にのれるので、とても便利です。
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