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【HYOUGE NIGHT】『児童養護施設という私のおうち』著者 田中れいかさんに訊く、私がモデルから社会起業家を目指す理由(全3記事)

大人になるとできなくなる「必要なバカ」を意識する 児童養護施設出身のモデルが語る、一歩を踏み出すコツ

スタートアップカフェ大阪が主催したイベントに、『児童養護施設という私のおうち』の著者・田中れいか氏が登壇。7歳から18歳までを過ごした児童養護施設を退所後にモデル活動を始め、現在は社会起業家との二足の草鞋を使いこなす田中氏が、親元から離れて暮らす子どもの支援団体の代表になった理由や、自身が意識する一歩を踏み出すコツなどを語りました。

親元から離れて暮らす子どもの支援団体の代表になったわけ

山下舞氏(以下、山下):では、PART2に入りますが、ここからどういう風に「ゆめさぽ」に出会われたのかを聞かせていただければと思います。

田中れいか氏(以下、田中):これもおもしろい出会いなんですが、私が18歳とか20歳の時に「施設を出て困窮している女学生」というかたちで、テレビに出させていただいたことがありまして。それを当時「ゆめさぽ」という任意団体をやっていた前任者の方が見てくださって、「大阪に来る時は会いにきいや」と言ってくれて。

「僕はちゃんと施設を運営している人です」という身の上を明かした上で「きいや」と言ってくれました。実は、私の初めてのファッションショーの出演が大阪なんですよ。

関コレ(関西コレクション)がやっている小さめのステージがあって。私もその時は「チャンスがあると思ったらどこでも行こう」と思っていたので、夜行バスで大阪に来てファッションショーに出て、前任者の方に会いに行って。そこからその方とはつながっています。

「ゆめさぽ」というのは知っていたんですが、「本格的にやるけど、れいちゃん大丈夫なん?」「これでいいんですよね?」と言って(笑)。「代表になって」と言われたので「やります」と答えました。

言い方があれですが、児童養護施設に何も関係のない人が「ゆめさぽ」のトップになるより、私みたいに施設出身と公言している人が代表になったほうが、すごく信頼性もあるし、子どもたちにとってもいい影響があるんじゃないかなと。2つの面から、私がなったほうがいいかなと思ってやらせていただいています(笑)。

山下:代表理事に就任されて以降は、具体的にどういう活動をされていらっしゃるんですか?

田中:私は埼玉に住んでいるので、基本はオンラインで会議に参加させていただいています。大阪在住の橘川さんや事務局の永野さんが大阪府を訪問したり、施設長が集まる会議にPRしに行ってくださって、「こういうのがあるので、ぜひ子どもたちにお伝えください」と。

福祉の場合は草の根がめっちゃ大事なので、そこをやっていただいています。私はSNSで「今日は会議しました~」とか、かわいめの「ゆる担当」みたいな感じで、バランスよくやっています(笑)。

山下:そうなんですね(笑)ありがとうございます。

児童養護施設への寄付のミスマッチをなくす試み

山下:「ゆめさぽ」での活動以外にも、児童養護施設への寄付のミスマッチをなくす試みで、「ナカソラ」という活動もされておられるということですが。

田中:「ゆめさぽ」の代表をやらせていただいた時に、税理士さんや司法書士さんや弁護士さんとか、すべての人が足りている状態だったんですね。私は何も知らないけど代表になって、「表だけいればいい」みたいな。「それでいいんだよ」と言われたのでいいはずなんだけど、私は「これじゃやだな」と思っちゃったんですね。

いつか自分で全部わかる人になりたいと思って、「ゆめさぽ」ができて2年後くらいに自分でも法人を作ってみました。

山下:作ってみました(笑)。

田中:(笑)。それが、去年(2022年)の7月です。

山下:具体的には、どういうことをされていらっしゃるんですか?

田中:これまでは、こういったイベントや講演活動とか啓発の事業をやってきたので、「一般社団法人たすけあい」を立ち上げました。講演とかYouTubeの情報発信は、その団体でやっています。

寄付のミスマッチをなくす「ナカソラ」も、その法人でやっていて、私個人でやっていたものを法人に移した感じです。

山下:なるほど。こういった発信や活動を続けていく中で、新たなお仕事のチャンスだったり、新たな仲間との出会いもあるということでしょうか?

田中:私自身、仲間を作るのが苦手なんですよ。あと、もともと他人が入っていいパーソナルスペースがめっちゃ狭い人なんですね。なので、仕事をするとなった時も、相手のことを尊敬できるレベルじゃないと仕事をお願いできないというか、けっこうわがままな部分があって(笑)。

心の底から相手のスキルを褒められるかどうか。例えばExcelを作るのがめちゃうまいとか、議事録作るのがうまいとか、私にない能力をキラッと持っている人がいたら、初めて尊敬できるというか。人を選ぶ癖があるので......仕事をする「人選び」みたいなところで、そこをより痛感するようになったなと思います。

山下:ちなみに今は基本的にはお独りですか?

田中:理事3人です。

山下:3人で運営や、ご調整などを任されているということですね。

田中:そうですね。業務委託が主ですね。

山下:そうなんですね。田中さん程の行動力と発信力をお持ちの方だと、いろんな人を巻き込んで、ばんばん活動をされていそうなイメージがあったのでちょっと意外でした。

田中:苦手なんですよね(笑)。けっこう守りが強いんですよ(笑)。

ハッピーループを始めるための一歩を踏み出すコツ

山下:では、そろそろお時間となりますので、そんな田中さんに「常に前進と挑戦を続けるための、私の『原動力』とは」というところをお聞きし、締めたいと思います。

田中:これが一番悩みましたね……。かっこつけようと思えばかっこつけられるパートなんですが、やっぱり一番は自分のためにやっています(笑)。

(会場笑)

田中:自分がやり始めたことを途中でやめたら、あの時決めた自分を裏切ることになると思うので、自分がやると決めたことをやり切るまでやるのが田中流です(笑)。「途中でやめる」という選択はしないほうがいいですが、やっぱり自分のためで、自分を嫌いになりたくないからやり続ける。

山下:ありがとうございます。今日来られている方の中にも、これから何か新しいことを始めたいと思っていらっしゃる方がたくさんいらっしゃってます。そういった方に向けて、田中さんから何か一言エールとなるアドバイスをいただいて、本日のイベントを終わりたいと思います。

田中:これも難しいですね(笑)。多少、バカになったほうがいいなと思っています。モデルじゃないのにモデルと名乗っちゃうって、バカじゃないですか(笑)。

(会場笑)

「必要なバカ」って、大人になるとできなくなる。「こう見られたらどうしよう」という不安のほうが勝っちゃって、バカになれない。なので、何かしたいと思った時は、「これは自分のキャラじゃないかも」とわかっていてもやるのが、動けるコツです。

やっちゃえば、そういう人に見られるようになるし、ハッピーループが始まると思うので。最初だけバカになって、「こんな自分もいいかな」って一歩踏み出すのがいいんじゃないかなと思います。

山下:ありがとうございます!めちゃくちゃ良いアドバイスですね。

田中:大丈夫ですかね(笑)。

山下:大丈夫です(笑)。ということで、本日のイベントを終了いたします。皆さま、本日はありがとうございました!

田中:ありがとうございました。

(会場拍手)

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